村の秘密
いつも読んで下さり、誠にありがとうございます!
続きを書き終わりましたのでアップ致します。
お楽しみ頂ければ幸いです。
何かがあるかもしれない、その話は内密にしたかったので村長さんには控えてもらった。
村長宅に一緒に来ていたメンバーだけにギルドであった事を報告する。
「紅玉殿、確かにそれはおかしいですな。」
「そうですね、アーサー。何か気付いた事はありませんか?」
【ゴブリンが近くにいると言うのに、村人はのんびりと仕事をしているぐらいでしょうか?】
「そうですね、僕もそこは不思議に思っていたんですよ。」
「すると本当は村には被害が出ていないと?」
「村長の言う事が真実であればでござるよ、剣聖殿。」
【被害を報告しておかないといけない・・・あ!】
「どうした、坊主?」
【ギルド員さんが、領主のアンドレイ伯爵様にはきちんと税を納めていると言っていました。】
「税を納める事が出来ている?そう言えば依頼書には被害が出ていると書いてありましたよね?」
「そうじゃが坊主ども、これ以上ここで時間を潰す訳にはいかんぞ?」
「ジャスティン殿、紅玉殿、我らは先を進まねばいかんのだぞ?」
「ですがゴブリンの事を放置する訳にも行きませんよ?」
【・・・ゴブリンの出ると言う洞窟、ここに偵察に行ってみましょう。】
「そこに何かあるのか、坊主?」
【ジャスティンさん達で村長さんの相手をしばらく頼める?】
「それは構いませんが、その洞窟に何かがあると?」
【俺の考え通りなら、村長が困っているのはゴブリンではなく・・・まあ一時間ほど下さいますか、確かめてみますよ。】
「分かりました、アーサー。そちらは頼みますね。」
【師匠、シェラハザードさん、行きますよ。】
「仕方がないのぅ。」
「確かめん事には先に進めそうにないからな。」
【ゴブリンの巣は北西ですね。警戒して行きましょう。】
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師匠、シェラハザードさん、俺の三人でゴブリンの住む洞窟へと向かった。
地図からだと歩けば三十分程で到着するところにある。
「このような所にのぉ。」
【ええ、何かをやっているとは思いましたが・・・。】
「ゴブリンの格好をしておるが、見張りは人間が二人じゃな。」
【多分ですが、何かを見つけたので調べてみた。その結果が良かったのか、良すぎたのかで隠す必要があった・・・と言う感じですかね。】
「坊主、ギルドの依頼のゴブリンの件はどう見ておるんじゃ?」
【安い賃金を掲示しておけば依頼を受ける冒険者がいないと踏んだのでしょうね。その間に掘り出し、買取のルートが出来れば良しと・・・。】
「なるほどのぅ・・・して、いかがする?」
【ちょっとスキルを使って中を見て来ますよ。】
「紅玉殿は色々なスキルが使えるのじゃなぁ。」
【まあ、少しお待ち下さいね。】
スキルを使うと二人の目の前からふっと消える。
さて、何があるのやら・・・。
靴の痕が残らないように注意して進む。
入り口まで来るとその見張りの声が聞こえて来た。
「・・・だ。村長も美味い事を考えたぜ、これで俺達は金持ちだぜ。」
「だがどうする、今朝、村に冒険者が大量に来たんだろう?」
「格上の冒険者なら冒険者ギルドのミリアさんが上手くやってくれているだろうよ。」
あの人も仲間か・・・。
まあ良い。
何を見つけたのかを確認しようかね。
隠密スキルを使っているので入り口の二人は何事もなく通り過ぎる事が出来た。
洞窟を奥へと進む。
カンッ!
キンッ!
段々とその音が聞こえて来た。
工夫のような出で立ちの人族が巨大な金鉱脈を採掘している所だった。
あちゃー、これを隠していたのか!
村全体で行う隠蔽工作か・・・。
気持ちは解るけれども、こんな事をやっていては庇えない。
爺さんと話して、いやレガイアさんとも話した方が良いな。
そう思うと一度奥まで行ってみる。
かなり大きな鉱脈だ。
これを財産と出来ればかなり大きな金額・・・どころではない。
とりあえず外の二人に報告しよう。
何も無かったかのように洞窟を出て行く。
さて、二人に報告だね。
二人のいる所まで戻ると隠密を解く。
「坊主、どうじゃった?」
【黒ですね。真っ黒です。金鉱脈がありました。それを隠しているようですね。】
「なんと!?」
「坊主、どうする気じゃ?」
【とりあえずは国王様に報告に言って来るよ。これは国の財産になるべき物だから見過ごせないですね。】
「そうじゃのぉ・・・欲に支配されなければ良かったのじゃがのう。」
「ブリタニアは若い国じゃから、悪事を働くとこうなるぞと示して見せなければ民がつけあがるぞ?」
【リターンで戻ってどうするか聞いてきます。ここで少し待っていて下さい。】
「分かった、坊主。」
「かしこまった、紅玉殿。」
【マーカー・・・では行って来ます!リターン!】
こうして一時的にオーカムへと戻る。
一刻も早く報告する為に。
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「金鉱脈じゃと!?」
「ヘファイストス殿、それは本当の話なのだな?」
【はい、この目で確かめて来ました。】
「これは急いだ方が良いですな、父上。ステファン、アレックスとネストを呼んでくれ。」
「かしこまりました、坊ちゃま。」
【急ぎだと思ったから、だから二人の判断を仰ぎたい。】
「父上、財の隠匿は重大な国法違反です、ですが・・・。」
「そうじゃ、問題はそれだけではない。」
【問題?違法をしている人々をそのままにするの?】
「違う、あんちゃん。ギルド職員が絡んでおるんじゃろう?」
【そうだ、ミリアとか言う名札を付けた御姉様だ。】
「ギルド職員が違法しているのは不味い、上層部に問い合わせをしてからでなければその職員を表立って詰問する事は出来ないのだよ、ヘファイストス殿。」
【自国の国王の問い合わせでも駄目なの?】
「国には国の法があるように、ギルドにはギルドの法がある、それに認められるのには各ギルドの三人の長の署名、印の入った詰問状が必要じゃ。」
【国王だからと言って、何でも出来るって訳では無いのかー・・・。】
「そうだ、だがそれではギルド員が悪さをした時にその法律で守られ逃げられてしまう、それを無視してその人物を問い詰める事が出来る方法が我らにはある。」
【そんな事が出来るのか、なら早くやろうぜ?】
「あんちゃん、まずは落ち着け。その方法とはな現行犯である事じゃ。」
【現行犯?】
「そうじゃ、働いている工夫などがおったじゃろう?そ奴らを締め上げてその、ミリアっちゅうギルド員が関わっておればとの証言が取れれば良いのじゃ。」
【成程、では早速出向いてもらって捕縛しようぜ!】
「現行犯ならば村人は捕縛出来ようし、作業も止められる。その後に話を聞けばいいんじゃ。」
「父上、早速私が行ってまいりましょう。」
「いや、今回はわしが行こう。レガイアはやる事があろう。それに現地で物的証拠を押さえられれば何も言えまい?」
執務室のドアが開く。
「伯爵様よ、呼ばれたって聞いたが?」
「アレックスさん、公爵様ですよ!」
「おっとそうだったって、ヘファ殿もいるじゃねえか・・・なんかあったか?」
「アレックスさん、ヘファイストス様は尊爵様ですよ!」
アレックスさんはアレックスさんだった。
ネストさんがフォローしているが、他の国ではやってないだろうね、アレックスさん。
【アレックスさん、久しぶりですね、ネストさん、大丈夫ですからね。】
「それで、なんでしょうかね?」
「アレックス、わしとボスィドナス村に視察に行ってくれ。」
「分かりやした・・・部下は手練れの奴を三十程連れて行きます。ネストはレガイア様の護衛だ!」
「分かりました、アレックス隊長!ちなみに国王陛下ですからね!」
「分かった、分かった。」
【俺がゲートで送りますよ、爺さん、アレックスさん達も準備が出来たら声かけて下さい。】
「助かるのぉ、アレックス、視察の支度をせよ!」
「分かりやした!」
「行ってらっしゃいませ、大公閣下!」
そう言うと二人が部屋から退出する。
「では父上、お頼み申し上げます。」
「こちらは任せるがよい、あんちゃんがいるからのぉ。レガイアは各街への物資輸送ルートの件を確定させよ。」
「かしこまりました。」
こうして準備の出来た爺さん達とゲートで鉱脈のある洞窟へと戻る。
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「よお、良い天気だな。そんな恰好で暑くねえか?」
「「!?」」
現地に連れて来た爺さん達が早速行動を開始したようだ。
突然声を掛けたアレックスさんに、ゴブリンの格好をした村人警戒しているようだ。
「な、ななんだよ、アンタ達は!?」
「なあに、景気の良い話を聞いたんでね。そいつを確かめに来たんだよ。それで、ヘファ殿・・・そこかい?」
【そうです、その洞穴です。】
「取り押さえろ!」
「「「っは!」」」
「何しやがる!」
「ネタは上がっているんだ、抵抗するな。余計な血は見たくねえだろう?」
「っく!?」
「くそっ!」
二人はあっという間に取り押さえられた。
後ろ手に縄で繋がれ、抵抗むなしく捕縛された。
「リクター達、四名は入り口と捕縛者を見張れ。残りは付いて来い!」
「「「はい!」」」
アレックスさんが仕事してるよ。
そう言えば、付き合いは長いけど初めて見るね。
「大公閣下、先へ進むぞ?」
「アレックス、進め。」
「行くぞ、野郎共!」
「「「はいっす!」」」
「カシアス!モース!大公様は命がけで守れよ!」
「了解ですぁ、大将!」
「任せて下さい、大将!」
師匠とシェラハザードさんは最後尾をのんびり歩く。
俺はと言うと、先頭を行くアレックスさんの後ろを付いて行くのみ。
「松明だけだと厳しいか?・・・ヘファ殿、悪いが暗視の魔法をかけてくれるか?」
【分かりました、全員にかけますか?】
「行けるなら頼むぜ、ヘファ殿。」
【もちろん、1th、ナイト・サイト。】
まずはアレックスさんに暗視の魔法をかける。
そして通り過ぎる騎士団の人達全員に魔法をかけて行く。
爺さんと師匠、シェラハザードさんにもかける。
最後に自分にかける。
「全員にかかったな?洞窟の奥へ進むぞ!」
「「「はい。」」」
元の位置に着くと先を急ぐ。
アレックスさんは警戒もせずにどんどん奥へ進む。
敵対する反応は無いけれど、相変わらず野生な人だなぁ。
「あったぞ、大公様よぉ・・・どでかい金鉱脈だ!」
「すげぇ・・・金鉱脈だ・・・。」
「まだこんなでかいのがあったのか・・・。」
「初めて見ましたよ。」
改めて見ると大きな鉱脈だ。
これは凄い。
そんな騒ぎを起こしているのだから見つかるのは当然だろう。
「だ、誰だよ、アンタ達は!」
「見張りは何をしていたんだ!」
そんな人達を見てアレックスさんが声を上げる。
「いいか!殺すなよ、話を聞くんだからな!」
「「「了解ですぁ!」」」
「な、なんだよ!」
「何しやがる!」
「大人しくしろ、王国騎士団である!」
「き、騎士団だと!っひ!」
「バレたのか!?」
「っち!」
「一人残らず捕縛しろ!」
「「「ウッス!」」」
出入口は一つのみ。
しかも一本道。
そして最後尾には師匠とシェラハザードさんが立っている。
この時点で逃がす気は無いね。
しばらく経つと喧騒は消えた。
「一階の工夫達は取り押さえました、その数十二名!」
「地下一階、同じく取り押さえました、七名です!」
「他に出入り口はなさそうだな?」
「へい、大将!」
「よし、村に戻り事情調査するぞ!」
「「「はい!」」」
工夫達は現行犯で捕縛された。
これは言い訳が出来ない。
アレックスさんが指示を出すと四人の団員が残り見張りを続ける。
これ以上の違法行為は見逃せないのだろう。
さて、ここでの事は終了したな。
ただ、気になったのはギルド員のミリアさんの事だ。
村との関係は?
それに自分から税は治めていると言っていた。
税と言う事は、領地を預かっているアンドレイ伯爵に治めている?
それに、俺にヒントを与えた?
その真意は?
・・・何か嫌な予感がする。
「アレックス、村長と話をつける。村長だけではこのような判断はできまい・・・捕まえた者達を連行せよ。」
「あいよ、公爵様・・・連れて行け!」
「じいさん、ゲートを出そう。その人数を引き連れてたら時間が掛かっちまう。」
「助かるの、あんちゃん。頼めるか?」
「任せとけって!」
そう言うと村へのゲートを出す。
「・・・7th ゲート・トラベル。」
捕縛された人達は大人しく連れて行かれる。
多少の抵抗はあったが、皆が村へと戻る事が出来た。
村に戻ると、討伐隊の皆に事情を説明する。
後は爺さん達に任せれば悪いようにはしないだろう。
だけれど嫌な予感は消えない。
・・・この予感は無視できない。
さっきから嫌な予感が消えないのはなんだろうか?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「と言う事は、そのミリアって言うギルド員に提案を持ち掛けられたと?」
「はい、ですが村人達のやった事です。お沙汰に従いましょう。」
「ミリアっちゅうギルド員か・・・この件で良く名前が出る、そやつ、気になるのぉ。」
【爺さんが良ければ俺が連れてくるが?】
「ギルドへの書状がまだ届かんと思うでな、アレックス。」
「何だ、大公様よ。」
「アンドレイに使者を出せ、この事を知っているのかとな。」
「へい、モシアス、ロコ!」
アレックスさんが声を掛けるとその二人が跪く。
「使者ですね、いってきやす!」
「お任せ下さい。」
「頼んだ、何かあったらわしの名前を出す事を許可する。」
「かしこまりました!」
「必ずや!」
そう言うと二人の騎士は馬に乗って西門から出て行った。
これで問題はミリアさんの件だね。
「さて、あんちゃん。」
【ミリアさんの事だね?】
「そうじゃ、わしの予想だが・・・黒いのぅ。」
【ギルドへの対応はどうしてるんだい?】
「質問状を持たせた使者が向かっているはずじゃ、その返答次第かのぉ。」
【それまで大人しくしていますかね?】
「普通の職員なら逃げだすと思うがのぉ。」
【アレックスさん、爺さんかレガイアさんを呼び出す事を目的としているかもしれないです。護衛を強化して下さい!】
「分かったぜ、ヘファ殿。カシアス、モース、リクター、エレノア!命に代えても大公様を守れ!」
「「「ははっ!」」」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【と、言う訳なんだ。】
「旦那様は何かがあると踏んでいるのだな?」
【うん、そこでなんだけど、部隊を分けたい。】
「紅玉殿、分けると言ってもどのようにするのだ?」
【セリスとクレアが俺と一緒にいてくれるとありがたい。師匠達は先に進んでもらえますか?】
「構わんが、討伐は坊主が来てからとしてもらうぞ?」
「それは構わんのだが、なるべく早くしてもらえると、こちらとしては有難いぞ?」
【分かりました。こちらでの事に関しては2~3日の時間を頂ければと思います。】
「主君、正直に言ってくれ。我ら二人の力を借りないといけない程なのだな?」
【正直だけど、これでも悪い予感が消えない。それに、じいさんは俺の親父みたいなものだ。解決するまでは、この嫌な予感が消えるまでは側にいたい。】
「ふふ、分かりました、旦那様。お力添えを致しましょう。」
「そうだね、セリス。我らだけでも力添えをしよう。」
「では、僕達は先行して情報を集めておきましょう。」
【済みません、ジャスティンさん。】
「心配なんですね、アーサー。君も我々もドリュカス様にはお世話になっておりますからね。」
【討伐行動中に、身勝手な事を済みません。】
「構わんよ、紅玉殿。元々は我らだけでやるつもりだったのだからな。それに・・・武具の代金ぐらい我らで稼がねばな!」
「そうですね、団長。」
「ならば決まりじゃ、我らは進むとしよう。」
「かしこまった、ジュウベイ殿。皆、支度をせよ!」
【それでは、お願い致します。】
「吉報をお待ち致しますよ、アーサー!」
【ジャスティンさん達も気を付けて下さいね。】
「では、パトリダ村で会おうぞ、紅玉殿!」
【無理はしないで下さいね、シェラハザードさん。】
「坊主・・・いや、何も言うまい。」
【師匠、頼みます!】
俺がそう言うと皆は先へと進む。
「旦那様・・・。」
「主君・・・。」
【この予感の外れる事を願いましょう。】
「そうだな、旦那様。」
「そうだね、主君。」
【さあ、爺さんの天幕へ戻ろう。】
そう言うと歩き出す・・・天幕に向かって。
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