横田の物語 幼年期の終わり 少年よ嘘をつけ
未成品です とりあえず 投稿します 将来改稿予定
①先程から赤いジャンパーを着込んだ少年がローラーボード場を躍起になって行きつ戻りつしていた 今日も小一時間ほど練習して ようやく滑らかな動きを掴みかけていた 夕刻のチャイムが鳴り始めていた 少年は舌打ちをした もう時間か 早く帰らないとまた 母親から お説教を食らってしまう 急ぎ帰ろうとした その時 小さな観客がいる事に初めて気づいた 地べたにキチンと正座をして ちょこんとした感じで座っていた 足元には松葉杖らしきものを横たえていた 突然観客が拍手をした 少年は面食らって立ち止まってしまった 上手上手 随分と上手くなった 最初の頃はド下手だったのに か細い声だった ド下手と言われて カチンときたが ここはソレ ヤマト言葉で何ていうんだったっけ そうそう 短気は損気 立てた腹を横にする ありがとう 君はいつからいたんだい 最初から 今日が初めてでは無いよ ずっと見てた そう…なんだ 全然気づかなかった 最初の頃はギッコンバッタンという感じで ボードを返すのが 精一杯という感じだったのに 今日は滑らかに8の字を描く様に 動けてたよ オレはもう帰らないといけない時間なんだが 君もウチへ来ないか 少年は何か思いついた様子だった ありがとう でもちょっと時間がかかるよ 動くのに 小さな観客が地べたから松葉杖を頼りに立ち上がった 少年はちゃんとついて来ているか 時々後ろを振り返りながら歩いた 松葉杖だと歩幅を稼げるらしく 遅れながらも ちゃんとついて来れてる様だった やがて芝生付きの広場を庭に構えたテラスハウスにたどり着いた アラン 約束した時間にまた遅れているわよ 母親らしき人が 戸口の近くに佇んでいた なおも言い募ろうとした母親の目にも止まったらしい ハロー か細い声が挨拶する まぁ 可愛らしいお客様 お友達なの うん まぁ ウチへ連れて来たのは初めてだけど 良いかな 上目遣いで少年は母親に尋ねた お時間がお時間だけど まぁ ショコラ一杯くらいはご馳走しないとね いい メッシー か細い声がお礼を言った アランと呼ばれた少年 は目立たぬ様にそっとガッツポーズをした リビングに通された2人に やがてショコラが振る舞われた 順番が違っちゃったけど お名前は アタシの名前はジャッキーね と母親が名乗った フランクか細い声も名乗る アランがビクリとした まぁ 賢そうなお名前ね 整った綺麗な顔立ちをしてたその小さなお客様は男の子だったのだ ジャッキーもアランも その事にまず驚いたのだろうが すぐに態勢を整えた 当たり障りの無い会話が続いた後 まもなくフランクが2人に辞意を告げた ご馳走様でした メッシー アラン自宅まで送ってあげなさい 今日は特別に遅くなっても構いません 今度はもう少し早い時間にね アランがまた目立たぬ様に小さなガッツポーズをする 2人は連れだって外に出た フランクが自宅があると言ってた地番まで来たが 何故か フランクは通り過ぎていく 慌てて ここではとアランが声を掛けると 前はね 今は違う やがて金網フェンスがコチラ側の道路とアチラ側の道路とを分け隔てている町外れマデ来た この先 コチラ側は滑走路しかない フランクは金網フェンスの下が破れているところまで来ると 此処と言った 金網フェンスを潜って アチラ側に移動するらしい ここまでで良いよ さようならアディオス いつもココから出入りするのか ううん でもココからの方が近いから まだ戸惑っているアランを尻目にフランクはアチラ側へと去っていった
②昼休み 新聞配達で貯めた僅かばかりの小遣い銭を握りしめたアランが 震旦カタイレストランのスタンドで 弁当に有り付こうと 行列を作っていたら バッタリと松葉杖の少年が歩いて来るのに出会った オラ か細い声がいったので アホイ と返事を返す お昼ご飯なの あぁ お前はお昼は フランクは首を振った アランはため息をつくと ちょっと待ってろ スタンドで注文した弁当を受け取ってフランクの元に近づいた 一緒に食べよう 道路を渡り 例のローラーボード場にやって来た ボード場の一角に座り込む チョップスティックはしを特別に2つ貰ってきた 弁当は1人分しかないけど 仕方ない 喰おうぜ メッシー か細い声がお礼を言う アランが器用にはしを扱うのを見て 箸使い 上手だね フランクが褒める ボクは箸が上手く使えない マミーおっかさんによく叱られる アランは箸を持った手を指で開き閉じしてみせる 慣れりゃあ どうって事無い フランクも真似て指を動かそうとしたが 上手くいかない なれない手つきで弁当をつまむ 結局3分の2をアランが残りをフランクが平らげた メッシー 良いって事よ 今日はボードは 授業の合間を抜けてきた ボードは放課後 ウチへ帰ってからだな やるとしたら でもその時の気分次第だな 今日は やらないかもしれない やらないの ちょっとガッカリした響きがあった ソレをなんとなく感じとったアランが ボード以外も遊び道具はある 放課後またこの場所で会おう 放課後アランが戻って来ると 例の如くちょこんと座っている オラ お前そのカッコで足が痛くならないのか その痺れるというか ううん ちょっとだけ このカッコがボクにとって一番楽なんだ そう…なのか アランは呆れるとも感心するともとれる態で首を振った アランがポケットから取り出してみせたのはベーゴマだった 3つ4つとあった どれでも好きなの選べ やった事ある フランクが俄然乗り気になった様子を見て アランはほっとした 座ったままでも良いぜ うん でも 立ってやりたい どうぞ 自分の好きな様にしな ひとしきり興じた後 このベーゴマ ウチにはもっとたくさんあるぜ オレの戦利品さ ソッチでやるか ううん コレで充分 フランクが首を振る 夕刻チャイムが鳴るタイミングで別れた 今日はちゃんとゲートから出て行くらしい ゲートまで見送ろうかと思ったが 出る時は入る時と違って 事改めてチェックする事はない 案の定フランクは一人で大丈夫だと請け負った
③小春日和のその日は運動会だった 中高は一校 エレメンタリースクールは東西に一校ずつあり エレメンタリーの運動会は東西で合同で執り行う決まりだった 去年はウェストサイドへはるばる遠征して行われたので 今年はイーストサイドで執り行われる予定で ウェストサイドから 徒歩やらバスやらで 続々と集まりつつあった そんな最中 背後にふと視線を感じて 振り返ると フランクが例の如く テクテクと通り過ぎて行くところだった フランクの行手にはホスピタルがあった 付属の食堂もあり この間のスタンドよりは シッカリとした食事ができる その分お値段が張るが アランは声を掛けそびれてしまった そう言えば フランクは学校をどうしたのだろう 一度気になりだすと 妙に気になってしまう 外の学校へ行っているのだろうか 少数だが そういう連中も居ないわけではない 言わば家の方針というヤツで 敢えてもう少し レベルアップした学校へ行きたがる面々もいるには居た しかしなぁ フランクには当てはまりそうもない 謎だった 人のプライバシーをあまり根掘り葉掘り聞く事は ジャッキーから止められているものの ジャッキーだって気にしているはずだった 現にひょっとして来るかも という事でお昼の弁当を少し多めに運んできていたからだ 結局 他の面々の腹に収まってしまったが
⑫おいお前 もう来るなよ アランの一家は本国に帰っていったし 新しい司令官からのお達しでな ベースキャンプへの出入りが厳しくなった 此処らへんの金網や塀の穴が近々補修され塞がれる事になった 自転車に跨った一団の少年達が話した後 立ち去っていった 一人残されたフランクはつぶやいた でもねボクはいつの日かまたアランに会える様な気がするんだ だからその日まで なんとかしがみついて生き抜いていってみせるよ また会おうな アラン フランクはベースキャンプに向けて挙手礼をした