七ヵ国の情勢
いつも読んで頂き、誠にありがとうございます!
執筆が終わったところから上げて行きます。
お楽しみ頂ければ幸いです。
最終選考に残った鍛冶師達は計十名。
特別枠を合わせると十五名。
そして、ここはもう決戦の場である。
広い部屋に鍛冶で使用する道具が一式整っているようだ。
【・・・実行力すげえなぁ。】
外部への換気も問題はない。
炉も金床も特別製の物だ。
炉なんか特別製の魔力炉である。
それと、道具は自分の物で良い。
もちろん貸し出しもしている。
後は自分次第。
鍛冶師の腕だろう。
そう思いつつ鍛冶場になった広場を見ていると声をかけられた。
「初めまして、ヘファイストス殿。ミカから聞いているかな?第四席のヘイ=シン・フォン・ティエだ。」
「俺も初めましてだね。ベクター・フォン・ノーブレッド、一応第五席を拝命している。」
【御二方の噂はかねがね、ヘファイストスと申します。今後とも、よろしくお願いします。】
「ミカに何を言われているのか気になるところだな。」
「フェイも久しぶりだね。」
「・・・極めたのではなかったのか?」
「二人も元気そうやなぁ、そうなんよ。極めたと思ったらまだ上がいたんよ。」
「フェイ、何と言うか・・・柔らかくなったな、心配する事は無かったようだ。」
「良い旦那様に拾われてね・・・なあ、坊ちゃん。」
「「坊ちゃん?」」
「ヘファイストス殿と約束をしてるんよ。身も心も嘘を付かない事ってなぁ。」
【フェイは素顔でも美しいですからね。】
「そ、その・・・君は・・・いや、邪推をした。」
「気にかけてくれるのは嬉しいけど、その心配は無いさね。」
「良かったな・・・。」
「おめでとう、フェイ。」
「二人共、ありがとうなー。」
「ヘファイストス殿、失礼を承知で聞くが・・・フェイと組んでいるのですか?」
【組むという表現は正確ではありませんね。彼女は俺のパートナーであり、今回に限っては競争相手です。】
「やれやれ、強敵が増えたな。」
「だが、フェイ。いつかの借りを今回勝つ事で返させてもらうぞ。」
「あはは、負ける気がせーへんなぁ!」
「「こちらもな!」」
俺はそう言った二人と握手をした。
二人はフェイとも握手をした。
うん、いいね。
握手を交わしていると放送が入った。
『運営会より、申し上げます。各国の代表たる方々は、席にお座りくださいませ。程なく、第一席の最有力候補であります、ヘファイストス殿より、開式宣誓が行われます。』
【・・・へ?】
「坊ちゃん、そんな事するんかぁ?」
【初耳なんだけれど・・・。】
「くっく・・・これは良い挨拶が聞けそうだな。」
「期待しているよ、ヘファイストス殿。」
そんな事は聞いていないし知らない。
アレか?
我々一同はスポーツマンシップにのっとり的なやつか?
・・・皇帝陛下よ、貸にしとくぞ?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おっと・・・陛下、席はここらしいぞ?」
騎士団長になったアレックスがめざとく席を見つける。
だが新国王になった私にはやる事がある。
ここで会えると言う事はちょうど良い。
顔合わせである。
後程でも良いだろうが、新参者は早速だが挨拶に向かおう。
「他の王達に挨拶をして来る。アレックス、ついて来てくれ。」
「ういっす!ネスト、ついて来い。それ以外は大人しく座っておけよ!」
「アレックスさん、各国の王様に会いに行くんですからね!礼儀はしっかりと・・・。」
「分かってる分かってるってよ・・・多分、何とかなるぜ!」
「はぁ・・・それでは行きましょう、陛下。」
その返事に満足して左方向へと目を向ける。
先頭には華美なドレスを着た双子と軍服を着ている初老の人物が一人、後は護衛だろうか?
公国のアーゼ・グラン・オルタンシア女王陛下とリーゼ・フォン・オルタンシア王妹殿下だろう。
と、すると二人とともに先頭で座っている男性は『不沈』と言われるダイアード・フォン・バドラック元帥であろうか?
かの戦争でその功績を称えられ元帥になったと言う。
それにアーゼ様とリーゼ様は戦後の公国を大胆な方法で立ち直らせたと言う。
戦争後の公国の躍進は聞いていて羨ましい限りだ。
それに、二人共に優秀なのだそうだ。
今では公国は豊かになり、あの戦争が嘘のようだと言う。
その奥に宗教に関わっていそうな立派な法衣を着た者が一人と意匠のそろっている者達がいる。
法衣と言う事は、先頭は魔導国家ソフォスの第十九代法王猊下であるイリーナ・グラン・イエレアス・ソフォス殿であろうか?
すると、イリーナ法王猊下の後ろに座っている三人の黒の法衣を着ている者が枢機卿であろうな。
三人で国を回していると聞いている。
『アリステリア様』の信仰が揺らがない街のはずだ。
その奥にも何処の国かは分からないが人影が見える。
我が国も早く復興を成し遂げて、外交の準備も整えねばな。
だが、各大臣まであの件で亡くなっているのだ。
仮にとは言え、我が国は何とか食いつないでいる状態だ。
人材の確保と育成は急務であろう。
だが、民の為にも復興も早急にさせないといかん。
その考えを一度頭から外し、まずは双子の女性に挨拶に向かう。
「失礼致す。お久しぶりでございますな、アーゼ・グラン・オルタンシア女王陛下。」
「お久しぶりでございますわ、レガイア国王陛下。」
ふむ、私が国王になったのは存じているようだ。
「ガリファリアより名を改名し、新たに国名をブリタニア王国とし、国王となりました「レガイア・グラン・フォルティス・ブリタニア」であります。」
ヘファイストス殿に相談し、答えになった国名を、王の名を名乗る。
「あら、国名を変えられましたのね?」
「左様です。リーゼ・フォン・オルタンシア王妹殿下。」
「王国の早くの復興を心より申し上げますわ。これからも御支援は致しますのでよしなに。」
国名が変わった事は今回初めて披露するつもりだったので知らないのは当然であろう。
それにしても多額の支援はありがたいが、まだ支援して頂けるとは思わなかった。
これもあの御仁のおかげか・・・。
「ところで、レガイア新王。第一席にはあの御方を推薦して頂いて・・・感謝を。」
「あの御仁にしか務められぬでしょうからな。それに私も父上も楽しみにしてございます。」
「まさに!まさに、その通りでございますわ!」
「姉様、本当の事ですがまだ決定してはおりませんわ。」
「もう、リーゼったら。あの方が望むのであればすぐにでも公国へ・・・。」
「レガイア国王陛下、あの御方の今後の予定などは決まっていらっしゃるのかしら?」
「会議終了後は、私達と一緒に王国の復興をして頂けるとの予定をさせて頂いておる。」
「その後で結構ですが、是非に我が国に聖剣を!」
「お願い致しますわ!」
「先日の書状の事でございますな?かの御仁には伝えさせて頂いております。」
「うふふ、楽しみでございますわ。」
「ええ、楽しみでございますわ!」
・・・ううむ、館で会った時はもう少し貞淑な女性達と思っていたのだが。
色々な事があったのだろうな。
そろそろ次へ行くか。
「レガイア王、大公閣下にもよろしくお伝え下さいませ。」
「父上にもよろしく伝えよう。」
「ええ、唯一我が国へ援軍をお出しになろうとして下さり、誠にありがとうございます。」
・・・驚いた。
あの時の国王が動かなかったので父上が独断で出そうとした援軍の事も存じているとは!?
「ええ、必ずや伝えておきましょう。それでは失礼致します。」
「「これからも友好をよしなに。」」
二人と別れる際に武人らしき人物にも会釈をする。
そう言えば、アレックスが静かだ。
気になって確認するとネストに足を踏まれていた。
王族同士の会話に入らないように気遣っていたのだろうか?
ふふっ、気の利く護衛だな。
さて、次に向かうか。
席の間の道をを進んで行くと先程の法衣を着た集団の所に来た。
先頭に座っている女性だろう人に声をかける。
「失礼致す、お初にお目にかかる。私はブリタニア王国、国王となりました、レガイア・グラン・フォルティス・ブリタニアでございます。」
挨拶をするとその女性は柔らかい笑みを浮かべて答えて来る。
「御丁寧な挨拶、傷み入ります。私はイリーナ・グラン・イエレアス・ソフォスと申します、こちらこそ今後とも、よろしくお願い致します。」
席の先頭に座っている、不思議な意匠の法衣を纏った女性が応えてくれた。
気のせいか、ある部分に目がいかないようになっているような不思議な気分になった。
その女性が立ち上がって挨拶をして来た。
後ろの席に座っていた三人の黒い法衣を着た人物達も立ち上がる。
その女性の特徴は法衣に隠れて見えなくなっている。
だが顔は窺う事が出来た。
その笑みは万人を虜にする太陽のような笑みだった。
髪は金、瞳は黄色。
そして整った顔から零れる笑顔は一度見たら忘れないとでも言う様に力をもらえる。
そんな笑顔のまぶしい女性であった。
「ふぉふぉ、レガイア国王陛下にも我らが女王猊下の慈愛に満ちた笑顔に釘付けじゃな。」
「プラエセンティア枢機卿、意地悪な事を申すでない。」
「左様です、猊下の慈愛の前では各国の戦争でさえ和睦の使者を送ります。」
「ふふ、三人とも。その為の我ら、そして信仰なのですよ。」
「猊下の申す通り。」
「全ては、猊下の望む世界になっております。」
「左様です、各国で侵略戦争などは起こっておりません。」
「人同士の戦争が起こっておらぬのは猊下のおかげでしょう。今後とも変わらぬ、良きお付き合いをお願い申し上げる。」
「はい、国王陛下。ところで・・・伺いたき事があるのですが?」
「お応え出来る事ならば。」
「あの・・・か、かの英雄は・・・珍しい御趣味なのだとか。」
「趣味?」
「え、ええ、その・・・巨乳好きとか?」
ヘファイストス殿ー!!!
一瞬で顔が青ざめる。
何処まで話せばいいのだろうか・・・。
「あー・・・その通りですが、その、かの御仁は女性に差別する事の無い度量を持った者でございまして・・・。」
冷や汗が止まらん!
「・・・プラエセンティア、プラエタルタ、ポステリタス、聞きましたか!」
「よろしかったですな、猊下。」
「ふむ、度量はあると。」
「猊下の悩みが・・・。」
「???」
今の質問は何なのだ?
いやいや、待て待て。
女性の胸部に目を向けるなど・・・。
何故だろう?
胸部に目がいかない。
まあ、良い。
しかし、傀儡の猊下ではないかと父上が心配していたが、そのような事はなさそうだな。
猊下は法皇としての役目をこなしているように見える。
変な質問もあったが・・・。
面通しも終わった事だ。
これ以上何かに巻き込まれる前に移動しよう。
「お忙しい所を申し訳ありませんでした。それでは失礼致します。」
「陛下に『アリステリア様』の御加護があらん事を・・・。」
「「「あらん事を!」」」
「「「あらん事を!!!」」」
法衣を着た集団から離れると今度はクヴァール帝国の席らしい。
黄金の国、クヴァール。
すぐれた皇帝が治める小麦と金の生産地。
我が国も見習わなければならぬところが多々ある。
だが我が国の特産品が鋼しかないのが現状だ。
また調査か・・・。
それは今後に期待しよう。
先頭にいる人物が皇帝陛下で間違いはないだろう。
早速声をかける。
「失礼致す、お初にお目にかかる。私はブリタニア王国、国王となりました、レガイア・グラン・フォルティス・ブリタニアでございます。」
「レガイア国王か、我がオニロ・グラン・イダニコ・エフティニア・クヴァールである。以後はオニロで良い。」
初手から名前呼びを頂けるとは、ありがたいな。
「では、オニロ殿。今後とも良きお付き合いを。」
「今後は国を早く立ち直らせるようにさせよう。援助できるものであれば遠慮なく言うが良い。」
おお、言わずとも分かっているという様に私の目をみて言ってくれる。
頼もしいな。
だが返せる物がない。
いや、それを承知で援助してくれると言うのだ。
プルスィオス商会だけでなく国からの援助である。
申し訳ないが、御言葉に甘えておこう。
我が国はとにかく、建材や食料などの物資が足りない。
「そのお言葉、ありがたく。」
「礼など不要である・・・しかし、良い御仁が王国にいるな。それだけでも羨ましいぞ、レガイア殿。」
「かの者でございますか?」
「そうだ、我は黄金よりも人材と常々思っておる。かの者ほどの人材はそういないであろうな、羨ましいぞ。」
ヘファイストス殿の事であろうが、何をやったらこんなにも簡単に援助の約束を取れるのだろうか?
あの御仁の事となると全く想像が出来ぬ。
そう言えば、第三皇女殿下との縁談は纏まったのだろうか?
今度詳しく話を聞こう。
「我が国にもあのような人材が欲しい所だがな、頑ななまでの王国への忠誠が無ければすぐにでも引き抜いたものを。」
「ははは、そこはオニロ殿と言えど譲れませんぞ?」
「そうなのだ・・・そこでだ、娘婿でもあるのでたまには話をさせに来させてくれ。」
「分かりました。それでは失礼を、オニロ殿。」
「ああ、夜に酒でも飲もう。とっておきがあるのだ。」
「かしこまりました、お付き合い致しましょう。」
「「では夜に!」」
礼をし、その場を去る。
さて次は・・・。
うん?
前方の五席に男性四人、女性一人が座っている。
父上が気を付けろと言っていた、商業都市国家群バイジンの方々だろうか?
「スゥー・・・。」
息を整え少しの緊張の中、声をかける。
「失礼を、お初にお目にかかる。私はブリタニア王国、国王となりました、レガイア・グラン・フォルティス・ブリタニアでございます。」
挨拶をすると五人が立ち上がりその中で中心の初老の人物が代表し挨拶をしてくれる。
「これはこれは、御丁寧に。バイジンで主席などしているジンと申す。」
「次席のインだ。」
「トンだ。よろしくお願いする、新王よ。」
「ティエよ、よろしくね。王様。」
「末席のガンだ。よろしく・・・。」
バイジンは格首長の名を取った五大都市からなり、その頂点である五人の大商人からなる合議制国家だ。
成程な。
父上が気を付けろと言った事が分かった。
どうやら、値踏みされているようだ。
これにはアレックスやネストも渋い顔をしている。
「これこれ、新王相手にそのような対応をするでない。そのような事をすれば我らが最終にもなりかねんぞ?」
「そうだな、失礼した、レガイア新王。」
「左様でしたな、失礼致した。」
「ふふ、我らの視線に動じないなんて・・・良き王ね。」
「そうですね、良い資質はお持ちのようです。」
「いえいえ、父上が有名なのでね、見定められるのも慣れておるだけですよ。」
「父上か、ドリュカス殿の事ですな、あの御仁にはお会いした事がない。今度は是非にお会いしたい物ですな。」
「父上もそのようにおっしゃっていました。バイジンのジン殿にお会いしたいと。」
手を差し出すと受けてくれた。
「この機会じゃ、帝国だけに格好を付けさせるのもなんじゃ。我らが国からも支援を致そう・・・そうじゃな、内容については後日相談するとしよう。」
「支援の件、大変にありがたく!」
「なあに、あれ程の美味い料理を食べさせてもらったんじゃ、その礼とでも考えてくれるとこちらの面子もたつ。」
「料理、でございますか?」
「うむ、かの御仁に馳走してもらったのよ。てんぷら、美味し!と言った所かのぉ。」
ここでもヘファイストス殿が・・・。
ありがたい。
「ジン殿もかの者の料理を?」
「うむ、クヴァール皇帝に接待を受けた時にのぅ。まだその頭の中には別の料理のレシピがありそうじゃがな。」
「私もその一部しか味わっていないかと思われます。」
「かかか!そうか、じゃが落ち着けばその機会もあるじゃろうて!」
「左様ですな、期待しておきましょう。」
「翁、レガイア王はまだ他にも挨拶があるでしょう。そろそろよろしいのでは?」
目つきの鋭いイン殿が切りの良い所で釘を刺して来た。
「おっと、そうじゃな。では、支援の内容は後日。本日はわざわざ済まぬのぅ。」
「いえ、では失礼致します。」
「レガイア殿に商業神の御加護があらん事を。」
話し終わると次の目標へと向かう。
次の席には老女とその老女をはさむ様に二人の若者がいるだけであった。
老女と言うと百年生きていると言われるキゴニスの『ジジェ長老』であろうか?
「失礼ながら、ジジェ長老でございますか?私はブリタニア王国の・・・。」
「・・・レガイア新王であろう?・・・この通り我が目はほとんど効かぬのでな・・・その代わりに両隣の子供二人が我が目で耳で口よ。」
「王よ、失礼する。ババ様の言う通り私が右手の『レノン』である。」
「同じく左手の『カノン』である。」
「御二人共、若いのにしっかりしておいでだ。」
「もちろんだ!私達がしっかりしていなければババ様が務めを果たせまい!」
「レノン、御役目です。落ち着きなさい。」
「失礼した、レガイア王。」
「今回の件は我らの悲願がかなうかもしれぬ。」
「長年の悲願が!」
「その為に遥々やって来たのだ!」
「神匠に選ばれた者がいるとて、負けはせぬぞ!」
「その通りです!」
「御二人共、失礼。かの者はこう言っておいでだった。「鍛冶師の仕事には勝ち負けは無い」と、また「良い物が作れればいいのだ」とも。」
「「・・・。」」
「そうじゃ・・・その通りじゃ・・・今回も、我が国の者が参加しておるでな・・・少しばかり、気がはやったようじゃ・・・許されよ、レガイア殿。」
ジジェ長老がゆっくりと頭を下げる。
すると隣の二人も頭を下げて来た。
「いえ、気にはしておりませんよ。頭をお上げ下さい。」
「我が国にもエクスィ・スィデラスになり聖剣を捧げる者を送り出すのを悲願としている一族がおるのだ。」
「「そうです、ヘファイストス殿には及ばなくとも、それは我らが悲願です!」」
「そう言う事でな・・・レガイア王よ。機会を下さりありがたくと・・・かの者にも伝えておいておくれ。」
「かしこまりました、それでは・・・お互いに良い物が出来ると良いですな。」
「はい、レガイア王!」
「お互いに、恥じぬ物を!」
「それでは失礼致します。」
そう言って私は席を離れる。
キゴニスの事についてはあまりよく調べていなかった。
ただ、唯一の精霊信仰であるとしか・・・。
世界は広いな。
良い経験になった。
さて次は・・・。
黒い軍服を着た少女とその隣に軍服を着た女性が先頭に座っている。
ヘルシャーであろうな。
「失礼を、ヘルシャーのラヴィーネ=シュレッケン・グラン・シックザール・ヘルシャー殿とシュタイア・フォン・アイゼンクロイツ殿で御間違いないだろうか?」
少女の方はちらりとこちらに視線を向けると、隣の人物に視線を向ける。
「これはレガイア新王、御丁寧な挨拶傷み入ります。閣下、ガリファリアの新王様でございますよ。」
「そうか、それは挨拶をせねばならんな。」
すっと綺麗にと言う形容が合っているような立ち上がり方だった。
所作が美しい。
「レガイア王、先日は紅蓮、いや、ヘファイストス殿には世話になった。今後ともよろしくお願いする。」
ここでもヘファイストス殿か・・・。
だが心強いな。
「こちらこそ。」
そう言って手を差し伸べると握手を返してくれた。
「ラヴィーネ陛下ともどもよろしくお願い致したい。」
今度はシュタイア殿に手を伸ばされた。
握り返す。
「シュタイア殿も今後ともよろしくお願いしたい。」
「ははっ!」
「それと、国名を変えましてな。現在の我が国はブリタニア王国となっております。」
「ほう、それは。戻り次第変更をしておきましょう。」
「少し待たれよ、ブリタニア王。そなたの腰の物を見せてはいただけまいか?」
「結構ですよ、ラヴィーネ陛下。」
そう言うと腰に吊るしてあるミスリルのロングソードを手渡す。
「・・・うむ、この子も素直な良い剣だ。流石だな、ヘファイストス殿。」
「見ただけでお分かりになるのですか?」
「見るからに細かく素晴らしい意匠、そして剣が喜んでいる。これはそこいらの鍛冶師には出来まい。」
ラヴィーネ陛下の腰の物を見る。
ミスリルの剣だ。
「ラヴィーネ閣下も新調されたのですかな?」
「よくぞ聞いてくれた!これはだな・・・。」
「閣下、レガイア王にもお時間がございましょう。本日はこの辺りで。」
「まだ話足りないと言うのに・・・だが良い。またの機会に話すとしよう。レガイア王。」
「その際は是非に。」
「約束だ!」
剣を受け取り腰に下げる。
「必ずや、それでは失礼致します。」
ふぅ、これで終わったであろうか。
よし、戻ろうか。
時計を見ると九時を過ぎた所であった。
アレックス達と席に戻る。
簡易だが面通しは終わった。
少し肩の力を抜く。
・・・新王の顔見せとしては上出来だったのではないだろうか?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「その後に、エクスィ・スィデラスを名乗った者がいないだと?」
「左様です、閣下。」
「どう言う事なのだ?」
「その者は身分証の掲示を求めた際にエクスィ・スディラスの持っている認識票を見せて来たとの事です。」
「ふむ、だがアレは特別製の物であろう?顔の写しが出ているはずだ。」
「そこの確認を取らなかったのは、兵士が新人、新規補充の兵だった為と思われます。」
「誰の認識票であったのかも分らんのか?」
「はい、エクスィ・スディラスの認識票を出されたので通行を許したと言う事です。」
「エクスィ・スディラスが何人いるのかを知っていればそのような事は無かったのだな?」
「はい、今後は確認を徹底させるように新兵育成の教官にも伝えておきました。」
「しかし、どなたの物なのかが気になるが・・・。」
「悪用されなければよろしいかと思われますな。」
「今後このような事が無いように確認を徹底させよ。」
「ははっ!」
亡くなっているのならば、その影響力から認識票は帰って来ているはずだがな。
だが、何かが起こってからでは取り返しがつかぬであろう。
利用される事の無いようにせねばな。
そして万が一、持っているのであれば返却をする意思があるのかどうか・・・。
何かの火種にならなければ良いなと思うのであった。
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