急な旅立ち
読んで下さっている皆様、こんばんは!
執筆が終わりましたのでUPいたします。
それではお楽しみください。
皆に俺の部屋に集まってもらう。
就寝時間には少しだけ早い時間だったからか、皆は寝間着に着替えていたが起きていてくれた。
【皆、集まってくれてありがとう。急で悪いんだけれど、実はこれから少し遠い所に出かける事になったんだ。】
そう言って皆を見回す。
ルイスが真剣な顔で俺を睨んでいるのが目に映る。
皆、驚いている様だった。
するとリズが声を上げる。
「え?お兄さん、こんな時間から何処に行くの?」
【ちょっと遠い所だよ。そこでは皆が戦っているんだ。それの応援に行くんだよ。】
マオが声を上げる。
「戦いって、今からそんな危ない所に行くんですか?」
【そうなんだ。だから皆には此処でいつも通り待っていてほしいんだ。】
アリスが言って来る。
「ヘファさん、お出かけなのですか?」
【うん、ちょっと行ってくるよアリス。風邪を引かないようにね。】
寝相の悪いアリスの事が心配だ。
それまで黙っていたベスが直球を投げて来た。
「ヘファさん、戻っては来るんですよね・・・?」
【もちろん戻って来るよ。な~に、上手くいけば七日もかからずに戻って来れるさ。】
「本当ですね・・・!?」
【本当に本当だよ。】
するとルイスが大声を上げる。
「ねえ!出かけるのは明日だって言っていたじゃない!?」
そう強く言って来た。
両手の拳を握ってブルブルと震わせている。
下を向いていて表情が見えない。
【そうなんだけれど戦っている人達が危ないらしい。俺が行って補給物資を渡さないといけないんだよ。】
「駄目!お願いだから、もっとゆっくりしてから行って頂戴!」
ルイスが顔を上げる。
その瞳から涙がボロボロと流れていた。
【ルイス?】
「だって戻って来れるか分からないんでしょう!?」
【ルイス、俺は戻って来るよ。】
「そんな事を言わないで頂戴!いつも通り癒してあげたいの!だからせめて出発は明日にして!」
【今も戦っている人が亡くなっているかもしれない。戦場で戦っている人もいるんだ。その手伝いに行かないといけないんだよ。】
「お兄さんそんな危ない所に行くの!?」
【うん、でも戻って来るよ、リズ。いつも通りちょっと行ってくるよとは言えないんだけどね。】
「戻っては来るんですよね?」
【うん、マオ。だから心配しないでくれるかな?】
「ヘファさん、どうしていつもみたいに絶対って言ってくれないの・・・。」
【ベス・・・危ない所なんだ。】
「なら付いて行くのです!」
【アリス、留守番は頼んだよ?部屋の片付けをしっかりするんだよ?】
「分かったのです・・・。」
そう言えばアリスと最初に出会ったんだったっけ・・・。
ちょっとしょぼくれているアリスの左手を取る。
【アリス、君と初めて会った時の事は今でも覚えている。俺は君の笑顔にはいつも助けられているんだ。】
そう言ってアリスの左手の薬指に金細工であしらった愛情の指輪を付ける。
アリスにはまだ大きいのでぶかぶかだ。
「綺麗なのですー!」
【それがピッタリになる頃にはアリスはとても綺麗になっているだろうね。】
「ヘファさんどうしてそんな事を言うのです?戻って来てくれないのです?」
お日様の様な笑顔が曇る。
【そんな事は無いさ。俺が嘘を付いた事があったかい?】
「ヘファさんはー、いっぱい嘘をついてるのですー!」
【ぐぬぬ・・・そ、そうか、気を付けるよ。】
「嘘はダメなのです!」
アリスの頭をグリグリと撫でる。
笑顔になってくれた。
そしてマオを見る。
【マオ、君がとても面倒見が良い事を知っているよ。その調子で皆を助けてあげてね。】
そう言ってマオの左手の薬指に金細工の希望の指輪を付ける。
サイズがピッタリだ。
「ヘファさん、戻って来てくれないんですか?」
【そんな事は無いさ。戻って来るよ。】
「・・・信じてあげます。だから早く戻って来て下さいね。」
そしてベスを見る。
【ベス、君には色々と助けられているんだ。いつもの様にルイスを頼むよ。君ならルイスを支えてあげられる。】
そう言ってベスの左手の薬指に金細工の誠実の指輪を付ける。
ベスにも大きいや・・・。
「待って、ヘファさん。どうして戻らないような事を言っているの!?」
寡黙なベスが今は饒舌だ。
【ちょっと危ない所だからね。後の事は皆に任せてから行きたいんだ。】
「ちょっとってどのぐらいなの?」
【滞在が長期間になるかどうかも分からないんだ。】
「・・・戻って来てね!絶対よ!絶対なんだから!」
そう言うとベスは黙る。
今度はリズの番だ。
【リズ、君の元気は俺を後押ししてくれるんだ。笑顔の素敵なリズ。顔を良く見せてくれるかな?】
そう言ってリズの顔を見ながら左手の薬指に金細工の聡明の指輪を付ける。
もうちょっとで合いそうだね。
「お兄さん、戻って来てくるのよね?」
【ああ、皆の所に戻って来るさ。】
「本当に?」
【本当だよ?】
「じゃあ約束して!帰ってきたらアタシを女にして!」
【可愛いリズベット。それは君が成人になったら考えてあげるよ。】
「ふん!こんな良い女をお預けするなんて、後悔しても知らないからね!」
【リズ、皆を・・・ルイスを頼むね。】
その目からは涙が溢れていた。
しかし、リズ達に言葉を教えているのは誰なんだろう。
最後に涙の止まらないルイスを見る。
【ルイス。俺のパートナー。君が皆を支えてあげるんだよ?大丈夫だよね?】
「・・・ぃゃ。」
【何かな?】
「・・・嫌よ!」
【・・・。】
「嫌よ!貴方が側にいて支えて!今までだってそうしてくれたじゃない!それに何で言ってくれないの?」
ルイスの瞳からは涙が止まらない。
【ルイス、俺が何を言わないって?】
「『絶対戻って来る!』って自信満々に!いつもの貴方なら言ってくれるわ!」
【・・・。】
「どうして言ってくれないの!?」
【俺も言いたいんだけれど今回はどうなるか分からないんだ。】
「どうしてそんな事を言うの!?今までだって『必ず戻る。』って言ってくれたじゃない!」
「お兄さん、戻って来ないの!?」
「ヘファさんは戻って来ないの・・・?」
「戻って来れないんですか?」
「ヘファさん、戻って来ないのです?」
【皆、大丈夫だよ。戻って来るさ。安心して良いよ。】
「なら、皆の前でいつもみたいに言ってよ!『必ず戻るって!』」
ルイスが声を荒げて言って来る。
【戻って来るつもりだよ?】
「だからどうして言ってくれないのよ!?」
【今回は自信が無いんだ。悪魔族との戦争だからね。確実でない限りそんな事は言えないよ。】
「だったら行かないで!貴方はもう色々とやって来たじゃない!もう十分じゃないの!?」
【・・・ルイス?】
ルイスが胸に縋り付いて来る。
【アタシ達の側にいてよぉ・・・お願いだからぁ・・・。】
ルイスが泣き崩れてしまった。
そんなルイスを支えてあげる。
【ルイス、そんなに悲しい顔をしないで。いつもの様に笑顔で見送ってくれないかな?】
「そんな事出来る訳無いでしょう!貴方がいなくなったら私達はどうすればいいのよ!?」
【大丈夫だよ、死ぬ気はないさ。】
「だったら言って!確約を頂戴!」
【気休めになるような事は言えないんだよ。俺のルイスなら分かってくれるよね?】
「どうしても・・・言ってくれないの?」
【どうなるか分からないんだよ。だから】
ルイスがキスをして来た。
「そんな事より貴方の方が大切なの!行かないで!側にいてよ!傲慢でも我儘でも良いの!貴方は、ア、アタシ・・・アタシを、こんなに弱くした・・・責任を取ってよ!」
【ルイス、そんな事は言わないで。その人達にも家族がいるかもしれないんだよ?】
「だって!?」
【俺はそれを助けに行くんだ。だから笑顔で見送ってくれないかな?】
「うっ・・・うう・・・うううう・・・。」
泣いているルイスを抱きしめる。
【俺は、ルイスを泣かせてばかりだね。】
「お願いよ、お願いだから行かないでよ!?こんなにも貴方を愛しているの!もしもの事なんて言わないで頂戴!」
【そう、だから前に話した通り行かないといけないんだよ。笑顔を見せてルイス。】
ルイスが泣き止まない。
皆も泣いている。
ああ、悲しませちゃったか・・・。
俺ってヤツはどうしてこうなんだろうね。
【・・・じゃあ、そろそろ時間なんだ。行ってくるね。】
そう言ってルイスの左手の薬指に金細工の純愛の指輪をはめる。
ピッタリだった。
「嫌!行かないで!置いて行かないで!お願いよおおおぉぉぉ・・・。」
背中ごしにルイスの慟哭が聞こえる。
ごめんね、ルイス。
ごめんね、皆。
そんな皆を置いて部屋を出て扉を閉める。
辛い別れになってしまった。
いや・・・別れではない。
俺は戦争がどんな物かニュースや文章でしか知らないんだ。
もしもの事を考えると怖くてたまらない。
でも、俺は戻って来るんだ。
そう思うと真っ赤なフード付きローブを取り出し装備をしてアーサーとなる。
【・・・さあ、行こうか。】
自分を奮い立たせるようにそう呟く。
皆の事が気になった・・・でも、大丈夫だよ。
ルイス、君なら大丈夫さ。
君が、君達が信じてくれれば、俺はここに帰ってこれるよ。
そう、愛する皆の元へと。
気を引き締めると階段を上る。
アーゼ様とリーゼ様の所に、そして戦場に行く為に。
此処まで読んで下さり、ありがとうございます!
まずはいつものから!
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大変、ありがとうございます!
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ありがとう皆様!
それでは 次話 出発(仮 で、お会いしましょう!
お休みなさい!




