オーガの牙
作品を楽しみにして下さっている皆様、また初めましての方おはようございます。
執筆終了しましたのでUPいたします。
ではお楽しみください。
執務室だろうか?
とりあえず部屋に着いたらしい。
ゼパムさんがソファーを勧めてきたので遠慮無く座る。
しばらく待ってくれと言われて待っているとジャスティン達が部屋に入ってきた。
アリスも一緒だ。
良かった。
アリスはテクテクと歩いて来ると座っている俺の膝の上に座る。
この甘えん坊さんめ!
と、思いながら頭を撫でる。
そう言えば何処に行っていたんだろうね?
「さて、今回は君達に依頼を受けてもらおうと呼んだんだ。」
「ギルドマスター、アーサーは確かにパーティーメンバーだが、冒険者登録はしてないぜ?」
何故かニコニコしているダンが言う。
「今回は特例で依頼を受けてもらう。商業ギルドにも通達済みだ。俺をアッサリと倒したぐらいなんだから使えるのだろう?」
まあ確かにとダンがおどけて見せる。
ん?
ダンよ、右のポケットがやけに膨らんでいないか?
そうすると視線を感じたアリスが俺の方を見上げて微笑んで喋った。
「ダンおじさんは、アーサーさんに賭けたのでお金持ちなのです!」
「「「・・・。」」」
「ア、アリスちゃん、二人だけの秘密だったよね?」
「っは、内緒だったのです!」
と、口を押さえている。
【アンナさん!】
「りょ~。」
アンナが隙をついてダンのポケットから袋を奪う。
「あ!アンナお前!」
「銅貨がいっぱいだね~。おや~銀貨まであるよ~。どうしたのかな~これ~?」
ダンから銅貨等が沢山詰まっているであろう袋がアンナに奪われた。
「ちょっと待ってくれよ?本当に、ちょっとした出来心なんだよ!」
「アーサー様の試練を賭け事にするとは、没収です!」
ラフィアがそう言うとひったくるように奪い腰の鞄に入れる。
「パーティーの資金に致しますわ!」
ダンは両手をついてガックリしている。
アリスは俺の膝から降りてダンの側に行くとその肩に手をかける。
「おじさん、ごめんなさいなのです。」
アリスがそう言って謝っている。
アリス君、それは追撃になっているからせめてお兄さんと呼んであげなさい。
と、思っているとゼパムさんが話を始める。
「あー、話を進めよう。今回は盗賊退治の依頼だ。最近オールド・オーカムに狩りに出かけている新米冒険者が盗賊に襲われている。その盗賊を退治してほしいんだ。」
ゼパムさんが続ける。
「基本的には殺人者を殺しても人殺しにはならないんだが、アーサー達の実力ならば捕らえる事も出来るんじゃないか?今回は捕えてほしいんだ。」
「調べた限りで良いのですが人数は何人ですか?」
ジャスティンがそう聞いている。
「約三十人らしい。盗賊が初心者を捕らえて、男なら殺すか奴隷にして、女ならば娼館に売ると」
【分かりました、お手伝い致しましょう。】
声を遮って即決する。
「アーサー、やってくれるか!?」
【ええ、他人事では無いので、手伝いますよ。】
ダンを慰めているアリスの方を見て、うちの子がそんな目に遭ったら俺は耐えられるのだろうか?
そんな事を考えると殺意が芽生える。
それを察したラフィアが近づいて来た。
「アーサー様。落ち着いて下さい。大丈夫でございますから。」
そう言って抱き寄せられ顔がラフィアの胸の中に納まる。
「きっと捕らわれた方々は生きていらっしゃいますから、私達で助けましょう。」
【・・・ありがとう、ラフィアさん。俺もまだまだ未熟ですね。】
「良いんですよ。まだまだ育って頂かなくては困ります。」
ゼパムさんが「んっん!」と咳払いをする。
すると赤くなったラフィアが離れて行く。
もうちょっとポニョポニョを味わっていたかったな。
そう思ったが話を続ける。
【で、ジャスティンさん達を呼んだと言う事は手伝ってもらうのですね?】
「そうだ。オーガの牙が手伝えばギルドの信用も回復するだろう。前任者は賄賂だらけの最低な野郎だったからな。」
【ん?と言う事はゼパムさんはいつからここのギルドマスターになったんですか?】
と、俺が聞くと・・・。
「・・・着任して二日目だ。」
成程、鉱山の事件が尾を引いていたのか。
俺も少しは係わっているなと思うと同情してしまう。
「討伐予定と期間、それと報酬はどうなるのですか?」
ラフィアがそう聞いて来る。
「報酬としては盗賊を捕えて来てもらうようになる。場合によっては首でも良い。捕えたヤツか首を鑑定すると、どんな事をやったのかが分かる。」
ラフィアが「首ですか?」と言って青い顔をしている。
俺も、グロ耐性が無いから勘弁してほしい所なんだけれどね。
怖いね異世界。
「ラフィア、捕らえれば良いのですよ。」
ジャスティンがそうフォローしている。
ゼパムさんが続ける。
「犯罪は罪科と言う項目に登録される。その罪科から報酬が決定される。重犯罪者だと金貨数十枚以上の報酬になる事もある。生きて捕えて来ればボーナスがあるぞ?」
立ち直ったダンが質問して来る。
「ギルドマスターよ、犯罪者を狩る賞金稼ぎはいないのか?あいつらと競合できればもっと早く片が付くだろうよ?」
「こんな王都の人間が寄り付かない程のド田舎に稼ぎに来るヤツがいると思うか?だいたいそういうヤツは傭兵団に入って名を売っている連中ばかりだぞ?」
「成程な、続けてくれ。」
田舎だったんだここ・・・。
良い所で過ごしやすいなーって思ってたのだが。
「そう、報酬の話だったな。後はギルドから少しだが依頼料が出る。いいか、少しだからな?とにかく金が無いんだ。」
俺が手を上げる。
「何だ?アーサー?」
【せめて御飯代ぐらいは追加で請求できませんか?】
「御飯は大切なのです!」
「痛い所をついてくるな、お前ら。」
【一応、商人なので。】
「なのです!」
ダンの側から戻って来たアリスが同意する。
アリスはそのまま俺の膝の上に座る。
「分かったよ。一日につき一人銅貨一枚でどうだ?」
【十枚でしょう?命を懸けるんですからそれぐらいは頂かないと。】
「十枚は多すぎるだろう?銅貨二枚にならんか?」
【せめて九枚はもらわないと。】
「銅貨三枚ではどうだ?」
【銅貨八枚。】
「ぐう、銅貨四枚ではどうだ?」
【それでは、銅貨五枚で手を打ちましょう。】
「ぐぬぬぬ。まからんか?」
【まかりません。】
「くそ、分かった!今回だけだからな?一日一人銅貨五枚で手を打とう。」
【ありがとうございます。】
「ありがとうなのです!」
これで安心して、皆に御飯を振舞えるね。
「報酬が決まった所でいつから対応してくれるかだが、お前達の予定はどうだ?」
ジャスティンが答える。
「今は依頼を受けていないので僕達はいつでも動けます。」
ぐるっとメンバーを順々に見る様に視線を動かすと皆が肯く。
勢いづいているのに、申し訳ないなぁ。
【済みません、俺はオーカム家の晩餐会の料理を作らなければならないので少し後になります。申し訳ありません。】
するとゼパムさんが言って来る。
「お前、料理人だったのか!?しかもオーカム家って領主様じゃねえか!?」
【ええ、先日機会がありまして、お会いして・・・。】
「ルイスちゃんが凄く綺麗だったのです!」
するとジャスティン達が口々に言う。
「アーサーの料理なら呼び出されますね。」
「そうだな、それならしょうがねえな。」
「美味しいもんね~、今度は何を作るの~?」
「アーサー様の手作りの物を食べれるとは、羨ましいですわー!」
えーっと、皆さん。
呼び出された訳では・・・。
皆が口々に美味いと言う事で、ゼパムさんが驚いている。
「そんなに美味いのか?」
「「「はい、美味いです。」」」
「美味しいのですかー?」
【アリスは晩餐会の時に食べられるからね?】
その頭を撫でる。
「分かったのですー!」
元気な返事が来た。
美味い美味い言われると、なんか照れるな。
「ま、まあいい、で、晩餐会は何時なんだよ?」
【三日後になります。】
「はいはい!アリス達も行くのですー!」
「アリスさん、よかったですね。」
隣に座っているラフィアがアリスの相手をしてくれる。
「ふむ、それならその間は『オーガの牙』に巡回をしていてもらおうか。本格的な依頼は四日後に始めるとしよう。」
オーガの牙ってパーティー名みたいになっちゃってるのか・・・。
ジャスティンが答える。
「分かりました。巡回の時間等はお任せ頂いても?」
「構わん、むしろ揃うまで自由にやってくれ、その方がギルドは都合が良い。」
俺は思い付いた事を言ってみる。
【それならマスターにお願いがあるのですが?】
「無理な事を言わなければ良いぞ、何だ?」
【オーガの牙なんてパーティー名を付けるぐらいにジャスティンさん達を使いまわしているなら、ここいらで装備を一新させてあげませんか?】
「おまっ、何て事を言うんだ!?」
ジャスティン達がこの波に飛び乗って来た!
「良いですね、錆び付いた鉄の鎧なので、そろそろ鋼製の物が欲しいと思っていたのですよ。」
「そうだな。俺も鎧のランクアップをお願いしたいぜ。」
「あーっしは鎧もそうだけれど新しい弓も欲しいかな~。」
「私は、ローブの下に鎧が欲しいなと常々・・・。」
ラフィア、ローブの下は肌着だけだったもんね。
ゼパムさんの顔色が変わる。
「おいおい、金が無えんだって言ってるだろう?どんだけたかりやがるんだよ!?」
俺が追加で言う。
【大丈夫です。武器防具の事なら俺にお任せ下さい。】
「なんだよ?安くやってくれる名前の売れている鍛冶師の伝手でもあるのか?ん?そう言えば、アーサーよ、確かお前鍛冶師って言ってなかったか?」
「アーサーさんの剣は斬れない物は無いのですー!」
アリスさん、落ち着こうか?
【知り合いに黒玉の鍛冶師殿がおりまして、この街にいるそうなんですよ。】
「「「なんだって!?」」」
【俺からのお誘いと言う事であれば、喜んで手伝って頂けるかと思われますが?】
そう言うとゼパムさんが食いついて来た。
「お前!あの方と知り合いなのか!どんな伝手なんだよ!?」
ゼパムさんが驚いているとジャスティン達も食いついて来た。
「アーサー!あの方々に依頼が出来るのは武人として誉れ高い事なんだよ!」
「二つ名付きの作った武具か、悪くねえな。」
「防具はともかく弓も作って頂けるのかな~?」
「皮鎧ならローブの下に着れますし、この機会に是非お願いしたいですわ!」
すごい食いつきだ。
流石はミカ。
二つ名は伊達ではないと言う事か。
【と、言う訳で捜してお話をして頂ければ喜んでお作りしますよ?】
ゼパムさんから突っ込みがはいる。
「まるでお前が作る様に言うけれど、金の方は大丈夫なんだろうな?相手は二つ名持ちだぞ?」
【そこはそれ、俺にお任せ下さい。とにかくマスターが捜して頂ければ明日からでも作業が出来ますので。】
「分かった。最優先で捜してやる。」
【よろしくお願い致します。】
「オーガの牙の面々、金は出してやるから仕事はしっかりしてくれよな?頼むぜ本当に・・・。」
そう言って頭を抱える。
するとアリスが膝の上から降りてゼパムさんの方に行く。
「おじさん、大丈夫なのです!アーサーさんに任せるのです!」
そう言って肩をポンポンと叩いている。
「期待に沿えるように努力致します。」
そう言ってジャスティンはニコッと笑うのだった。
俺が上手く行ったと喜んでいるとジャスティンが提案して来る。
「では、アーサーの都合がつく四日後の午前十時に南門に集合にしましょう。」
【分かりました。あ、そうだ。ジャスティンさん達のサイズを測らせて頂いても良いですか?】
「ああ、構わないけれども・・・あ!まさかアンナとラフィアもかい?」
【そうしないと明日、明後日で作れないじゃないですか?】
「ちょ、ちょっと待てよ、そんなに早く作れるのか、アーサー?」
ゼパムさんが驚いているが大丈夫。
ここでミカの名前を出して安心してもらおう。
【「黒玉さん」を見つけて頂ければ作れますね。】
俺は当然とばかりに言う。
「採寸ですわね、私は構いませんわよ?すでに可愛がって頂いておりますので気に致しませんわ。」
続けてアンナが言う。
「折角のチャンスなんだから我慢するよ~?と言うか他の男なら断るけれど、アーサー君にだったらこちらからお願いしたいわ~。」
と、言ってウインクしてくる。
「二人が大丈夫なら良いんだ。アーサー無理な事は言わない事。それだけは守ってくれよ。」
【分かっておりますよ。皆さんの期待を裏切らない事と物を作製する事を『創造神アリステリア様』の名前において誓いましょう。】
「なのですー!」
そう言って元気に右手を上げる。
アリスを膝の上に抱き上げる。
膝に乗せると俺を見上げてくるので頭を撫でてあげる。
安心したように微笑む。
アリスさん、何て可愛いのでしょうか!?
「それなら良いんだ。頼むねアーサー。」
【かしこまりました。では、マスター捜索の件を頼みますね。】
「分かった、すぐに手配する。」
と、確約してくれたので安心した。
あれ以来ミカと会って無く、お礼を言いたかったのだ。
ギルドの力を借りれば見付けられるだろう。
【じゃあ、ジャスティンさんから採寸しましょうか。マスター、空き部屋をお借りしても良いですか?】
「ああ、勝手に使ってくれ。」
【それでは順番に採寸しますので、お待ち下さいね。】
そう言って席を立つと不思議そうにアリスが言って来る。
「アリスも測るのです?」
【アリスは大丈夫だよ。その間、手の空いてる人が遊んでくれるよ。】
「分かったのですー!ダンおじさんと遊ぶのです!」
「お?かかってきなお嬢ちゃん!」
どうやら放っておいても大丈夫そうだ。
順番にジャスティン達の採寸をして行く。
羊皮紙を用意してメモを取って行く。
ジャスティンが鎧下を着ていたのだが、サイズが合わなくなって来たらしく新調する事にした。
くう、イケメンの癖にまだ成長しているのか!
羨ましいな!
ダンは金属鎧が初めてらしく、鎧下から作る事になった。
動きやすい物が良いらしい。
その間はラフィアがアリスと遊んでくれていたようだ。
アンナの体はスポーツ選手の様に綺麗だった。
色々と触りたい衝動に襲われるがアリスがいるので我慢だ。
アンナもそれが分かっているかのように挑発して来る。
くう、我慢だ。
元々装備していた物が皮鎧だったので女性用の鋲鎧を作る事にした。
これで動きやすさはそのままで防御力が上がるだろう。
ラフィアは柔らかかったです。
アリスがいなければ何度襲い掛かろうとした事か・・・。
プニョプニョの破壊力は恐ろしい。
はい!
女性用の皮鎧ですね!
もちろん返事は『喜んで!』
明日、明後日の二日で作る為、調整等を行うので作成中も呼ぶと言っておいた。
四人共に都合を付けてくれるとの事なので、こちらを優先して来てくれるだろう。
その間ダンはアリスのお馬さんごっこに付き合う事になった。
ありがとうね、ダン。
それぞれの採寸が終わる頃には十四時三十分を過ぎていた。
宿屋の場所も地図を描いて教えてもらい、その日は別れる事になった。
「ダンさん、またなのですー!」
そう言ってアリスが手を振っている。
皆が手を振り返してくれた。
よし、商業ギルドに行くかとアリスと歩いて行くのだった。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
今回は冒険者達の言葉の読ませ方で人物を特定させるように書いてみました。
多人数の会話は表現するのが難しいですね。
何かヒントが無いかと読み漁っております。
そのうち落ち着いて読めるようにしたいと思っております。
まだまだ勉強中ですがお付き合いよろしくお願いします。
それでは、次話 アリシアという人(仮 でお会いしましょう。
それでは執筆に戻ります。
お疲れさまでした。




