アリシアさんの事件簿
いつも読んで下さっている方ありがとうございます。
初めましての方、こんばんは。
執筆終了しましたのでUPいたします。
それではお楽しみください。
片付けも終わり、帰ろうと四人で歩いて行くとカウンターでまた騒いでいる人がいる。
巻き込まれるのは嫌だなとか思って見ているとまたアリシアさんだった。
一人の商人さんと二人の護衛と揉めているようだ。
「姉ちゃんよ?謝るにしても誠意が無えって言ってるんだぜ?」
「ですから先程から済みませんでしたと、何度も謝罪しているではありませんか?」
「そんなすまし顔で言われてもな、こっちは納得出来ねえのよ?分かるかい?」
「謝る以外に方法はありませんが?」
「だからその謝り方に誠意が無えってさっきから言ってるじゃねえか!」
うーん、早く帰りたいからヒートアップする前にとりあえず行ってみるかな。
近づいて声を掛ける。
【アリシアさん、今日の分は終わりましたので帰りますが、お困りですか?】
「ヘファイストス様。お疲れ様です。」
そう言って俺にお辞儀をして来る。
「おう、兄ちゃん。今は話し中だ、他のカウンターに行ってくれねえか?」
【これは、失礼致しました。俺の担当者がアリシアさんなので話しかけたのですが、何かございましたか?】
そう言うと商人さんが俺の胸ぐらを掴んできた。
「ならお前からも言ってやってくれよ。この姉ちゃんに頼んだ商品を目の前で落として割られたんだ。上級ポーションだぞ?」
ほうほう、ポーションの瓶てそんなに簡単に割れるのかな?
ポーションの瓶は規格が定まっているらしく、落とした程度では割れない物になっているはずだ。
飲み終わった瓶は放っておくと砂になって崩れる特別製なのだ。
「息子の冒険者の初陣の為に取り寄せておいた物だ。明後日が初陣だから贈り物にする予定だったんだぞ!」
ふむふむ、プレゼントなのか。
剣とか鎧は良いのかな?
「自分で不始末をしたのに、ゴーレムみたいに謝られても納得がいかねえんだよ!分かるだろう兄ちゃん?」
んー、アリシアさんはエルフだからなぁ。
見かけより長生きしていると思うんだけれど、感情が希薄というか、俺もそう思ってたからなぁ。
ミカとジャスティンとダンがこちらを見ている。
特にジャスティンの視線を感じる。
ジャスティン、何とかしてやってくれってか?
うーん、直近の上司はどうしたんだ?
ギルドマスターは?
いないのか、しょうがない。
この人放っておけないんだよね。
カウンター側のアリシアさんの隣に行く。
【アリシアさん、人は謝る時には申し訳ないという顔をするものなのです。】
「そうなのですか?申し訳ないとはどのような感情なのでしょうか?」
そこからか!
これは骨が折れそうだ。
【アリシアさんには友達はいらっしゃいますか?】
「同じ里から来た者がいますが、その者の事でしょうか?」
【そうです、人間的に言えば友達という区分けで大丈夫でしょう。】
「成程、友達。なんとなく分かりました。」
【その友達が大切にしている物は知っていますか?】
「世界樹の雫と呼ばれる宝石があります。」
そこまで詳しく話さなくても結構です!
【では、その世界樹の雫がアリシアさんのせいで壊れてしまったとしますよね?】
「はい。」
【その時にはどのような気持ちになりますか?】
「嫌な・・・とても嫌な気分になりますね。」
【それを表情に出せますか?】
「表現をしろと言う事ですか?」
ロボットに教えている気分だ。
【そうです、その気持ちが『申し訳ない』です。】
「成程、私にはそれが足りなかったと言う事ですね?」
【そうです。ましてや子供への贈り物だったのです。壊されれば当然ば怒ります。】
「怒り・・・。」
【そうです、怒ります。人間には色々な感情があります、怒りや悲しみ等色々です。】
「はい。」
【それをこれから勉強していきましょう。】
先は長そうだが、頑張ってもらおう。
「分かりました。」
【商人さん、済みませんがこの通り悪いとは思っておりますので矛を収めて頂けませんか?】
「だが、割れてしまったポーションはどうする?明日渡す予定なのだぞ?」
そう、不思議に思ってたんだよね。
ポーションの瓶は冒険者が持っている物なのでそう簡単には割れない。
ましてや落としただけでは割れないと思う。
ちょっと仕掛けてみるか。
【商人様は現物は鑑定しておりますか?】
「先程、割られたのだ。鑑定をする暇などあろうはずがないではないか!」
【左様ですか、それではこちらをお持ち下さい。】
そう言って俺は高品質の上級ポーションを取り出す。
「これは?」
【高品質の上級ポーションです。】
「何だと!?鑑定させろ!」
【構いませんよ?】
引っ手繰る様に俺からポーションを取る。
「鑑定。」
・・・
「おお!真に高品質の上級ポーションだ!礼を言うぞ!小僧!」
礼を言うのに小僧扱いかよ!
礼儀の面で言えばアンタだって似たようなもんだろう?
「良い物が手に入って俺はとても気分が良い。この女の事は許してやろう。」
【ありがとうございます。それとポーションの瓶を貸して頂けますか?】
「何をする気だ小僧?」
瓶を手に取り掲げる。
【このように・・・。】
そう言ってポーションの瓶を落とす。
カチーン
【ポーションの瓶は簡単には割れません。偽物を掴まされたのではございませんか?】
「なんと!それでは・・・!?」
そう言うと赤くなった商人さんが護衛の一人に向かって言う。
「あやつを屋敷まで連れてこい!大至急だ!証書を確認させてやるぞ!」
「かしこまりました。」
そう言われた護衛の一人が慌ててギルドを出て行く。
俺は瓶を拾い上げると商人さんに渡す。
【大切な物だからこそ、鑑定は忘れないようにして下さいね。】
「うむ、良い勉強になった。それでは急ぐのでな、小僧。」
そう言って護衛を伴ってギルドから出て行く。
何とか収まったようだ。
ふう、良かった。
「・・・助けて頂いてありがとうございます。」
アリシアさんがお礼を言って来るがその顔は無表情だった。
もっと自然に笑顔とか出ると良いのになと思って提案してみる。
【アリシアさん、とりあえず勉強の為に俺とお友達になりましょう。】
「友達ですね。分かりました。よろしくお願いします。」
いや、即決ですか?
ミカが近くに来てカウンター越しに言って来る。
「この底なしのお人好し!それと口説いてるんじゃないわよ!」
スパーン!
と、後頭部を叩かれた。
ジャスティンがまあまあとミカをなだめている。
ダンがボソッと言う。
「でもよ、アーサーは損しただけじゃないか?」
財布は痛いがしょうがない。
そう、しょうがないんだ。
【今回は勉強代と言う事に致しましょう。】
そう言うとダンも『このお人好しめ。』と言ってヤレヤレという顔になる。
まぁ、良かったと思っておこう。
【アリシアさん、これから人間の感情も勉強していって下さいね。お礼を言う時は笑顔ですからね?】
「かしこまりました、ヘファイストス様。」
そう言って、ニッコリと微笑んでから頭を下げて来た。
言うとやってくれるんだよな。
・・・前途多難だ。
だけれど似ているんだよ『アリステリア様』にさ、放っておけなかったんだよね。
さてと今日の所はこんな感じかな。
ジャスティン達は鎧のまま帰って行った。
アンナやラフィアに見せるのだそうだ。
うんうん、その調子で他の冒険者にも見せつけてくれたまへ!
ミカはそんな俺の方を見て言って来た。
「はんばっぐ?って言うのを楽しみにしておくからね。明日も迎えに行けばいいかしら?」
【そう、お願いするよ。で、ミカは何処の宿屋に泊まってるんだよ?】
「アンタなんかに教える訳が無いでしょう!」
またその顔かよ。
まあ良い。
なんか今日は精神的に疲れた。
そういえばエルフってみんなアリシアさんみたいな無機質な感じなのかね?
疑問に思ったが出来るだけ助けようと思った。
『アリステリア様』に似ているからね。
今度は俺が助けても良いじゃない?
自己満足だけれど。
そうしてミカと並んで東通りを中央に向かって進んで行く。
噴水広場に着くとミカが言って来る。
「あたしゃーこっちだからー。」
そう言って西に向かって歩いて行く。
「アーサー、僕達は南通りなので、今日は本当にありがとう。本当にお代はいらないのですか?」
【ジャスティンさんとダンさんには悪いのですが、俺の武具の宣伝をして頂ければ良いですよ。】
「しかし・・・分かりました。大いに宣伝致しましょう!」
「これを着て宣伝するぜ、アーサー。」
【お願い致しますね。】
それでは二日後、十時に南門で会いましょう!」
「またな、アーサー!・・・ありがとうな。」
そう言うと手を振っていた。
ミカとジャスティン達と別れいつもの宿屋へと向かう。
宿屋に着くと女将さんに挨拶し、『いつもの』席で皆と晩御飯を食べる。
「「「ごちそうさまでしたー!」」」
と、言う合図と共に、皆各々の部屋に戻る。
今日はルイス先生の算術教室だ。
アリスもしばらく戻って来ないだろうから晩餐会の下準備をしておこう。
女将さんに言ってキッチンの片隅を使わせてもらう。
そしてハンバーグの種を作る。
さらにメンチカツの種も作る。
まだまだ、コロッケの種も・・・
そう言えばミカにハンバーグを食べさせると約束していたなと思い出し、デミグラスソースやクリームソース、ホワイトソースなどのソース類も追加で作る。
おっと、ドレッシングも忘れないようにせねば、和風、中華、シーザー等も作った。
後は無くなったマヨネーズをっと・・・。
オリーブオイルは普通に売っているので良かった。
うん、完成に近づいて来たね。
ふう、色々作って満足した。
全部バックパックに入れてしまっておく。
片付けをして湯桶を持ち部屋に戻る。
アリス達はまだ勉強をしているようだったのでその間に体を拭いておく。
しばらくして体を拭き終わったので桶を返しに行く。
階段を昇って行くとアリスとリズとマオが部屋から出てきた所だった。
リズととマオは『お休みなさい!』と言って部屋に飛び込んで行った。
きっとルイスに絞られたのだろう。
俺はアリスと部屋に入る。
明日はアンナとラフィアの鎧か。
頑張らないとね。
デザインはどんな物にするかな?
そう思ったのだが精神的に疲れていたのだろうか、眠るのには困らなかった。
此処まで読んで頂きありがとうございます。
多人数の会話の読ませ方を試行錯誤しております。
読みにくかったら申し訳ない。
次に生かしたいと思います。
評価、イイネ、ブックマーク等々、いつもありがとうございます。
大変励みになっております。
ありがたや~。
それでは次話 ミカとの仕事(仮 でお会いしましょう。
皆様、おやすみなさい。




