アーゼの勇者様
皆様、こんばんは!
執筆終了いたしましたのでUPいたします。
それではお楽しみください!
私は物音で目を覚ました。
音の方へ視線を移すと松明の明かりでも分かる。
誰かが戦っている!
誰でも良いから助けなさい!
でも恐怖で声さえ出ない。
すると小さな悪魔が一斉に霧散した。
ああ、あの方が私の・・・。
体が熱くなる。
まるでリーゼを可愛がっている時の様に。
あの方こそ私の!
戦いを見ていると赤い悪魔が一体霧散した。
火照る。
我慢出来ない。
貴方様が私の愛するべき勇者様!
そう思っているとその人に雷が落ちた!
「嫌ああああぁぁぁぁぁ!!!」
私には自分に襲い掛かる恐怖よりその方がいなくなる事の方が恐ろしかった。
貴方も私の前から消えてしまうのね。
本当のお父様のように・・・。
そう思って恐らくは黒焦げであろうあの方を見つめた。
目からはとめど無く涙が溢れていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
目の前が真っ白になる。
うん、ライトニングぐらいなら全く効かないね。
「嫌ああああぁぁぁぁぁ!!!」
アーゼ様から声が上がる。
どうやら無事の様だ。
『耐性スキル』のおかげで食らうと同時に体に膜の様な物が張り巡り魔法が霧散していた。
さすがのスキル様。
そう思って相手を見る。
後衛の赤いヤツが襲い掛かって来るが問題なく斬り伏せる。
霧散すると五m程のバルロンデーモンに向かう。
【貴様が勇者か!?】
バルロンが問うて来たので言い返す。
【ただの鍛冶師だよ!】
一撃で首を切断する。
流石の悪魔特効。
【ベヘモド様!申し訳・・・。】
そう言い残して霧散した。
【ベヘモド?】
手紙に書いてあった名前だ。
恐らくこの計画を企てた悪魔なのだろう。
そう予想を立てておく。
さてと警戒を!
【探知。】
うん、アーゼ様の反応しかない。
周りには敵はいないようだ。
さてと、ここからどうやって帰ろうかな。
そう思っているといきなり声がする!
「私の勇者様!」
え!?
勇者!?
何処にいるの?
キョロキョロしているとジャラジャラと鎖につながれたアーゼ様が側に寄って来た。
え!?
裸じゃんか!
慌てて作ってあったローブを被せる。
もぞもぞと着ていたが落ち着いたようだ。
「私・・・怖かったのです。そう、とっても怖かったの。」
いつもと反応が違う。
俺はアーゼ様の前で跪くと報告する。
【間に合わず申し訳ございません、アーゼ様。オーガの牙のアーサーでございます。】
「貴方様が・・・アーサー様なのですね?」
そう言うとアーゼ様が抱き着いて来た。
柔らかい。
「そう、貴方様こそ私の勇者様なのね!アーサー様!」
え?
勇者って俺の事?
「貴方様を見ているだけで私・・・。」
そう言ってキスをして来た。
【ちょっ、ちょっと待ちましょうアーゼ様。私は勇者ではありませんよ?】
いやまずは皆の元に帰らないとね?
「初めてですが受け取って下さいませ!」
そう言って押し倒されてしまった。
強引に馬乗りになって来る。
【アーゼ様、まずはご無事をお知らせするのが良いかと思われますが?】
「嫌よ!今が良いの!もう私は我慢出来ないの!」
そう言って腰を擦りつけて来る。
恍惚とした表情のアーゼ様が俺の上で腰を振っている。
これはまずいと思った俺は起き上がると「パン!」とアーゼ様の頬を張る。
「え!?」
【落ち着きましたか?まずは皆に無事なお姿を見せましょう。】
するとアーゼ様はガクガクと震えだした。
「嫌!嫌よ!?何でもするから私を捨てないで頂戴!!アーサー様!!!」
アーゼ様が泣きじゃくって縋り付いて来る。
あれー?
逆効果だったかな?
そんなアーゼ様に優しく言う。
【そんな事は致しませんよ、アーゼ様。まずは落ち着きましょう。】
肩に手を置くとそのまま抱き着いて来た。
「分かりましたわ!アーサー様!」
変わり身早いな!
【後、抱き着くのもお止め下さい。】
「どうしてなのかしら?」
アーゼ様は胸にしなだれかかってのの字を書いている。
【下々の者に示しが付きません。】
「貴方様がそう言うなら。では、今夜は可愛がって下さいましね?」
どうしてこうなった。
アーゼ様を立ち上がらせて俺も立ち上がる。
鎖が繋がれているのでロックピックを使い鍵開けのスキルで取り外そうとするが外れない。
あれ?
おかしいなと思っているとアーゼ様に言われる。
「魔法で繋がれているのですわ。上手く魔力を流さないと外れませんのよ?」
ほう、そうなのか。
【分かりました。】
だが困った。
どうやって流すのだろうか?
分からなかったのでとりあえず手を当ててみる。
すると魔法スキルが魔力を送り出してくれた。
「ガシャン」と音がして鎖が外れる。
魔法スキルのおかげで簡単に外す事が出来た。
抱き着こうとするアーゼ様を避けつつ俺は言う。
【とにかく早く帰って皆に無事を伝えるのが肝心です。】
「どうやってお戻りになるのです?アーサー様、戻られたら婚約を!」
【・・・入り口になっていた魔法陣を調べてまいります。】
「嫌!一人にしないで!お願い!怖いの!」
凄い形相で掴みかかって来る。
あまりの勢いに驚いて捕まってしまった。
仕方が無い。
俺は柔らかいアーゼ様をお姫様抱っこすると魔法陣へ向かうのだった。
・・・そう、仕方が無いのだ。
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「え?アーサー君が来てくれたんさ~?」
「アーサー様がいらっしゃいましたの?」
アーサーが来た事を二人に伝えると返事が返って来た。
「うん、アーサーなら大丈夫だとは思うんだけれどね。」
「そうですわね。」
「と、言う事はアーゼ様はアレだね~。」
アンナがニヤニヤしている。
「っく、その様ですわね。」
ラフィアが握った拳を震わせている。
何の話をしているのだろう?
「僕達は僕達で探さないといけません。」
「そうですわね!アンナの探知に引っかからないと言う事は何かがあったのでしょうね。」
「考えたんだけどさ~。魔法のトラップが一番可能性があると思うんさ~。」
「アーサーもそれを疑っていました。と言うと、あの魔法陣の事ですか?」
一つだけ離れた所にあった魔法陣を思い出す。
「そうだね~。」
「皆で向かいましょう。正し安全が確認出来るまでは魔法陣には近づかない様にして下さい!」
「りょ~。」
「かしこまりましたわ。」
三人で魔法陣の方へ向かう。
「無事でいてくれよ。アーサー、アーゼ様。」
僕はまだ遠くて追い付けない彼の背中を見ていた。
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【アーゼ様、此処から帰れそうですよ。】
魔法スキルを使って魔法陣が交互通行のテレポーターである事が確認できた。
さすがのスキル様、素晴らしいね。
『アリステリア様』感謝を!
「そうですのね?さすがはアーサー様ね!」
そういって抱き着いて来る。
プニョプニョが気持ち良いのでくっつかないでくれないかな?
裸ローブだし。
体の形が分かっちゃって目のやり場に困る。
我慢できなくなりそうだ。
いやいや、駄目だ我慢だ。
「アーサー様、怖いですわ。もう一度抱き上げて下さいませ!」
【アーゼ様、六度目ですのでそろそろ戻りますよ?】
「いけずね、アーサー様ったら酷いですわ。」
そう言って頬を染めている。
アーゼ様は変わってしまった。
あれから暗いだと言っては抱き着き、怖いだと言っては抱き着いて来る。
さっき、暗視の魔法も掛けましたよね?
それに先程から左腕にずっとしがみ付いていますよね?
ポニョポニョが・・・ッハ!
うん、判断が出来るうちにさっさと帰ろう。
【そうだ、アーゼ様。念の為にこのポーションを飲んで下さいますか?】
「アーサー様?どうしてもですの?ポーションは不味くて嫌ですわ。」
ん?
高品質の物は飲んだ事が無いのかな?
素直に飲んでくれなさそうだったので一つ芝居をするように言う。
【鎖に繋がれていたので貴女の美しい手首や足首に傷がございます。どうしてもです、マイ・レディ。】
「まあ!貴方様がそう言うのならば是非!」
そう言って飲んでくれた。
・・・その艶っぽく飲むのはワザとですよね?
嬉しそうに体をクネクネさせている。
色々と見えそうだ・・・。
いや、早い所帰ろう。
「このポーションは美味しいですね。ありがとうございます、アーサー様。」
どうやら傷は消えた様だ。
まだクネクネしている。
挑発には負けないぞ!
ん?
何故か瓶を捨てない。
訳を聞く。
「アーサー様からの初めての贈り物でございますのよ?」
贈り物では無いのだがね。
飲み終わった瓶が砂になるのは知らないのだろうか?
さっさと帰ろうと思ったのだが手を引いても動いてくれない。
・・・仕方ない。
クネクネしているアーゼ様を抱き上げる。
「あん、乱暴なのがお好きなのかしら?」
俺はいたってノーマルです!
【戻りますよ、アーゼ様?】
「私はとうとう女になるのね!」
何を言っているのかなこの人は?
【では、戻りますね。】
「はい!旦那様!」
結婚したつもりは無い!
両手が首に絡みついて来る。
気にしている場合じゃないか。
そうして魔法陣に乗る。
「ヒュン」という感覚がした。
ちょっと平衡感覚がおかしくなったがすぐに治った。
どうやらオーカムの魔法陣に戻って来れたようだ。
まずは無事に戻れて良かった。
「アーサー!」
「アーサー君!」
「アーサー様!」
皆の声が聞こえた。
ふう、もう大丈夫だろう。
魔法陣から出る。
その危なっかしい魔法陣を消し去る。
【・・・6th ディスペル!】
おっと、抱え上げたままだったね。
【アーゼ様、戻ってまいりましたよ。】
そう言って降ろそうとするが、降りてくれない。
【アーゼ様?戻ってまいりましたよ?】
「まだ恐ろしいのですわ。このまま宿のベッドまで運んで下さらないかしら?」
頬を染められてもねえ。
ベッドに行くとどうなるかが怖い。
ああ、そんなに体を擦りつけて来ないで下さい。
誘惑に負けそうになっていると護衛さん達の声がかかる。
「アーゼ様!ご無事で!」
数人の護衛の人達が駆け寄って来た。
助かった。
これで離れてくれるだろう。
だが俺の首に腕を回していて離れようとしない。
更に密着してしまう。
不味い、コレは不味い。
しばらくすると護衛の六人と文官の四人が集まって来て跪く。
ジャスティン達も跪いている。
俺はどうしようか?
代表してその中の一人が話し出す。
「申し訳ありませんでした。アーゼ姫殿下、御無事で何よりでございます。」
「皆の者御苦労でした。悪魔族に攫われた所をアーサー様に助けて頂きましたの。」
「アーゼ姫殿下、お怪我はございませんか?」
「アーサー様のおかげで、擦り傷の一つもありませんわ。」
「あの、アーゼ姫殿下?そろそろその者からお降りになられては?」
「貴女、アーサー様と私の仲を邪魔すると言うの?」
赤い目がきらりと光る。
「そ、その様な事は。」
慌てて頭を下げている様だ。
「それならばよろしいですわ。」
そう言ってニッコリと怪しく笑うアーゼ様の耳元で囁く。
『アーゼ様、心配してくれた家臣にお言葉を掛けて上げてください。』
『アーサー様がそう言うなら。ですが後程、可愛がって下さいましね?』
仕方なくといった感じで俺の腕から降りる。
「皆の者、苦労を掛けたわね。ご覧の通り私は無事ですわよ?ここにいらっしゃる、アーサー様のおかげで・・・え!?」
振り向くと俺はもういなかった。
「アーサー様!?アーサー様!?」
周りの護衛達もキョロキョロしている。
俺を探している様だ。
アーゼ様が離れた隙に隠蔽を使い隠密スキルでジャスティン達の方に来ていた。
【ジャスティンさん、アンナさん、ラフィアさん。後はお願いしますね。】
「分かったよ、アーサー。」
「分かったんさ~、アーサー君。」
「分かりましたわ、アーサー様。」
「では近日中に宿に報告に行きますね。それでは失礼します。」
そう言うと俺はダッシュで宿に戻るのであった。
「アーサー様ー!?」
アーゼ様の声が夜の西町に響き渡った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一方その頃。
俺は祭壇を見ていた。
例の女はいない。
殺した痕跡も見当たらない。
っち、中級とはいえ悪魔族だろう?
本当に使えない。
お使いの一つも出来んのか?
この俺【ベヘモド】は辺りを見回す。
俺が調べ物をしている間に何があったのか。
まあ良い。
そんな事は些事だ
だがあそこで間違いないようだな。
【大悪魔ベルフゴール】の封印されている所は。
忌々しい封印の力で少なくとも後一年は蘇らないだろう。
まずは生贄を捧げなければ。
生贄を捧げ封印さえ弱まれば復活も早くなる。
【あとはアイツらが公国で【暴食のベルゼバブ】を蘇えらせ、そして【怠惰のベルフゴール】が復活すれば公国に続き『ガリファリア王国』も終わる。ふふふ、楽しみだ。】
ハッハッハッハッハッハ・・・
声が聞こえなくなるとその姿は何処にもなかった。
此処まで読んで下さり、誠にありがとうございます!
それではいつものから!
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大変、励みになっております!
ありがとうございます!
年内にUP出来る物が此方で最後となります。
それでは 次話 日常と出発準備(仮 でお会いしましょう!
皆様、良いお年を!
お休みなさい!




