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少女と少女は月下香で

こんにちは、作者の柊由(ひゆう)と申します。

初投稿ですが、優しい目で見てくれると大変ありがいです。

※話名や物語の途中や補足にAIを使用しますご理解ご了承いただけると大変幸いです

「行ってきま〜す!」

 四月五日、ポカポカしてきた春先、快晴の空。

 着慣れないスーツの扱いに手間取りながら、私は実家の重い玄関扉を開け放った。

 つんと鼻に広がる、春らしい花々たちの香り。生まれつき鼻が人一倍良かった私は、色んな街の匂いに囲まれて育ってきた。

「大丈夫? 忘れ物ない?」

 背後から聞こえる母親の心配そうな声を、元気な「大丈夫!」と笑顔で遮る。

 私の胸ポケットには、運命を変えてくれることになった大切な宝物が入っている。伝説の調香師、千種逢瀬(ちぐさおうせ)が手がけた香水のミニボトルだ。

 私は、憧れの千種逢瀬へと一歩近づくべく、今日から名門調香師専門学校『月下香調香専門学校』――通称、月下専(げっかせん)へと通う。

 香水の勉強ばかりで、友達と呼べるのは幼馴染で同じく月下専に通う薫(かおる)しか居ない私には、全寮制の学校生活は未知の世界だった。

(今度こそ、たくさん友達を作るんだ……!)

 大きなキャリーバッグを引きずりながら、私は期待に胸を膨らませ、待ち合わせ場所へと急いだ。

     

 駅前では、すでに薫が待っていた。

(あ、このおだやかな石鹸の香りは!)

 私はキャリーバッグをガタガタと言わせながら、駅前へと向かった。

「薫! おはよう!」

「小鈴遅いよ! 電車来ちゃう!」

 薫は焦った顔で私に呼びかけると、すぐに急いで駆け出した。

「はぁ、はぁ、はぁ……何とか間に合ったぁ……」

「もう少し早く家を出なさいよ!」

 車内に響く薫の鋭い声に、周りの乗客からチクリと視線が刺さった。

「以後気をつけます……」

「前もそれ言ってたでしょ!?」

 怒りながらも待ってくれた薫は、私にとってかけがえのない親友だ。走って来た疲れで一気に息が上がり、私は電車の揺れに身を任せているうちに、ついウトウトと眠ってしまった。

『つぎは、月下香前、月下香前――』

「小鈴起きて! 寝過ごしちゃう!」

「ほ、ほへ? 着いた!?」

 慌てて荷物を持ち、また薫と走って車両から飛び出していく。

「あ、危なかった〜……」

「『危なかった〜』じゃないでしょ?! 入学式の前に寮に寄らないとだから急ぐよ!」

 少し呆れたように注意してくる薫に連れられ、そこから徒歩五分ほどの場所にある月下香調香専門学校の寮へと向かった。

「すいません、今日入寮の一ノ瀬薫です」

「入寮の香川小鈴です!」

 私たちが声をかけると、奥のパソコンで事務作業をしていた寮母さんが、優しい雰囲気をまとって出てきた。

「はい、確認取れました! これお部屋の鍵ですね。大切に持っておいてくださいね」

 差し出された鍵を、そっと受け取る。

 寮母さんの体温で少し温かくなったその鍵からは、ほんのりと金属の香りと、彼女の人柄を表すような太陽の香りがした。

 薫は二百五号室、小鈴は二百七号室の鍵を受け取った。そのままバタバタと寮の廊下を走り、自分の部屋に荷物を置きに行く。

「急いで! 入学式に遅れちゃう!」

 部屋のドアを勢いよく開けた、その時だった。

「「わっ!」」

 中から出てきた女の子と、正面からぶつかってしまった。

「す、すいません! 前方不注意で……」

「い、いえ大丈夫です! も、もしかして同室の方ですか?」

 ふと彼女の背後にある部屋の表札に目を落とす。

「はっ、はい!」

 薫は荷物を置いて既に会場に向かってしまっている。私は彼女の手を引っ張り、雑にキャリーバッグを置いた部屋を背に走り出した。

「自己紹介は向かいながらお願いします!」

「み、翠沢美月(みどりさわみづき)です……!」

「私は香川小鈴、よろしくね!」

 慌ただしく自己紹介を終え、私たちは入学式の会場へと滑り込んだ。

「はぁ、はぁ、はぁ……な、何とか間に合った!」

 急いできた私たち二人の姿を見て、受付のお姉さんが優しく話しかけてくれた。

「お名前をお教え願いますか?」

「香川小鈴です!」

「翠沢美月です!」

 お姉さんが名簿を確認して、私たちの名前を探す。

「確認が取れました。どうぞお入りください」

 一歩足を踏み入れた会場には、さすが調香師の専門学校と言うべきか、色んな人の纏う香水の香りが色とりどりに満ちていた。

 私はとりあえず先に来ていた薫の横の席へと座り、私のすぐ隣の席には一緒に走ってきた美月ちゃんも滑り込んだ。

「間に合ってよかったぁ……」

 私が胸を撫で下ろすと、隣の席から「本当にね……」と少し震えた美月ちゃんの声が聞こえた。

「……ちょっと、小鈴」

 反対側の席から、低く冷ややかな声が降ってくる。

 びくりと肩を震わせて振り返ると、そこには腕を組んで少し目を細める薫の姿があった。

「同室の子と来たの」

「その、小動物みたいに震えてる子が同室の子?」

「ひゃっ、う、うん! 急いで部屋に入ろうとしてぶつかっちゃってさ」

 薫のどこかトゲがある言い方を気にしつつ、私は慌てて二人の間で両手をパタパタと振った。

 そんな私を余所に、美月ちゃんは薫に向かってにっこりと笑いかけた。

「小鈴ちゃんと同室になった翠沢美月です。よろしくね」

「……よろしく頼むわ」

美月が、小声で「あっ!」っと言うそれに私と薫は目を向ける美月は壁にかけてある時計を見ていた

「二人とも、もう式始まっちゃうから前向こう?」

 美月ちゃんに促され、私たちはステージの方へと前を向いた。同時に会場の照明が静かに落とされ、厳かな音楽が響き始める。

(滑り出しはいい感じ……だと思う! これから楽しい学校生活を送れるよね!)

 そんな希望で胸をいっぱいにした瞬間、私の鼻が、二人の間から漂う不思議な香りを捉えた。

(ん……? なにか切ないラベンダーのような香りや、陽の光をいっぱい集めたひまわりのような香りがした。調香の専門学校だから、どこからかしてきてもおかしくないか)

 胸ポケットに入れている千種逢瀬のミニボトルを上着の上からそっと触りながら、私はこれからの学校生活に胸を躍らせていた。

 けれど――。

 その心地よくもどこか切ないラベンダーやひまわりの匂いに、一体どんな意味があるのか。

 この時の私はまだ、知る由もなかった――。

第1話最後まで見ていただきありがとうございます!

生まれつき鼻が良い小鈴が、無事(?)入学式に滑り込む事ができました。

幼なじみの薫やルームメイトの美月。

小鈴が感じたラベンダーやひまわりの香りがなんだったのかこれからの関係でどう変わって行くのか、見守って頂いたら幸いです。

これからも月下香調香専門学校(月下専)での小鈴と同級生や先輩もしからたら先生に言い寄られちゃう・・・愛され百合ストーリーをお届けできたらと思います!


もし「世界観」や「続きが気になる!」と思ってくださったらブックマークやポイント評価をしてくださったらこれからの調香の大きな励みになります!


次回2話もお楽しみに!(できるだけ早くあげる予定です。)

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