冒険者ギルドと再会
楽しみにして下さっている方、また初めての方こんばんは。
執筆終了いたしました。
お楽しみください。
南通りに冒険者ギルドはある。
念の為と思い、いつものフード付きのローブを装備している。
【良いかい、アリスさん。此処からは俺の事は『アーサー』と呼ぶんだよ?】
「何でなのですかー?」
【本名を知られたくないからだよ。俺とアリスの秘密だ。秘密に出来たら肉串を買ってあげよう!】
「わ、分かったのですー!」
両拳を顎の下に付けてポーズをとっている。
可愛いなぁ、もう!
頭をグリグリと撫でてやる。
アリス様は御満悦だ。
中央の噴水から南通りをしばらく歩くと見えて来たらしい。
「あそこが冒険者ギルドなのですー!」
手を繋いで歩いていると空いている手で指さしてくれる。
まだ遠めだが冒険者ギルドだという建物が見えて来た。
たどり着くと九時を知らせる鐘が鳴っていた。
そうすると入り口の周りに集まっていた冒険者達がゾロゾロと中に入っていく。
込み合っていたのでしばらく待ってから入って行く。
中に入ると右手にある色々な掲示板が目に入る。
十、九、八、七、六、五・・・と書いてあるのはランクなのだろうか?
右側の壁一面にある掲示板に羊皮紙が色々と張り出されている。
多分これが依頼なのだろう。
結構多いな。
そういえばオーガ・ロードを倒した時の牙がバックパックにあるな。
討伐依頼、いや収集依頼だろうか?
あると良いな・・・。
と、掲示板を見ていると後ろの方から声が掛かる。
「アーサーじゃないですか!久しぶりですね、冒険者になりに来たのですか?」
久しぶりに聞いた声がする。
振り返り挨拶をする。
【ジャスティンさん、おはようございます!】
「おはようなのですー!」
「はい、おはようございます。御嬢様も、おはようございます。」
と、握手を交わす。
アリスにも握手する。
さすがジャスティン、子供にも気遣う優しさ。
こういう所がもてるんだぞ。
分かったか、俺?
「ダン達もいるんだ。是非会ってやってくれ。」
【喜んで!】
「ところで、そちらのお嬢さんは?」
【ああ、商売のパートナーの一人なんですよ。】
「アリスなのですー!」
「アリスさんは元気ですね。」
そう言ってニッコリと微笑むと入り口から左の歓談スペースへジャスティンの案内のもとアリスと一緒に移動する。
酒場兼の雰囲気があり朝からエールを頼んでいる人もいる。
あの人はドワーフかな?
そう言えばミカと連絡を取りたいんだけど宿の場所教えてもらってないんだよね。
そうすると皆が俺を視界に収めたのだろう。
「アーサーじゃないか!」
「アーサー君だ~!」
「アーサー様!?」
皆が出迎えてくれた。
【皆さん、お久しぶりです。元気にしてましたか?】
「もちろんだ。」
と、言ってダンにヘッドロックを掛けられる。
朝から飲んでるなダン・・・酒臭いな。
【痛いですよ、ダンさん。】
「アーサー君も冒険者になりに来たの~?」
「いえ、念の為に地図をと思って買いに来ました。」
「そう言えばその女の子は~?」
アンナが聞いて来たのでアリスを紹介する。
「アリスなのです!」
「元気で可愛い子ね~。」
「今日はお使いかい、お嬢ちゃん。」
「はいなのです!地図を買いに来たのです!」
「小さいのに偉いな。とっておきの飴をやろう。」
ヘッドロックを解くとカバンを漁り始める。
ダンって面倒見が良いんだな。
「こいつだ、お嬢ちゃん。」
「ありがとうなのです!」
と、言って貰った飴を早速食べている。
ラフィアは俺を見た後に何事かお祈りを始めてしまった。
【皆さんが元気そうで安心しました。】
するとジャスティンが囁いて来た。
『あれ以来「オーガ殺し」という渾名がついてしまったんだよ。恥ずかしいからその名で呼ばないで下さいね。』
そう言って来る。
「ヘファさん、「アーサー」って誰なのです?」
・・・場が凍り付いた。
そんなアリスの耳元でそっと囁く。
『こ、此処ではアーサーって呼んでって言ったよね。アリス先生!?』
『わ、分かったのです。』
アリスも小声で返して来た。
「「「ヘファさん?」」」
ラフィア以外は知らないんだった。
迂闊すぎた。
ここは強引に話を変えよう。
【ああ、そうだ。皆さんに見てもらいたい物があって、時間は大丈夫ですか?】
「アーサー、変な物は見せるんじゃないぞ?」
「そうだよ~?君の見せる物はびっくりする物だらけだろうしね~。」
そう言っていると祈りを終えたのだろう。
ラフィアが抱き着いてきた。
うん、ポニョポニョが良いよね。
「アーサー様、お久しぶりです!」
【元気でしたか?ラフィアさん。】
「もちろんです!アーサー様は・・・うん、大きくなりましたね。」
俺を見て満足げにラフィアがそう言う。
大きくなったって背が伸びたのかな?
そう思って頭を触る。
「背ではございませんわよ?」
と、ラフィア人差し指を立てて言う。
背が高くなったのかと思ってびっくりしたよ。
・・・まだ可能性はあるから何とかならないだろうか?
【皆さんは何をされているんですか?】
「ああ、依頼を見る為に来たんだよ。」
【相変わらず忙しそうですね。】
「おかげさまで『等級』が上がったからね。」
ジャスティンがそう言う。
等級ね。
これもゲームでは無かったね。
「ああ、皆仲良く第六位になったんだぜ?」
「でもね~。そうでもないのよ~?最近はゴブリンばっかりだったからね~。」
「左様ですわ、アーサー様。もうしばらくゴブリンは見たくありませんわ。」
「まぁまぁ、困っている人がいるんだから、ね?」
「そうだぞ、たかがゴブリンでもアイツら悪知恵が働くから放っておくと危ないんだよ。」
ジャスティンとダンが女性陣をたしなめている。
「あ、そう言えば見せたい物ってなんだい?」
【ああ、ちょっと待って下さいね。】
そう言ってバックパックからアース・エレメンタルから取った核を見せる。
「あ~、やっぱりそういうのなのね~。」
と、アンナがまたかーという顔をして核を見ている。
「これはアース・エレメンタルの核ですね。掲示板に採取依頼があったと思いますよ?」
【そうですか、ありがとうございます。】
「何個あるんだよ?」
エールのジョッキを持っているダンに聞かれたので素直に答える。
【えーっと・・・五十三個ですね。】
「ブー!!!」
ダンがエールを噴き出した。
「ゲハゴッホ!」
汚いな、ダン。
噴き出したエールの先にいるのはアンナだった。
不運にも飛沫を被ってしまったアンナ。
だがその刹那アンナからダンに右ストレートの大砲が撃ち込まれる!
ドゴォッ!
大砲をモロに食らって椅子から転がり落ちるダン。
アンナは、きったなーい!
と、言ってゴシゴシと布で体を拭いている。
「お姉さん大丈夫なのです?」
と、アリスが聞いているとアンナは「大丈夫よ~。」と言って笑っていた。
それを聞いたダンは無傷を装って立ち上がるが両膝がガクガクしている。
生まれたばかりの子馬がこんな感じだったな。
「ほ、本当か!ア、アーサーならソ、ソロだよな?」
ダンは強がっているのかそう言って来たが呂律も変だし膝はまだガクガクしている。
相当効いてるな。
【ええ、パーティーではありませんね。ソロです。】
そう言うと、ジャスティンが言って来た。
「アーサー、時間があるなら手合わせをしてもらえないかい?」
【用事を済ませてからでも大丈夫ですか?】
「もちろんだよ、ダンもやるだろう?」
「あ、あの頃とは一味違う、うって所を見せてや、やるぜ。」
まだ足がガクガクしている。
大丈夫かダン?
「おじさん、大丈夫なのですか?」
アリスにおじさんと言われてダンが固まってしまった。
止めを刺すとは容赦ないなアリス君。
・・・中身が四十歳の俺はどうなるんだろうね?
お爺ちゃんかな?
いやいや、アリスにお爺ちゃんとか言われたら立ち直れそうにない。
メンタルは弱いんだ。
さっさと地図を買おう。
【じゃあ、少し待っててください。用事を済ませて来ますので。】
「待っていますよ、アーサー。」
「行ってらっしゃいなんさ~。」
「はい、行ってらっしゃって下さい!アーサー様!」
そう言って皆に送り出されたのだった。
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次話 冒険者と言う人達 でお会いしましょう。
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