フェイの気持ち
皆様いつもありがとうございます!
執筆が終わりましたので上げさせて頂きます。
お楽しみ頂けたら幸いです。
選定の日、二日目。
その日のフェイの機嫌は良かったそうだ。
サーラも特に問題は無かった。
だが、それは選別会場で起こったらしい。
「ハァ・・・ハァ・・・。」
「ミ、ミカ様・・・。」
「クゥ~ン・・・。」
「まだ・・・まだ前にいるのね!?い・・・いつか追いついて、いや、駄目だわ。今、追い越してやる・・・わ。」
そう、今のフェイはアイツに迫るかもしれない。
そんなヤツを、そんなヤツの相手をして育ててしまった!
これで前を行くフェイには、もう私は及ばないかもしれない。
「アッハッハ!まだやぁ!もっと高みに!あの方の近くにウチを連れて行くんや!」
カーン!
カーン!
「くぅ・・・折角打ち慣れて来たと言うのに・・・!」
フェイ・・・あの質から言ってあの感覚は掴んだのだろう。
それに補助をしている女・・・確かアイツの弟子にと話をしたサーラと言ったか?
フェイの性格を知り尽くしているように息のあった補助をする・・・。
これが私の一人の限界か?
「ミカ様・・・。」
「サーラ!火や!火が足らん!」
「はい!フェイさん!」
ゴオッ!
「そうや!行けるっ!坊ちゃんにも負けない物を作る!」
「はい!」
っく、追いつこうと無理をしてハンマーを振り下ろしていたらこのざまだ。
この状態では今のフェイにはもう・・・。
悔しい。
カーン!
カーン!
・・・。
ハ、ハンマーの音がしなくなった!?
「出来たでぇ!」
「水です!」
「おう!」
ジュワーゴボゴボゴボ・・・。
「整えるで!」
「はいっ!」
ゴリッ!
ゴリッ!
・・・。
シュッ!
シュッ!
シュッ!
早い、早すぎる。
もう研ぎに入ったの!?
【ありゃま、見に来てみれば・・・ん?おいミカ!?どうした?スタミナか・・・?】
伏せて立てないミカを抱き上げる。
消耗が酷い。
慌ててスタミナポーションを飲ませる。
何をやったらこんな事になるのだろうか?
そしてフェイの方を見る。
「坊ちゃん、これからはウチがいるからなあっ!」
【・・・フェイ、どうかしましたか?】
「ふふ・・・高みに、そう坊ちゃんの見ている景色の足元まで来たんだよ。」
ん?
聞き間違えか?
【高みですか?】
「そうや!先日から打ち込んでてやっと分かったんよ。鉱物から聞こえる声が!」
いやいや、言った事はあるが俺には聞こえないぞ?
「坊ちゃんの言う通りやでぇ、鉱物の声が聞こえるようになった。これでウチも隣に並べる!」
【ミカの消耗はそう言う事ですか・・・。】
「そうや!相手をしてあげたのさ。ミカもおしいね。同じ立ち位置に立てたと思ったらこんなに差が出来てしまったわぁ。」
「っく!?」
【ミカ、今は自分の事だけを考えろ。最悪エクスィ・スィデラスにもなれなくなるぞ?】
「で、でもっ!」
【今は精いっぱいの物で聖剣を作るんだ、その事だけ考えるように。フェイの事は・・・何とか致しましょう。仕事に理解のある俺の嫁さんだからね。】
「フェイだけでは無いのよ!」
【みたいだね、サーラ。短時間で良くぞ、そこまで上り詰めました。】
「ありがとうございます、ヘファイストス様!」
そう言えばこの子はミスリルに縁があるなぁ。
「私もいると言う事をお忘れなきように。」
【分かっているよ、リリアさん。】
「それで、坊ちゃん。最高傑作が出来たよ。見ておくれでないかい?」
【フェイ、見るまでもありません。それには武器ダメージ増加のプロパティが付いているだけです。恐らく六十%が・・・。】
「な、なんやて!?ば、馬鹿な!?今できる全てを捧げた剣がそんな事は・・・。」
【では鑑定してみなさい。貴女は入り口に立てた事で勘違いをしています!】
「か、鑑定!」
「「「・・・。」」」
「そ、そんな・・・ウチの最高傑作が武器ダメージ六十だけのなまくらやて・・・。」
【フェイ、いいですか?その剣は決してなまくらではありません。生まれるべくして作られたのです。ですからそんな事は、作り上げた剣にはそんな事は言わないで上げて下さい。】
「けど、坊ちゃん!このままでええんか!?」
【このままと言うのはなんですか?】
「ウチは・・・ウチだけは坊ちゃんの孤独を知っている!ウチが癒せる存在にならんと!」
【フェイ、それは嬉しく思います。ですが孤独ではありません。フェイがいてサーラもいる。そしてフェイはもう何歩かのところまで来てくれた、こんな嬉しい事は無い!】
「でも・・・でもっ!」
【フェイの努力は俺が一番良く知っています。貴女は今、初めの一歩を踏み出そうとしているのです、鍛冶師の険しい山の。】
「初めの一歩・・・。」
【そうです・・・ここからは全てががらりと変わる道です!険しく、そして登りがいがありますよ?】
「そっか・・・そっか・・・ウチの道はまだまだ続くんやね。」
【そうです、道半ばです・・・諦めるなんて事はありませんよね?】
「もちろんや!ここまで来て諦められるかい!」
【その意気です、フェイ。】
「坊ちゃん・・・おおきになぁ、気が入ったで!」
【それでこそ、俺の好きなフェイです。】
「ふふっ、この剣は今んとこ出来うる最高傑作や・・・この剣を献上させてもらうかね。」
【はい、行って来て下さい、フェイ・・・これからも頼りにしていますよ。】
「ほななぁ・・・サーラ、ありがとさんなぁ。」
「お疲れ様でした、フェイさん!」
【さて、ミカ。落ち着いたら剣を打つんだ、いいね?】
「わ、分かってるわよ!」
【リリアさんもね。】
「かしこまりました。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「坊ちゃんの孤独は・・・まだ癒して差し上げられないかぁ・・・。」
あの方は孤高、いや孤独だ。
そしてそれは、その鍛冶師としての才能のせいでもある。
「坊ちゃん・・・。」
それは少し前の事だった。
サーラの鉄の剣についての助言の事だった。
そう、ほんの少しだが坊ちゃんの顔に影が映った。
それだけで、私はあの方が孤独だと気付いてしまった。
しかも大好きな鍛冶師として。
こんな事にも気付いてあげられなかったのかと絶望した。
その孤独はいかほどだろうか。
そうなのだ。
同じレベルの事が出来る人物がいないのだ。
大好きな事なのに、同じ領域に対等に話せる人物がいない。
その為のウチだと思ったのに・・・。
だが手遅れではない。
坊ちゃんはウチの事を頼りにしていると言ってくれた。
これ以上の喜ばしい事があるだろうか。
「坊ちゃん・・・必ず、必ず隣へ・・・ウチがいる限り孤独にはさせまへんぇ。」
そう誓うと鞘をしつらえ、王達の元へと向かう。
一歩ずつ。
だが自信を持って歩く。
坊ちゃんの助けになれるのならば、エクスィ・スィデラスとしてのこの位を甘んじて受けよう。
少しでも助けになるのなら。
「まだまだ精進せんとなぁ・・・これからも付き合って下さいよ、坊ちゃん。」
そしてあの楽しそうに剣を作り上げる坊ちゃんの顔を思い浮かべる。
そうや、ウチは心からあの御方に惚れている。
ウチがいる限り絶対に孤独にはさせん!
だが、今回の事で分かった。
ウチは、まだまだ未熟なのである。
あの方の隣に立つのにはウチはまだまだ足りない。
だが坊ちゃんの足元は見えた・・・はずだ。
焦る事は無い。
目標の登る山がやっと見えたのだ。
そうだ、まだ焦る時ではない。
ウチはまだ成長できるのだから。
胸を張れ!
諦められるはずがないだろう。
あの方の為に、絶対に孤独などにはさせない!
まずは隣を目指すんや!
こうしてウチは作り上げた剣を王達の元へ持って行く。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「鑑定!」
「「「・・・。」」」
「ミスリルロングソード、ハイクオリティー、武器ダメージが六十%、以上です。」
「ほう・・・それではこの剣は・・・。」
「こ、この剣も見た限りでは素晴らしい物ですね・・・。」
「左様ですね、姉様。」
「左様ですな、姫様方。現状ある我が国の聖剣を上回っておりますな、ですが・・・。」
「そうね。我が国の物も同様にこの剣には聖剣である為の聖属性が付与されておりません。」
「左様ですな、猊下。」
「ですが、現状ある我らの国の聖剣の性能を上回っております。」
「ヘファイストス殿がいなければこの剣が聖剣となっていても不思議ではない。」
「ふむ、価値については各々の見解があるであろうが・・・エクスィ・スィデラス入りは決まったようじゃな。」
「左様ですな。この腕ですと恐らくは第二席は彼女の物かと。」
「そうですな。」
「そうね。」
「その様ですな。」
「ババ様、その剣に宿っている精霊が言っている。」
「私は近いうちに必ず聖剣になるだろうと!」
「・・・シュタイア。」
「いかがいたしましたか、ラヴィーネ?」
「聖剣とやらに興味が出て来た。会議が終わったらヘファイストス殿とこの剣を作った・・・フェイだったか?その二人を国に呼べるように各国と調整を。」
「かしこまりました。」
紅蓮よ、唯一聖剣を作れるのには何かあるのか?
鍛冶師として他の者とあまりにも腕が違う。
異質・・・。
これも神を降臨させたからなのか?
・・・まさかその対価か?
「お主も孤独なのだな・・・ヘファイストス。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【献上してこれたようですね、フェイ。】
「坊ちゃん・・・見苦しい所を見せてしもぉたなぁ。」
【いえ、フェイ。】
抱き寄せる。
「ぼ、坊ちゃん?」
【ありがとう、貴女がいて本当に良かった。】
「坊ちゃん・・・もうちょっと待っててぇな、必ず追いつくからな。」
【ええ、楽しみに待っています。】
「ふふっ、ウチも楽しみやで!」
これで心残りは無い。
精いっぱいの物を作ったのだから。
【さあ、ルイス達と合流して久しぶりに皆で晩御飯と行きますか!】
「ええな、坊ちゃん。」
【商会の食堂に行きましょう!】
「はいな!」
そう、ウチはこの人だけの力になれればいい。
唯一惚れたこの人の為に。
ウチはその為にいればいい。
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