ミッション06;休日出勤の後は散歩という名のデートを完遂せよ
なろうラジオ大賞6に参加させてもらってます。
恋愛初心者男子のピュアラブシリーズ?、お題「散歩」チャレンジ作品。
お楽しみいただけると嬉しいです。
「じゃあ、散歩に行こっか」
夕方までの予定だった休日出勤が午前中で終わり、持参していた弁当を会社から少し離れた公園で食べた後の、ハル先輩からの提案だ。
食べながら学生時代の話をして遠足あるあるで盛り上がり、この辺りでは行先の定番な山の話になった。聞けばまたかと思うけど、家族や友人と行ったことは無く、幼稚園のお泊り会と小学校の遠足で行ったきりだなと思い返してそう言った俺に対する。
「乗った事無いの?じゃあ、ケーブルカーにしよう」
やや強引なところも妙な安心感があって、公園に自転車を置いたまま誘われた助手席に乗る。これは散歩じゃなくて車社会の憧れ、ドライブデート!?
いまだ車の購入も維持もままならない俺には遠い存在なんだけど、助手席とゆーパターンもあったのか。
確かに高3当時の運転免許取得者に、男女差は無かった。
自分が恋愛の当事者になるとは想像できなかったけど、運転手イコール男のイメージは強い。
さらりと先払いの駐車場代も支払われ、この一方的にお世話されてる感をどう伝えれば失礼にならないのか、時々挙動不審な言動を交えつつ坂道を歩く。
麓の神社に続く参道でもあるようで、ちょっと観光地に来た気分にもなった。
あちこち写真を撮りながらはしゃぐハル先輩に、しどろもどろ説明すると、
「じゃあ、ケーブルは健太の奢りでヨロシク」
ぽん、と肩を叩かれて一息ついた。
乗り場までの通り道にある神社を参拝、新緑のトンネルを抜けてケーブルで山頂へ向かう。曇っていたので展望台からの景色はイマイチ、登山道を少し歩いてみようかと行ってみたものの、パンプスには厳しくて断念する。
売店でソフトクリームを買って食べていると、少し肌寒くなってきた。
「うーん、次はスニーカーで来ないとね」
「え、登山するんですか?」
「小学生が遠足で登るんだから、行けるんじゃない?」
「ああ、確かに。そこまで体力落ちてたらショックかも」
同僚やテレビの何でもない話をするうちに、昼食を食べた公園に着いた。
一緒に降りて自転車の無事を確認してくれる。
「じゃあ、またね」
車に乗り込もうとするハル先輩を見て、別れ難いなと思うと同時に、抱きしめていた。
「・・健太」
呼ばれて正気に戻りはしたが、至近距離で目が合った次の瞬間、首に回された手に力が入り、柔らかな感触が唇に触れる。
「気を付けて帰ってね」
するりと離れた先輩の車が遠ざかるのを、俺は動けずに見送った。
読んで下さって、ありがとうございました。
ハッピーエンド目標で、あと6つ。頑張ります。
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