心の風邪
誰かの言葉や態度に、心がずしんと沈むことがある。
大したことじゃないと頭ではわかっていても、胸の奥がざわつき、思考が止まる。そんな瞬間、まるで心が熱を帯びているように感じる。
体の風邪は休めば治るけれど、心の風邪はそうはいかない。目に見えないぶん、自分でも気づかないうちにこじらせてしまうことがある。
そんな「心の風邪」について、短編で書きました。
「このやろう…。」
沸々と頭に血が昇る感覚がした。人は弱っているときほど、他人の何気ない一言に深く傷つくものだ。意地悪な人ほど、そういう隙を見つけて攻撃してくる。そんなとき、怒りという名の熱が全身を駆け巡る。頭は熱く、けれど身体は妙に冷たい。節々が痛み、呼吸も浅くなる。まるで本当に風邪をひいたかのようだった。
怒りは心に宿る高熱のようなものだ。放っておけば、自分自身を内側から焼き尽くしてしまう。だからこそ、心の風邪にも「解熱剤」が必要なのだと思う。ただしそれは薬局で買えるものではない。人によって効く薬は違う。音楽だったり、静かな時間だったり、美味しい食事や自然の中の散歩だったりするかもしれない。涙を流すことで落ち着くこともある。
それでもどうしても熱が下がらないときは、少し休めばいい。無理に元気を出そうとせず、時間に身を任せることも一つの治療法だ。心の風邪をこじらせないためには、休む勇気も必要だと思う。
誰もが一度は心の風邪をひく。だからこそ、互いに優しくなれる世の中であってほしい。怒りや悲しみが連鎖するのではなく、思いやりが連鎖していく世界に。そう願いながら、私は今日も静かに深呼吸をした。




