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ゲームで伝説の鍛冶師だった、元アラフォーおっさんの異世界転移奮闘記  作者: Maya
第四幕 第三章:ルイスとの結婚式
298/315

ゲスト様方の見送り

いつも読んで下さってありがとうございます。

執筆終了致しました。

お楽しみ頂ければ、幸いでございます。

訪れた多くの人々が椀に入った「すき焼き」を食べていた。


【女将さん、材料が足りませんか?】


「小僧、もうなくなる、材料はあるかい?」


【もちろんです、今、出しますね。】


「まだ並んでいるのがいっぱいだ、満足して帰ってもらうよ!」


【分かりました、女将さん!】


「女将さん、貧民の子供達が来たよ!」


「構わないさ、どんどん連れて来い、材料はある!」


「分かりましたー!」


【女将さん、ここに積んでおきますね。】


「っふ、小僧・・・良い顔になったね。」


【・・・感謝します、女将さん。まだやる事があるので、行って来ます!】


「行ってこい、小僧!」


材料があれば女将さんが賄ってくれる。

そう、外はお願いしますね、女将さん。


中の方々も御帰りのようだ。

ルイスと一緒に、挨拶と見送りをしないとね。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「あ、来てくれたわ。」


【お待たせ、ルイス。】


「皆様方がお帰りになりそうな雰囲気だったの、お見送りをするのよね?」


【そう、お見送りをしないとね。ナナリー達は後ろで笑顔をばらまいてくれるかな?】


「分かりました、皆さん行きましょうー!」


「ヘファイストス様、頑張りますよー!」


「旦那様、笑顔でいればよいのだな?」


「セリス、それじゃあ御客人を威圧しとるで、もっと柔らかくなぁ。」


「アハハ、そうだぞ、皇女殿下。それは笑顔とは言わないな。」


「そ、そうか?」


「私達もそれでいいのね、お兄さん?」


【ああ、リズ、ベス、マオ、アリス、クーデリカもお願いするよ。】


「「「分かりました!」」」



「お、ここにおったのか、ヘファイストス殿。」


【これは、ジン長老殿。本日はありがとうございます。】


「ありがとうございます。」


「先程じゃが案内があっての、我らは今日は戻る事にするぞい。」


【御疲れ様でした。】


「お気を付けてお帰りになって下さいませ。」


「ほっほ、これは夫婦そろって丁寧に、でだな、ヘファイストス殿に願いがあるのじゃが?」


【何でしょうか、ジン長老?】


「なあに、鰻料理のレシピを分けて頂けぬかな?」


【構いませんよ、えっと、こちらになります。】


言われるがままレシピを出す。


「・・・ヘファイストス殿、おいくらかの?」


【バイジンからも支援して頂いている身で金をとろうとは思っておりませんよ。】


「お主、人が良すぎるな。これを取っておくが良い。祝い金じゃ。」


そう言うと、ジン長老は小切手を渡してくる。


【ジン長老、これは?】


「文字通り祝い金じゃ、受け取ってくれるかの?いや、お主には受け取る義務がある。」


【そこまで言って頂けるとは、ならば遠慮なく。】


バックパックに入れ確認すると白金貨五十枚だった。

うほ、太っ腹だね!


「そうじゃ、受け取る事も必要じゃぞ?」


【ありがとうございます、他の皆様にもよろしくお伝え下さい。】


「それとな、もう一つええかの?」


【俺に出来る事ならば。】


「バイジンに来た時でええので、女神像を作って頂けるかの?」


【構いませんが、俺が作った物でよろしいのですか?】


「それが欲しいんじゃよ、頼めるか?」


【では、お作り致しましょう。】


「ほっほ、お主、もう少し欲を身に付けよ。そのままでもええがいつか不幸になる事があるぞ?」


【はい、ですが俺はこれで良いのですよ。嫁達にも恵まれ、仲間達にも恵まれ・・・これ以上何かを言えば『アリステリア様』から罰を受けそうです。】


「なるほどのう、その罰の方が怖いか?」


【そうですね、怖いです。】


「そうか・・・ルイスの嬢ちゃん。旦那と共に幸せにな。」


「ありがとうございます、ジン長老様。」


「ではの、二人に商業の神エンボーリオ様の加護のあらん事を。」


【ジン長老達にも『アリステリア様』の御加護があらん事を。】


「では、また会おう!」


皆で御辞儀をして見送る。

あれ?

そう言えばイン殿がいない。

出来れば挨拶をしたかったな。



っと気を取り直してっと、次はヘルシャーだね。


「紅蓮、今日は逃がさんぞ?」


【ラヴィーネ様、御満足いただけませんでしたか?】


「いや、満足したからだ。今度はこちらの相手も頼むぞ?」


ポンポンと愛刀を叩く。


「オーガの牙もまだ鋼としか剣を交わせておらんしな。」


【機会があれば、お手柔らかにお願いしますね。】


「その言葉、守れよ?」


【で、出来うる限り、守らせて頂きますよ。】


「そうか・・・そう言えばな、紅蓮。」


【こ、今度は何でしょうか?】


「いやなに、シュタイアがな嫁になる事を了承してくれたのでな。」


「か、閣下!?」


「機会があれば・・・今は難しいかもしれんな。」


そう、ルイスは左手を、ナナリーは右手をサーラとセリス、フェイ、クレアが背中を抓って来たのだ。


【あぃ痛っ!?そ、それはまたの機会に・・・。】


「今回は難しいかもしれんな。」


【そ、そう言えばラヴィーネ様、援軍の件有難く。】


『紅蓮よ、七大悪魔とやらは本当に強者なのだな?』


【はい、それだけは確かかと思われます。ただ・・・。】


『遠慮はいらん、申せ。』


【ラヴィーネ様、彼女らとは話し合う事が出来るのです。】


「話し合うだと?」


【はい、これは確かでございます。】


「無為に剣を抜く事は無いと?」


【はい、その通りでございます。】


「紅蓮、何か情報を持っているようだな。」


【その情報は伺った時にでもお話致します。】


「ならば良い、シュタイア、帰還するぞ!」


「はい、ラヴィーネ様。」


【それでは、ラヴィーネ様、シュタイア様、御疲れ様でした。】


「御二方、無事の御帰還を。」


「ルイス・・・と言ったな?」


「は、はい。」


「紅蓮は戦場を選ばん、良い男だぞ・・・離さぬ事だ。」


「はい、ありがとうございました、ラヴィーネ様、シュタイア様。」


「ヘファイストス殿、これは祝儀です、お受け取りを。」


シュタイアさんが小切手を渡してくれた。

国の事でいっぱいいっぱいなのだろうに・・・。


【これは・・・有難くいただきます。】


バックパックへ入れる。


「二人共、また会おう!」


軍靴をカツっとならし、敬礼をした二人は護衛と共に去って行った。



お?

右と左の子と言う事はキゴニスかな?


「ヘファイストス殿、この度の事はババ様に伝えておく。」


「本当はババ様も来たがっていたのだが・・・代わりに申し伝えておく。」


【はい、御二人共、妻のルイスも会いたがっていたと伝えて下さい。】


「そのようにお伝え下さいませ。」


「・・・ルイスとやら。」


「はい、何か失礼がありましたか?」


「いやなに、ババ様がこう言っておった。」


「そうだ、言っておった。」


「どのような事をおっしゃっていられたのですか?」


「「これより、そなたの運命の流れは加速する。振り落とされぬように皆との絆を深められよ。」」


「【・・・?】」


「「ヘファイストス殿にはこう言っておられた「本当に戦う相手は誰なのかを見極められよ、それは希望にもなり、絶望にもなる。」」」


【希望、絶望?】


「「心せよ、汝こそが運命の子であると、善にもなり悪にもなる。その事を忘れるな。」」


【善にも悪にも?】


「「ここに運命は動き出す。支度を整えよ、仲間を集え、真の勇者よ。」」


【真の勇者!?】


「「以上がババ様の言葉である。」」


ちょっと待て、何を知っているんだよ、大ババ様!?

運命が動き出す?

どう言う事だ?

と、考えているとルイス達が意見を述べる。


「御二人共、私の旦那様を、ヘファイストスを舐めないで頂きたいです。」


「そうです、ヘファ君は、そんな悪い運命などには負けたり致しませんよー。」


「希望にも絶望にもなるのなら、ヘファイストス様は必ず希望になって下さいます!」


「その通りだ、あまり旦那様の評価を軽んじないで頂きたい。」


「そやで、悪い方へ行こうとするなら、こんだけの嫁がいるんだ。必ず立ち直らせるでぇ?」


「運命?上等です。我が主君ならば悪い運命などは断ち切って見せてくれよう。」


「「・・・。」」


「お兄さんの運命が悪くなる事は無いわね、少なくとも私達が側にいる間はね。」


「そうです・・・ヘファさんを引っぱたいてでも・・・そんな事はさせません。」


「ヘファさんには私達も付いていますからね!」


「お兄ちゃんが悪い方に行かないようにします!」


「ヘファさんが悪い事をすればこれの出番なのです!」


アリスさん、どこから出したんですか、そのハリセンは?


「そうか・・・ならばキゴニスから言う事は無い。」


「ババ様はこうもおっしゃっていた、縁を深めよと。」


「その縁が、君達の助けにもなるだろうとも。」


【レノン様もカノン様も、私には心強い家族がおります。その家族の前で誓いましょう。希望となったのならば俺は絶対に挫けない、と。】


「「・・・。」」


【いかが致しました、御二人共?】


「「その答えは今後のそなたの行いで分かる。」」


そう言うと双子はプレートを差し出して来た。

何処かで見た事があるぞ?


そのプレートを受け取る。

ベヘモドが持っていたプレートか!

慌てて目を通す。


〖かつて栄えた科学を主とする文明。


その文明も終焉を迎える。


愚かにも禁忌を破った人間達は神の怒りを知る。


そう、それは完全なる神との決別であった。


『創造神アリステリア』は涙する。


神々は最終の魔法『アルマゲドン』を我らに向かって放つ。


そう、何もかもの終わり。


すべての始まりとなるように、その魔法は全てを飲み込む。


文明も人族達も・・・。


その魔法で弱った魔王に神々は封印を施し、大陸の中心に封じ込める。


そして、しばらくの後、運命の子がこの大陸を訪れる。


真の勇者として・・・。


次こそ魔王を完全に滅ぼさんが為に。〗


【レノン様、カノン様、これをどこで手に入れたのですか!?】


「嫉妬、レヴィアタンの遺跡で手に入れた。」


「ババ様から渡すように言われた。」


結婚式の和やかな雰囲気が完全にぶっ飛んでしまった。

そのプレートのせいだ。

幸いなのかルイスには読めなかったようだ。

もちろんナナリー達も。


【・・・御配慮に、感謝致します。】


「ヘファイストスよ、運命の御子よ。」


「我らの願いを、魔王の討伐を!」


「「その手で成し遂げられよ!」」


そう言うと双子達は一礼して去って行った。


この件は後でノモスと相談しよう。



「ヘファイストス様、いかがなされたのですか?」


「考え事なのね?貴方様の事ですから、と・う・ぜ・ん、私達の事ですわよね?」


・・・双子登場。


【た、大した事ではありませんよ、それより、いかがでしたか?】


「私達との結婚式もこのようにして頂けるのですわね?」


「貴方様から送られる指輪・・・ああ、楽しみでございますわ!」


【姫様方、結婚をするとは御約束しておりませんが?あ、痛いっ!】


皆、抓らないでくれるとありがたいんだけど!


「それで、ヘファイストス様。次の予定が空いているのはいつになるのかしら?」


「次こそは是非、我が国へ来て頂きたいのよ!」


御二人の獲物を狙う獣の目が俺を射抜く。


【姫様方も御存じの通り、この国の復興が一段落着けば、ヘルシャーへと赴きます。】


「ヘファイストス様は、焦らしていらっしゃいますのかしら、ねえ、リーゼ?」


「焦らさないで下さらないかしら?ヘファイストス様が来るとなれば公国中の民が喜びますわ!」


『ちょっと、アーゼ様、リーゼ様、御存じでしょう?王国の復興が最優先だと。それにヘルシャーで七大悪魔の一人が復活するんですよ!?』


『分かっておりますが、早く貴方様に御来訪して頂いて、この身体の火照りを静めて頂かないと。』


『そうなのよ、姉様に可愛がって頂くのも、もうそろそろ限界なの!』


【れ、冷静になって頂きたい。それは目的が違うのではありませんか?】


「「目的ですの?」」


【そうですよ、勇者様に渡す聖剣を作るのではないのですか?それに七大悪魔の事です。】


「来ては頂けないのですか?こんなにも頼んでいるのに。」


「そうよ、まさか私達の身体に飽きたのではないでしょう?」


【す、済みません、御二人共。両腕と背中が痛いのでそのお話はまたと言う事に。ぁ、痛いぃ!?】


「では、これだけはお約束ください。近いうちに必ず公国に来て下さると!」


「そうよ、その程度の事は約束出来るわよね?」


【分かりました、なるべくですが、早く御伺いさせて頂きます!いったぃ!?】


「リーゼ、今はこれで下がりましょう。」


「はい、姉様。」


【ありがとうございます、近いうちに御伺いしますので!】


「御二人共、その際は妻である私達も伺わせて頂きますね。」


「そうやで、ルイス。もちろんウチ達も伺うでなぁ、なあ、皆!」


「ふふっ、伺わせて頂きますねー。」


「そうですよ、必ず伺いますので!」


「当然だな、必ず伺うと約束しよう。」


「主君と伺うと宣言しようではないか。」


ルイスさん達、フォローありがとうございます。

でも、皆さんの笑顔が怖いです。


「ええ、構いません事よ?」


「構いませんわ、歓迎しようではありませんか。」


皆の間には、バチバチと何か見えない物が弾けているようだ。

後が怖いなぁ。


「では、御約束、しかと致しましたわよ、ヘファイストス様!」


「約束しましたの、守って下さいませ。」


それまで黙っていたバドラック閣下が申し訳なさそうに話しかけて来た。


「ヘファイストス殿、こちらが祝儀となっております。お受け取りを。」


【バドラック様、有難く受け取らせて頂きます。】


小切手だった。

バックパック様に入れると白金貨五十枚の御祝儀だった。

有難く受け取ろう。

・・・三人共、ありがとうございますね。


そう思うと頭を下げ三人の無事の帰還を『アリステリア様』に祈る。



続いては・・・皇帝陛下とパトリオティス将軍に護衛さん達だ。


「おう、婿殿自らの御見送りでございますか、ヘファイストス殿。」


【ええ、もちろんですよ。義父上を見送るのに俺が出ない訳にはいきませんからね。】


「これよ、この細やかな心遣い、出来る物は少ないぞ。」


「左様ですな、陛下。美しい花達も見れた事ですし本日は帰りますからな?」


「何を硬い事を言っている、パトリオティス。義理とは言え息子、その息子と語り合うのは重要な役目なるぞ?」


『閣下、その息子であるヘファイストス殿は今夜は初夜ですぞ?』


『そう言えばそうだな、済まん。失念しておったぞ、パトリオティス。』


「そう言う訳で我らも帰還し申す、婿殿。」


「そうだな、今日の所は大人しくしておくか。」


【父上、お気遣い感謝致します。】


「ヘファイストスにとって父ならば、私達にとっても父と同じでございます。これからもよろしくお願い致します、陛下おとうさま。」


「・・・良い娘ではないか、大事にするのだぞ、息子よ。それと・・・セリスも可愛がってやってくれ。」


「旦那様、皇帝陛下としばし話があるので外しますぞ。」


ああ・・・余計な事を言わなければいいのに。

セリスさん、程々にしてやってね。


「それと、ヘファイストス。祝儀だ、受け取られい。」


陛下がそう言うと近習の人が小切手を渡してくれる。


【有難く、大切に使わせて頂きます。】


跪き、小切手を頂く。

小切手・・・。

大切に使いますね。


「では、父上、しばし、控えの間においで下さいますか?」


「セリスよ、我は心配してだな、ええい、パトリオティス、何とかせよ!」


「だから程々にと言ったおったのです。今回は逃れられぬと思いなされ、陛下。」


「むうう、セ、セリスよ。めでたい席でなんだ、ここは穏便にな。」


「ち・ち・う・え、行きますわよ?」


ガシッとその腕を掴むセリス。


「ぐおお、ヘファイストス、何とかせい!」


【義父上、こればかりは・・・。】


「ヘ、ヘファイストス!?ぬおおお!セリスよ引っ張るでない!お前達も何とかせよ!」


「「「・・・。」」」


「ぐあっ!お、覚えておれよ!」


「それでは失礼致します、ヘファイストス殿、ルイス殿や皆様方。」


将軍は一礼するとセリスに連れていかれる陛下の後を追って行った。


程々にね、セリスさん。



お次は法王猊下一行様ですね。


「ヘファイストス殿、この度の婚儀、誠にめでたく、心からの祝福を!」


「「「祝福を!!!」」」


【誠にありがとうございます、イリーナ様、御三方様。】


「ありがとうございます、法王猊下、皆様方。」


「末長く・・・末長く・・・うっうっうっ・・・。」


「猊下・・・。」


「分かって・・・分かってはいるの、ポステリタス。」


「猊下、挨拶をせねばなりませんぞ?」


「泣く程に悔しいのですか、猊下?」


「猊下・・・。」


【あの、イリーナ様、いかがなされましたか?】


「どうされたのですか、イリーナ様!?」


ルイスも慌てている。

皆もだ。

皆の前で大粒の涙を流しながらイリーナ様が言う。


「何でも・・・何でもないのです、ヘファイストス様。」


「猊下・・・。」


ポステリタス枢機卿が心配そうに見つめている。


【何でもないようには見えません。イリーナ様、涙の訳を言っては下さいませんか?】


「・・・。」


【イリーナ様?】


そう問うとイリーナ様は目に涙をためていたが俺の好きな笑顔でおっしゃった。


「この度の二人の結婚に『アリステリア様』の祝福を、御二人共、大変にすばらしい式でございました。」


【イリーナ様・・・。】


「御二人に心からの祝福を、これより先の二人の旅路に『アリステリア様』からの祝福があらん事を。」


そう言うとイリーナ様はきびすを返す。


「猊下!」


その後を慌てて、ポステリタス枢機卿が追う。


【イリーナ様・・・。】


時間が止まったかのような錯覚を覚える。

するとしゃべりかけてくる人物が一人。


「それでですな、ヘファイストス殿。ソフォスへはいつ頃に訪問をして下さるのかな?」


【それは、王国の各地を復興し、まずはヘルシャーの七大悪魔との問題を話し合いにて解決してからでございますね。】


「その後ならば来て下さると?」


【プラエセンティア枢機卿、その後は七大悪魔の復活までの期間が短い国へ訪れるつもりです。】


「では、ソフォスへはその後になると?」


【言った通りです、プラエセンティア枢機卿。その後に復活までの日数が少ないのは公国ですね。】


「なんと!聖人候補だと思ってつけあがりおって!」


【聖人候補?それに俺は付け上がっている訳ではありません、単純に優先度の違いです。プラエセンティア枢機卿こそ、考え違いの無きようにお願い致したい。】


「っく・・・今に見ておれよ!」


そして、プラエセンティア枢機卿もイリーナ様の後を追う。

最後に残ったのはプラエタルタ枢機卿のみ。

その枢機卿が口を開く。


「猊下の事はお主とは関係あるまい。結婚の話も来ておるでな、何、猊下も十九歳、我慢をすればそこまで酷い相手ではあるまいよ。」


【あの方の笑顔に陰りがあるのならば、それを晴らすのは俺の役目です。】


「小生意気な事をおっしゃる。ではその言葉の責任は取って頂くぞ、ヘファイトス・フォン・エターナル?」


【俺に出来うる範囲でしたらお応え致しましょう】


「その言葉、忘れぬようにな・・・これは祝儀だ、受け取り給え。」


プラエタルタ枢機卿は俺に向かってその用紙を投げつけると、法衣を翻し去って行った。


【イリーナ様・・・。】


その呟いた言葉には「後悔」が乗っていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「坊主、どうした。嬢ちゃん達も、祝いの席じゃぞ?」


新調された裃を着て師匠が現れた。


【あ、ああ!師匠、よくぞいらして下さいました。】


「ジュウベイ様、いらして下さってありがとうございます。」


「・・・何かあったのか?」


【それは後程部屋にてお話致します。今はルイスとの結婚式ですから!】


「そうじゃの、見事な物じゃな。これでこの結婚式の様式とやらが流行るのではないかの?」


【貴族さん達から流行るでしょうね。後は予算がどうなるかですね。】


「坊主はいくら使ったんじゃ?」


【内緒です。】


「なんじゃ、期待させおってからに・・・だが、これで結婚する人々の思いが変わるじゃろうな・・・。」


【そうなんですよ、女の子にとっては特別な事なんですからね。是非流行ってほしいですね。】


「っふ、偉そうにほざくわ、坊主ごときが。で、これが祝儀じゃ。」


【師匠から頂けるとは、光栄の至り。】


「もう、素直になりなさいよね、貴方。」


【ルイスの前では素直になると決めました。】


「ヘファ君、ルイスさんの前だけですかー?」


【もちろんナナリーや皆の前でもね。】


「そうですね、ヘファイストス様。」


「そうだぞ、主君はもっと素直になるべきだ。」


「坊ちゃん、言われとるでぇ?」


『師匠、これが終わったら一度ヘルシャーへと赴こうかと、詳しくは後程。』


『分かった、後程な。』


そう囁くと師匠が安心して宿に戻ろうかと帰り支度をする。


【師匠、本日はありがとうございました!】


「ありがとうございました、ジュウベイ様。」


「二人、いや、坊主達に『アリステリア様』の加護があらん事を。」


そう言うと師匠は去って行った、酒の樽を担いで。



「アンタも年貢の納め時のようね!」


【何だよミカ、仲間に入れてほしいなら言うべきことがあるだろう?】


「っく、コイツと来たら・・・皆も何か言ってやりなさいよ!」


「ヘファイストス様、素晴らしい結婚式でございました。ババ様にも見せてあげたかった。」


そう言えば来ていなかったね。


【リリアさん、ババ様の体調でも?】


「体調と言えばそうなのですが、自業自得なのです・・・冷菓子を食べすぎまして・・・。」


おいこら婆さん。

ったく、深刻な話じゃなくてよかったよ。


【お体を大切にと言っておいて下さいね。】


「はい、お恥ずかしい・・・。」


真っ赤な顔をフードで隠そうとするが頬っぺたが赤いのは見えてしまった。


「で、ヘファイストス殿は考えを改めて弟子を取る事にしないか?」


「そうだ、我らだけでは限界がある、弟子を取るべきだぞ。」


【ヘイシンさん、ベクターさん、来て頂いて、ありがとうございます!】


「当然だ、我らは一蓮托生なのだからな。」


「そうだぞ、君は考えを改めるべきだ。」


【フェイに聞いてもらえれば分かりますが、俺は自由にやらせているだけですよ?】


そう言うとフェイを見る二人。


『ヘファイストス殿、フェイには服が小さすぎるのではないかな?』


『そうだぞ、仮にも尊爵婦人なのだ、周りを見たまえ。』


そう、フェイには大胆なドレスを着させているので男の目が行く。

ただその中でも「巨乳」ではないか!

そう言って離れる人もいる。

素晴らしい意匠ではないかと言う声も聞こえる。

良いんだよ。


俺の趣味だからね!


ドレス姿のフェイと目が合うと、こちらにウィンクして来る。

そのウィンクを受けた人達は美人だと言って近づく人もいるし、巨乳だと離れて行く人もいる。

ただ、話しかける勇気のある人物はいない。

尊爵様に対する無礼はいかんと思ってでもいるのだろうか?


「それにそうだ、あの鰻と言う料理だ。何処に行けば食べられるのだ?」


「うむ、とても美味かった。我らは宮廷にも呼ばれる事はあるが、アレ程の物を食べたのは初めてだ。」


「その通りだ、ヘファイストス殿。弟子の件、諦めた訳では無いからな?」


「ヘイシンの意見に賛成だ。是非に教えを!」


「はいはい、アンタ達、今日はお祝いに来ているのよ?」


「そうだったな、では・・・ミカ、君が渡してくれるかな?」


「そうだな、位も一番上だしな。」


「そうですね、相応しいのはミカ様かと思います。」


「ったく、分かったわよ。っで、ルイスさん。」


「はい、何でしょうかミカさん。」


「悔しいから貴女に渡すわ。私達からの祝儀よ、受け取って頂戴。」


ルイスが俺を見る。

大きく肯いてあげる。

安心したのかそれを受け取る。


「良かったわね、ルイスさん。幸せになりなさいよ?」


「ありがとうございます、皆様。」


そう言ってルイスが頭を下げる。

隣りに同じく下げる。


「ア、アンタの為じゃないんだからね!そうよ、ルイスさんの為だからね!」


「ふふ、ミカ様。このような場では素直になりませんと。」


「コ、コイツには丁度良いのよ!」


「それでは失礼するよ、まだ人は並んでいるようだからね。」


「失礼する、ヘファイストス殿。」


「失礼致しますね、ヘファイストス様。」


「・・・またギルドで合いましょう。」


【ありがとうございました!皆様に『アリステリア様』の加護のあらん事を!】


「ありがとうございました、皆さん。また、お会い致しましょう!」


そうやってライバル達の背中を見送る。



「こんにちは、アーサー。美人さんがこのように・・・これは華やかですね、見送りですか?」


【ええ、ジャスティンさん。そう言えば、師匠の鍛錬はいかがですか?】


「厳しいですが、強くなっている実感がありますね。もっと早くに師事していればと悔しくてなりません。」


【充実しているようですね。】


「そうだ、これを言っておかねばね。遅くなったけれど、おめでとう、アーサー、ルイスさん。心よりの祝福を!」


「「「祝福を!!!」」」


「おめでとう、アーサー。だが、師匠の事はもっと早く紹介してほしかったぜ。」


【そう言うダンさんも、良い顔になりましたね。】


「ったりめーよ!アーサーにも追いついてやるぜ?」


【そこはまだ、譲れませんよ?】


「アーサー君、おめでとう~。ルイスさんと幸せにね~。」


【アンナさん、ありがとうございます!】


「アーサー様、おめでとうございます!祝福をしたいのですが複雑ですわ。」


【ラフィアさん、そんな事は言わないで下さいよ。めでたい席なのです、笑って下さい。】


「ふふっ、そうでしたわね。『アリステリア様』貴女の御子に祝福を!」


【ありがとうございます、ラフィアさん、皆さん!】


「あ、兄貴よ・・・そ、その、おめでとう。」


【どうしました、ディアナ?貴女らしくないですね?】


「アタシらしくってどんなだい?」


【元気な所がありませんよ?】


「・・・そうだね、アタイも、兄貴の女なんだ。これからもよろしくしてくれよな!」


「「「兄貴の女!?」」」


【はおっあいてぁっ!】


嫁の皆さん、お願いだから抓らないで!


「それでは、ラフィア。祝儀を渡して下さい。」


「かしこまりましたわ、ジャスティン。」


【これは、皆さんからは受け取れませんよ、貯金しておいて下さい。】


「何を言ってるんだよ、アーサー。遠慮なんかするなよ、気持ちなんだ。」


「相棒の言う通りです、受け取って下さい、アーサー。」


「受け取ると良いんさ~、アーサー君。」


「そうだぜ、アーサーの兄貴!」


「受け取って頂きたいのですわ、アーサー様。」


【・・・では、有難く頂きます。】


受け取ると皆とハグをしていく。


「それでは、お幸せに、二人共!」


「「「おめでとう、二人に『アリステリア様』の祝福があらん事を!」」」


そう言うと踵を返しジャスティン達は戻って行く。


ディアナがコソコソと見送る側の一人になったのは内緒だ。



お、今度はガーゴイルの女王陛下だ。


カルブ様もいらっしゃるね。


『Well, well, Lord Hephaestus. I truly enjoyed myself today.』

(これはこれは、ヘファイストス殿。本日は実に楽しめたぞ。)


「貴方。」


【分かっているよ、ルイス・・・6th、トランスレーション。】


『ほう、翻訳の魔法かの?』


【その通りです、女王陛下。】


『本日は御来席、誠にありがとうございます。』


【カルブ殿下も、ありがとうございます。】


『気にするでない、ただ来たと言う訳では無い。』


【と、おっしゃいますと?】


『七大悪魔の件を、情報を聞きたくて参った。』


女王陛下はルイスと話している。

殿下と申し合わせたのかね?


【それはこの場では相応しくは無いかと、後日伺いますのでその時にでもお話しが出来ればと思いますが。】


『分かった、席を設けよう。後日連絡をする。』


【はい、お待ちしております。】


そう言うとカルブ殿下は一歩下がる。

そこにルイスとの話が一段落着いた女王陛下が俺の方へ来る。


『ヘファイストス殿、友のめでたい席だと言う事なのでな。通貨よりもふさわしいと思い金を持って来たぞ、受け取られい。』


女王陛下がそう言うとカルブ殿下がバックパックから金塊を取り出す。

うひょー、金塊が山だよ!


神殿にいる人々から声が上がる。


「凄い金塊ですわ!」


「このような金塊は見た事が無い!」


「ガーゴイル族・・・何と言う財力か・・・!?」


「これは・・・何と言う事だ!?」


『受け取られよ、ヘファイストス殿。』


慌てて跪く。

それを見てルイス達も跪く。


【陛下、流石にこれは多すぎて受け取れません、御考え直しを。】


『何を申すか、友のめでたき日ぞ?この程度出さんでいかがするか?』


『母上の申す通りだ、ヘファイストス殿。遠慮なく受け取られよ。』


しまったなあ。

女王陛下、ガーゴイル族の金銭感覚がどうなっているかとか考えてなかった。

これを受け取らなければ女王陛下の顔に泥を塗ってしまうだろう。

もちろんガーゴイル族の人達に対しても・・・。

仕方がない。


【それでは、陛下。此度は受け取らせて頂きます。】


『ほっほっほ、そうであろう。ところでのう、友の事だ、鰻はあれだけではあるまい?』


【はい、後二十個ほど作り置きがございます。】


『友よ、それを所望するぞ。カルブ、受け取れ。』


『はい、母上!』


【それでは、カルブ殿のバックパックでよろしいですか?】


『それで構わん、鰻・・・誠にわらわを惑わせる。』


そして女王様は鰻を受け取るとホクホク顔で帰って行った。

その後は初めて会う人達ばかりだった。

各地を収める領主様達だ。

顔はアセディアの時の件で何名かは見た事があった。


話したのは初めてだけどね。


そして式場から人がいなくなると片付けの指揮を取っているバウマンさんの所へ皆と向かう。

ノモスに礼を言う為だ。


「アーサー様、会頭ならば控室にいますぞ。その・・・行けば分かると思いますが力になってあげて下さいませ。」


【ノモスの力になるのは歓迎だけど何かあったんですか?】


「会頭の奥様方がこのような素晴らしい物があったのかとノモス様を攻め立てておりましてな・・・。」


【済みません、近づきたくありません。】


踵を返す。

こんな所で捕まったらを考えると怖すぎる。


「そのような事を言わずに、アーサー殿しか頼れる人はおらんのですよ!」


バウマンさんが必死に俺を止める。

くう、ディフェンスが完璧だなこの人・・・慣れているな!?


いつの間にかグレイさんに左手を掴まれる。


【嫌ですよ、巻き込まれるのは勘弁願いたい!】


「そこを何とか!」


「アーサー殿、頼らせてもらうぞ!」


唯一の救いであるルイスの方を見るとニコニコと笑顔だった。


「貴方、折角の機会ですから是非挨拶がしたいわ。」


【あー、もうっ!ルイスまでが言うなら仕方がない。それで、控えの間なんだね?】


「恩にきりますぞ、アーサー殿。」


「助かる、アーサー殿。」


掴まれて皴になった服をただすと気合を入れる。

仕方がない。

今回だけだぞ、ノモス?


そう心構えをするとノモスのいると言う控えの間に向かうのだった。

ここまで読んで下さって、誠にありがとうございます!

まずは、いつものから!

評価、イイネ、ブックマーク等々。

誠にありがとうございます!

何故か、拙者は年末から病気ばかりです。

厄年か?

とにかく、こうして執筆できるのも皆様のおかげです。

最大限の感謝を!

拙者みたいになっては駄目ですぞ?

それでは、次話 女性達からの要求(仮 で、お会い致しましょう!

御疲れ様でした!

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