アーゼ対ラフィア
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今は九時四十五分頃だろうか?
皆とフェアリー・ゲートの前で集合している。
アーサーが来ていない。
珍しい事もあるものだ。
いつも一番最初に現れるのだが。
そう思っていると近づいて来たアーゼ様から声が掛かる。
「久しいわね、オーガの牙の皆様方。お待ちしておりましたわ。」
皆、揃って跪く。
いつものお気に入りと言う衣装だ。
冗談じゃない。
ピクニックにでも行くつもりなのだろうか?
だが、相手は雇い主で公族。
心の中に留めておく。
「アーゼ様におかれましては御機嫌麗しく。残念ながら、まだ一人おりませんが何か御用でございますでしょうか?」
「ああ、そう言えば連絡していなかったですわね。愛しのアーサー様には昨夜、先に任務へと行って頂いておりますわ。」
「「「!?」」」
アーサーが一人で!?
何かあったのだろうか?
「アーゼ様、アーサーにはどのような事を?」
「補給物資を届けてもらっているのよ。バックパックをお持ちのあの方ならば大丈夫でしょう?」
僕は少しほっとした。
「左様でございましたか、では、アーサーを待ってから出発でございますね?」
「いいえ、アーサー様はすでに戦場に向かっていらっしゃるはずです。あの方の性格から言ってすでに戦場で戦っているかと思われますわ。」
ふふふ、と怪しく笑っている。
「アーサーが一人で戦場へ!?」
「姫様、そりゃあ、あんまりだぜ!?」
「アーサー君が戦場に行ってるならあーっしらもすぐに行かないとね~。」
「すぐに、アーサー様の後を追いかけましょう。」
皆が口々に言って来る。
だが僕も賛成だ。
「では、急ぎ出発しなければなりませんね。」
僕達が立ち上がろうとするとアーゼ様が続けて言って来る。
「ええ、ですが皆には先に城へ行って頂きます。公王である義父上に会って頂くわ。」
「アーサーが戦っているのにでございますか?アーゼ様、我らはアーサーの元へ急がなければなりません。どうかお許し下さい。」
「戦士ジャスティン。それはなりませんわ。あの方との合流は明日の朝にして頂きます。」
「アーゼ様、何卒!」
「何を言われても駄目よ?本日は晩餐会の後に就寝して頂きます。十分に体を休めた後に出発して頂きますわ。」
この御方はアーサーを使い潰すつもりなのだろうか?
ギリギリと奥歯が鳴る。
アーサーだけを行かせる訳には行かないだろう!
「戦局が変わればどうなるか分かりません!アーゼ様ご再考を!」
「くどいですわね、なりません。」
っく、これ以上は無理か・・・済まない、アーサー。
皆の視線を感じる。
階級と言う名の壁。
これ程自分を無力に感じた事は無い。
各国から身分を保証されていると言われても所詮は六等級。
それに直接の依頼だ。
ギルドのサポートが無い為、国の雇い主の力には逆らえない。
時間になったのでフェアリー・ゲートに移動する。
「アーサー、出来る限り急ぐから待っていて下さいね。」
そう言ってフェアリー・ゲートを潜るのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そして日が暮れる。
此処からは悪魔族の時間だ。
俺は見張り台からいつも悪魔族が現れるという地平線を見ている。
目を皿のようにしながら・・・。
さて、予想通りならアイツらが来る。
先程、整然と兵士の昼番と夜番の入れ替わりが終わった所だ。
昼間に休ませていた兵士と入れ替わっていて少しだが兵士の士気が上がっている。
だが、これからの事を思うとそうも言っていられない。
なにせ来るのはアイツらだろう。
普通の武器は効かない相手だ。
高威力の呪文を使ったので、警戒されてしまったのかもしれない。
だが、俺の予想通りならば、ここで本隊であるアイツらを投入してくるはずだ。
斥候の数を増やしてもらっているので今夜は襲われても奇襲は無いだろう。
月明かりもある。
これも『アリステリア様』の御加護だろう。
そう思っていると銅鑼が鳴る。
ガーン!ガーン!ガーン!・・・
「悪魔族だ!攻めて来たぞ!」
【バドラック閣下に報告してまいります!】
そう言って見張り台を飛び降りバドラック様の天幕へ向かう。
黒い蠢く姿が見えた。
間違いない、ヤツらだ。
くそ、悪い方の予想ばかり当たる。
バドラック様の天幕に飛び込む。
【閣下、悪い予想が当たりました。おそらく中級の悪魔族でしょう。普通の武器は効果が期待出来ません。】
「アーサー殿、魔法兵を前方に向かわせて迎撃できると思うかね?」
【3thの魔法ではまず無理でしょう。4thのライトニングでも痛痒を与える程のダメージしか期待出来ません。】
「それでもやらない訳には行くまい?アーサー殿はどうする?」
【もちろん迎撃に向かいますよ。せめて我らオーガの牙が揃っていれば・・・。】
「この時間ならば晩餐会の途中だ、来れる訳がないぞ?」
【・・・済みません。出来る限り私が前線で戦いますので、一度兵をお下げください。】
「一人でか!それは無謀だぞ!?」
【このぐらいの無謀は絶望のうちには入りませんよ?】
「むう、対抗策が無いのでは何も出来ぬな、無駄に兵を死なせるだけだ・・・今回は頼らせてもらおう。だが、死ぬなよ?家族が待っておるのだろう?」
【元々死ぬつもりなんてありませんよ。それに、まだ愛する人と結ばれておりませんので。】
「そうか、では気休めだが魔法兵を配置しよう。・・・わしは、せめてアーサー殿の戦いを見届けよう。」
二人で天幕を出て行く。
さてと、流石に連続で魔法を浴びればどうなるかな?
ちょっと怖い。
足が震える。
だが気づかれる訳には行かない。
気合いを入れると前方の黒い悪魔達を見つめるのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
城に着き謁見が終わる。
礼を言われただけだった。
意味の無い謁見だ。
謁見の間を出て侍女について行く。
そうすると応接室に連れていかれた。
室内に入ると早速ダンが言ってくる。
「何だあの貴族共は!公王もだ!くそ!それで、相棒よどうするんだ?」
「もちろんアーサーの元へ向かいます。」
「だよな!早速準備するぜ!」
「だよね~、こんな所にいる為に来た訳じゃないんさ~。」
「左様でございますわ。さっさと行きましょう!」
「アンナ、外の様子を探ってくれるかい。」
「りょ~。「探知。」」
・・・
「どうだい?」
「見張りも誰もいないんさ~。まるで、行って下さいみたいな感じだね~。」
「・・・罠でしょうか?」
「ジャスティン、ですが好機ですわ。さっさと、アーサー様の元へ行きましょう。」
準備を整えると部屋を出て行く。
見張りが一人もいないし歩哨にも会わなかった。
胡散臭い。
だが、この公国ではなくアーサーと民を助ける為に来たんだ。
こんな事で邪魔をされてたまるものか。
アンナの案内で苦も無く裏門にたどり着く。
ここまで誰にも会っていない。
やはり罠か?
「どちらにいらっしゃるのかしら?オーガの牙の皆様方?」
聞き覚えのある声がする。
「戦場へ向かいます。アーゼ様。」
声の主であるアーゼ様の方を睨みつける。
アーゼ様が左手を上げると兵士達が現れて包囲される。
「駄目だと、申しましたわよね?」
「そんな事は関係ありません。行かせては頂けませんか?アーゼ様?」
「条件次第では、よろしくってよ?」
なんだと?
条件!?
くそ!
そんな場合ではない!
だが・・・
仕方なく交渉の場に立つ。
「どのような条件ですか?」
「敵を倒した後で良いの。アーサー様を無事に私の前に連れて来て下さらない?」
「「「!?」」」
何を言われたのか分からない。
「もう一度言うわね・・・アーサー様を無事に私の前に連れて来て下さらないかしら?」
「おっしゃっている事が矛盾していませんか?」
「そうだぜ?アーサーは、今危ないんだぜ?」
「そうだね~。その条件だと今の状態は変なんさ~。」
「貴女は、アーサー様をどうしたいのですか?」
アーゼ様の口角が上がりニヤッと笑う。
「もし敵を倒し、無事に帰って来ればあの方は英雄ですわ。私の婿の相手にちょうどよろしいのではなくって?」
「アーサーを婿に!?」
「そうよ、どうかしら?」
「アーサー君の気持ちはどうなるのかな~?」
「そうです!気持ちは大切ですわよ!」
更に口角が上がる。
まるで彼女自身が悪魔の様だ。
「私が愛しているのよ。それだけでは不足かしら?」
「「「・・・。」」」
これが本当の彼女なのだろうか?
冷や汗が流れる。
「どうして黙っているのかしらね?オーガの牙、いえ、戦士ジャスティン?」
「・・・アーサーには思い人がいますよ?」
「そんな者は愛妾にでもすれば良いのではなくって?ただし可愛がって頂くのは私とリーゼの二人ですけれど。」
「そう言う事はアイツが一番嫌いな事だぜ?お姫様よ。」
「そうだね~。それに国を救えなければ貴方達の居場所は無くなるんさ~?」
「そうですわ!私達は貴方がたの為ではなくアーサー様の民を思う気持ちがあって此処に来ているのですわ!」
「・・・あの方はもうこの国に来てしまわれたのよ?この意味は分かりますわよね?」
「「「・・・。」」」
まさか、この国に来た事自体が罠だったのか?
いや、違うだろう。
だが、どこまでが彼女のシナリオなのだろうか?
「ふふ、では、認める訳にはいきませんわね?」
「それに、アーサー様は貴女の様な人には振り向きませんわ?」
「・・・それはどういう事かしら?そこの駄肉女?」
ラフィア?
何を言おうとしているんだい?
「アーサー様は私の様なふくよかな胸の方が好きなんです!貴方みたいな綺麗ですが平坦な胸には興味が無いのですわ!」
「そうだね~。あーしだってギリだからね~。」
「そうね、貴女様の様な方を貧乳と呼ばれていましたわ。」
「な、な、な、なんですって!」
ラフィア、アーサーはそんな事は言っていないよね。
その言葉でアーゼ様が切れたようだ。
アーサーの気分が少し分かったような気がした。
「じゃあ無事に連れ帰って来なさいな!その後で決めて頂きますわ!私の綺麗な胸か貴方の駄肉かをね!」
「ええ、よろしくってよ?私のふ・く・よ・か・な胸を選んで下さいますでしょうがね!」
「キー!悔しいですわ!殿方の為に私がにどれだけ苦労していると思っているの!」
「そんな事知りませんし知ろうとも思いませんわ!」
「良い度胸しているじゃありませんこと!?」
アーゼ様がラフィアの前に立つと「パーン!」と音がしてラフィアが左頬を押さえた。
「ふん、貴族のお嬢様には荷が重いですわ!代わりに私が持って軽くして差し上げますわ!」
負けじとラフィアがアーゼ様の左頬を「パーン!」と叩く!
「良いわ!そこまで言うなら勝負なさいよ!駄肉女!」
更にアーゼ様がラフィアを叩く!
「ええ、結構ですわよ?私の勝ちは揺るぎませんがね!」
お返しだとばかりにラフィアが叩く!
「キー!とっとと行ってアーサー様を連れてらっしゃい!」
僕がラフィアを庇うように立つ。
「では、アーゼ様行ってまいります。」
「さっさと行きなさい!」
アーゼ様が左手を上げると包囲の輪が解かれる。
こうして僕達は裏門を潜りアンナの案内でアーサーの元へ向かうのだった。
改めて言おう。
女性は怖いんだよ、アーサー。
気を付けようね。
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