品定め
いつも読んで下さっている方々、こんばんは!
初めましての方、いらっしゃいませ!
執筆終わりましたのでUPいたします。
お楽しみください。
【ふぁぁっ。】
うん、今日もよく眠れたようだ。
起き上がり窓を開ける。
いつもの六時頃かな?
【『アリステリア様』本日もよろしくお願い致します。】
太陽に向かって日課になった祈りを捧げる。
窓を閉めアリスの寝相を直して支度をする。
今日は商業ギルドに行って鍛冶場の予約をして、等と考えながら階段を降りる。
こちらも日課になって来た朝の散歩だ。
今日は北通りを歩く。
北通りは農家さんの露店が多いのだろう。
新鮮な野菜が多く売っている。
【うん、いいね。じゃあその商品全部をくれるかな?】
「若旦那、ありがとうございますね。」
キャベツや人参等の野菜を買って行く。
新鮮な野菜が手に入った。
今回はジャガイモを多めに買っておいた。
蒸かして塩を掛けるだけでも美味しいんだよね。
もちろん値切りも忘れない。
宿屋へ戻る。
いつもの席を見るとルイスとベスがいた。
声を掛ける。
【やあ、二人共おはよう!】
「おはよう、いつもの散歩?」
「おはようございます、ヘファさん・・・。」
【ああ、今日は野菜を買って来たんだよ。】
「へー、お野菜だけで美味しい物が作れるの?あ、サラダは無しよ?」
うーん、野菜だけだと野菜炒めと和え物しか思い浮かばない。
ふむ、主菜にするなら野菜だけだと定番の野菜炒めだろうか?
その話をするとルイスから熱いリクエストが!
「食べてみたいわ。」
微笑んで言われたので機会があったら作るよと言っておく。
さて、今日も貴族様の御飯を作らないとね。
ルイスとベスに挨拶をして厨房へ向かう。
【女将さん、おはようございます!】
「小僧、待っていたよ。」
そうすると女将さんから声が掛かる。
「今日は暖かい物を御所望だ。何かあるかい?」
【それなら、ちょっと重いかもしれませんが『ビーフシチュー』を作りましょうか?】
「ほう、ビーフって言うのは何だい?」
【あっと、牛の事ですよ。田舎ではそう呼んでいたんです。】
「そうか、美味い物なら大丈夫だろう。」
【早速取り掛かりますね。】
俺はビーフシチューを作っていく。
煮込まないと肉が柔らかくならないのだが、そこはスキル様。
肉は十五分程で柔らかくなった。
ルイス達や女将さん達の分も含め、寸胴鍋で作ってしまった。
・・・多く作りすぎたかな?
あとは天然酵母を使った白パンと新鮮なジャガイモが手に入ったのでポテトサラダを作った。
これでよし。
シチューは作りすぎたかもと思ったのだが、気にせず皿に盛り付ける。
【女将さん、出来上がったよ!】
「ご苦労、お前さん達、先に持って行くからね!後で食いな!」
「「そんなー!女将さんちょっとだけでも駄目ぇ?」」
「まずは貴族様からだよ!」
そう言って三人で運んで行く。
俺はルイス達に運んで行く。
ルイスがアリスを起こしに行っている様だ。
六人分の料理を並べるとルイスがアリスを連れて戻って来た。
「良い臭いがするのです。」
「アリス、顔を洗うのが先でしょう?」
「すぐに行って来るのです!」
三分程で帰って来た。
時間はちょうど七時三十分だった。
【いただきます!】
「「「いただきます!」」」
皆は今日も元気だなと思いながら食事を食べていると女将さんに呼ばれた。
「小僧、貴族様がお前に会いたいと言ってるんだが食事中だから待ってもらうかい?」
【ちょっと待って下さいね。】
そう言って早食いして済ませると口を拭い。
【女将さん、ルイス達のお代わりをお願いしますね。】
「分かった。済まないね小僧。」
【いえ、大丈夫ですよ。】
そう言うとルイスが送り出してくれる。
「行ってらっしゃい、貴方。」
ルイスが言ってくれたのを口切に皆も言ってくれる。
「「「ヘファさん、いってらっしゃい!」」」
元気良く送り出してくれる。
階段を昇りながら、この間みたいにお礼でも言いたいのかな?
等と考えていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「お兄さん、大丈夫かな?」
心配になったのだろう、リズがそんな事を言って来た。
「大丈夫よ。」
私が答える。
「・・・違うの。最近お兄さんと顔を合わせる事が少なくなったから。」
「そうね・・・。」
「そうですね。」
「アリスも心配なのです!」
口々に皆が言って来る。
そうなのだ。
あの人は忙しく飛び回っているのでリズ達は碌に喋れていない。
「安心なさい、あの人も分かっているわよ?その代わり朝御飯は豪勢になったでしょう?」
「うん、でも喋ったり出来ないのは寂しいよ・・・。」
深刻な顔で言うリズ。
これは何とか時間を作ってもらう必要があるわね。
そう思うとあの人の上がって行った階段を見上げるのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
三階に着く。
一呼吸入れてから貴族様の部屋に向かう。
今日は護衛さんは呼びに来なかった。
部屋のドアの前に着く。
護衛の人達がキラキラした目でこちらを見て来る。
『ヘファイストス様ですね。今日の御飯も期待してます。』
『暖かい物ってなんですか?』
と囁いて来た。
後で食べるのだろうか?
冷めちゃうじゃないか。
それに、この護衛さん達も腹の空いている時間だろうに。
『お勤めご苦労様です。今日は暖まってもらおうと思って牛のシチューを作ってありますので。』
そう言うと喜んでくれた。
『楽しみなんです。』
『お気遣い、ありがとうございます。』
そう言って一人がドアを開けて中に確認する。
「アーゼ様、リーゼ様、ヘファイストス様がいらっしゃいました。」
「「そう、お通しして。」」
声が聞こえて来た。
「「ではどうぞ。」」
護衛さん達にそう言われて中に入る。
宿屋全体が温かいが、この部屋は特に暖かい。
そう思っていると声が掛けられた。
「そんな所に立っていないでこちらにいらっしゃい。」
「そうよ、こちらに来なさいよ。」
見ると食事を食べ終わったのだろう。
そのままテーブルに着いているので右のアーゼ様の方に近寄って行く。
左を見ると護衛の人が四人壁際に立っているのが見える。
跪くと頭を下げる。
リーゼ様がこちらに寄って来る。
アーゼ様の椅子の背もたれに肘をつけ同じようにこちらを見ている。
二人そろうと、とても綺麗だ。
そう思っているとアーゼ様が話始める。
「早速ですが、ヘファイストス様、『オーガの牙』と言う冒険者達について何か知っていらっしゃいますか?」
「知っているのなら聞かせて頂けないかしら?」
そう聞いて来た。
なんだ例の護衛の件か?
しかし相変わらず何か嫌な感じがするんだよね。
何なんだろうか?
そう思いつつ答える。
【左様ですね。この街では一番有名な冒険者パーティーでございますね。オーガを討伐したので彼らのパーティー名になったと聞いております。】
「・・・腕は確かなようですが信用できる方々なのですか?」
「そうよね、どうなのかしら?」
【心配するには及びません。彼ら以上に信頼できるパーティーはおりませんよ。】
即答する。
そう、ジャスティン達なら大丈夫だ。
「左様ですか、ならば『アーサー』という者に心当たりはございますか?」
済みません!
俺の事です!
とは言えないので無難に答える。
【彼らの戦力の一人であると聞いております。そこそこの冒険者と言う話でございますね。】
「そうなのですね。実はオーガの牙全員に声を掛けて頂いたのですけれど、そのアーサー殿には断られてしまったらしいの。」
「そうよ!私達の頼みを断るなんて・・・。」
あー、本業をしないといけないから遠慮したんだよね。
【彼にも何か都合があったのではないでしょうか?】
「この街で一番の冒険者パーティーだと聞いていたのです。全員に会えないと意味が無いのですわ。」
「そうなのよ!だから貴方が責任を持って連れて来て下さらない?」
何でそうなるの?
しかも自分で自分を連れて行く事なんか出来ないんですが?
【申し訳ございません。私では難しいかと思われます。】
無難に答えておく。
そうするとアーゼ様とリーゼ様が俺の方をジーっと見て来る。
「アーサーと申す方は、真っ赤なフード付きのマントをお召しになっているとか?」
「左様ですね、姉様。その者と直接お会いしたいわね。」
うーん、バレていないよな?
【私にはその者が何処の宿にいるのかも分かりません。ギルドマスター等に聞くのがよろしいのではありませんか?】
「「・・・。」」
二人共、俺の方をジーっと見ている。
二人の双眸には何が写っているのだろうか?
そうすると諦めたように言ってくる。
「では、ヘファイストス様。その者の分を貴方様が補って下さいませんか?」
「そうね、責任を取って頂けない?」
うわあ、なんか無茶ぶりして来たぞ?
【私は冒険者ではありません。ただの鍛冶師でございます。アーゼ様とリーゼ様には申し訳ございませんが護衛等とてもとても・・・。】
そう言って頭を下げる。
「リーゼには鑑定のスキルがありますの。貴方を鑑定させて頂いてもよろしいかしら?」
「そうね、その方が早いわね。良いかしら?」
【構いませんが、一つ条件がございます。】
「「何かしら?」」
【私めは鍛冶師でございますので条件が揃っていなければご遠慮させて下さい。】
「分かったわ、ではリーゼ。」
「はい、姉様。鑑定。」
リーゼ様がそう言うと俺の体が青く光る。
「どうなのかしら、リーゼ?」
「平凡なステータスですわね、姉様。」
「そう・・・。」
「鍛冶師にしては剣術のスキルが突出しているのは何故なのかしら?」
【それは、剣のスキルを高くしておかなければ旅の時にモンスターに襲われるからですよ。】
「ふ~ん、「ガラテア!」」
「ッハ!」
リーゼ様に名前を呼ばれたであろう護衛騎士が一歩進み出る。
「貴女、剣術スキルが高かったわよね?この方と勝負しなさい!」
「リーゼ!?」
「姫殿下の命令は絶対であります。謹んでお受けさせて頂きます!」
「これでヘファイストス様がどれほどの剣の腕か分かるでしょう?ね、姉様。」
「もう、貴女は乱暴なやり方しかしないのだから。でも良いわ、お願いできますか?ガラテア。」
「かしこまりました!」
俺の事は無視かな?
「この時間だと通りに人もいないので外でやってもらっても良いかしら?」
「かしこまりました。」
あのー、俺の意見は?
そう言うとゾロゾロと移動し始めた。
なんか戦う事になっちゃったぞ?
『アリステリア様』これも試練でしょうか?
俺は大人しく付いて行く事にした。
一階に降りると皆がいた。
ゾロゾロと降りて来る俺達に驚いている。
ルイスが近寄って来る。
「ちょっと貴方、今度は何をしたのよ!」
【いや、話が良く分からんうちに立ち会う事になっちゃったんだよ。】
「貴方、鍛冶師でしょう!?」
【いや、そうなんだけどさ・・・。】
「ヘファイストス様、こちらの女性は?」
【えっと、パートナーでルイスと申します、アーゼ様。】
「ルイスと申します。この度は連れがご迷惑をおかけ致しまして申し訳ございません。」
ルイスが頭を下げている。
「迷惑を掛けているのはこちらです。少し貴女の良い方をお借り致しますわね・・・そうね、ルイス嬢。貴女方もご覧になられては?」
「お兄さん何をしちゃったの!?」
「貴族様ですね・・・。」
「ヘファさん、頑張るのです!」
「ヘファさん喧嘩なのですー?」
君達、止めてはくれないんだね。
うーん、アーサーだってバレると困るしな。
ここは精々無様に負けてみますか。
扉を開け通りに出る。
まだ朝なので肌寒い。
ガラテアと呼ばれた騎士様が中央で構えをとって素振りしている。
やる気満々の様だ。
四人の護衛が通りを長方形に見立ててその角に行き野次馬を整理している。
後の一人はアーゼ様とリーゼ様の護衛だろう。
宿の中から他のお客さん達も出て来た。
女将さんも見ているな。
うーん、無様に負けると何を言われるか分からないな。
でも勝っちゃうとなぁ・・・。
困った。
ここは無難に相打ちを狙ってみるか。
ガラテアさんが剣を構える。
うん?
鉄製の武器だね。
え!?
本物で勝負するの!?
「ヘファイストス様、実剣で行いますので用意して下さいます?」
リーゼ様がそんな物騒な事を言って来る。
「貴殿、諦めて勝負なさい!」
ガラテアさんが言って来る。
ルイス達の方を見るとベスが賭けを始めている。
こら、ベス。
ここは止める所だろう!
そう思ってルイスを見ると神様に祈っているように両手を組んでお祈りしている。
そうだ、心配はかけられないよね。
「それでは。」
バックパックから相棒を取り出し俺も構えをとる。
・・・。
アーゼ様の「始め!」の声で模擬戦が始まった。
初めのうちは互角を演じていた。
「兄ちゃん!負けるなよ!銅貨十枚かけてるんだ!」
「女騎士さん、俺はアンタに銅貨十枚だ!勝ってくれよ!」
「今までの金を取り戻すんだ!」
「兄ちゃん負けて良いんだぞ!」
次々に野次馬から声が上がる。
お前ら楽しんでやがりますね?
数合剣を合わせた所で、この人言うだけあって剣術スキルが高いぞ。
多分五十は行ってるな。
と、そろそろ剣を巻き上げるか。
そう思ってわざと隙を作る。
「隙あり!」
ガラテアさんが肩に剣を突き出してくる。
此処で巻き上げ・・・あれ?
手加減を間違えたのかガラテアさんの鉄の剣が斬れてしまった。
弧を描き飛んで行く剣先が地面に突き刺さった所で。
「勝負あり!勝者ヘファイストス!」
と、アーゼ様が言った事で勝負が終わってしまった。
歓声が上がる。
どうやらガラテアさんに賭けた人が多かったようだ。
膝をついている人が多いからね。
ベスはホクホクだろうな。
だが、後で覚えてろよ?
ガラテアさんはうずくまって肩で息をしている。
「き、貴殿の勝ちだ。」
「いえ、運が良かったのでしょう。それに装備の差です。良い勝負でしたよ。」
そう言うと二人でアーゼ様の前に来た。
跪くとアーゼ様から声が掛かる。
「良い勝負でした。ガラテア、この勝負を糧として励みなさい。」
「ははっ!次は姫殿下方の御期待に応えて見せます。」
うーん、俺はどうなるんだろうね?
「ヘファイストス様、戻りますわよ?」
ルイス達を残し三階の部屋に戻るのであった。
此処まで読んで頂きありがとうございます。
いつものをば。
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