その後のルイス達
いつも読んで下さってありがとうございます!
遅くなりましたが執筆終わりました。
お楽しみください!
今日も朝が来た。
・・・どんなに止めてもあの人は行ってしまった。
ここの所、毎日の事だが涙が出て来る。
私を弱くしたあの人・・・。
ああ、こんなにも会いたい。
そう、あの人に会いたいの。
後悔している。
今更気づく。
もっと強く止めていればと・・・。
「ルイス姉・・・今日はどうするの・・・?」
ベスが聞いてくる。
ごめんなさい。
でも、どうでも良いの。
あの人がいないのだから秘薬など集めても無駄だろう。
そう、どうでも良いの。
ベッドから出ない日々が続く。
あの人は元気だろうか?
またそんな事を考えて涙する。
あの人の温もりを感じたい。
また私の胸で包んで癒してあげたい。
そんな事を考えている。
私は捨てられたのだろうか?
違う!
あの人はそんな事はしない。
そんな事を考えていると突然毛布が捲られた。
「もう良いでしょう?疲れたのよ。」
そう言うと胸ぐらを掴まれ引き起こされる。
リズだった。
どうやら怒っている様だ。
「ルイス姉!お兄さんに後を任されたのでしょう!もう、いい加減に立ちなさい!」
「リズ、ここにあの人はいないの。もう・・・どうでも良いの。」
パシーン!
頬を張られる。
「しっかりしなさいルイス!お兄さんはルイスを選んだの!私じゃないのよ!」
「・・・。」
選ばれた・・・?
何の事?
「いい?ルイスは選ばれたの!それに帰って来てもそんな酷い顔で迎える気なの!?」
「帰って・・・来てくれるの・・・?」
涙が出る。
「帰って来るに決まってるじゃない!どうして信じてあげられないの!?」
「だって・・・。」
涙が止まらない。
「あの人は約束をしてくれなかったの。必ずと言ってくれなかったのよ・・・。」
「それがどうしたのよ!」
「・・・え?」
「それがどうしたのって聞いたのよルイス!」
「それがって何?」
「ルイスは選ばれた!悔しいけれどね!私達は選ばれなかったのよ!」
「選ばれたって・・・何に?」
「お兄さんのパートナーによ!」
「・・・え!?」
「分かるでしょうルイス!お兄さんがいつ帰って来ても良い様に、安心して戻ってくる場所を作れるのはルイスだけなのよ!」
「私だけ・・・?」
「そう、だからいつもの・・・ルイス姉に・・・戻ってよ!」
リズが泣いている。
扉の方を見ると開けっ放しになっていてマオとアリスが泣いている。
何をやっているのかしらね、私は・・・。
「・・・そうよね。帰って来てくれるわよね?」
「そうよ!だから、だからいつものルイス姉に戻ってよ!」
リズどころかベスやマオ、アリスまで泣いている。
皆を泣かせちゃったわね。
『姉』失格だわ。
自分の両頬を叩く。
「ごめんね、皆。・・・マオ今は何時かしら?」
「九時三十分ですよ。ルイス姉。」
「じゃあ、皆、支度をして来て頂戴。秘薬を取りに行くわよ。」
「「「はい!」」」
元気な声が帰って来た。
それぞれが部屋に戻って行く。
するとベスが近づいて来た。
「ルイス姉、酷い顔よ・・・?ヘファさんに嫌われちゃうよ・・・?」
「そうね。でもね、泣かせた責任は取ってもらわないといけないわよね。」
「ルイス姉だけじゃ無いです・・・私達も泣かせたんですから・・・。」
「そうね、帰って来たらいっぱい文句を言ってやりましょう!・・・ついでにいっぱいの秘薬で驚かせましょうね。」
「それでこそルイス姉なの・・・。」
抱き着いて来たベスの頭を撫でる。
皆が成長している中で私だけ停滞してしまっていた。
恥ずかしい姉だ。
リズはいつの間にかとっても成長していた。
いつまでも背中を追いかけていた子供じゃないのね・・・。
全てを諦めていた自分が恥ずかしい。
「そう、あの人が戻って来るまで待ちましょうね。」
そう言うと顔を洗いに井戸へ向かう。
帰って来たらあの人に言いたい事が沢山ある。
それまでは信じてあげるわ・・・愛しい貴方。
でもね、あんな事をしたのだから。
「帰ってきたら酷いんだからね。」
つぶやくと少しは気が晴れた。
顔を洗い少しでも目の腫れを引かせようとする。
タオルで拭いながら空を見上げると・・・とても青かった。
この空のどこかで貴方も戦っているのね。
そう思うといつものテーブルに向かうのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
食事を終えると女将さんが言って来る。
「ルイスちゃん、もう良いのかい?」
「大丈夫です。お気遣いありがとうございます、女将さん。」
「小僧め。泣かせないと言っていたのに・・・帰ってきたら皿洗いの刑だね!」
「くすっ、こき使ってやって下さいね。」
そう言って微笑むと女将さんは安心したのかそう言ってくれた。
「ルイスちゃんには笑顔が似合うよ。」
その言葉を残し厨房へと戻って行った。
・・・笑顔だったんだ、私。
あの人もこの顔が好きだったものね。
そう思うとやる気が出て来る。
部屋に戻り支度をする。
シャツのボタンがきつくなって来た。
あの人は大きな方が好きだと言ってくれた。
この胸の様にもっと色々と成長してあの人を驚かせるの。
そして窓に行き開けると太陽に向かう。
遠い所にいるあの人の事を『アリステリア様』に祈る。
「『アリステリア様』無事にあの人が帰って来て下さいます様に、御見守り下さい。」
戦争と言っても人同士ではないのが唯一の救いだろう。
どうか気を付けてね。
あの人の笑顔を思い出す。
すると・・・。
「ルイス。」
え!?
あの人に呼ばれた気がした。
後ろを振り返る。
突然の事だったのでベスが驚いている。
「ルイス姉、どうしたの・・・?」
気のせいだったのだろうか?
・・・何かの知らせではないでしょうね。
「ううん、何でもないのよ。そう、何でもないの・・・。」
「大丈夫・・・?」
「ええ、今日から頑張りましょうね。」
「うん・・・。」
支度を終えると皆の待っている一階のいつものテーブルに向かう為に階段を降りて行く。
テーブルに着くと皆が揃っていた。
リズ、ベス、マオ、アリス。
私の愛おしい妹達。
「皆、心配かけたわね。今日からいつも通りだから安心して!あの人がいつ帰って来ても良い様に秘薬を集めるわよ!」
そうするとリズが近寄って来る。
「ルイス姉、さっきは・・・ぐすっ・・・ごめんなさい。」
頭を下げて来たので慌てて言う。
「私の可愛い、そして頼りにしているリズベット。謝らないで頂戴。不甲斐ない私を立ち直らせてくれてありがとう。」
「ルイス姉・・・。」
リズを抱きしめ頭を撫でる。
こんなにも心配させてしまった。
「ほら、泣かないの!あの人も言っていたでしょう?『君はその笑顔で皆を支えて』って。だからこれからも私がダメな所を支えてね。」
そう言って更に抱き寄せる。
「ルイス姉、良かった・・・よかった。」
「リズ、あの人がいつ帰って来ても大丈夫なように私達はいつものようにしておくの、今日はいつも通りに、秘薬を集めましょうね。」
「うん、分かったわ!」
うん、いつものリズに戻った様ね。
「ベス!マオ!アリス!心配かけてごめんなさいね。私はもう大丈夫よ。」
そう言って抱きしめ、頭を撫でて行く。
「ルイス姉。もう大丈夫なの?」
マオが心配そうに言って来る。
「もう大丈夫よ。心配かけてごめんなさいね。」
「ヘファさんが帰ってきたら『伝説の左フック』を炸裂させるです!」
・・・何か不穏な言葉が出たわ。
「し、死なない程度にしてあげてね?じゃないとまた私が泣いちゃうわよ?」
「分かりましたー!ルイス姉の為に手加減するです!」
「よろしくね、マオ。」
アリスに向かって言う。
「アリス、貴方が連れてきてくれた人は私達にとってかけがえのない人になってくれているわ。貴方には感謝してもしきれないわね。」
「ヘファさんは最強なのです!だから絶対に帰って来るのです!」
「そうね、必ず帰って来てくれるわよね。」
「そうなのです!ルイスちゃんをいじめた責任を取ってもらうのです!」
「その通りね。きちんと責任をとってもらいましょうね。」
「はいなのですー!」
アリスの元気には施設にいた頃から救われている。
皆の準備は大丈夫なようだ。
さあ、行きましょうか!
「じゃあ、秘薬を集めに行くわよ!」
「「「はーい!」」」
皆から良い返事が帰って来る。
外に出ようとすると忘れていた事があったのを思い出す。
「女将さん!行って来ます!」
「稼いできな!」
待ち構えていた女将さんにそう言うと送り出してくれる。
女将さん、いつもありがとう。
今日は何処から回りましょうか?
あれから三日経ってしまっていたらしいので何処からでも大丈夫よね?
「じゃあ、北門から行くわよー!」
「「「はーい!」」」
「私達はいつも通りよ。貴方も頑張って、そして無事に戻ってきて頂戴ね。」
お日様はもうすぐ昼になる所だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
昼御飯に肉串を食べ終わると北門の外で採取を始める。
「ルイス姉、このキノコってもしかして!」
リズの足元にキノコがあったので鑑定を掛けてみる。
「『夜光キノコ』ね!リズ良く見つけたわね。」
「そうでしょう?もしかしたらと思って!」
「帰りにギルドで買取してもらいましょう。」
「うん!」
リズは嬉しそうにあの人から貰った皮剥ぎナイフでそのキノコを剥ぎ取る。
久しぶりにナナリーさんに会えたらあの人のグチを聞いてもらおう。
そう思っているとマオからも声が掛かる。
「ルイス姉!これは何ですか?」
リズに慎重に採取するように伝えるとマオの所に急ぐ。
「これです。匂いはしないのですが何かあるのです。」
「蔦?」
「生えてました!」
「とりあえず見て見るわね。鑑定。」
「どうですか?」
「『寄生植物の蔦』ですって。摘んで行きましょう。」
「はい!」
「良いマオ。慎重にね。」
「了解であります!」
マオはあの人から貰った皮剥ぎナイフで慎重に切り取った。
ふう、どうやら希少素材であるらしい。
今日は運が良いわね。
秘薬の採取もそろそろ大丈夫でしょうね。
そう思っていると十五時の鐘が鳴る。
「皆ー、戻るわよー!」
声を掛けると皆が集まって来る。
全員いる事を確認出来たので戻ろうとすると突然黒い影が現れた。
突然のその異形に驚く。
「ギイィ!ギャッハ!!」
「『モングバット』よ!皆、門へ急いで!」
一斉に走り出す。
アレが悪魔族。
あの人の戦っている相手なのね。
もちろん私は一番後ろだ。
「リズ!マオ!先に行って衛兵さんを呼んで来て!」
「分かったわ!ルイス姉!」
「分かりました!ルイス姉!」
足の速い二人にお願いする。
このままなら追い付かれる事は無いでしょうねと思い前を見る。
ベスがアリスの手を取って走っているのが見えた。
しまった!
ベスに籠を持たせたままだった!
さすがにベスでも秘薬が大量に入った籠とアリスを連れていては早く走れないだろう。
後ろを見るとモングバットが二匹近づいて来る。
「ギキッ!」
蝙蝠の様な翼を持った猿に牙の生えたような悪魔族だ。
追い付かれそうだった。
「こっちよ!」
私はそう言って二対のモングバットの注意を引こうとする。
とりあえず両手を大きく振ってみる。
モングバットはベスとアリスを獲物として認識したのだろう。
私の方には来ない。
「私の方に来なさい!」
そう言ってあの人から貰った採取用のダガーを手にする。
一匹に切りつける。
「クケー!」
「クケケ!」
外してしまった。
変な叫び声が上がる。
その甲斐があって二匹とも私の方へ向かって来る。
ベスとアリスとは反対の方に逃げる。
「ルイス姉・・・!」
「ルイスちゃん!」
二人の声が聞こえるが構わず指示を出す。
「早く門に行きなさい!」
そう言って両手を大きく振る。
「そう、良い子ね!こっちよ!」
そう言って逃げる。
二体とも追いかけて来る。
追い付かれないように走る!
「はぁ、はぁ・・・。」
しばらく全力で走った所でつまずいてしまった。
バランスを崩すが転ぶのはなんとか堪えた。
モングバットが近づいて来る。
こんな事で!
あの人に会えないまま死んでたまる物ですか!
「はぁっ・・・はあ・・・っはあ!」
懸命に逃げる。
追いつかれそう。
助けて、貴方!
追い付かれると思った所で衛兵さんを連れたリズとマオが間に合ってくれた。
モングバットにハルバートの一撃が振り下ろされる。
あっという間だった。
モングバットを二体とも倒した衛兵さんが気遣ってくれた。
「大丈夫かい?北門の方は最近は悪魔族の活動が活発なので気を付けるようにね。」
そう言うと門まで送ってくれた。
「ありがとうございます。助かりました。」
「職務だからね。当然の事をしたまでですよ、お嬢さん方。」
そう言ってくれたので安心していると皆が近寄って来た。
「大丈夫、ルイス姉!?」
「ルイス姉・・・大丈夫?」
「大丈夫ですか!?」
「ルイスちゃん、大丈夫なのですか?」
四人共無事の様だ。
良かったと皆で言い合っていると衛兵さんが話に交じって来る。
「無事で良かったね。ところで採取した秘薬は売るのかい?」
「いえ、材料にするんです。」
「ほう、材料と言うと君はポーションを作れるのかい?」
「いえ、私のパートナーが作れるんです。」
「そうなのかい?」
「今はちょっと遠い所にいるんです。」
「遠い所か・・・そう言えば隣国である公国が悪魔族に攻められているんだって隊長が言ってたな。」
それは今一番欲しい情報ね。
どうにかして聞けないかしら?
「公国の戦況はどうなんですか?」
何も思いつかなかったので素直に聞いてみる。
「今は膠着してるとか言ってたね。」
「そうなんですか?」
「押されていたようなんだけれどオーガの牙と言う冒険者達が加わった事で押し返している様だって会議で言ってたよ。」
良い情報が聞けたわ!
と、言う事はあの人は無事の様ね!
「だけれど本体の黒い悪魔が出て来たらどうなるかな・・・。」
「黒い悪魔ですか?」
「ああ、中級悪魔のバルロンデーモンだね。魔法のかかった武器か魔法じゃないと倒せないらしいんだよ。」
そんな悪魔族のいる所にあの人が!?
皆も黙って聞いている様だ。
「まあ、この国は援軍を断った様だからね。次は我々がやらないといけないのかもしれないね。魔法の武器なんか無いんだけれど・・・これだと、この国もお終いかな?」
「そんな事はありません。だってオーガの牙が、あの人がいるんですから!」
そう言うと衛兵さんが聞いて来る。
「君のパートナーはオーガの牙の人なのかい?」
「そうです!あの人が行っているのなら必ず悪魔の軍勢を倒して帰って来ます!」
「そうなのです!ヘファ、アーサーさんは強いのですよ!」
黙って聞いていたアリスがそう言ってくれる。
「ダンのおじさんも強いから大丈夫なのです!」
アリス、そのダンさんていう人は誰なの?
「そうか、それなら僕達も信じないとね。オーガの牙には頑張ってもらおう。」
良かった今の所あの人達は無事の様だ。
だけれど不安な情報も入って来てしまった。
「バルロンデーモン・・・。」
普通の武器が効かない。
そんな理不尽な事があるのだろうか。
でもあの人は何とかしてしまうのでしょうね。
あの日の朝、こんな事を言っていたのを思い出す。
『そうしないとジャスティン達に魔法の武器を作ってあげられないんだ。』
そう、オーガの牙にはあの人がいるの。
貴女が信じてあげなくてどうするのよ、ルイス!
衛兵さんにお礼を言って商業ギルドへ向かう。
そう、あの人がいるのだからきっと大丈夫よ。
「あの人はきっと無事に帰って来るわ。」
そう、いつもの笑顔で迎えてあげるのだ。
「あの人の事をお願いします。『アリステリア様』。」
そう祈りを捧げると皆とギルドへと歩みだすのであった。
此処まで読んで頂きありがとうございます!
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それでは 次話 悪戯と交換の情報(仮 でお会いしましょう!
お休みなさい!




