戦後と功労賞
いつも読んで下さっている皆様方、こんばんは!
執筆終わりましたのでUPいたします。
それではお楽しみください!
バドラック様の部隊が到着すると報告に向かう。
馬に乗っているバドラックさんを見つけたので皆で駆け寄る。
ジャスティンが馬から下馬し跪くと皆も倣い下馬し跪く。
皆が揃っているのを確認するとジャスティンが報告する。
「敵、上級悪魔ミアスマ及び敵の本体を殲滅させました。閣下、これで戦争は終結したでしょう。」
そう言われたバドラック様は、喜び大声で宣言する。
「勇者達のおかげで戦争は終わった!我々の勝利だ!皆の者ご苦労であった!」
バドラック様がそう言うと歓声が上がる。
「「「オーガの牙、万歳!」」」
ザッ!ザッ!ザッ!
「「「オーガの牙、万歳!!」」」
ザッ!ザッ!ザッ!
大合唱と足踏みが俺達を包む。
その中でバドラック様が大声でバートさんを呼んでいる。
「バート!」
「はい閣下!」
「何人かでこの遺跡の調査をせよ。罠には十分に注意するんだぞ?」
「かしこまりました。」
「無理はするなよ?」
「分かりました、閣下。」
そう言うとバートさんが何人かで調査のチームを作っている様だった。
ベルゼバブ関連の遺跡だ。
このまま残すには危ないと思ったのだろう。
こういう押さえるべき所を押さえておけるのはさすがのバドラック様だよね。
「これで・・・これで終わったんですね。閣下。」
シュトライゼさんがそう言って涙を流している。
「ああ、だが我らだけではこの戦争を終わらせる事は出来なかった。」
「左様ですね。オーガの牙、彼らには感謝しかございません。」
「そうだな。若い芽が育っているのを見るのは良い物だな。シュトライゼ・・・撤退の指揮はまかせる。」
バドラック様は感慨深そうに兵達や戦場を見ている。
「かしこまりました。閣下。」
そしてシュトライゼさんの指揮の元、陣へと凱旋するのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
伝令兵から連絡を受けた私は安堵していた。
そう、公国軍は勝ったのだ!
「兵達を労いなさい!それと食料を出しなさい!出し惜しみはしない様に!それとバドラックとオーガの牙を早急に呼びなさい!」
「姉様、・・・終わったのね。」
「ええ、リーゼ。公国の勝利よ!」
リーゼが泣いている。
私の眼からも涙が溢れる。
そう、勝ったのよ!
色々あったけれど勝ったの!
その苦難の日々を思い出す。
苦労が報われた瞬間だった。
祝勝会を開いても今日ぐらいは良いだろう。
ああ、早く愛しのアーサー様と話をしたい。
触れて、抱きしめてほしい。
そしてその口から報告を、武勇伝を聞きたい。
そう思っている。
「勇者達を迎え入れる準備をなさい!早速ですが王都に帰るのは明日と致します。凱旋式の準備をする様に民に指示を出しなさい!」
「「かしこまりました!」」
二人の伝令兵が駆け出して行く。
私は考える。
ふふ、これでアーサー様達オーガの牙は英雄ね。
見事にその役目を果たしてくれた。
アーサー様を私の婿にするのに丁度良い功績だろう。
何せ救国の英雄なのだから。
「ああ、愛しのアーサー様。早くお会いしたいですわ。」
帰ったら凱旋式をしてすぐに戴冠式を行い、婚約を発表する。
楽しい未来を想像する。
「ああ、本当に楽しみだわ。」
「はい、姉様。」
政務は頭の良いリーゼに任せて、私はアーサー様との蜜月を・・・。
本当に楽しみでしょうがない。
想像するだけで濡れて来る。
「ああ、私の勇者様。早くお帰りになって下さいね。」
私はそう言って夫になるべき人の帰りを待つのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
突然、ゾっとした。
何か嫌な予感がした。
辺りをキョロキョロと見回していると気付いたジャスティンが言って来る。
「どうしたんだい?アーサー?」
【いや、なんか寒気がして、気のせいですかね?】
「まさか今頃、風邪か?」
ダンが言って来たので返しておいた。
【いえ、多分誰かが噂しているんでしょう。】
「それはクシャミじゃないかな~?」
「アーサー様。看病なら私が!」
皆の表情が明るい。
そう、やっと戦争が終わったのだ。
皆の苦労も多かっただろう。
これで俺も安心してルイス達の所へ戻れるね。
【ルイス。】
愛しい人の名前を呟いてみた。
風に乗って王国まで届かないかな?
するとダンの腹が「グ~。」っと鳴る。
折角なセンチな雰囲気だったのに台無しだ。
でも、そう言えば腹が減ったな。
太陽を見るとそろそろ沈みそうだった。
帰ったらまずは御飯だね。
そう思っていると黄色い服を着た伝令さんがこちらにやって来た。
「バドラック閣下、およびオーガの牙の皆様におかれましては、早急にアーゼ様のいらっしゃる大天幕に来るようにとの事です。」
「分かった、さがって下さい。」
「ははっ!」
バドラック様が対応すると伝令さんが走り去って行く。
「オーガの牙の皆、アーゼ様がお呼びだ。お褒めの言葉を頂けると思うぞ。報酬もあるだろうからな、期待すると良い。」
そう言って俺達を見てバドラック様はニヤリと笑っている。
【ああ、これがゾッとした理由かもしれないですね。】
さてとどうやってサボるかな?
「アーサー、これは栄誉な事だからね。逃げたりしない様にね?」
ジャスティンに釘を刺される。
っく、バレていたか。
さすがジャスティン。
俺の行動を良く分かっていらっしゃる。
【い、嫌だなー。サボる訳無いじゃないですか。】
「アーサーよ。相棒は逃げるなと言ったんだ。嘘は良くないぜ?」
ダンがそう言って来るが無視だ。
「君の言った通り救国の英雄になったんさ~?喜ばないとね~。」
「そうですわ!これでまた大きくなりましたわね!」
っく逃げ道を塞がれる前に何とか逃げなければ。
「はっはっは、皆の者。今宵は酒を飲み明かそう。」
バドラック様が言って来るとアンナが食いつく。
「お酒があるの~?」
「「「アンナは駄目ですからね!」」」
「そんなぁ~。久しぶりだし少しなら良いでしょう~?」
「「「絶対にダメです!」」」
アンナが涙を流している。
うん、大事になるからやめようねアンナ。
話をしていると陣地に着いた。
俺は逃げる隙を探しているのだが右にジャスティン左にダンがいて隙が無い。
質問をして隙が出来ないだろうかと思い試してみる。
【ジャスティンさん、正式な式典では無いので鎧は着て行くんですよね?】
「そうだね。僕達は鎧だし、戦勝の言葉を頂けるのならその方が良いでしょうね。」
「ヘルメットは脱げるんだよな?」
「大丈夫だと思うんさ~。」
「逆に被っていた方が失礼ですわよ?」
だめだ普通過ぎて隙にはならなかった。
質問が悪かったか?
いつの間にか後ろにアンナとラフィアが移動して来ていた。
だめだ、完全に囲まれた。
皆がそう言うので正体を知られたくない俺はフードをそのままにしてアーゼ様達のいるであろう大天幕へ向かう。
「救国の英雄か・・・今回の事でギルドのランクも上がると良いのですがね。」
ジャスティンがそう言っている。
「大丈夫ですわよ、ジャスティン。中級悪魔をあれだけ倒したのですから確実に上がりますわよ!」
と、それを聞いたラフィアが安心して下さいとばかりにそう言う。
「そうだと良いですね。」
そう言ってジャスティンが微笑んでいる。
相変わらず、イケメンだなと思っているとアーゼ様達がいる大天幕へ着く。
そうだよ、ジャスティンに丸投げして逃げよう。
考えながら歩いているとジャスティン達が跪いたので慌てて俺も跪く。
しまった!
逃げれなかった!
周りには貴族様方がいる。
大天幕にはこれでもかと言う程の松明が煌々と輝いていた。
そんな中、五十名程の騎士達も集まって来た。
ザワザワ・・・
天幕の中がざわついていたが声の大きい近衛兵が宣言する。
「皆様、アーゼ姫殿下、リーゼ姫殿下の御入来です。」
その声を聴くと一斉に静かになる。
そんな中、ファンファーレでも鳴りそうな雰囲気で現れるアーゼ様とリーゼ様。
着飾っていない。
いつもの恰好だった。
貴族様方が礼をすると一斉に跪く。
大きな仮の玉座にアーゼ様が座るとその隣にリーゼ様が立つ。
準備が整うとアーゼ様が立ち上がり話始める。
「公国で暗躍していた悪魔族は勇者達の手によって討伐されました。そこで簡易ですが功労賞の式典を設けますわ。」
ザワザワ・・・
「まずは、バドラック大将軍!前に。」
「ははっ!」
アーゼ様の前進んで行き、跪くとリーゼ様が目録を読見上げて行く。
「こたびの勝利に大きく貢献した事を表します。報酬として金貨100枚とフェアゲッセン家よりエーデルハイドの領地、更に功績を大と認め、公国「元帥」の位を授けます。」
「フェアゲッセン家の領地と言えば一等地ですぞ?」
「バドラックめ、あのような上等な領地が手に入るとは・・・。」
「ふん、元平民が付け上がりおって。」
貴族様方の不満の声が上がるがバドラック様は気にしていないようだ。
しかも平民から元帥閣下か。
一代で築き上げたのであれば、これは凄い事なのでは無いのだろうか?
「謹んでお受けいたします!これからもアーゼ様とリーゼ様の御期待に応える働きを致しますぞ!」
そう言って文官さん達から金貨の入っているであろう袋を受け取る。
金貨で100枚、すごく重そうだ。
大丈夫だろうか?
バドラック様の代わりにバートさんとシュトライゼさんが重そうに運んで行く。
やはり重かったようだ。
「次は、その貢献大である冒険者オーガの牙より、代表して戦士ジャスティン!」
「ははっ!」
ジャスティンが同じく、前に出て跪き頭を下げる。
「このたびの悪魔族討滅の貢献は誠に大であります。よって領地の代わりにそれぞれの者に金貨60枚を与えるものとする。」
「お心遣いありがたく!」
ジャスティンが答えると貴族様達から一斉に声が上がる。
「アーゼ様!冒険者如きに金貨300枚等とは与えすぎです!」
「その通り、付け上がりますぞ!」
「散って行った兵士の為にもご再考を!」
「左様でございますな。」
すかさず貴族様方から声が上がる。
ジャスティンは動じていない様だった。
言いたい放題だね。
アンタ達は何もしなかっただろうに。
貴方がたの為に領地は遠慮したのだから、こちらの事も考えてほしいね。
そう思っていると物凄い怒気を含んだアーゼ様の言葉が貴族達に突き刺さる。
「お黙りなさい!この方々のように戦場にも出ずにのうのうしていた者達が!公国貴族として恥を知りなさい!」
アーゼ様はそう言って貴族達を黙らせる。
さすがアーゼ様、分かっていらっしゃる。
そうすると袋を持った文官さん達が重そうに金貨の袋を運んでくる。
落ち着いた所でリーゼ様が続ける。
「各人に六十枚ずつ用意を致しましたのでお受け取り下さい。オーガの牙に感謝を!」
「「「感謝を!」」」
共に戦場を駆け回っていた騎士達から声が上がる。
その歓声の後は拍手が天幕を包んだ。
「ありがたき幸せ。」
ジャスティンが代表してそう言う。
あの、姫様方?
お金は無いって言って無かったですか?
国庫のお金は大丈夫なんだろうね?
今後の復興資金は・・・?
あまりにもの御大尽っぷりに驚いている。
俺が金貨を回収しているとアーゼ様がウインクしてきた。
素知らぬ顔で元の位置に戻る。
「それでは続けます。」
リーゼ様が目録を読み上げる。
「騎士シュトライゼ。貴方はバドラックの補佐として・・・」
それはこの時間の限りある中で一般の騎士までの活躍をも記していた。
そうして次々と功労が言い渡されて行く。
一区切りつくとリーゼ様が最後だろう功績者達を述べて行く。
「なお、参戦した一般兵には褒美として金貨十枚と家族も含め税を三年間無償と致します。これは散って行った者達も対象とします。」
散って行った人達の事も考えているとは、さすがの対応だ。
これで最初に会った兵士の人も生きていれば万々歳なのだがね。
リーゼ様がそう言うと巻物をしまう。
そうすると貴族達から不満の声が上がる。
「アーゼ様、我らには何も無いのでございますか!?」
代表して言って来た貴族にアーゼ様が言う。
「・・・貴族とは国土や領民を率先して守る者達では無かったのかしらね?どうかしらダスカロス侯爵?今回も貴方がたはその義務を果たさなかったのよ?」
「しかし我らにも領地の防衛と言う責務がございますぞ?そのお役目はしっかりと務めておりますが?」
「お黙りなさい!国土が危機な時に領地の防衛!?毎度の事ながら戦争に兵も出さない。更に身勝手な言い訳!貴族として恥ずかしくないのかしら?」
「そ・・・それは!?」
「良いですか?侯爵。いえ、此処にいる兵を出さなかった貴族達よ。私は国の危機に一兵も出さずのうのうとしていた貴方がたを許す事は出来ません。近衛兵!」
「「「ははっ!」」」
100人以上の兵士に周りを囲まれる。
「この者達を速やかに捕え、城の地下牢に入れなさい!・・・さっさと捕縛しなさい!」
「アーゼ様!?国の重鎮である我らにその様」
アーゼ様が途中で言葉をさえぎり立ち上がって言う。
「お黙りなさい!座視していた貴方がたは公国貴族には相応しくありません。貴方がたには責任を取って頂きますわ!」
「アーゼ様!何の責任でございますか!?」
「そのような事も分からないのですか?もはや無能を通り越しておりますわね。領地も財産も取り上げますわよ?覚悟なさって下さいまし!」
「こ、このような事、公王様がお許しになりませんぞ!」
「その公王は今後を憂いて自害なさいましたわ!」
「馬鹿な!専横するおつもりか!そんな事は許されませんぞ!」
「お黙りなさい!貴方がたの様な者が今回のような戦争に拍車をかけたと思わないのですか!?」
「ぐぬう、許されんぞ!小娘!」
「もう聞く耳も無いわ!さっさと捕縛し連れて行きなさい!」
「「「ははっ!」」」
貴族様達が捕縛され連れていかれる。
それを見ていた共に戦っていた騎士達から拍手が起こる。
するとアーゼ様が周りを見渡して言って来る。
「これで少しは綺麗になるかしらね?バドラック、元帥としての初仕事よ。軍務相と兵の綱紀を改めよ!そして、これから起こるであろう反乱の鎮圧を!」
「かしこまりました!」
「相の各人事は推薦を許します。良きに計らいなさい。」
アーゼ様はこれ以上言う事は無いという顔でリーゼ様を見る。
リーゼ様が閉める。
「これをもって論功行賞を終了と致します。」
そう言うと大天幕をアーゼ様と一緒に出て行く。
天幕の中は拍手喝采が沸き起こっていた。
騎士達の中から当然の結果だと言うような声が聞こえて来る。
バドラック様達もこれから大変だろう。
内紛の事となると残念ながら俺達は手伝えないけれどね。
天幕を出て行くアーゼ様がこちらにウインクをしたのは・・・気のせいだろう。
これからこの国は大変だろうな。
何せほとんどの貴族を捕縛したのだから。
どの様な処分かは分からないけれど領地の没収だとか言っていたしな。
国土のほとんどは国の直轄地となるのだろうか?
運営は大丈夫なのかな?
心配はするが手は出さないでおこう。
そう考えをまとめると天幕を出て行く。
バドラック様と別れ天幕を出てしばらく夜の道を歩いているとジャスティンが言って来る。
「アーゼ様は強くなりましたね。・・・それに、今後この国はどうなるのでしょうか。」
【あの二人の事です。まともにはなるとは思いますが、苦労しますよね。】
俺がそう言うと皆が続く。
「お姫さん達の事だ、人事も見直しているだろうよ。」
「そうだね~。あーっしとしては予定よりお金が手に入ったので万々歳さ~。」
「もう、アンナったら、ですが近隣諸国から攻められないかが心配ですわね。」
「その事ならばもう新大臣を遣わせておりますわよ?」
此処にはいないはずのいきなりの声に驚く。
「「「アーゼ様!?」」」
俺達は慌てて跪く。
まさか此処まで追いかけて来るとは思わなかった。
「アーサー様、皆様方。今回の助力は大変ありがたく思っておりますわ。」
続いてリーゼ様が言って来る。
「外交については新大臣に任せれば問題は無いかと。それに悪魔族の軍勢を破った事で公国軍も勢いがあり、バドラックを中心として軍事面も良い方向に改善されるでしょう。」
さすがにバドラック様には絶大な信頼を置いている様だ。
決戦の総大将を任される程なのだから当然か。
安心していた俺にアーゼ様が言って来る。
「アーサー様?私、頑張りましたの。・・・御褒美を頂きたいですわ?」
【アーゼ様、私に出来る事はございませんよ?】
「いいえ、貴方にしかできない事がありますわ!」
嫌な予感しかしない。
「私とリーゼの婿になって下さいませ!」
【いやー、そんな事は出来かねますよ?姫様方。】
「どうしてですの?まさか私達の事が嫌いになられたのですか?」
「姉様と私では満足出来ないと言うのかしらね?」
リーゼ様の口調が不通に戻っている。
仕事モードだとあんな感じなんだね。
待て待て、それに好きとか嫌いじゃなくてですね。
流されたら公族一直線じゃないですかね!?
俺はそんな事は望んでいない。
しかも二人の趣味には全く興味がない。
苦し紛れに言ってみる。
【姫様方にもふさわしい男性が現れますよ。】
「「今!目の前に!!いらっしゃいますわ!!!」」
二人が、ずずいっと近づきながら言って来る。
凄い勢いだ!
どうしてこうなった!?
ジャスティン、ダン、ニヤニヤしない。
後で覚えてろよ?
俺が困っているとラフィアが進み出る。
「お姫様方?アーサー様はふくよかな胸がお好きなのよ!ペッタンコは黙っていらっしゃいな!」
「また貴女なのね?アーサー様に聞くと良いわ!貴方の駄肉と私の綺麗な胸のどちらが良いかをね!」
自信満々にアーゼ様が言って来る。
【俺はふくよかな胸が好きですよ?】
正直に言うとアーゼ様とリーゼ様が足に縋り付いて泣きながら言って来る。
「「嘘よっ!嫌よ!捨てないで下さいまし!!アーサー様!!!」」
そう言って二人して泣きじゃくって来る。
皆はドン引きだ。
このままだと俺が悪者になる流れが見える。
そうだ。
この際、条件を出しておこう!
「ではこう致しましょうアーゼ様、リーゼ様。」
「どうしたら結婚してくださいますの?貴方様にはすべてを差し上げますわ!」
「そうよ!嫌いにならないでよ!」
【そう言う事ではないのですよ、御二人共。】
「「では、どうすれば好きになって頂けますの?」」
【アーゼ様とリーゼ様は大変魅力的な方だと思います。】
「「それでは!」」
【しかし、私には夢があります。】
「「何ですの?」」
【田舎でのんびりと暮らす事でございますよ。】
「それならば領地を差し上げますわ!それでよろしくて?」
「田舎の領地なら選び放題ですわ!そこに私達も別荘を建てれば!」
【御二人共、もう少し時間が必要ですね。まずは国と民の為にそのお力をお使い下さい。】
「「どうしても駄目なのかしら?」」
怪しく微笑んでいる。
この顔は悪だくみを考えている顔だ。
【無理やりに囲い込むなら実力で去りますよ?】
「「嫌よ!捨てないで下さいませ!!アーサー様!!!」」
【貴女様方が二十歳になっても俺の事が好きでしたら迎えに来ますよ。】
「「本当ですの?」」
【アーゼ様とリーゼ様は十七歳でございましょう?三年経っても俺の事を好きでしたら考えますよ。】
「「本当でございますね!」」
【嘘ではございませんよ。】
「ではその時はリーゼと共に娶って下さいましね。」
「そうですわ!姉様と共に娶って頂戴よね!」
【分かりました。御二人の事を好きになる様に俺も努力しますね。】
もちろんその頃に趣味が変わって無かったら勘弁してもらおう。
それに、政略結婚とかがあるだろうからね。
公族に自由恋愛は出来ないだろう。
その頃には別の好きな人が出来ている・・・ここはそう思っておこう。
【それでは明日の凱旋式を楽しみにしておきますね。】
そう言ってアーゼ様とリーゼ様のおでこにキスをする。
「ああ、アーサー様。絶対に逃がしませんわよ。ね、リーゼ!」
「ええ、絶対に逃しませんわ。姉様!」
紅い目と金色の目が俺の姿を捕えて離さなかった。
・・・三年と言う時間で誰かを好きになってくれる事を祈ろう。
そう思うと振り返り皆と共に二人の前から去って行く。
ジャスティンとダンがニヤニヤしている。
【そう言えば二人共俺が困っているのを見てニヤニヤしていましたよね?】
「そ、そんな事は無いですよ?そうですよね、相棒?」
「ぶははは!アーサーのあの顔!笑いが止まらねえ!」
「ダン、そこで笑っては・・・。」
【ジャスティンさんとダンさんの晩御飯は考えさせて頂きましょう。】
「それは厳しいですね・・・何とかなりませんか?」
「そうだぜ、アーサー!自業自得だろう!」
【何ともなりません!見捨てた事は忘れませんからね!】
「っく、ダン。諦めるしかないようですよ?」
「そんな、腹が減ってるんだから、お預けは無しだぜ!?黙ってないで二人からも何とか言ってやってくれよ!」
ダンがそう言うと黙っていたアンナとラフィアに声を掛ける。
「あ、あーっしらを巻き込むんじゃないんさ~。」
「そ、そうですわ!たまにはよろしいのではなくって?」
「そ、そんな!アーサー様よお、反省してるからさ!この通りだ!」
【今更ごめんなさいをしても遅いですよ、ダンさん。ジャスティンさんを見習って下さいね!】
「今日は活躍したんだから、干し肉は勘弁してくれー!」
ダンの絶叫が夜の陣内にこだました。
しばらくするとアーゼ様とリーゼ様の乗った馬車は明日の凱旋式の準備の為に護衛と共に城へ戻って行った。
此処まで読んで下さり、ありがとうございます!
まずはいつものから!
評価、イイネ、ブックマーク等々。
誠にありがとうございます!
大変励みになっておりますぅ!
戦争がやっと終わりました。
一部完結へ向けてひた走っております。
一部の終了の構成も段々出来上がってまいりました。
これからもどうかご期待ください。
それでは 次話 ひと悶着ありまして(仮 でお会いしましょう。
皆様方、お疲れ様です!
お休みなさいませ!




