特急名護
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石川延伸線工事真っただ中の1980年代、琉鉄は新たな野望を抱く事になる。それは、名護急行電鉄線(名護急)への特急乗り入れである。
名護急とは、1975年の沖縄海洋博覧会に合わせて開業した国鉄名護線の内、不採算路線(特定地方交通線)として1990年に切り離された読谷駅以北を第3セクター化して存続させた路線である。
当時のこの路線は、普通列車が1時間に1本トコトコ走っている他、JRからの特急「でいご」が2時間に1本乗り入れるだけの閑散路線であった。地方によくある赤字ローカル線である。
そこに琉鉄は乗り入れる野望を抱いた。
ルートは、現在高架駅となっている伊佐駅手前で線路は分岐し、国道58号地下に伊佐駅地下ホームを新設、58号直下のまま北上した後、美浜駅で地上に顔を出しJR読谷線(古島駅から読谷駅を結ぶJR九州の路線)の浜川駅に乗り入れる――というような構想であった。
北谷町美浜周辺は県と琉鉄不動産による大規模開発計画が存在し、十分に採算も取れると踏んでいた。
問題は乗り入れ先のJR九州との合意であったが、現状のJR読谷線の普天間駅以北は単線の閑散区間であった。その為、乗り入れに伴う複線化工事を琉鉄負担でやってくれるなら、あわよくば電車本数の増加と共に旅客が増えてくれれば――と、むしろ歓迎の方向であった。
こうして1996年。琉鉄は名護急乗り入れの為、意気揚々と琉鉄北谷線の工事を開始した。結果的に、この区間が琉鉄の歴史において一番の難産となる。
最初に工事が開始されたのは伊佐駅周辺なのだが、既に市街化されている地域であったため用地取得が難航、地下へのアプローチ線完成までに8年を費やすことになる。
伊佐駅から美浜駅までの地下区間では軟弱地盤に翻弄された。
3年程かけてトンネルを掘削するも、途中で計画は頓挫。結局、ハンビー駅から凡そ500mのところで線路は地上へと顔を出し、そこから先は高架区間に計画が変更されている。
高架線になるということは用地買収の必要があり、そこに時間をかけるうちに工期はまたどんどんと伸びていった。
こうして、過去に4年とウン十億円で7.9kmの石川延伸を成し遂げた琉鉄とその他事業主体は、今回たった5.5kmの区間を開業させるのに16年の歳月とウン百億円を費やすことになってしまった。
まあ、そんなこんながありつつの2012年、琉鉄北谷線はなんとか無事に開業。今現在まで続く路線網がこの時、完成したのである。
この琉鉄北谷線開業により、本線系統のダイヤは大きく変更された。
元々は普通、快速、特急コザの3系統のみだったのに対し、新たに快速急行と特急名護が設定されたのだ。
そして、役割も大きく変わった。
まず、牧港行、伊佐行の区間運転を除く全ての普通列車が北谷線直通読谷行として運行されるようになった。
そして、快速は伊佐以降各駅停車として運行されるようになった。
新設された快速急行だが、これは安謝から伊佐までノンストップという爆速電車となり、伊佐以降は以前の快速停車駅を引き継ぐこととなった。
最後に特急名護、こちらは何も言う事は無いだろう。琉鉄の夢――名護駅乗り入れを実現した種別だ。那覇空港から名護を最速で結んでいる。
北谷線開業と本線系統ダイヤ変更で快速電車には遠近分離という新たな役割が加わった。こうして、伊佐駅以降の各駅停車の増発が可能になったのだ。
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2000年代の沖縄県はまるでバブルだ。IT産業や観光産業、貿易センターとしての機能が成長したことで、那覇市周辺のみならず中部北部や島嶼部も含めて県全体で人口が爆増したのだ。
「平成の大合併」が起こった時期には、沖縄県にも本土に負けない大都市を作ろうという計画が持ち上がった。
那覇市、浦添市、宜野湾市、糸満市、中城町、南山町、尚巴志町、豊見城村が合併し、政令指定都市「那覇市」が誕生した時は、全国に向けて「沖縄はビーチとサトウキビ畑だけじゃない」という猛烈なアピールとなった。
琉鉄もその波に乗って輸送人員は鰻登り。2017年には輸送人員10万/日を突破した。その結果かどうかは定かではないが、2018年度版鉄道要覧には、琉鉄グループは「準大手私鉄」として登録されるまでに成長した。
「今日の県内の交通状況をお伝えします。まずは琉鉄から……」
鉄道不毛の地沖縄――そんな現実とは異なり、この世界の沖縄の朝には、この様なアナウンスが毎日流れるのだ。そんな世界が、もしかしたら存在したのかもしれない。
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2020年コロナ・ショックの真っただ中において、那覇空港は大拡張を遂げた。2本目の滑走路と新たなターミナルの誕生である。メインの空港機能は全て第2ターミナルへと移され、従来からある第1ターミナルはLCC専用の施設となった。
新たなターミナルは2つの滑走路の真ん中に位置している。
アクセス手段は高規格道路「西海岸道路」、下道の「国道332号バイパス」、そして――
「琉球旅客電鉄(琉鉄)」だ




