新生と呼ばれるまで-Ⅲ
いつも読んで下さって、ありがとうございます!
続きとなります。
お楽しみ頂ければ幸いでございます。
アンナを先頭に洞窟の中を進む。
途中で出て来たアース・エレメンタルはディアナが相手をして難なく処理して行く。
少し開けた場所まで来ると、そこの地面が盛り土の様になっていて、二か所の丈夫そうな岩からはロープが下階に降りていた。
暗視の魔法は使っているのだが、ロープの先は見えない。
「ここが下に降りるロープですわね。アンナ、気を付けて下さいませ。」
「おっけー、行くよー?」
降りる順番はアンナ、私、ディアナの順番である。
ギッシギシ・・・
アンナは危なげもなく縄を降りて行く。
下までは何メートルあるのだろうか?
結構深い。
アンナは無事に降り立ったようだ。
次は私の番ね。
時間がかかりロープを伝う手に力が入らなくなる恐れがあるので筋力増強のポーションを飲んだ。
不慣れなのでゆっくりと確実に降りて行く。
下にいるアンナは周辺の警戒しているようだ。
私の不確かな目測では深さは五十m程はあるのではないだろうか?
そんな心配をしていると「土一」と上階から声が聞こえた。
決めていた合図で、ディアナの待機している所にアース・エレメンタルが一体現れたと言う事だろう。
決定力の無い私が最後では持たなかっただろう。
我ながら、良い判断をした。
と、戦闘音が聞こえて来た。
ディアナが戦っているのだろう。
そんな事を気にしていると下階からアンナの緊張した声が響いて来た。
「何かいるんさー!」
「急ぎますわ!」
ドゴッ!
「終了!敵影無し!」
ディアナも慣れたのだろう。
その声には頼もしささえある。
だが、問題は下のアンナだ。
っと、下から三m程の所でロープが無くなっている。
意を決して飛び降りる。
トッ
手足に違和感はない。
どうやら無事に降りれたようだ。
「ラフィア、あーっしの後ろへ!」
「ディアナが無事に降りれるよう、着地点の確保をしますわ!」
「りょ~・・・まだ動かない、西側だね。」
「私には見えませんわ?」
「もぞもぞしているみたいなんさ~。」
アンナが警戒している。
その間にディアナに降りてもらわなければ。
と、ロープがギシギシと言いだした。
ディアナが降りて来ているのだろう。
「アンナ、警戒を任せますわ!・・・エネルギー・フィールド!」
エネルギー系の属性の壁を出す。
その壁自体が明滅しているので、明かりに照らし出された近づいて来たモンスター達がその壁に遮られる。
「ギャシュガリルウゥァア!」
「シャガァェルリアァァ!?」
「オークがいっぱいなんさ~。」
「ロープを降りて来たとは思えませんが・・・。」
「シャガルゥァアアシャー!Τι ήρθατε να κάνετε;」
「何か言って・・・『お前・・・達は何をしに・・・来た。』?」
「怒っているみたいなんさ~。」
「困りましたわね。」
「困ったねぇ~。」
「何やってるんすか、二人共?」
「ディアナ、間に合いましたか?」
「良かったんさ~。」
「どういう状況なんだい?」
三十匹程のオークに囲まれている状況だ。
その中でも二m近くの屈強なオークが近づいて来た。
コイツがリーダー格らしい。
オーク・ロードと言った所か。
「Γυναίκα του ανθρώπινου γένους, τι ήρθες να κάνεις!」
(人族の女達、何をしに来た!)
「戦闘態勢は取っておいて頂戴、友好的ではないわ。」
「りょ~。」
「分かったぜ!」
「Άκουσα ότι υπάρχει πρόβλημα στην εξόρυξη και ήρθα να ερευνήσω. Εσείς γιατί βρίσκεστε σε τέτοιο μέρος;」
(鉱山に問題があると聞いて調査に来ました。貴方達こそこのような所へ何用ですか?)
「Αυτή είναι η περιοχή που ελέγχουμε! Δεν επιτρέπεται στους ανθρώπους να εισέρχονται κατά βούληση!」
(ここは我々が支配した!人族が勝手に足を踏み入れる事は許さん!)
「Αυτός είναι ο τομέας κυριαρχίας της φυλής μας. Εσείς τον παραβιάζετε. Σας συμβουλεύω να φύγετε αμέσως!」
(ここは我ら人族の支配地です。貴方がたはそれを犯しております。すぐに立ち去る事を勧めますわ!)
「Θρασύδειλες γυναίκες! Θα το πιάσω και θα το μετατρέψω σε σακούλα κρέατος! Καρέ!」
(生意気な女共だ!捕らえて肉袋にしてやる!かかれ!)
「交渉決裂ですわ!アンナ!ディアナ!下がります!」
「りょ~!」
「おうとも!」
オーク共が襲い掛かって来た。
それを何もせずにボケっとしている私達ではない。
「左の通路のような所へ!」
「りょ~!」
「うっす!」
「・・・スリープ・クラウド!」
眠りの雲を呼び出す魔法だ。
バタバタと五匹のオークが倒れる。
「ディアナ先頭を!アンナは中衛、私は後方にいさせてもらいますわ!」
「「応!」」
「ッシ!」
「グアガアガァァ!?」
「ギャオゥ!」
「ギャアァアァー!」
アンナの弓で来る途中までに三匹を無力化する。
「っへ、ここから先には行かせないぜ?」
「アンナ!援護を!」
「りょ~!」
「・・・ブレッシング・オール!」
ドゴォ!
バグンッ!
「オラオラァ!どうした?立派なのは体格だけか!?」
「Αυτή η θηλυκή είναι δυνατή!」
(この雌、強いぞ!)
「・・・パラライズ・フィールド!」
「ギャワッ!?」
「ゴワッ!?」
「ギャゥオ!?」
動きの止まった相手を放置して一匹ずつ動いている敵を相手にする。
ディアナとアンナは良くやっている。
特にディアナ。
格闘の優越を決定するのは格闘では当然のごとく体格だ。
その体格の優れている敵を相手に良く戦っている。
「オラァ!」
ズドン!
「ゴアーソグギャガッ!」
「まだまだぁっ!」
ゴギャ!
ドガッ!
「Τι είναι αυτό... αυτή η δύναμη της θηλυκής;!」
(な、なんだ・・・この雌の強さは!?)
シュッ!
ズドッ!
「ギャガガガッ!?」
「ギャウ・・・。」
「ゴアッギャゥ!」
「Λοιπόν, μην υποχωρείς! Είναι μόνο τρεις θηλυκοί!」
(さ、下がるな!たった三人の雌なんだぞ!)
「余所見をする余裕があるのかい?」
「ギャワグアゥ!?」
「ッシ!」
一呼吸で三連打の大砲のようなジャブ。
ズドドド!
「ギャウウォァア・・・。」
「どうした!まだこれからだろう?」
「ッシ!」
ズドッ!
「ギャワッ!」
「どんどんくるといいんさー!」
「・・・おかしいですわね、メイジがいないですわ。」
「それがいるとここまで簡単じゃないんさ~?」
「ええ、ファイヤー・フィールド!」
地面から火柱が上がり敵の進行を防ぐ。
あと十匹程のオークが残っているが対局は決しただろう。
「オラオラァッ!」
「ッシ!」
「ファイヤー・ストライク!」
オークが逃げ出そうとするが、ここは地階だ。
逃げられる訳がない。
オーク共が上階に上がるロープへと殺到するが、アンナの良い的になるだけだった。
こうして地階での戦いは私達の勝利で幕を閉じる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アンナを戻して衛兵を呼んでもらっている。
その間にボスらしきオークの話を聞いている。
「Μάχερ, το τραγούδι ήταν ψέμα;」
(マアデン・イーターは嘘だったと?)
「Έτσι είναι, άκουσα ότι αν διαδώσουμε αυτή τη φήμη, οι άνθρωποι θα δυσκολευτούν να πλησιάσουν.」
(そうだ、その噂を流せば人族が近寄りづらくなると聞いた。)
「Ποιος σου το είπε;」
(誰から聞いたのですか?)
「Είναι από τη γιαγιά του χωριού που χωρίσαμε.」
(別れた里のババアからだ。)
・・・討伐隊が派遣される事は考えなかったのだろうか?
流石、身体全体が筋肉で出来ていると言うオーク族だ。
それとも・・・。
いや、この想像は無かった事にしよう。
その後はオークの無事である者から引き渡しが始まった。
怪我をしていないオーク族がロープを登る。
怪我をしている者達は貨物用のトロッコに乗せて地上へ。
その間、彼らは大人しく従ってくれた。
オーク族は強い者に従うと言うのは本当のようだ。
そして全部のオーク族がロープを登るとアンナが降りて来た。
「よっと、ラフィアは何をしているのさ~?」
「念の為に、鉱脈の調査ですわよ。うん、オークに荒らされた形跡はありませんわね。」
「それでどうするんすか?」
「どうするもなにも、これで解決でしょう?」
「暴れたりねえっすね。」
「じゃあ、暴れたりないと言うディアナにはプレゼントがあるんさ~。」
「なんだか怪しいね、何をくれるんだい?」
「あーっしの予想では右奥にいるんさ。」
「いるって・・・何が?」
「ジャスティン達の言っていた事を思い出すんさ~。」
「兄貴達の?」
「アンナ、いるのですわね?」
「いるね、間違いなくアイツなんさ。」
「右奥だね、行ってみるか!」
「ディアナ、油断なきように。」
「任せといてくださいよ、姉さん。」
「残骸はアーサー君が喜ぶと思うんさ~。」
「兄貴が喜ぶなら、残骸にして土産決定だな。やってやろうじゃ・・・ああ!アイツか!?」
「その様ですわね、何処から出て来たのやら・・・。」
慎重に三人で進むと壁際にキラリと光る三m級のうごめく物が一体。
「ジャスティンの兄貴がダンの兄貴に任せようとしたヤツっすね?」
「そうなんさ、相手にとって不足はないだろうさ~。」
「はあ、襲ってこないようですし、大人しくしておけば良い物を・・・。」
「一応討伐対象なんさ~。」
「・・・行って来る。」
「ディアナ、油断はきん」
私の言葉を遮る様にディアナは言う。
「分かってるさ、姉さん。でもあいつを倒してアタイの事を過小評価したって言わせてやるぜ!」
「なら、よろしいですわ。行って来なさい!」
「応!」
そしてディアナの試練が始まる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ドゴァッ!
「動きは鈍いね、だが力があるようだ、硬さも・・・アース・エレメンタルなんか比べ物にならねえ。」
「ゴゴゴゴゴ・・・。」
「っち、硬さが・・・厄介だね!」
ッシ!
右のローキックを見舞う。
そして効いているか分からないボディーへの打撃を放つ。
「ゴロアアアァァァ!」
「怒ったのか?って事は効いてるって事だね!」
ブゥーン!
ドゴアッ!
「っち、パワーはあっちの方が上か?ならっ!」
シュッシュッシュッ!
ドガ!ドガ!ドゴン!
「手数を増やす!」
ドガ!ドゴッ!ドゴン!
「まだまだぁっ!」
ゴガン!ドゴッ!ゴガッ!ゴガン!
「どうだっ!」
「ゴルアァァァ・・・!」
「っち、エレメンタル系って言うのは効いているのかが分からないね!」
ディアナは懐に入りメタル・エレメンタルの近距離からの攻撃を行っている。
至近距離ならば、あの大きさの敵は攻撃手段が無くなる。
それを見越しての間合いだった。
ディアナのその読みがピタリと合った歯車の様に動いている。
「ダリャリャリャァッ!」
ズド!ズドン!スゴン!
左ジャブから右のローキックまでの一連の流れ。
これも、アーサー様から教わった事でしょう。
忠実に、その敵の弱点らしきところをその拳が穿つ。
と、アンナが何か言いだした。
「で、そろそろ出て来てほしいんだけどね~。」
「「【・・・。】」」」
「バレてるんさ、三人共~。」
「ほ、ほら、呼ばれてるぞ、アーサー。」
【いえ、この場合はジャスティンさんですよ。俺がそんな中途半端に育てる訳がないじゃないですか!】
「いや、僕はまだ早いかと思っただけでですね。」
「皆さん、何時の間に?いえ、アンナの『三人の正義の味方』で気付いたのですが、ここまで来るとは・・・。」
ラフィアが頭を抱える。
「いや、だってよぉ、なあ?アーサー。」
【そうですね、ジャスティンさんが物凄く心配なさっていてですね。】
「そ、それはアーサーもダンも一緒ではありませんか!」
「はぁ、それで、昨日の傭兵団もどきはどうなされたんですか?」
「アーサーの見解を相棒が聞いてだな・・・許せねえとだな・・・。」
「あんな奴らを野放しに出来るはずがないでしょう!それに証拠もあったので提出したではありませんか!」
【ドリュカス伯が喜んでいたので、それは置いておきましょう。】
「そうだそうだ!そのおかげでオークを無事にとっ捕まえる事が出来ただろう?」
「そこにも噛んでいたのですわね?」
ギロリッ!
「「【ひいっ!】」」
「ジャスティンとダンはお小遣いを減らします!アーサー様はアリステリア様の神殿に金貨一枚を奉納なさって下さい!」
「ラ、ラフィア、それは何とかならねえか?な、相棒、アーサー?」
「そうです、可愛い妹弟子の成長を見る為にですから、それはあまりにも厳しく・・・。」
【俺は諦めましたよ、明日にでもいって奉納しておきましょう。】
「「アーサー!?」」
「アーサー様は素直でございますわね。」
【し、失礼な、何時も素直でしょう!?】
「「・・・。」」
【何ですか、二人共。その目は・・・。】
「御二人はどうなさいますか?」
「「それで、結構です・・・。」」
「お、良い調子なんさ~。」
【ディアナ、間合いはそのままです!膝への攻撃が効いてますよ!】
「アーサーの兄貴!?ジャスティンの兄貴やダンの兄貴まで!?」
【ディアナ、敵は正面ですよ!】
「そうです!もう少しです!相手から目をそらさない!」
「ディアナ、左が効いてるぞ!そのまま行け!」
「お、応!」
その頼もしい掛け声はメタル・エレメンタルが動かなくなるまで続いた。
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