スキル様の気まぐれ
いつも読んで下さっている方こんばんは!
初めましての方もこんばんは!
執筆終わりましたのでお楽しみください。
片付けが終わって部屋に行くと少し休むと言ってミカとアンナは床に転がっている。
「動けないわ。」
「む~り~。」
ラフィアも「食べすぎました。」と言って座り込んでいる。
ナナリーさんとアリシアさんは大丈夫だろうか?
俺は八分目で抑えていたので早速作業に取り掛かる。
まずは頭から。
顔を覆うヘルムの様にするが、獣人特有の耳を出すので、寸法通りに上方に二か所穴を空けてある。
作り始めているとミカがジーっと見て来る。
腹一杯に食べてまだ動けないのだろう。
視線だけ向けて来る。
時間が無いのでどんどん作っていく。
そして頭、首、上半身、腕、手、下半身、靴と作り上げた。
七か所を作った頃にはミカとアンナも復活していた。
そして試着と調整をミカに任せると試着しにアンナと別室へ行った。
鎧はスポーティーなデザインで固めてあるが、そこいらの弓なら当たっても弾き返す弾力がある。
試しにマネキンに着せてアンナに弓を射ってもらったが衝撃を反発して弾き返すようになっていた。
アンナはかなり驚いていたがね。
斥候という事で防水の迷彩色のフード付きの上掛けを作った。
ミカに見せるとじっくりと眺めながら感想を言って来る。
「これは森の中だと見つけにくいわね。こんな染め方もあるのね・・・。」
太鼓判を押されたので同じく夜用の真っ黒な物も作ってみた。
俺はラフィアのレザーアーマーの制作に取り掛かっているとミカとアンナが状態を見せに来た。
「アンナさん着心地はどうですか?」
「うん、ピッタリだよ~、さすがアーサー君。今度は体でお礼しないとまずいかな~?」
と、言って笑っている。
「機会があれば是非!」
そう言うとミカに後頭部を「スパーン!」と引っ叩かれる。
おのれミカ、邪魔をしおって!
そう思っているとミカが言いにくそうに・・・?
「えっと、あの、ラフィアさんのサークレットはアタシが作っても良いわよね?」
と、言って来たので快諾した。
するとミカは嬉しそうに俺を指さして来た。
「アンタには負けないからね!」
と、言って鍛冶場に行った。
アンナとラフィアが「「ふふふ。」」意味深に笑っていたので【何かあったの?】?と聞くと笑顔で答えられた。
「乙女の秘密なんだな~。」
「アーサー様でもこれだけは内緒です。」
そう言って答えてくれなかった。
ミカがサークレットを作っている間に弓を作ろうと工房へ来ていた。
アンナも一緒だ。
弓より引くのが楽で威力のある「コンポジットボウ」所謂「複合弓」を作ろうと思っていた。
コンポジットボウは最大射程120mだとか前世の聖典と言う漫画で読んだ事があったので、今の弓より射程も約1.5倍以上になり、威力も物凄く上がるだろう。
木の板をニカワでくっつけるとスキル先生の勧めに従って形を作り板金を張り合わせハイクオリティーのコンポジットボウを作り上げた。
いつもの大型弓と違うので心配になったアンナが問いかけて来た。
「アーサー君、こんなに小さくて大丈夫なのさ~?」
そう言っていたが、いつもの位置から試射をすると鉄板を四枚程貫いて五枚目で止まっていたので驚いていた。
驚いた時に尻尾が「ビン!」と毛を逆立てて上がるのが見ていて可愛かった。
【アンナさん。この弓は此処だという時以外は全力で引かないで下さいね。】
「どうしてなんさ~?アーサー君。」
【威力重視で作ってあるので全力で撃つと簡単な城門なら五~六発で吹き飛びます。】
「っへ!?どういう事なんさ~!?」
【先程は鉄の矢で半分ぐらいの力で引いてますよね?】
「そうだね~。」
【全力で引くとさっきの鉄板だと鉄の矢でも十枚は貫きます。ただ代償があって耐久力が大幅に減るんです。】
「ふむふむ~。」
【なので手入れと修理。それから弦の張替はこまめにしてあげて下さい。じゃないと壊れますよ。】
「分かったんさ~。相棒は壊したくないんさ~。」
本番で使う矢は矢尻に鋼を使っているので貫通力が桁違いだろう。
とりあえず鋼の矢は100本用意した。
念の為100本の予備を作り俺のバックパックへ入れておく。
作り終わって部屋に戻っているとミカが納得の行ったのであろうサークレットを作って来た。
一度鍛冶場に行く。
鑑定すると最大耐久値が125だったので補強アイテムで255にしておく。
その間も改修している俺の作業をミカがジーっと見ていた。
見られているが気にしないで作業を進める。
これも勉強になると良いね。
サークレットを改修して行く。
金で細工して宝石を五個はめ込むようにしていくようにルーン文字で文様を付けて行く。
「成程ね・・・そうやって意匠をするのね?」
聞いて来たので答える。
【そうだよ。本当は補強効果のある宝石を付けられると良いんだけれどね。】
「補強効果?」
【うん、例えばマナが上がったりとかヒットポイントが上がったりとか防御力も上げないとね。】
「その五個のはめ込む穴に宝石を全部付けるつもりなの!?」
【そう、魔法使いは防御力を上げるのが鎧系だと「練成」しないと難しいからね。】
「それでサークレットの宝石で補強しようとしているのね?」
【そうそう、ただその宝石が無いので今はルーン文字だけになってしまうけれどね。】
宝石をはめ込みながらそう言う。
「アンタの発想には驚かされるわ。」
【良いかいミカ、発想力は武器になるから意匠も肝心なんだよ?】
「効率性を求めるのね?」
【そうだ。今回は簡単な意匠で済ませているけれどね。】
「これで簡単なの?アタシには精密に見えるけれど?」
【そんな事は無いさ。ミカもこれぐらい出来るようになるよ。】
「それはアタシの頑張り方次第って事ね!でもアンタがさっきから言ってるけれど錬成なんてもう伝えてる人がいないってぐらいな物なのよ?何で知ってるのよ?」
へー、錬成は失われた物なのかね?
ゲームでは普通にやってたし、俺のスキルにも錬成はある。
話を適当に合わせておくか。
【ガーゴイル族の首都、「エギエネスシティ」に行った事があってね。そこの文献で調べた。】
「アンタ、ガーゴイル語が読めるの?」
【うん、それだけじゃないよ。エルフ語もドワーフ語も全て読み書きが出来る。】
「アンタ・・・どんだけ勉強したのよ?」
話が長くなりそうだったので誤魔化す為にミカにアンナの鎧を黒く染めてもらうように言っておく。
「黒に染めるのはどうしてなの?」
【基本的に黒にしておけば森の中や夜に見つかりにくいと言うだけなんだけれどね。】
「それは経験談なの?」
【そう、経験談。あとはツヤを出さないように出来れば最高だね。】
「ああ、光の反射を防ぐのね。」
【そうそう、ジャスティン達の鎧は防護塗料を使ってあってツヤがあるから夜の行動には適さないからね。パーティーメンバーで唯一斥候が出来るアンナさんの鎧を黒く染めて目立たないようにするんだよ。】
「成程ね。これは実戦から得た知識なの?」
【そうだね。】
「・・・勉強になるわね。」
【結構重要なんだよ?】
「・・・で、アンタから見てアタシのサークレットは何点なのよ?」
ビシッ!
っと指をさして言って来る。
【点数を付けるのなら六十点かな?ただミカは伸びしろがあるから挫けなければ90点ぐらいの物が出来ると思うよ?】
「そう、ありがと。アンタの言う100点をいつか作って見せるわ!」
【基本俺は100点は付けないからなぁ。鍛冶の道は一日では出来ないのである。精進したまへ!】
「ふ、ふん、分かったわよ。」
そしてサークレットが出来上がるとラフィアの皮鎧を作る番になった。
【首から行こうか。】
「じゃあアタシは靴から行くわね。」
【お願いね、ミカ。】
「絶対に負けないからね!」
ミカの顔は雲が晴れた時の空のような顔をしていた。
何か吹っ切れたのだろうか。
一歩進んだかなミカ?
そう一歩ずつ進んで行けば良いんだよ。
そうして鎧の制作に取り掛かる。
まず首部を作ろうとしたのだがコーティング剤が無い。
魔法の使えるハードレザーにしようと思ったのだが。
仕方が無いのでギルドの購買に買いに行く。
運が悪い。
売り切れていた。
仕方がないのでコーティング剤を作る事にした。
スキル任せで作って行く。
高品質のコーティング剤が出来たので切った皮をコーティング剤に浸け込んで行く。
そして皮に浸透したら干して水分を抜く。
ハードレザーの皮が出来た。
ついでに何枚か作っておく。
干している間に乾いた物から鎧を作って行く。
まずは首、出来上がると上半身、腕、手、下半身、足と作っていく。
遠距離ならばこの鎧でも弓矢を弾いてくれるだろう。
ラフィアに試着に行ってもらう。
そう言えば靴を作りに行ったミカが戻って来ないな。
と、思っていると会心の出来だと革のブーツを持って来た。
「アンタ、もう作ったの?」
【うん、一通り出来たよ。】
「早すぎるわよ!作る所が見れなかったじゃない!」
と、言って後頭部を叩かれた!
【いや待っていたんだよ?】
「出来上がってるじゃないの!」
【いやミカには、そこに干してある保護剤で加工した革から鎧を作ってもらおうと思ってさ。】
「ほほー、挑戦状って訳ね?」
【そんな物騒な事は思っていないけれどね。】
「いいえ!挑戦と受け取ったわ!見てなさいよ!」
ミカはやる気満々だ。
【じゃあ作ってみてくれるかな?悪いと思った所は注意して行くからね。】
「ビシビシやってちょうだい!アンタより良い物を作ってやるわ!」
そうしてミカの鎧作りが始まった。
真剣に首部分から作って行く。
【ミカ、折り返しは滑らかにしないと肌に当たった時に気になって集中できなくなるよ?最悪、擦り傷が出来るよ?】
「分かったわ。」
【革の部分が当たると人によってはアレルギーでかぶれる事があるから内側の布もちゃんと張らないとダメだよ?】
「あれるぎ?とにかく分かったわ。」
【うん、良くなったね。このまま行こう。】
「分かったわ。」
ミカは集中して鎧を作り上げていった。
上半身を作った所でラフィアが戻って来た。
「アーサー様、ピッタリです。」
御機嫌な様子のラフィアをミカが惚けた顔で見ている。
正確には鎧をだろうか?
【ミカ、手が止まっているよ。】
「わ、分かったわ。」
【ラフィアさん悪いけれど鎧を脱いで待っていてもらえますか?】
「はい、かしこまりました。アーサー様?」
ラフィアが鎧を脱いで来るとしばらくしてミカの作った鎧が完成した。
【ラフィアさん。今度はこっちを着てもらえますか?】
「分かりましたわ。」
そう言ってミカと試着室に向かって行く。
しばらく待っていると鎧を着たラフィアとやり切ったと言う顔のミカが戻ってきた。
【着心地はどう?】
俺の見立てだと恐らく・・・。
「調節してもらったらこちらもピッタリですわね。ただ・・・」
ミカが「ゴクリ」と唾を飲み込む。
「こちらの方が動きやすいですわね。」
ラフィアがそう言ってくるっと回る。
体の部分の鎧を鑑定すると耐久値が138だった。
【補強は必要だけれど良い感じに仕上がっているね。】
「会心の出来だもの!どう!この鎧は!」
【うん、補強して色を染めたら完成にしよう。】
「ちょ、アンタの鎧はどうするのよ?」
【今回はミカに負けたよ。その鎧でお願いね。】
「はぁ!?どう見てもアンタの方が・・・。」
【いや、俺の鎧は鎧と体の当たっている所に余裕が無い。それだと寒暖の差で革が伸び縮みする。その差できつくなったり緩くなったりして場合によってはサイズが合わなくなる。】
「・・・そうね。」
【ミカの鎧は其処を考えて作ってあるからその心配がない。鎧の隙間にも気を使って寒さ対策に当て布がしてある。ミカの鎧の勝ちだよ。そこまでの細かい所は今回の俺には作れなかった。】
スキル先生でも気まぐれがあるのだろう。
ミカが涙を流しながら「あじがろう。」と言っている。
どうやら「ありがとう。」と言っているようだ。
泣いているので言葉になっていない。
俺が鎧をバックパックにしまっているとラフィアがミカに感謝を言っていた。
「ミカ様、大事に使わせていただきますね。ありがとうございます。」
と、言ってミカを抱きしめていた。
そう、ミカは一歩踏み出せたのだ。
その後のラフィアに鎧を脱いでもらって補強をし最大耐久値を255にしてから好みの色に染めてもらった。
黒っぽい赤に染められた鎧はとても美しく見えた。
「アーサー君、ミカさんありがとうね~。」
「ミカ様、アーサー様、ありがとうございました。」
そう言ってアンナとラフィアは鎧を着たままギルドを出て行った。
ジャスティン達に昨日のお返しをするそうだ。
「アンタも・・・ありがとうね。」
【いや、俺も勉強になったよ。こちらこそありがとう。】
そう言うとミカが俺を指さして言って来る。
「次こそは完全に勝って見せるからね「ヘファイストス!」首を洗って待っていなさい!」
ニッコリ笑っている。
俺はミカが初めて名前を呼んだ事に驚いている。
そうして忙しい二日間の武具作りが終わる。
さて、今夜は晩餐会だ、そちらも頑張らないとね。
そう思っていたが、時計が十五時を知らせる鐘を鳴らしたので慌てて二人で部屋を片付けるのであった。
此処まで読んで下さりありがとうございます。
ミカの心情を表現するのに凄く苦労しました。
それでは 次話 まずは味見から でお会いしましょう!
それではおやすみなさい!




