市場での一幕
いつも読んで下さり、誠にありがとうございます!
執筆終了致しました。
楽しんで頂けたなら幸いです。
【うほー、結構盛んな港なんだね。】
「人がいっぱいなのです!」
【お?おじさん、そこのイカをくれないかな?】
「何杯いるんだい?」
【うーん、とりあえず並んでる十八かな。】
「坊ちゃん、何処の人なんだい?」
【ん?どういう意味かな?】
「坊ちゃん、初めてか?」
【ここは初めてだね。】
「何処の人っていうのは貴族様の家の事さ。」
【あー、それならプルスィオス商会のノモス侯爵だよ。】
「ありゃ、侯爵様んところの人かよ。それならいい、持って行ってくれ。」
【へ?いいの?】
「ああ、ノモスの旦那には、とってもお世話になっているんだよ。」
【じゃあ、ありがたく頂くよ。】
浜焼きとかになると帆立だろう?
蛤にエビも良いね。
後は何だろうか。
鯵も塩焼きで良いな。
順番に買って行く。
皆、ノモスの事を言うと顔パスだった。
手を回してくれたんだろうな、改めて感謝。
・・・後は何があるかな?
「ヘファさん、お腹すいたのです。」
【そうかー、味見しちゃおうか。】
「なのですー!」
港の調理場を借りる。
アリスに帆立貝を焼いてあげよう。
バターナイフを取り出し色のついている背のほうから身をこそぎ取る。
あーら不思議、途中で貝が閉じてしまいました!
新鮮ですねぇ。
生きていますよー?
口からバターナイフを入れ何回かこすりつけるようにして貝柱を切り離す。
そして貝を開き、貝の紐と呼ばれる部分を取り外す。
同じように下にもある貝の紐を取り外す。
下に付いている貝柱も取り外す。
うろと呼ばれる黒い部分。
ここには貝毒がたまりやすいと言われているのでナイフで取り除く。
今回はエラと呼ばれる部分も食べるので取っておく。
貝の紐は塩もみして洗っておく
これでぬめりと余計な臭みや泥を落とす。
帆立の卵巣も半分ぐらいに切っておく。
貝の紐を水洗いして食べやすい大きさに切る。
貝柱は大きいのが好みなので薄皮を剥いたらそのままにしてある。
貝を洗って綺麗にしたら食べる所をしまって完成!
これを買った二十四個すべてに行う
アリスには最初に出来た物をバター醤油で焼いてあげる。
もちろん俺の分もだ。
役得です。
お、焼けて来た。
食べごろだね。
【アリス、熱いからね、良く冷まして食べるんだよ?】
「はいなのですー!」
どれどれ、俺も一つ・・・。
【うほっ!バター醤油最高!】
「はふはふ、美味しいのです!」
【ふふふ、アリスさん。お主も悪よのぅ。】
「ヘファさんこそなのです!」
【もう一個焼こう!】
「なのですー!」
【あはは・・・ん?】
何か視線を感じる。
えー・・・あの子かな?
【アリス、ちょっと待っててね。】
「はいなのです!」
その視線の所に歩いて行く。
ボロをまとい、目が虚ろ。
相当お腹が減っているのだろう。
視線はアリスから、いや、アリスの食べている帆立貝から外れない。
【ねえ君、名前は何て言うのかな?】
「・・・。」
「あー、また来やがったのか。」
漁師、奴隷紋のついている人が言って来た。
【またって、何かあったんですか?】
「よくある話ですよ、この娘。砂漠の民らしいんですが、その部族がテラサンの群れに襲われてですね。」
「そうなんだよ、その後に貴族と揉めちゃってさ。散々な目に・・・。」
【テラサンに貴族か・・・。】
こんな平和そうな町の近くにまで、テラサンの影響が・・・。
貴族の方はどうなったんだろうか?
【それで誰も面倒を見てあげていないんですか?】
「坊ちゃん、俺達だって面倒は見てあげたいんだけどな?知っているだろう、奴隷である俺達を含み、その持ち物は銭貨の一枚だって貴族様の物だ。」
【それで、面倒は見てあげられないと?】
「そうだ。」
【・・・観光で来ている貴族様は何もしなかったんですか?】
「物好きな貴族の坊ちゃんが拾おうとしたんだけど、連れて帰るなり逃げだしてここにいるんだよ。まあ、何があったかは分かるがね。」
【・・・その貴族は?】
「ガファズィス伯爵家の三男坊だよ。多分だけどあそこに怪我したんで訴えたくても名誉が邪魔をして訴えられないんだろうさ。」
見たところ未成年だろうに、いい気味だ。
だが、こんなになるまで女の子をいじめ続けたのか?
っち、後でセリスに言っておこう。
【それに、何でこんなにボロボロになっているんですか?】
「その三男坊にちょっとな・・・仲良くやってた魚売りも暴行を受けて病院暮らしさ。」
「それがなあ、今じゃあその貴族の三男坊が暇なのか毎日来るようになってな、心を閉ざしちまったんだよ。」
それは許せないね。
いじめどころじゃねえぞ?
助けてあげないといけないね。
「善意で作ってもらった御飯をもらって来た時は、良かったのになって皆で喜んでいたんだよ。」
「それが、あんな事になるとはねぇ。」
【あんな事とは?】
「その飯を地面に叩きつけてな、庇おうとするその子ごと蹴ったり殴ったりで酷いもんだったぜ。」
【そんな事・・・貴方がたは見ていただけなんですか!?】
「相手が貴族様だから、誰も文句が言えなかったんだよ。」
「今じゃあうっぷん晴らしに来てるから質が悪い。貴族様の事だからこっちも責任は取れねえしな。」
【じゃあ、責任を取ればいいんですね?】
「おい、坊ちゃん。やめときな!」
【どうしてですか?】
「その原因がそろそろ来るよ。」
【?】
「お、まだいやがったのか!」
突然耳に障る声が聞こえた。
これが心から聞かせるなという奴だろうか?
視線を向ける。
取り巻きに兵士を二人連れた十五歳ぐらいだろうと思われる典型的な嫌な方の貴族様だった。
「ん?なんだお前は!」
【通りがかりの名誉子爵でございます。】
「ふん!僕のパパは伯爵だぞ!頭を下げるが良い!」
【では、貴方のお父様にご挨拶をしたいと思いますが?】
「貴様なんかにパパが会う訳ないだろう!僕に頭を下げればいいんだよ!」
【えー、貴方様が伯爵閣下なのですか?それならば頭を下げなければいけませんね。】
「貴様!さっきから馬鹿にしているのか!」
【貴方が伯爵閣下でないのならば、頭を下げる道理はありませんよね?】
「き、貴様!僕を馬鹿にするのならパパに言いつけてやるからな!」
【それは困りますね。】
「そうだ、分かったのならそこをどけ!」
その女の子の前に立ちふさがる。
【何をされるおつもりか?】
「お前も混ざるか?そこの女を懲らしめるんだよ!」
【聞いた話では、懲らしめられたのは貴方ではないのですか?】
「う、うるさーい!そこまで言うなら、お前も可愛がってやろうではないか!」
元凶のこいつらにはお灸をすえないと・・・。
それに俺はこの子と話をしたいだけなんだがね。
お灸をすえた後で良いか。
済まないけれど、もうちょっと我慢してね。
必ず守ってあげるからね。
この騒ぎを見てアリスが駆け寄って来た。
「ヘファさん、喧嘩なのですか?」
【大丈夫、喧嘩じゃないから、そうだ、もったいないから俺のも食べててくれるかな?】
「分かったのですー!」
タッタッタ・・・
「・・・。」
ん?
「おい、貴様。今の女は何だ?」
コイツ・・・。
「今の女を譲るなら無かった事にしてやっても良いぞ!」
まずは、落ち着け。
深呼吸だ。
【すぅ~・・・・はぁ~・・・。すぅ~・・・はぁ~・・・・。】
「何をやっている!返答次第ではお前の返事など待たんぞ?」
あー、ごめん。
無理。
バギィッ!
その男の左頬に右を叩き込む!
「ぎゃー!」
「「レイモンド坊ちゃん!」」
「貴様、何をするかー!」
「ガファズィス家を敵に回すというのだな!」
【兵士さん、言葉には責任を持った方が良いよ?】
「坊ちゃん!坊ちゃん!」
「伯爵様の御子息を殴っておいていい度胸ではないか!」
うーん、こんな事で使いたくないが仕方がない。
【俺もその貴族らしいんですけどね?】
「っぐ。」
「いだい!いだいではないか!」
っち、気付きやがった。
「はやぐ、いだみをどめるのだ!」
「はい、・・・ヒール。」
「まだだ!」
「・・・ヒール!」
「まだだ!」
「・・・ヒール!」
「も、もう良い。ききき、貴様!覚えておけよ!」
【失礼、物覚えが悪い物で・・・。】
「ムキー!こいつを引っ立てろ!」
【・・・その言葉に責任を持って下さいね?】
「ふん、貴様なぞに責任などと言われたくはないわ!」
【ならば、こちらも抵抗を致しますよ?】
「やれるものならやってみるが良い!」
「大人しくしろ!」
「抵抗は無駄だぞ!」
【抵抗?するって言ったじゃないですか!】
バキッ!
ドガッ!
「お、お前達!?」
「こいつ強いです。」
「坊ちゃん、仲間を。」
「援軍を呼んで来る。絶対にこやつを逃がすでないぞ!」
【こんなのに付き合うのも大変だねぇ。】
「兄上えぇぇー!」
「「「・・・。」」」
「「「アッハッハッハ!」」」
「いい気味だ!」
「客人、胸がスカッとしたよ!」
「でも良いのかい?」
【まあ、何とかなるでしょう。そこの貴方、少々頼まれ事をしてくれないかな?】
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