ニョロニョロの魅力
皆さん、こんばんは!
執筆終了いたしました!
お楽しみください!
ミカを連れて宿に向かう。
明日は移動する日だ。
戦況はどうなっているのだろうか?
そして忘れ物が無いかを確認している。
俺はバックパックの中のお土産を思い出した。
鉱山で作った皆へのお土産だ。
リズにはエメラルドの指輪。
ベスにはアメジストの指輪。
マオにはトパーズの指輪。
アリスにはサファイアの指輪。
そしてルイスにはダイヤモンドの指輪。
いずれも細工スキルMAXの金細工で作った物だ。
渡すのを忘れていた。
今日、渡しておかないと後悔するかもしれない。
ミカと二人で宿屋の扉を潜る。
女将さんが出迎えてくれた。
「おかえり、小僧。」
【ただいま、女将さん!】
「おや、元気っ子も来たのかい?」
「こんばんは、女将さん。世話になるわね。」
そしていつもの席に向かう。
【ただいま、皆!】
「お帰りなさい、貴方。」
「お兄さん、お帰りなさい!」
「ヘファさん、お帰りなさい・・・。」
「お帰りなさい!」
「お帰りなのですー!」
うん、皆元気だ。
ミカがいる事に気づくと皆は元気良く挨拶をする。
「「「こんばんは!ミカさん!」」」
「はい、こんばんは。皆、今日も元気ね!」
こうでなくっちゃね!
「ねえねえ、ミカさん。」
「何かしらリズちゃん?」
「お兄さんの料理を食べに来たの?」
「お呼ばれしたから来たのよー!」
「あはっ、お兄さんの料理すっごく美味しいから覚悟したほうが良いわよ?」
「それは楽しみだわねー。」
【さてと、それじゃあ今日も晩御飯を作るよ!】
「楽しみにしているわ!」
「ねえねえ、お兄さん。今日の御飯はなあに?」
【今日はね、・・・秘密だ!】
「えー!ずるーい!アタシにだけでも教えてよ!ね?」
【楽しみに待っておいで。】
リズの頭を撫でる。
「「「はーい。」」」
今日もうちの子達は元気だ。
そっか、アーゼ様やリーゼ様は最後の振舞う料理だろうから気合いを入れないとね。
厨房に入り手を洗うとエプロンを付ける。
おや?
誰かが階段を駆け上がって行ったぞ?
まあ良いかこっちが優先だ。
そして料理を作り始めた。
まずは、その身に串を打つ。
そして素焼きをしてから蒸す。
今日作っていた秘密兵器だ。
蒸している間にタレを作っていく。
醤油、酒、みりん、砂糖で味を整える。
女将さんに言って壷を用意してもらい出来上がったタレを流し込む。
老舗のような味にはならないだろうが溢れるぐらいに作っておく。
そして一度目の焼きをする。
もちろん関東風だから皮から焼く。
竈に金属で作った即席の焼き場で焼いているのでいまいちバランスが悪いがそこは料理スキル様。
一度目の焼きが終わると壷に入ったタレに突っ込み更に焼く。
これを三度繰り返す。
ジュワーっと良い匂いが辺りに広がるとお客さん達も匂いにつられている様だ。
だけれどごめんね。
これは皆の為のスペシャルな奴なんだよね。
御飯を木の丼に盛ってスプーンでタレを回し掛け、焼けた鰻を乗せて完成!
完成した料理を女将さんに食べてもらう。
「こりゃあ、美味いね。美味すぎる。何て料理だい?」
【鰻の蒲焼、鰻丼という料理です。】
「だが、これもアレだね。」
【はい、一般客には出せません。】
「そうだね、美味すぎる。」
【はい。】
「まあ良い。小僧これを作りな。貴族様達も驚くだろうよ!」
【はい!】
そして憑りつかれたように焼きだした。
団扇の様な木の板で仰ぎ炭に火を入れる。
鰻を乗せるとタレと油が落ち匂いが広がる。
一般のお客さんが騒ぎ出すが知らない振りをして焼く。
まず十二人分が出来上がると女将さん達が三階に持って行く。
しばらくしてルイス達の分が焼けたので持って行く。
部屋の中が蒲焼の匂いになっている。
当分取れないかもね。
他のお客さんが食べれないのかと残念がる。
ごめんね、お客さん。
知らない振りをしていつもの席に料理を持って行く。
「本日の料理、鰻の蒲焼、鰻丼でございます。」
恰好付けてみた。
「いいから早く置きなさいよね!」
ミカが五月蠅いが無視だ。
どんどん運んで行く。
そしていつもの大合唱だ!
「「「いただきます!」」」
「やだ、美味しいじゃない!」
どうよ、ミカ?
「これがあのニョロニョロなの!?信じられないわ!?」
そうなんだよ、ルイス。
「ミカさん、言ったでしょう!お兄さんの料理は美味しいのよ!」
ふははは、リズさん。
もっと褒めても良いんだよ?
「これは、美味しいです!この鰻の蒲焼と言う料理には醤油と何かをベースにした甘辛いタレがとっても合っていて・・・。」
珍しくベスが饒舌だ!
「とっても美味しいです!」
マオさん、喜んでくれている様だね!
「モゴモゴ・・・。」
アリス、良く噛んで食べるんだよ?
これはお代わり決定だな。
厨房に戻り鰻を焼く。
すでに食べ終わっているルイスとミカが来ておっしゃられる。
「お代わりいいかしら?」
「もちろん良いわよね?」
ミカは遠慮と言う物を・・・。
まあ、良いか。
【順番に作ってるんで待つべし!】
「分かったわ。待っているわね。」
「早くしなさいよね!」
ミカ黙ってろ!
そうすると女将さん達からもお代わりの声が上がる。
今日も忙しく料理を、鰻の蒲焼を作るのだった。
しばらく作っていたが波が収まったように静かになった。
皆の方を見るとお腹がいっぱいなのだろう座って動かない。
女将さん達もなんとかお腹いっぱいに食べれたようだ。
バックパックを見ると鰻が一匹もいない。
四十八匹でギリギリだったようだ。
皆の胃袋、恐ろしいね。
俺も何とか一匹は食えたが、鰻パワー恐るべし。
皆の方を見てこの風景を写真に収める様に心に留める。
絶対に思い出にはしない。
何故なら俺は戻って来るからだ。
・・・さてと片付けだね。
皿を洗っていると護衛の人が来ていて俺を呼んでいるらしい。
何だろうか?
ルイスに行って来ると言おうとしているとミカが声を掛けて来た。
「アンタ、本当に料理人になった方が良いわよ?」
【料理は趣味で良いんだよ。】
「本当にそうなの?見て見なさいよ。皆の幸せそうな顔をさ。」
うん、それは心に焼き付いているよ。
【ありがとうな、ミカ。】
「お礼を言うのはこっちよ。」
【いや、ミカがいたから色んな事が出来たんだよ。ありがとな。】
「そのセリフは帰って来てから言いなさい。それまでは聞かなかった事にしておくわ。」
【言ってろ。次はもっと美味い物を食わせてやるからな?覚悟しとけよ。】
「だってよ、ね、ルイスさん?」
いつの間にかミカの隣にルイスが立っていた。
「そうですね。でも、貴方また呼ばれてるのよね?早く行った方が良いわよ?」
「また、あの双子ちゃん?」
【そうだよ。今度は何だろうね?】
「気を付けていってらっしゃいよね。」
「いってらっしゃい、貴方。」
【ああ、後の事は頼んだよ。】
一度、厨房に戻り女将さんにタレは捨てないで毎日かき回してもらうように言っておく。
そしてエプロンをしまって三階へ上がって行く。
もう皆が顔見知りになった護衛さん達に挨拶をする。
「今日の御飯、すごく美味しかったですよ!」
「すごく美味しかったです。機会が在ればまた食べさせて下さい!」
そう言われた。
どうやら鰻は好評だったらしい。
そう言われるのは料理人ではないが嬉しいものだ。
「アーゼ様、リーゼ様、ヘファイストス様がいらっしゃいました。」
「「入って頂いて頂戴。」」
「失礼致します。」
そう言って部屋に入る。
いつもの場所でアーゼ様の前で跪く。
「今回は何でございましょうか姫様方?」
リーゼ様が定位置のアーゼ様の椅子の背もたれに肘を掛けると話が始まった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【・・・補給物資ですか?】
「そう、先程ですが伝令が来て知らせてくれましたの。」
「それで補給物資を届けたいのだけれど良い考えはないものかしら?」
成程、それでさっき誰かが駆け上がって行ったのか。
【恐れながら申し上げます。それならばアーサーがバックパックを持っているので彼に頼めば解決するでしょう。】
「ふーん、成程ね。かの英雄殿ならば大丈夫だと言うのね?ここまで来ると便利屋よねー。」
「・・・リーゼ、貴女でもアーサー様に無礼な言をすると許しませんわよ?」
アーゼ様が赤い目をキラリと光らせる。
「し、失言でした。姉様!お許しを!」
リーゼ様はガタガタと震えて黙ってしまった。
「それで、貴方はアーサー様に頼れと言うのね?」
【はい、いかがなさいますか?】
「・・・すぐに連絡は取れる物なのかしら?」
【可能でございます。至急必要でございますか?】
「ええ、ただ少なくともそのまま前線にいてもらう事になってしまうの。」
【それならば・・・二、いえ、一時間程、時間を下さいますでしょうか?】
「ヘファイストス、時は金なりよ?」
【アーサーと連絡を付けるのに必要な時間であります。二時間頂ければ確実ですが?】
「それならば構いませんわ。分かりましたの、愛しのアーサー様に連絡を取って下さらないかしら?」
【かしこまりました。オーガの牙への連絡はいかがなさいますか?】
「彼らは大量な補給物資を運べるのかしらね?」
【・・・分かりました。それでは早速その様に。失礼致します。】
「退出を許可致しますわ。」
そう言って立ち上がると背中に声が掛かる。
「ヘファイストス様?」
【はい、何でございましょうか?】
「アーサー様に無礼の無いように伝えて頂戴ね?急がせて済まないと丁重に言って頂戴。」
【かしこまりました。】
背中に四つの視線を感じながら部屋を出て行く。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
しばらくあの者の出て行った扉を眺めているとそれまで黙っていたリーゼが声を掛けて来た。
「姉様に申し上げたいのですが、あの者切れすぎるのではありませんか?」
「ええ、切れすぎます。だけれど使うしかないのが現状です。何でも使いこなせてこそ一流でしょう。」
「姉様が執着しているように見えましたので、念の為に声を掛けさせて頂きました。」
「リーゼ、貴女はもう少し視野を広げて物事を見なさい。」
「はい、姉様。御忠告の通りに精進致しますわ。」
「・・・アーサー様との唯一の連絡手段だというあの者。その道が分かるまで決して逃しませんわよ?ヘファイストス。」
そう、アーサー様との唯一の接触できる者。
羨ましい。
妬ましい。
「そう、決して・・・ふふふ、あはははは!」
笑い声が部屋の中に響く。
私は、あの方とまた会える喜びで嬉しくてしょうがない。
リーゼは心配そうに私を見ていた。
此処まで読んで頂きありがとうございます!
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早い物で年が明けて7日が過ぎます。
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それでは 次話 急な旅立ち(仮 でお会いしましょう。
執筆中ですが別れとはと表現できるように頑張っておる次第です。
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