ミカ再び
読んで下さっている方ありがとうございます。
初めましての方もありがとうございます。
執筆終了したのでお楽しみください。
それではごゆっくりどうぞ。
皆が朝御飯を食べ終わると部屋に戻る。
ルイス達は今日も秘薬の採取だ。
今朝、ルイスと打ち合わせをして、俺が商業ギルドに行く事は伝えてある。
「お兄さん、行って来ます!」
完全復活したのだろうか?
リズが調子良さそうにそう言う。
【リズ、無理はしちゃダメだからね。調子が悪くなったらすぐにルイスに言う事!良いね!】
「そんなに心配してくれるなんて、いよいよアタシの魅力に気付いたのね!」
つーっと横を向く。
「何よー!少しぐらい良いじゃない!」
リズさんや俺はロリコンじゃないんだ。
もっと自分を磨いて良い女になれば周りが放っておかないよ。
【ベスとマオも頼むよ!】
「分かったわ、ヘファさん・・・。」
「任せてください!」
【アリスも気を付けるんだよ?】
「分かったのですー!」
アリスは今日も元気だ。
【ルイス、気を付けてね!】
「貴方も無理しないでね。」
と、言って手を振ってくれる。
そして皆の背中を見送る。
背中が小さくなるまで見送っていると後ろから「ガシッ!」っと肩を掴まれた。
この展開は、そう思って振り返ると。
「久しぶりね!とうとうアンタの秘密を教える気になったのね!」
ミカが元気に声を掛けてきた。
【ミカ!ミカじゃないか!久しぶり、元気にしていたかい?】
「元気も元気!ミカ様を侮るんじゃないわよ!」
【ミカ、色々とありがとうね。】
「どうしたのよ急に?」
【いや、馬車とかさ。本当に助かったよ。】
「それは良いのよ。それで、今日は手加減なんかしないでね。アンタの実力を見せてもらうわ!」
【お、お手柔らかにね。】
とりあえず時間までは間があったので宿屋に入ってもらう事にした。
【ちょっと支度をしてくる。】
そう言ってミカを座らせておく。
女将さんに紅茶を出してもらうように言っておいた。
部屋に戻ると支度を整え鍵をかけて女将さんに渡す。
【女将さん。行って来ます。】
「ああ、稼いできな!」
と、言って紅茶分の代金を支払う。
「まいどっ!」
そう言って女将さんは忙しいのか奥に行ってしまった。
さてと、とミカの方を見るとこちらを見ていた。
何か面白い事でもあったのかな?
【ミカ、どうしたんだよ?そんなにジーっと見ていても何も出ないぞ?】
「・・・アンタ、変わったわね?」
【俺は俺だ、変わってないさ?】
「いや、なんか変わったわ。上手く言えないけれど・・・。」
そんなに変わったのだろうか?
そう言えばラフィアにも大きくなったとか言われたな。
自覚は無いな。
【良しギルドに行こう!】
「分かったわ!」
そう言って二人で宿屋を出る。
「ところで工房を開かないのはお金のせい?」
【いや、俺は修行中だしね。それに店を出す方が優先事項なんだよ。】
「店なんかギルドの紹介の所で良いじゃないの?」
【いやこの場合『俺達の店』って言うのが重要なんだよ。】
ミカは「ふ~ん」と言っている。
そうこうしているとギルドに着く。
扉を開け中に入る。
中に入った途端、商人達からの視線がミカに集中している。
そういえば二つ名持ちなんだっけか。
カウンターに行こうとすると商人達がミカに話し掛けて来た。
「貴女様は、黒玉の鍛冶師様ではありませんか?是非お頼みしたい事が。」
「黒玉の鍛冶師様!依頼を致したく、お話だけでも?」
「黒玉の鍛冶師様、是非ともお話を・・・。」
「黒玉の鍛冶師様、こちらの青年はお弟子さんでございますか?」
等々、二つ名って凄いな。
そう思っているとミカが・・・あ、切れた。
「うるっさーい!これだからギルドは嫌なのよ!いい!今日は勉強をする為に来たの!だから依頼とかお話は無しだからね!分かった!?」
そう言われて慌てて商人達が去って行く。
「ああ、後ね言っておくけれど、この人はアタシの先生よ?分かった?」
ザワッ!
小声でミカに抗議する。
『おいミカ、先生はないだろう。皆、俺に注目してるじゃないか。どうするんだよ?』
ミカも小声で囁いて来る。
『良いからとっとと行くわよ!』
と、カウンターに進んで行く。
【お、おい・・・ああ、しょうがねえな。】
後を追う。
受付のカウンターにはアリシアさんがいた。
「ようこそいらっしゃいました。黒玉の鍛冶師様。本日はどのようなご用件でしょうか?」
先程のやり取りが聞こえていたのだろうアリシアさんがそう言って来た。
【おはようございます、アリシアさん。今日は手伝ってもらう為に来て頂いております。】
「おはようございます、ヘファイストス様。本日は一号炉の御利用の支度が整っております。」
そう案内してからミカの方をチラっと見る。
「黒玉の鍛冶師様が手伝いでございますか?お弟子にでもおなりになったのですか?」
言葉の後の方はミカに視線を向けていた。
ミカが反論する。
「エルフってどうして、そう上から目線なのかしらね!そういう所が嫌いなのよね!分からないアンタ!?」
「ドワーフに言われましても・・・。」
そう言って「クスッ」と笑う。
これはミカが切れるな。
そう思ってミカの口を手で塞ぐ。
「んっがっ!?」
【それではアリシアさん、部屋を使わせて頂きますね。失礼します。】
と、言ってまだ文句が言い足りないと暴れているミカを引きずって行く。
部屋の前まで来てから放すと文句を言って来る。
「ちょっと、アンタ!何で文句を言わせないのよ!後三時間は文句を言えたのに!」
【今日、明日には作らないといけないんだぞ?そんな事してる暇があると思うのか!?】
「っち、命拾いしたわね、あのエルフ。」
どんだけ文句を言いたかったんだろうか。
まずは裁縫部屋だ。
さてと、始めますか!
ジャスティン達のサイズ表をミカと見ている。
まずは鎧下の作成だ。
ミカは俺の裁縫作業を見ていると・・・質問攻め!?
「へえ、そんな所を縫うのね」
とか
「そこに綿を入れるのね、そうすると動きにくくならない?」
とか
疑問に思った事をどんどん言ってくる。
流石に勉強しに来たと言った手前、無碍にも出来ないので答えて行く。
【頭まで鎧下を広げないとヘルメットとかを被ると雪が降っていたら耳とかが金属と当たって凍傷するんだよ。それでここに切れ込みを入れて厚めの布で補強してやれば・・・。】
「成程ね、鎧の方に毛皮を張らなくても良くなるのね・・・。」
【そういう事。オールシーズンで使えるから毛皮を張る手間もいらなくなるんだよ。】
「おーるしずん?ふむふむ、だとするとここは・・・。」
と、良い感じにジャスティンとダンの鎧下が出来てしまった。
ミカに勉強させながらだけれど一人分一時間も掛からずに出来てしまった。
今日は時間が無いのでミカに予備も含めてもう一着ずつ作っていてもらうように言ってからカウンターに行く。
カウンターに行くとアリシアさんがいたんだけれど様子がおかしい。
どうやら買い取りに来た冒険者達と揉めているようだ。
「だからな?姉ちゃんの言う相場だと基準の相場より低いじゃねえかよ!何のための相場だ!」
「失礼ですが貴方がたの持ってきて下さっている素材は扱いがとても乱雑で買取基準の条件を満たされておりません。」
「こっちだって命を張っているんだぞ?それぐらい考慮に入れて買い取りをするのも仕事のうちじゃねえのかよ?」
うーん、お互いに言っている事は分かるんだけれどね。
急いでいるので他の人に言伝を頼むかな。
ごめんね、アリシアさん。
別のお姉さんを探す。
「お姉さん、済みません。至急で言伝を頼みたいのですが良いですか?」
「はい、大丈夫ですよ。どのようなご用件でしょうか?」
お姉さんに宿屋の地図の写しを渡し、ジャスティンとダンを呼んでもらうように言伝を頼んでおいた。
裁縫部屋に戻ると作業工程を進めているミカに言う。
【ミカ、ちょっと頼むね。】
「分かったわ、疑問点は後で聞くわね。」
そう言って厨房を借りて食事の支度をする。
ギルドの厨房は食堂のようになっている。
席にすると三十人ぐらい座れそうだ。
もちろんミカの分も作る。
御飯を炊き、買っておいた鮪で刺身を作る。
解体をしてもらって柵にしてある物をバックパックにしまっておいたヤツだ。
部位はミカの分を大トロと中トロを使ってみた。
俺は赤身が好きなのでそれで十分だ。
わかめと豆腐の味噌汁も作ってみた。
御飯が炊き上がったのでミカを呼びに行く。
【昼飯出来たぞー。】
「ちょうどキリが良いからありがたく頂くわ。」
そう言ってくれたので二人で食堂に向かう。
ミカが席に着くと作った料理を持って行く。
御飯も良い感じだ。
さすがスキル先生。
「「いただきます!」」
小皿に醤油を垂らす。
食べ方が分からないのだろう。
ミカが真似をする。
うん、久しぶりの刺身だ味わおう。
「ちょっと、アンタこれ生じゃないの?」
【良いから食ってみろよ。美味いぞ?】
ミカが生でなんて・・・と、そう呟いているのが聞こえた。
まず俺が食ってみるか。
鮪の刺身を食べる。
うん、美味い!
米にも合う!
ガツガツと食っていると食欲をそそられたのかミカも箸をつける。
醤油を付けてから恐る恐る口に運ぶ。
どうだろうか?
「美味しい!とろけるよう、でも生魚なんて大丈夫なの?」
【大丈夫だ。】
そう答えるとミカもガツガツと食い始める。
「美味しいわね。アンタこんなにおいしい物を皆に食べさせているの?贅沢な舌になっちゃうわよ?」
【実はまだ食べさせていないんだ。伯爵様の晩餐会に呼ばれているからそこでと思ってね。】
「こんな物を食べたら他の物なんて食べられなくなるわよ?」
【たまの贅沢なら良いだろう?】
「そうね、おかげでこのお米だっけ?が進むわ!」
【お代わりは出来るけれど、腹八分目にしておけよ?作業が出来なくなるぞ?】
「しょうがないわね。我慢してあげるから明日も何か作りなさいよね!」
【責任を持って作るよ。明日はハンバーグと言う物を作る予定だ。】
「食事だけ楽しみにしておくわ!」
【だけって、本業はどうしたんだよ。】
「それはそれ、きちんとやるわよ。」
【それならば良し、そのスープも飲んで見ろよ。ああ、かき混ぜてからな。】
「美味しいわね、しかしこの箸と言う物も慣れると便利ね。」
【それはだな、倭国と言う国で使われている物でだな・・・。】
ミカと楽しく食事をするのだった。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
自分も自炊はするのですが味音痴なので美味いか不味いかぐらいしか分かりません。
色々と調べながら執筆をするのがとても楽しいです。
これも評価、イイネ、ブックマークが増えているから。
そう!皆様のおかげです。
本当に感謝を!
それでは 次話 ジャスティンとダン(仮 でまたお会いしましょう。
それではお疲れさまでした。




