魔人族と言う種族
皆様、おはようございます!
次話、書きあがりました。
お楽しみ頂ければ幸いです。
【食事は皆に行き渡っておりますか?】
「はい、旦那様。皆からお代わりを頼まれました。」
「村人達も最初は戸惑っていたがね、主君からの炊き出しだと言うと列に並んでくれたぞ。」
【そうですか・・・今のところ落ち着いておりますね。】
「そうですね、今のところ問題はないかと思われます。」
「主君、気を張りつめてばかりではいざと言う時に後れを取るぞ?」
「旦那様、先に休んでおいて下され。」
「そうだね、主君。少々ですが疲れているように見えるぞ?」
【・・・二人がそう言うのなら・・・では、仮眠を取らせて頂きましょう。】
「クレア、ドリュカス公の所へ行ってくる。旦那様の事を頼んだぞ?」
「分かった、気をつけてな、セリス。」
【・・・。】
「このように眠ってしまわれるとは・・・疲れていたのだな。」
「主君よ、今はただ休む時ぞ。大公様への連絡は頼むぞ、セリス。」
「任されよう、では・・・行って来る。」
そう言うとセリスは外へと出て行く。
ここは村の隅にある空いている小屋だ。
本来であればこのような所ではなく、高級な宿に泊まれる御方なのだが我が主君はそれを嫌がる。
貴族なのだから民の模範にならなくては駄目だと。
それに贅沢をしてはいけないのだと、このような遠征にあっては、一般の兵士と同じ飯を食べ、同じ所で眠る。
尊爵と言う地位を頂いておるのに、権力には興味が無いとその力を行使せず。
まるで自分は一般市民であるとのおっしゃりようだ。
私は、その考えは素晴らしいと思う。
だからなのだろうか、主君と呼び、この方に付いて行こうと決めたのは・・・。
眠っている時は、成人男性の十五歳だとは言え、その無防備な寝顔はまだまだ子供である。
「ふふっ、主君。寝顔など何度も見ているが・・・独り占めはまだなかったな・・・。」
鎧下に着替え終わる。
そして、腕、手、身体と順々に鎧を身に着けて行く。
主君が作って下さったミスリルの鎧に。
最後に兜を付ける。
「さて、待たせてしまったかね?」
【で、君は気付いているんだよね?】
「ああ、待ってもらって悪かったね。おっと、殺気は出さないでもらおうか、主君が起きてしまう。」
【先程出て行った女にも、手伝ってもらった方が良かったのではないのかな?】
「冗談ではない、今夜、其方の相手を務めるのは私だ。何か不足があるだろうか?」
【それは自分を過大評価をしているのではないのかな?】
「・・・言ってくれるね。不足では無い事をその身に教えてさしあげよう。」
【ふふっ、おっと、ここではまずいのだったな・・・では少し場所を変更しようか。】
「ありがたいな・・・では、移動しようか。」
【私は何処でも構わないよ?】
「では、とりあえずついて来てもらおうか。」
そう言うと二人で小屋を出る。
裏の森の中に少しだけ広い所があったな。
そこで良いだろうか。
ッザ・・・ッザ・・・ザッ!
「この辺りで良いだろうか?」
【構わないよ、何時でも良いぞ?】
「貴殿が件のミリア殿で間違いはないのだろうか?」
【ほう、私がそのミリアだと思うのは何故かね?この姿なら特徴は出ていないと思うが?】
「君、答え合わせの前に、それを言っては本人だと自分で言っているぞ?」
【・・・。】
「では、ミリアとやら良いかね?」
【すぐに殺してやろう、大公やあの間抜け面で眠っている奴と共にな!】
「セリスで無かった事を『アリステリア様』に感謝したまえ、だが、私も君とは相容れぬようだ。」
主君から頂いたミスリル・サイスを頭上で振り回す。
フォン・・・フォン・・フォン・フォンフォンフォンフォン
「さあ、何処からでもかかってきたまえ!」
スゥ~・・・
ハアアアァァァ~・・・
集中スキル。
ドッ!
サイスの柄で地面を突き、その勢いで一気に距離を縮める。
すぐに遠心力にて回転させ暴風の凶器となすサイス。
相手は動かない。
構わずサイスにてその姿を切り刻む。
手応えが無い?
【ほう、それをまともに食らうと私でも危ないな。】
ほう、いつの間にか動いていたのか。
そう言う女が残像を残して消える。
地面に、そう影の中に消えたのだ。
私の攻撃はむなしくその上を飛び越える。
影の中に潜れるのか、流石は魔人族。
森を交戦ポイントに選んだのは失敗だったな。
着地するとその勢いで、サイスが地面を円形に削る。
「こらこら、そんな事が出来るのならいつでも私を殺せたのではないのかね?」
サイスを体の正面でクルクルと回しながら、月明かりの恩恵を探す。
柄を穿ちその場所へ移動する。
・・・出てくる気配はない。
闘いにくい相手だ。
ふと、微かに気配を感じた。
上!?
素早くサイスの柄を蹴り上げ、勢いをつけて体の上を一閃する。
【ほう、気配が読めるのか、これは見くびっていた事を詫びねばなるまいな。】
今度は右の影から声がする。
「成程ね、影の中ならば自由に動けるようだね。」
気配を読めるようになったのは剣聖殿の訓練のおかげだろう。
ふふっ、まだまだと言う訳かな。
気配が左から現れた。
ん?
後ろにも!?
【分身までは読めなかったようだね、さようならだ、お嬢さん。】
「ワールウインドゥ・アタック!」
サイスの柄に蹴りを入れ、自分を中心として広範囲の攻撃が出来る剣術スキルを使う。
ズバッ!!!
【なんだと!?】
手応えがあった。
分身も二体、真っ二つにした。
が・・・。
本体は一歩引いていたのかな?
一歩だが間合いの範囲外だ。
「おや、思っていたよりも臆病だったのか、修正しないといけないね。」
【言わせておけばっ!】
「影の中で移動しているだけならば恐ろしくはないね。特殊な攻撃方法、伝え聞く魔人族のスキルかな?」
【・・・。】
気配がある方向へ突撃する。
サイスが辺りの物を削りとる。
【っち、気配が読まれるのは厄介だ。だが、やりようはある。】
確実にその気配を追う。
逃げるのが、移動するのが早い。
その点で私の方が不利なのだろう。
周りは影となる夜の森の中だ。
「ん?」
おや?
木々の影の中を少し濃い円形の影が移動している。
それを追う。
ズバッ!
【っく!?】
「ほう、それが君なのだね?しかし、魔人族と会うのは久しぶりだ。」
【ならば何故我らが人族を殺すのかは分かっているな!】
「もちろんだ、だが、二人はやらせはしないさ。」
そして動きを先回るように影を追う。
ズバァ!
【くぉっ!?】
手応えがあった。
これが当たりか?
いや、まだだ、慢心するな。
まだ、決定打ではない。
【っち、厄介だなその攻撃は!】
「師事している人が優秀だからね。君は焦っているようだが、確実に動かなくなるまで私は慢心しないよ。」
【っち、だがこれならどうだ!】
地面に何かを置いた?
暗くて確認がとれない。
・・・ソレからは変な気配はしない。
構わない、動いている影を追え。
追いついた所でサイスを回す。
ザグッ!
【はっ!ひっかかりやがった!】
手応えが違う?
本体はこっちのはずだ。
ならば何故?
判断を誤ったか。
『慢心しないよ。』
先程自分で言った事を思い浮かべる。
しまった・・・これが慢心か。
カチッ
っと音がしたと思ったら目の前が白くなった。
ドゴォオオオォォォン!!!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【な、何だ!?】
バダン!
「旦那様!?いらっしゃるか・・・!」
【セリス、何があったのですか?】
「いや、私にも・・・クレア!?」
【クレアがなにか?】
「旦那様を見てもらっていたクレアが見当たらないのです!」
【何だって!?】
「クレア!クレア!?」
【まさか・・・。】
急げ!
音のした方へ、急げ!
クレア!・・・クレア!!!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
盛大に土煙が上がっている。
どうやら強力な爆弾を持っていたらしい。
誘いに乗り、その爆弾を攻撃してしまった様だ。
だが、何故だ?
何故、私は生きている?
その答えは正面にいた。
いや、いてくれた。
【なんだと!?】
そうだ、彼女のおかげで私は無傷だった。
【お兄ちゃんのー・・・大切な人をー・・・傷つける人はー・・・許さないー・・・。】
「アセディア殿!」
【お姉ちゃんはー・・・無事ー・・・?】
「アセディア殿、左腕が!?」
【大丈夫ー・・・魔力を補充できればー・・・生えてくるからー・・・。】
【アセディアだと!?馬鹿な!七大悪魔様ではないか!!!】
【貴女はー・・・魔人族だねー・・・まだこんな事をー・・・やっているのー・・・?】
【そうだ!人族は、人族は我らを異形として不当な扱いをするではないか!】
【それは違うー・・・貴女がー・・・良い人にー・・・出会っていないだけー・・・。】
【良い人だと!?人族にそんな奴がいるものか!魔王との大戦が語られてから何十年、いや、何百年経っていると思っている!】
【昔とー・・・今はー・・・違うー・・・。】
【違わない!二百年だぞ!?二百年経っても魔王に与したと言って我らを魔物扱いをする!我らは魔王を恐れて従っていただけなのに!!!】
【でもねー・・・お兄ちゃん達はー・・・違うんだよー・・・。】
【そんな事、信じられるか!優しくそう言って近づき、魔力封じの首輪をはめて奴隷として扱うのだろう!】
【昔の話だよー・・・二百年経っていても-・・・貴女達もー・・・変わらないのねー・・・。】
【変われるはずが無かろう!西の大陸に住んでいた私の家族は、村の皆は!今も奴隷として人族に飼われているのだぞ!】
【それはー・・・一部だけだよー・・・人族もー・・・奴隷の制度をー・・・変えたからねー・・・。】
【そんな馬鹿な事がっ!】
【だったらー・・・証拠がー・・・目の前にー・・・いるじゃないー・・・。】
【証拠だと!?】
【大魔族であるー・・・私がー・・・お兄ちゃん達とー・・・生きているー・・・。】
【ま、まさか、その良い人と言うのが、ヘファイストス達だというのか!?】
【そうー・・・でもねー・・・流石にー・・・今回はー・・・怒らせちゃうからねー・・・。】
【ゴクリッ。】
【貴女はー・・・ここでー・・・死ね。】
ゾッとした。
いつものアセディア殿からは出ない、強い言葉だ。
それに感じられない程の殺気が魔人族だと言うミリアを包む。
【かっ・・・はぉ!?】
ミリアは怯えて動けない。
アセディア殿が右手を掲げるとミリアの足元から黒い触手が立ち上り彼女を捕まえる。
【馬鹿な、こ、こんな馬鹿な事があるかっ!?】
【・・・不満?】
【何故私が七大悪魔様に殺されなければならんのだ!?】
【分からないのー・・・?】
【私は!私達は!】
【五月蝿いなぁー・・・静かにしてねー・・・。】
そしてミリアを捕らえた触手が完全に彼女を取り込むと鈍い音がする。
ゴキョッ!
グギョ!
ガボン!
【ふうー・・・御馳走様ー・・・でもー・・・やっぱりー・・・お兄ちゃんの-・・・御飯の方がー・・・美味しいねー・・・。】
「済まなかった、アセディア殿。」
【これでー・・・左手は大丈夫かなー・・・後、お兄ちゃんがー・・・来るよー・・・お姉ちゃんはー・・・いっぱいー・・・怒られてねー・・・。】
「はっはっは!それは仕方があるまい、無茶をしたからねえ。」
【セリス、こっちだ!もう一人いると思ったらアセディアじゃないか!】
「クレア、無事だったか!物凄い爆発音がしたが・・・火は消えているな、何があった?」
「ああ、アセディア殿のおかげで無傷だ。済まなかったな、アセディア殿。」
【アセディア、ありがとうね。】
【お姉ちゃんをー・・・殺そうとしてたからー・・・やっつけたよー・・・。】
【クレアを助けてくれたんだろう?】
「ああ、あのままでは危なかった、私がここにいられるのは、アセディア殿のおかげだ。」
「良かった、クレアが無事ならばそれでいい。アセディア殿、クレアを助けてもらったようだな、感謝する。」
【お兄ちゃんー・・・ちょっといいかなー・・・?】
【なんだい、アセディア?】
【帰って来たらー・・・御褒美ヨロー・・・。】
【あはは!それぐらいなら、で、何が欲しいんだ?】
【帰って来たらー・・・教えるねー・・・。】
【分かった、クレアの命にはかえられないからね。で、クレア御嬢様は戻ったら御説教だからね?】
「お手柔らかに頼むぞ、主君。」
【今度と言う今度は駄目です。】
「そこは許すのが旦那様の度量ではないかね?」
【貴女は無茶をしましたのでね!】
「セリス、なんとかならんかな?」
「ならぬな、旦那様と私を心配させたのだ。覚悟するが良いぞ?」
【そうです、二度とこのような事をしないように、解らせて差し上げます。】
「そうだな、旦那様。」
そう言うと二人でクレアの腕を取り小屋へと戻る。
御説教の開始だね。
後程、アセディアがいた事で、爺さん達に説明するのが大変だった。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!
さて、まずはいつものから!
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大変にありがたく!
皆様に感謝を!
それでは 次話 未定(仮 で、お会い致しましょう!
御疲れ様でした!




