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前日

皆様、こんばんは!

いつも読んで下さってありがとうございます!

UPいたします。

お楽しみいただければ幸いです。

今日も朝が来た。


二月の九の日だ。

いよいよ明日は出発の日だ。

そんな不安を振り払うようにルイスの温もりを感じている。


「ふふっ、あなたはいつも通りなのね。」


そう声がするが俺は二つの双丘を味わうのに忙しい。


【だって、俺がこんな事するのはルイスしかいないんだよ?】


「本当だったら嬉しいのだけれど?」


【本当、本当。】


そう言うと抱きしめてくれる。


「いよいよ明日なのね・・・。」


【うん、だから今日も一緒に寝てもらっても良いかな?】


「甘えん坊さんね、でも良いわよ?」


【うん、ありがとう。】


「いっぱい甘えて頂戴。私だけの貴方。」


【俺だけのルイス。】


そうしてイチャイチャする。


「今日は朝市には誘って下さらないの?」


【じゃあ、行こうか?】


「味醂干しが食べたいわね。」


【ハマっちゃった?】


「美味しいんだもの、何度でも『貴方』と食べたいわ。」


【じゃあ支度しようか。】


名残惜しいが双丘に顔を埋める。


「ふふふ、本当に甘えん坊さんね。」


朝のイチャイチャタイム終了。

ルイスは「着替えて来るわね。」と言って部屋を出て行った。

俺は日課をする。


【『アリステリア様』本日も良い事があります様に。】


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


部屋に戻ると私は涙する。


一日は伸びた。

だがたった一日。

昨日もゆっくり出来なかった。

そう、もう明日になってしまったのだ。

あの人が危険な事をするのは。

そう、戦争に出発するのは。


側にいてあげたいけれど戦闘の出来ない私では邪魔になってしまうだろう。


あの日、あの人はすべて言ってくれた。


『俺がオーガの牙のアーサーなんだ。』


『勇者がいないからね。俺が行かないといけないんだ。』


あの人が強いのは知っていた。

でもそんなに強いとは知らなかった。

だけれど助けに行くのは何故なのだろう。

この十日程しか会っていない人達の国だ。

そんな事を思うのは勝手な物言いだとは分かっている。


でも・・・勇者の代わり?


義務感なのだろうか?

正義感?

そんな物は捨ててもっと私と一緒にいてほしい。


抱きしめてあげたい。

そんな些細な事でも喜んでくれる。

それだけでいつも満足してくれる。

でも、あの人には無理を掛けているはずだ。


まだ数度だが寝ているとあの人が我慢しているのが分かる。

約束の為と懸命に我慢をしてくれているはずだ。

あんなにも大きくしているのだ。

男の人にとって並大抵の我慢では無いのだろう。


あの人が戦場に行くなんて・・・。

私の胸でスヤスヤと眠っているあの人を思い出す。


でも、明日あの人が『大切な人』が戦場へ行ってしまう。


嫌だ。

嫌だけれど止める事は出来なかった。

もっと一緒にいたい。

朝市だって買い物だってまだまだ一緒に行きたい。


そんな事を思うと涙が出る。

そして、そんな私は身勝手な女なのだろう。

あの人を失いたくない。

『アリステリア様』どうか、どうかあの人を守って下さい。

そう祈らずにはいられ無かった。


私は涙を拭いて着替え始める。

あの人と出来る限り一緒にいる為に。

明日で最後になるかもしれないと思っている自分が嫌になる。


あの人は約束してくれた。


『必ず生きてルイス達の元に帰るよ。』


そう、その言葉を信じるしか出来ない。

不安で圧し潰されそうだ。

自分の無力さに心がおかしくなりそうだった。


そう、私はあの人を『心から愛して』いるの。


今更のようにそう思う。

あの人と会って生きる楽しさを知った。

皆との生活も苦も無く出来るようになった。

贅沢にもお昼ご飯を食べられるようにもなった。

こんなに立派な宿にも泊まれるようになった。

この服も・・・。


一緒に過ごした日々は今でも思い出せる。


いつも私が怒る。

でも笑って許してくれる。

その関係の心地良さ。

その喜びを知ってしまった。


私の宝物だ。


行かないでほしいと思うのは罪だろうか?

身勝手な女。

それが私。


支度を終えてしまった。

無理をして笑顔を作る。

そう、あの人が好きな顔だ。

涙を拭う。


そう、決して悟られてはいけない。


着替え終わった私は笑顔であの人と一緒に朝市に向かう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【でさ、秋刀魚のも美味しいでしょう?骨ごと行けるから俺も好きなんだよね。】


「ええ、美味しいわね。」


【七味があるとずっと美味しくなるでしょう?】


「そうね、味に深みが出るし、ちょっと辛いのがとっても美味しいわ。」


【後はそうだ。つまみ系だからお酒も欲しいね。】


「朝からお酒を買いに行くの?」


【俺が買ってくるよ。ちょっと待っててねルイス。】


「ううん、一緒に行くわ。」


【そう?食べてても良いんだよ?】


「一緒にいたいの・・・駄目かしら?」


【そっか。親父さん、ちょっと酒を買いに行ってくるよ。・・・それじゃあ行こう。】


「はい、貴方。」


「行ってらっしゃい、若旦那、奥様。」


そう言われて見送られると手を繋いて来る。

嬉しいね。

今日は一段と積極的だ。

そう思いながらルイスと一緒に酒屋に向かう。


「おや、若旦那。お待ちしておりやしたぜ。奥様もようこそ!」


【うん、米酒を貰えるかな?】


「実は、今日は少量ですが良い物が手に入りやして。」


【ほう、どんな物なのかな?】


「こちらです。」


そう言って盃を二つ差し出してくる。

記憶にある香りだった


【ほう、梅酒だね?】


「うめしゅ?」


【ああ、プラムに似た果実かな?それを漬け込んでいるお酒だね。】


「さすが若旦那、飲まずに分かるとはさすがですな。」


【漬物は酸っぱいんだけれどね。】


唇を米の字の様にしてみる。


「ちょっとやだ!あはは!やめて、顔が変よ?」


ちょっとルイスさん?

言い方がさあ。

ちょっと拗ねてみる。

地面に棒でのの字を書いてみる。


「えっと・・・ごめんなさい?」


謝り方が可愛いので許す!

気を取り直し、二人で飲んでみる。


【うん・・・美味いね。樽で頂こうかな。】


「香りが爽やかで良いわね。このお酒好きだわ。」


「希少品なので小樽で二樽しかありませんがどうされますか?」


【もちろん、二樽貰おう。】


「まいど!若旦那。また仕入れておきますのでよろしくお願いしやすよ。奥さんもまた!」


梅酒を買ってルイスと一緒に味醂干しのお店に戻る。

もちろん手は繋いでいるぜ!


「お戻りですか、若旦那に奥様。良い物はあったのかい?」


【ああ、梅酒が手に入ったんだよ。カワハギの味醂干しをもう二枚焼いてくれるかな?】


「かしこまりやした。」


ルイスと俺の盃に梅酒を注ぐ。


【ぐっと行ってぐっと。】


そう言うとルイスはグイッと飲み干す。

頬がほんのりと赤い。


「ふう~、美味しいわね。」


【ルイス用に一樽買ってあるから飲んでみてね。】


「ええ、ありがとう。」


【それとねルイス。】


「今度はなあに?」


【後で一緒に銀行に行ってくれないかな?】


「良いけれど何かあるの?」


【お金をルイスに預けたいんだ。】


「え!?」


【数日だけれど離れちゃうでしょう?だからその間の分として預かってもらいたいんだよ。】


「・・・帰って来てくれるのよね?」


【もちろんだよ。御褒美をもらうまで死ねないからね。】


「ふふ、分かったわ。いつ頃行けばいいのかしら?」


【お昼頃にしようか。ルイス達もその頃はお昼御飯でしょう?】


「そうね。」


【じゃあ、お昼に待ち合わせて銀行で会おう。その後にさ、皆で御飯を食べようよ。】


「良いわね。分かったわ。」


味醂干しを食べ終わる。

俺はある物を探していたので漁港に向かう。


「シビ旦那じゃねえか!」


【やあ、おはよう!今日は何があがっているんだい?】


「今日はシビが三匹と・・・。」


魚倉ぎょそうを見せてもらうよ。】


「どうぞどうぞ!」


うーん、探している物が見当たらない。

あれ?

淡水魚だったっけ?

だとすると水揚げ場所が違うのかな?


【いつもの様に三本を捌いておいて貰えるかな?】


「かしこまりやした、シビ旦那!」


【ルイスちょっと見て来るからここで待っててくれる?】


「嫌よ!私も行くわよ・・・付いて行きたいの!」


ルイスが離れようとしないなんて珍しいな。


業者に話を聞くと湖で取れる魚も扱っている所があるという。

早速行ってみる。

少しの距離だが歩く。

ルイスとは手を繋いでいる。


上機嫌でニコニコしているようだ。


そして目的地に着いた。

此処のはずだ。

俺は目当ての物を探し始める。


いた!

こいつだ!

聞いてみるとゼリー寄せしか食べ方がない物なので捨て値で譲ってくれるという。

何匹いるのか聞いてみた所、四十八匹もいた。

売れないので普段は放流しているらしい。


もったいない。


【これを全部頂こうかな?】


「泥抜きはしてありますがこんな不味い物、何に使うんですかい若旦那?」


【美味しい食べ方があるんだよ。捌いても良いかい?】


「ああ、台所なら好きに使っておくれよ、若旦那。」


支払いを済ませる。

そう言うと漁師さんは興味が無いのか忙しいのか何処かに行ってしまった。

前世だと「重」なら5000円ぐらいはしていたはずだ。

本当に捨て値だった。


コイツの美味さを知らない何てもったいないね。


「ね、ねえ?本当にこんなウネウネしているのが美味しいの?」


【ルイスも気に入ると思うよ?】


「なら良いのだけれど・・・。」


【じゃあ、捌きますか!】


捌き方は某動画サイトで見た事が有ったので思い出しながらやってみる。

俺は江戸前の背開きだ。

頭に釘の様な針を打ち込み固定する。

首に切り込みを入れる。

そこから骨に沿って身を開いて行く。

今度は背骨を身に沿って切り取る。


料理スキルのおかげで思ったよりも苦も無く捌ける。

一匹捌くとスキルに情報が最適化されて作業の様になる。

しばらく捌いていると慣れて来たようだ。

流石のスキル様。


ルイスが側で見ているので張り切ってしまった。

四十八匹全部捌くと流石に良い時間になったのだろう。

漁港が静かになって来た。

切り分けてバックパックに入れる。


【じゃあ鮪を取りに戻ろうか。】


「ええ、戻りましょう。」


手を洗っているとルイスがモジモジしている。


【ルイス?どうしたの?】


「あのね。手を繋いで行きたいのだけれど・・・。」


【分かった。良く洗うね。】


「お願いね。」


ウネウネを触っていたので「良く洗う」に反応していた。

うんうん、女の子だよね。

可愛い所があるじゃないか。

新たなる発見に気分が良くなる。

男って単純だよね?

俺が単純なのだろうか?

良く洗いタオルで拭うと手を繋いで一緒に漁港へと向かう。


鮪を受け取ると北通りのいつもの宿に戻る。


ルイスと一緒に扉を潜る。

時計を見ると七時十八分だった。


【ルイス、アリスを起こしてくれるかな?】


「ええ、行って来るわね。」


名残惜しそうに手を放すとルイスが二階に上がって行った。

その背中が寂しそうに見えたのは気のせいだろうか?


「お兄さん、おはようー!」


「おはようございます・・・。」


「ヘファさん、おはようです!」


「皆、元気だね。朝食を作って来るよ。」


「「「はーい!」」」


上着をバックパックにしまいエプロンを取り出す。


【さあ、今日も作りましょうか。】


そう言って厨房へ入って行くのであった。

此処まで読んで下さってありがとうございます!

まずはいつものから!

評価、イイネ、ブックマーク等々。

大変に!

励みになります!

ありがとうございます!

仕事も始まりいつもの日常が戻ってまいりました。

初日から色んな事があり非常に厳しいスタートとなった方々もいると思いますが、こんな私めの小説でも読んで気を紛らわせていただければなと思いつつ執筆したりしております。

電気が付かない所もあるのでその限りではございませんが・・・

一日も早い復興と安心を祈る次第でございます。

早速ドラえもん募金に諭吉を突っ込んできました。

少しでも足しになれば良いなと思っている次第でございます。

それでは 次話 ちょっとした日常(仮 でお会いしましょう!

皆様、お休みなさい!

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