那覇市営地下鉄1号線
地図は以下のリンクに作成しています。良ければどうぞ。
https://ku-tetsu.net/408712.html
1980年前半、沖縄県内の国鉄線は2つに分断された。理由はルート選定において県と日本鉄道建設公団の間で話がまとまらないまま国鉄分割民営化の時代に突入してしまったからである。
こうして沖縄県の県都、那覇市は琉鉄線・国鉄糸満線の那覇駅と、国鉄名護線(後のJR読谷線)の古島駅という2つのターミナル駅を抱えることになったのだが、街外れに位置する古島駅ではとある問題が発生する。それは、古島駅前を発着するバスの那覇市内区間における大混雑である。これは国鉄線沿線が発展するにつれて日に日に悪化を辿った。
毎朝のようにバス停で積み残しが発生する現状を改善すべく、那覇市議会ではミニ地下鉄を建設してはどうかという議題が提出された。これは公共交通を民間に任せていた那覇市にとって非常に挑戦的な試みとなる。
委員会が立ち上げられ、本格的な議論が開始されたのは1986年のことだ。
規格は比較的建設費が安くなる新交通システムが採用されることになった。
ルートは那覇~古島駅を軸に複数案が検討された。その結果、那覇新港から高架で東へ進み古島駅を経由、国道330号線を南下しながら地下へ潜り壺屋、那覇駅を経由、小禄交差点へ至るというものが採用された。
このようにして、「那覇市営地下鉄1号線」計画は1980年代後半に本格始動したのだ。
しかし、建設前に大きな問題が浮上する。それは、車両基地用地が確保できないというものである。
当初、那覇新港埠頭に車両基地を建設する予定であったが、地権者と折り合いがつかず、結果、車両基地をどこに設置するかで計画が二転三転することになる。牧港住宅地区(米軍住宅地)返還跡地に設ける案も浮上するが、こちらも地権者が納得せず立ち消えに終わる。
結果、計画路線を延長し、当時の豊見城村に車両基地を設ける案が採用された。
――――――――――
1995年、新たな制度「広域連合」を活用し、沖縄都市交通広域連合が誕生した。沖縄県、那覇市、豊見城村の3自治体から構成されたこの組織は、那覇市営地下鉄1号線計画を引き継ぐものであった。
同組織は公募の中から愛称を「沖縄メトロ」とすることに決定。それと同時期に、那覇市営地下鉄1号線改め「沖縄メトロ小禄線」、その工事を開始した。
当初計画から延長され新たに終点とされた豊見城北駅と、車両基地が併設された豊見城南駅の周辺では大規模な区画整理が同時に進行した。これは、発展を続ける那覇市を支える大規模ベッドタウン「豊見城副都心」計画として県や琉鉄不動産などが噛んだビッグプロジェクトであった。
また、同じく小禄線沿線で興った「おもろまち副都心」計画も忘れてはいけない。おもろまち駅西側に広がる広大な牧港住宅地区が地域振興整備公団により大規模に開発されることが決まったのである。ちなみに、おもろまちの「おもろ」とは琉球時代の歌集「おもろさうし」から名付けられたものである。決して面白い街ではない……はずである。
――――――――――
1999年、小禄線は無事に開業を果たした。そして、その効果は沿線地域に大規模に波及した。
数多くの新規・再開発プロジェクトが進行することで、都市の景観は様変わりすることになったのである。
安謝駅近辺では琉鉄との乗換駅ということで新たな人の流れが生まれ、コンビニや小規模店舗が地上階に入居する中高層マンションが軒を連ねるようになった。
古島駅では国道330号線の真上に広場程のペデストリアンデッキが整備され、JR古島駅の真上に店舗を構えるデパートリウボウ古島店と直結した他、少し北の古島ICに散らばるバス停にスムーズに移動できる導線を確保した。
またJR古島駅の向かいには20階建ての超高層マンションが聳え、こちらもペデストリアンデッキに接続している。
おもろまち駅から見て西の広大な「おもろまち副都心」エリアでは、沖縄総合事務局をはじめとした支庁、本土系企業の支店ビルがズラリと並ぶ壮観な光景が広がった。それはまさに那覇の新たな都心、「那覇新都心」と呼ばれるまでの発展具合であった。
また、この地域は航空法の高さ制限エリア外であるために、超高層ビルの計画が幾つか立ち上がり、2025年現在までに20階以上の建物が6棟建設された日本最南端の摩天楼ともなっている。
那覇駅、県庁前駅のエリアには、琉鉄・JR那覇駅から国際通りの入口である県庁北口交差点までの大規模な地下街が整備された。この地下街は県庁や那覇市役所といった庁舎や、パレット久茂地などの周辺ビルの地下階、県庁前地下駐車場などと接続されており、日本最南端の地下街として活況を呈している。
豊見城南駅から豊見城北駅にかけての大規模なエリアでは「豊見城副都心」計画が決行された結果、駅チカにはショッピングモールや10階建て程の高層マンションが立ち並び、少し離れると広々とした戸建て住宅が立ち並ぶ本土の電鉄系ニュータウンのような街並みが完成した。
安里栄町駅や壺屋駅、小禄交差点といった那覇や小禄の下町エリアでは、大規模な再開発は行われなかった。しかし、地下路線の建設に合わせて地上の道路が新造、拡幅されるなどしており、少しずつ風景は変化している。
このように、沖縄メトロ小禄線は2つのターミナル、都心、2つの新たな副都心を経由するルートのおかげで初年度から黒字を叩き出し、沿線地域も巻き込んで大成功を収めたのである。




