『忘却の都市』出会い
こちらは、『忘却の都市』のサイドストーリーです。
進藤夏希の過去を作っていきます(^^♪
登場人物等、一部、ネタバレになりますが、そんなに本編の話には絡まないです。
もし、興味があれば本編も是非、ご覧ください!
本編はこちら:https://ncode.syosetu.com/n5463kr/
私は——孤独だった。
周りには、知らない大人ばかり。誰も私の名前を呼ばない。
どうしてここにいるのかも分からない。
優しかった母も、時々怖かったけど頼りになった父も、どこにもいない。
ここは、あまりに静かで、あまりに整いすぎていて。
十二歳の私には、すべてが異質で、どこか冷たく感じられる。
暮らしに不満はなかった。
衣食住は整っていて、大人たちは皆、親切に接してくれる。
けれど——
「どうして?なんでも私はここにいるの?」
その問いだけは、誰も答えてくれなかった。
心の奥にぽっかりと空いた穴は、どんなに優しくされても、埋まらない。
会いたいよ。 お母さん……お父さん……
私は、涙をこらえながら、毎日のように都市をふらふらと歩き回っていた。
白い建物。整った道。どこか無表情に見える人々。
その中で、私はただの“迷子”だった。
そんなある日——
「お嬢さん、そんな顔をしてどうしたのかな?」
不意に、声をかけられた。
「何か悲しいことでもあったのかな?」
顔を上げると、そこには黒い制服に身を包んだ白髪の男性が立っていた。
背筋がまっすぐで、目が優しくて、でもどこか鋭さもあって。
私は、思わず呟いていた。
「……カッコいい……」
その言葉に、その男の人は満面の笑みを浮かべた。
「ありがとう。そう言ってもらえると、私も誇りに思うよ。」
少し照れくさそうに、鼻の頭をかく仕草が、なんだかおかしくて。
私は、ほんの少しだけ笑った。
「それで……君は、こんなところでどうしたんだい? ご両親は?」
その言葉に、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。
言葉が詰まって、目の奥が熱くなる。
「……わかんない……お母さんも、お父さんも……どこ行っちゃったの……」
その瞬間、堪えていた涙があふれ出す。声にならない嗚咽が、喉の奥から漏れた。
彼は、少し慌てたようにしゃがみ込んで、目線を合わせてくれる。
「じゃあ……私と一緒に来るかい?」
「……え?」
「私は城戸守。この都市で“警備隊”という仕事をしてるんだ。 君のような小さい子はいないけど……きっと、楽しいよ。」
その言葉は、不思議なほどすっと胸に入ってきた。
周囲の大人たちの言葉とは、どこか違っていた。
温かくて、柔らかくて、でも芯があって。
私は、うなずいた。
その日から、私は“城戸守”と名乗るその大人と、行動をともにすることになった。
——それが、私の“都市”の始まりだった。