責任と言う大きな学び
執筆終了いたしました。
楽しみにして下さっている皆さん。
また初めて読んで下さっている方。
よろしくお願いいたします。
貴族屋敷編やっと終わりました。
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それではお楽しみください。
【ドリュカス様、少々お話をさせて頂いても?】
と、声を掛けると冷静を取り戻したのかドリュカス様が「構わん。」と言ってくれた。
そろそろ我慢が出来なくなったので俺も秘密兵器を出す。
【ドリュカス様、実は先日ですが南西の鉱山の町へ赴きました。そこで、とある冒険者殿達と出会い事件に巻き込まれまして・・・。】
「ほう、鉱山の町と言えば、新しく陳情が上がっていたな。わしが対処したはずだな?ステファン!」
「はい、大旦那様が自ら対応なさっておりますので今しばらく時間が掛かるかとは思われますが解決に至るものかと思われます。」
「だそうだぞ、あんちゃんも安心してくれ。しばらくすれば鉱山も使えるだろう。」
引き続き俺は言う。
【その際に武器等を作製、修理した折に冒険者殿達から代金を頂けず、このような証書を作り証明のサインを頂きましてございます。】
「ほう、どんな証書なのかな?あんちゃん?」
【こちらでございます。】
証書を出すとステファンさんが取りに来る。
「大旦那様、こちらでございます。」
「ふむ、代金を支払わんとは何処の冒険者じゃまったく・・・。」
ドリュカスさんが証書を読んでいる。
が、顔が青くなってきた。
と思ったら真っ赤になった。
「あんちゃ、いや、ヘファイストス殿、・・・これは真の事なのか?」
プルプルと震えているが大丈夫だろうか?
【はい、その為の証書でございます。黒玉の鍛冶師様と成人した本人からもサインを頂いております。】
「マグヌス!」
いきなりの大声に皆も驚いている。
あの温厚なドリュカス様が本気で怒り、怒鳴っている。
「貴様というヤツは、今度という今度は罰を申し渡すからな!いや廃嫡だ!」
「いきなり何事ですか御爺様!お客人の前でございますよ!?」
「この証書を読んでも同じ事が言えるのか!」
と、証書をステファンさんに渡す。
投げつけないだけの冷静さはあるんだな。
そう感心しているとステファンさんから証書を受け取ったレガイア様が慌てて証書を読んでいる。
証書の内容はこうだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私に代わり父、レガイア・フォン・オーカムの名での作成物、修理の代金を以下の物で支払います。
1、鉱山の入山権
鉱山に入山する際は『黒玉の鍛冶師様』の許可を必要とする事。
許可を取らない者は罰金として『創造神様の神殿』に『金貨一枚』を奉納する事。
2、鉱石の採掘について
『黒玉の鍛冶師様』の許可なく採掘をする事を禁止とする事。
もし無許可で採掘を行った際は『創造神様の神殿』に『金貨一枚』を奉納する事。
3、作製、修理代として
私は代金として『創造神様の神殿』に毎月『金貨100枚』を寄付する事を約束する。
支払えなかった時はオーカム鉱山の地域を代償として国に返還する。
4、父が支払えなかった場合は領主に当たるオーカム伯爵が支払う事を約束する。
以上の事を『創造神アリステリア様』の名において誓う物とする。
請求人:ヘファイストス 黒玉の鍛冶師:ミカ
誓願者:マグヌス・フォン・オーカム
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
と、書いてあるはずだ。
読み終わったレガイア様の顔も青くなっている。
あまりの大声だったので隣の部屋から何事かとマリーナさんとルイスが出て来た。
ルイスは貴方また何かやっているの?
と言う顔だった。
「長男だと甘やかしたのが間違いだった!」
「義父上様、旦那様、隣の部屋まで聞こえる大声でいったいどうなされたのですか?」
「マリーナ・・・おまえも読んでみろ。」
マリーナ様が受け取り証書を読む。
やはり顔が青くなってしまった。
「貴方、これは!?」
「ああ、不味い事になった。黒玉様がいなければ鉱山が使えない。しかも毎月金貨100枚だと!?どこにそんな金があるというのだ!?」
ドリュカスさんが怒りでプルプルと震えている。
「マグヌス、貴様よくもこんな・・・。」
怒り心頭だろうな。
「その証書がどうなされたのですか御爺様、父上!?」
マグヌス君が何の事だか分からないという感じで言ってくる。
「貴様!何故読まなかった!これ程の物に軽々とサインしおって!」
レガイア様から証書を渡される。
仕方ないといったふうにマグヌス君が証書を読む。
冒険者A、いやマグヌス君の顔色が変わる。
「御爺様!父上!これは詐欺です!信用してはなりません!」
確認をせずサインしたのは君だからね?
ドリュカス様がマグヌス君に怒鳴る。
「成人している貴様がサインしておるだろう!請求人に黒玉の鍛冶師殿もいるのだぞ!?これでは言い逃れ出来まい!」
「これは違うのです、御爺様!父上!陰謀です!そう、陰謀なのです!そこのヘファイストスに、はめられたのです!」
「ヘファイストス殿だけではないだろう!黒玉の鍛冶師殿も証人となっておるではないか!」
「そ、それは!」
「それに恩人に対しての暴言、目に余るわ!しかも請求人であるヘファイストス殿は自分に利のある事が全く書かれておらんのだぞ!」
「御爺様話を聞いて下さい!」
「何だと言うのだ!もうよい!自室にて謹慎しておけ!ステファン!」
そう言われると執事さん達に両脇を抱えられ連れていかれた。
その間にも「陰謀なのです!」と騒ぎ立てていた。
まあ、良い勉強になったと諦めてくれたまえ。
静かになった部屋の中、ルイスに視線を移すと何事かと固まっていた。
「あの馬鹿者め!何と言う事をしてくれたのだ!」
「父上、これは不味いですぞ?創造神様に対して誓願してありますぞ。これが正式な場に出されれば・・・。」
「マグヌスの奴め!余計な事ばかりしおるわっ!」
そろそろ助け舟を出しますか。
【ドリュカス様、レガイア様、落ち着いて下さい。】
「ヘファイストス殿、不肖の孫が申し訳ない。だが何とかならないだろうか?これではこの領地が潰れてしまう!」
ドリュカスさんは余裕が無くなったのだろう、俺の事をあんちゃんと呼ばなくなっていた。
「ええ、ミカ・・・黒玉の鍛冶師様からも、今回は勉強させておこうとの言葉を賜っております。」
「真か!」
「ええ、ですので今回は躾と言う事で結構でございます。」
しばらく考えていたドリュカス様が言って来る。
「うむ、ヤツには厳しくせんといかんな。・・・こうするのはどうじゃ?マグヌスを創造神様の神殿で奉公させるのじゃ。」
「神都のですか?」
「そうじゃ。あやつも十五歳。神殿で五年も奉公すれば世の中の仕組みが分かり反省もするじゃろう。」
「しかし・・・あやつが応じるでしょうか?」
「断ったら放逐せよ。伯爵家は次男のザイードに継がせる。」
「父上・・・。」
【ドリュカス様、何度も申し訳ありませんが、今回は勉強と言う事で将来に生かして頂きたく存じます。】
「ふむ、今回はありがたくヘファイストス殿の顔を立てておくとするかの。」
【そうして頂ければ私も、黒玉の鍛冶師殿も、次代の民達も安心すると言うものです。】
そう言って証書を破り捨てる。
俺が証書を破り捨てたのを見て安心したように言って来る。
「あんちゃんは懐が広いのぉ。ステファン!修理代とは別に用意せよ。」
「かしこまりました、大旦那様。」
ルイスが近寄ってきて囁いて来た。
『ねえ、貴方また何かやったの?』
『またとは失礼な、躾に協力してあげたんだよ。』
と、囁き返しておいた。
その後男女を含め談笑する。
アレックスさんも戻って来て一緒に話をする。
三の月にある騎士団の再編成時にハイクオリティーの鋼のロングソードが五十本必要なので作ってほしいとの正式な依頼を受けた。
書面に纏めて今度は確認してもらってからサインをして頂く。
アレックスさんにハイクオリティーの鋼鉄の戦闘斧を作ってほしいと頼まれた。
料金は勉強してほしいと笑っていた。
なんでも酒代で首が回らないそうだ。
俺の料理を是非食べてみたいとの事で、四日後の晩餐会で披露するとの流れになってしまった。
その際は『家族』を連れて来るべしとの言葉を頂けた。
もちろん普段着で良いとの事だ。
そして皆がルイスを美しいと褒め称える。
ルイスは真っ赤になっている。
アレックスさんが遠慮なく足のスリットを指さしてルイスの美脚を見ている。
そこが肝心なんですよと言って皆で笑う。
見世物の様になっているルイスは熟れたトマトのようだ。
鉱山町の情報が正しく伝わっている事も確認させてもらった。
これで他の鍛冶師達も安心して鉱山を使えるだろう。
先程の事は無かったかのように穏やかな雰囲気で歓談出来た。
良い時間になって来たので、そろそろお暇しようと思っているとレガイア様が感づいたのか「馬車を呼ぼう。」と言ってくれた。
俺は好意に甘える事にした。
【お気遣い感謝致します。】
と、言っておく。
馬車が到着する間、先程の逆襲かと思うぐらいにルイスとの仲を質問された。
仲人はドリュカス様がやってくれるので結婚の際には必ず呼べとの事だ。
だが、まだ予定は無いと言うと「何をやっておるんじゃ!」とドリュカスさんに怒られ、レガイア様には呆れられた。
いつ誰に取られるかもしれないのだから掴んだのなら放さぬようにとマリーナさんにも怒られた。
ルイスは顔が赤くなりっぱなしだ。
だが嬉しそうだった。
良かった。
ステファンさんからルイスのコートを受け取ると羽織らせる。
そして馬車が到着し謝辞を述べて退室すると寒い中、皆さんが門まで見送りに来てくれた。
まずはドリュカス様が言って来る。
「それでは四日後を楽しみにしているぞ!」
皆で来る晩餐会が楽しみだ。
続けてレガイア様が言って来る。
「風邪を引かない様に気を付けなさい。」
と、主にルイスをだろうがを、気遣って言ってくれた。
マリーナさんがルイスを見て言って来る。
「ルイスちゃん、絶対に放しちゃ駄目よ!」
と、ルイスを応援していた。
ルイスは真っ赤になって肯いていた。
アレックスさんはアレックスさんだった。
「美味い酒を見つけたら最初に俺の所へ来いよ!」
と、酒を要求してきた。
この人はブレないなあ。
「それでは、御二人方おやすみなさいませ。良い夢を。」
ステファンさんがそう言って締めくくってくれた。
その際、硬貨の入った袋を渡された。
口止め料等も含めた金額だろうから有難く受け取りバックパックへしまう。
チラッと見ると金貨が十枚入っていた。
太っ腹だね貴族様。
暖かい人達に見送られて馬車に乗り無事に屋敷を出発する。
ガラガラガラ・・・
ルイスはしばらく手を振っていた。
窓を閉めると俺に向き直って言って来た。
「もう!何かする気だったのなら前もって言って頂戴よね。本当に驚いたんだからね!」
【ごめんごめん、これからは気を付けるよ。】
「・・・疲れたわね。でも、とても楽しかったわ。」
そう、ルイスが言う。
もうお姫様の時間が終わるシンデレラのようだ。
【今後もこんな事があるさ。ダンスとかも練習してみるかい?】
そう言うと嬉しそうに答えてくれた。
「ふふっ、それも良いわね。」
と、言って微笑んでいた。
良い笑顔だね、ルイス。
さてと・・・サボっていた分、明日からまた剣を作ろう。
本業は鍛冶師だしね。
そうだミカや皆にも事の顛末を教えないとね。
そうして家族のいる、いつもの宿屋へと帰るのであった。
此処まで読んで下さってありがとうございます。
書き方で人物を表現できるようにしてみていますがどうでしたでしょうか?
多人数でこれを行う場合にどうなるかが心配ですがお付き合いください。
それでは次話 二人の関係(仮 でお会いしましょう。
調子に乗っていたら徹夜してしまいました。
それではお休みなさい。




