軋轢と指導
いつも読んで下さって、誠にありがとうございます!
執筆が終わりました。
楽しんで頂ければ幸いです。
ん、ルイス?
朝目が覚めると隣の温もりを確かめる。
・・・ルイスじゃない。
フェイの温もりだった。
「おはようさん、坊ちゃん。」
【おはよう、フェイ。昨夜はとても素晴らしかったです。】
自然な感想が口から出る。
「照れるで、坊ちゃん。もっと良い男におなりなぁ。」
【うん、皆の為に良い男になるよ。】
双丘の温もりを感じていると頭を撫でられる。
心地良い。
ルイスがそれを見ていた。
悲しそうな表情で。
俺は気付かなかったんだ・・・。
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「「【『アリステリア様』本日も我らに加護を与えたまえ。】」」
「商業の神エンボーリオ様、本日も良きものを作れますように加護を与えたまえ。」
「戦神ポレモスよ!我に加護を与えたまえ!」
【じゃあ行って来るね・・・ルイス?】
「え、ええ、行って・・・らっしゃい。」
【どこか悪いの?昨日無理をさせた?】
「そんな事は無いの。大丈夫よ?」
【本当に?】
「本当よ。」
【じゃあ、行ってくるね。】
キスをする。
応えてはくれなかった。
御機嫌斜めなのかな?
「ヘファイストス様、本日もノール工房で御世話になって来ますので!」
「坊ちゃん、ウチもなぁ。」
「私は旦那様と鍛錬の後は、軍務がありますので。」
【分かった、皆、行って来るね。】
「行ってまいります。」
「「いってらっしゃーい。」」
二人の声しかしなかった。
ルイス?
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ヘファイストス様が出かけられた。
私の今日の予定はノール工房で鉄のロングソードを三本の予定だ。
「で、ルイスの嬢ちゃん、ウチに何か言いたい事があるんだろう?」
突然フェイさんがそんな事を言った。
何故か不機嫌そうだった。
「・・・無いです。こうなる事は分かっていたんです。覚悟が足りなかったんです!」
「ル、ルイスさん、どうしたんですか?フェイさんも、落ち着きましょう、ね?」
「それで、坊ちゃんにもだんまりかい?」
「フェイさんは何でも分かるんですね。羨ましいです。」
パシィッ!
え?
フェイさんが殴りましたよ!?
ルイスさんを!
「この意気地なしのあんぽんたんがっ!」
「私はフェイさんみたいに幸せではないですから・・・。」
「ふう、良いかい、アンタに言っておく事がある。坊ちゃんはね、目を覚ますと初めに必ずアンタを探す!一緒に寝ている女がいてもだっ!」
「・・・嘘です。だってあの人の心は。」
「なんだってのさっ!良いかい、一緒に夜を過ごした恋人さえ差し置いてアンタを、ルイスの嬢ちゃんを探すんだ!隣で寝ている女は何なんだろうね?」
「・・・私に言われても。」
パチィッ!
いや、また殴りましたよ!
やめて、やめて下さい。
私達は旦那様を同じにおく「妻」じゃないですか?
それに、諍いはあの人の最も嫌う事ですよ?
「ルイスの嬢ちゃん、本気で言っているのかい?」
「本気も何も、事実を述べただけ」
パシィ!
「そんな考えならあの人の、ウチの前から消えてくれないかい?」
「・・・。」
「良いかい、嬢ちゃん。アンタは好きな男に初めてを捧げられたんだろう?」
「・・・あの人に捧げる事が出来ました。」
「それが幸せでなくて何が幸せだ!」
「ねえ、フェイさん。私が消えれば皆さんは幸せですか?」
「今の嬢ちゃんだったらいない方が、坊ちゃんも生き生きとしていられるだろうさ!」
「・・・そうですか。」
ルイスさんが着替えている。
駄目だ。
何か言わないと。
このまま出て行ってしまう!
「それでは、御世話になりました。」
「ル、ルイスさん!?」
パタン
「ル、ルイスさん・・・。」
こうしてルイスさんは部屋から出て行ってしまった。
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【えー、ではディアナさん強化計画について。本日は一日目として座学を行いその後に実践、食事となります。】
「分かりました、旦那様。」
「兄貴よー。アタシは強くなりたいんだ。」
【はい、ディアナさん。それは分かっています。ですが、まずは目標を決めましょうね。】
「分かったよ、兄貴。」
【それでは何故、ディアナさんの筋肉が硬くて良くないのかと言う所から。教科書の四ページを開いて下さい。】
「「きょうかしょ?」」
不味い滑った。
【ごめん、ノリだったんで気にしないで。では簡単に説明を致しますね。】
「「・・・はい。」」
っぐぅ、心なしか二人の視線が痛い。
【んっ、まず、ディアナさんの筋肉は『速筋』と呼ばれるものです。「速筋」は瞬間的に大きな力を出す事が出来ますが、短時間しか持続する事が出来ないのが特徴なのです。」
「兄貴よー、スタミナはついていると思うんだけど?」
【スタミナは別です。それにあの戦いで分かったのではありませんか?撃たれ弱さが。】
「確かに・・・。」
【速筋は白い筋肉と言われており、筋力をアップさせるのには良い筋肉ですが。ディアナさんの鍛え方に問題があるようです。】
「問題か・・・。」
【そうです、速筋ばかり付けていたので体の疲れやすさ、回復力の低さが目立ちます。】
「そうだ、課題だったんだけどな・・・。」
【そこでもう一つの筋肉です。『遅筋』と呼ばれる赤い筋肉です。「遅筋」は瞬間的に大きな力を発揮する事は出来ませんが、長時間一定の力を出し続ける事が出来るのが特徴なのです。】
「「ふむふむ。」」
【この遅筋を付ける事で長い時間をかけて有酸素運動を行え、脂肪も燃焼させやすく出来ます。】
「こ、これが答えか!?」
「旦那様、ですがこの遅筋を付けると今度は逆の事に陥りそうなのですが?」
【セリスさん、正解。片方だけの筋肉を注視すると、どちらかが良く、どちらかが悪いと言った事になります。】
「それで、解決策はあるんだろう、兄貴?」
【もちろんです、そこで両方の良い所だけを持つ『中間筋』と呼ばれるピンク色の筋肉があります。】
「ピンク色の・・・。」
「筋肉・・・!?」
【それは、遅筋に比べると収縮速度がやや速く、遅筋程ではないですが持久力もあって、遅筋と同じく内臓脂肪の燃焼の効果もあり、速筋と遅筋の良いとこ取りをしている筋肉なのです!】
「素晴らしいです、旦那様!」
「・・・道が見えた!」
【ただ、この筋肉に近づける為には厳しい鍛錬と食事制限が必要となります。鍛錬は有酸素運動を多めに、そして俺が食事を管理します。】
「分かりました!」
「強くなる為なら何だってやるよ!」
【ディアナさんには辛い事ですが良いですか?】
「もちろんだ!やり遂げて見せるぜ!」
【良い気概です。それではこちらに着替えて下さい。実践です。】
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「だ、旦那様。し、下履きが下着のような気が致しますが?」
「あー、兄貴よ。見たいんだったら素直に言えば良いじゃねえかよ・・・。」
【馬鹿にしてはいけません、古来より、運動をする時に着替える『体操服』と『ブルマ』です!】
「っく、団長としての威厳が!?」
「セリスさんよ、相手は兄貴だ、諦めも肝心だぜ?」
「貴方は平気なのですわね?」
「平気じゃねえけどよ・・・教わる身なんだ。このぐらい我慢するぜ。」
「・・・貴方の事を誤解していたようですわ!私の事はこれからは呼び捨てになさい!」
「アタイの事も呼び捨てにしてくれ、皇女様。」
「もう、分かりましたわ、ディアナ。」
「こちらこそ、セリス。」
ガシッと手を組む。
何か友情が芽生えたようだ。
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「くちょん!」
「どうした、アミィ。朝の巡回の時間だぞ?」
「ん?ん?な、何でもないわよ。」
「鼻を擦ってどうしたのですか?」
「これはお姉様が私の噂をしているのね!」
「・・・いいから行くぞ!」
「待ってよ、レイチェルったら!」
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【それではストレッチという物を行っていきます。】
「「すとれっち?」」
【ええ、ゆっくりとした動作で、間接や筋に負担をかけない様に行う準備運動のようなものです。】
「「分かりました!」」
【では、二人でペアを作って頂きます。これをペアストレッチと言います。】
「旦那様、どのように行うのですか?」
【指導していきますのでその通りに行って下さい。後、力の入れすぎに注意です。逆効果になりますからね。】
「「はい!」」
二人にペアストレッチを指導して行く。
【ストレッチには筋肉のこわばりを解消し、血流を良くして美肌や冷え性の改善にも役立ちます。更に、美しい姿勢を維持する為の柔軟性への効果も期待出来るのです。】
「んーっ、この運動にそのような効果が?」
「んーぉ、とにかくやるぜ!」
【ペアストレッチは、二人で協力して行うストレッチです。一人では届きにくい背中や腰、肩甲骨周りなどの筋肉もしっかり伸ばせる大きなメリットがあり、一人で行うよりも効果が高いのです。】
「んーっ、成程、確かに一人では伸ばせない筋肉もありますわね。」
「んーぉ、これを毎日やるのかい?」
【ええ、一~二時間行います。】
「「そんなに!?」」
【そうです。その後は有酸素運動です。ストレッチが終わったら、本日から十km走ります。】
「んーぉ、走る距離が短いんじゃねえか?」
【ディアナさん、毎食の前後に走って頂きますから一日で三十km走りますよ?】
「んーっ、そう考えると結構な量を走りますわね。」
「んーぉ、そうだな、期待出来るぜ!」
「ディアナ、少し痛いですわ。」
【ディアナさん、力を入れすぎないように。】
「う、うっす!」
一時間半程のストレッチが終わる。
「け、結構きついですわね。」
「地味に来るな。」
「次は走るのでしたわね?」
「ああ、だが付いて行って見せるぜ!」
「ディアナ・・・。」
「セリス・・・。」
ガシッ!
また、友情が生まれたようだ。
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「くちょん!」
「どうしたのぉ~?レイチェル、クシャミなんかしちゃってぇ。」
「何故だ?」
「ふふ、風邪でも引いたのかしら?」
「馬鹿な、単なるクシャミだ。」
「知っているかしら、真夏に風邪を引くのはお馬鹿さんの証だとかなんとか。」
「五月蝿いぞ、アミィ!」
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ランニング。
これは有酸素運動の代表的な物だ。
【有酸素運動とは、筋肉を収縮させる際のエネルギーに、酸素を使う運動の事の全般を言います。長距離走も、もちろんですが水泳などもそうですね。】
「成程。」
「ふむふむ。」
【まずは基本となる長距離走から行きましょうか。】
「「はい!」」
距離を測り約十kmを走る。
これはセリスに聞いた話だが練兵場の外周の長さが約五kmだとの事で二週に設定した。
「これは、結構、良い、運動に、なりますわね。」
「ああ、これを、毎回、食前か食後に、やるんだろう?」
「そ、そうですわね。」
「だが、乗り越えて見せるぜ!」
走り終わった二人に声をかける。
【さて、お待ちかねの御飯ですよ。】
「っく、今度は、た、食べるのですわね?」
「待ってたぜ、兄貴よー!今日は何だい?」
場所をいつもの厨房に移動して料理を作る。
貴重な玄米を炊き上げる。
醬油、酒、みりんを合わせ、たれを作っておく。
バックパックから取り出した新鮮な鮪の柵を一口サイズに切る。
炊き上がった玄米150gを器に盛り付け鮪と同じく一口大に切ったアボガドを乗せる。
たれをかけたら白ごまを振り、出来上がり!
「旦那様、朝から鮪とは、豪勢なのですね。」
「・・・兄貴よぉ。美味そうだが少なくねえか?」
「ディアナ?」
「セリス、アタイには少なすぎるんだよ。」
「そうなのですわね。」
「自分で言っておいて、早速挫けそうだぜ。」
「ディアナ、今が乗り越える時ですわ!」
「セリス・・・頑張ってみるよ。」
ガシッと二人が手を握る。
また友情が芽生えたようだ。
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「へくちょ!」
「どうしたセシル?」
「・・・調子は悪くないから風邪ではないと思う。」
「そうか、この季節に風邪なんか引いたらアミィに何を言われるか分からないぞ?」
「それだけはごめんですね。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「「ごちそうさまです。」」
「ディアナさん、どうしたんですか?」
「兄貴よぉ・・・もっと食べちゃあ不味いのかい?」
【はぁ、仕方がありませんね。待っていなさい。】
「さすが兄貴!話が分かる!」
厨房からある物を持って来る。
【どうぞ。】
「ってさ、兄貴よ。バナナじゃないか!」
【不満なら食べなくても良いですよ?】
「不満なんて無いっすよ!バナナ、うめえぜ!」
【ただし、一日五本までですからね?】
「っぐ、気を付けます。」
【ディアナさん、挫けそうになったら二つの事を思い出して下さい。】
「二つの事?」
【一つ目、オーガの牙に入る前の事。昼御飯なんて食べれませんでしたよね?】
「そうだ、あの頃に比べれば・・・。」
「ディアナ・・・。」
「そんで、兄貴。二つ目は?」
【・・・あの戦いの事を思い出して下さい。】
「・・・二度と不覚は取らねえ!」
「その意気ですわ!ディアナ!」
「おう、セリス!」
ガシッ!
うん、完全に友情が芽生えたね。
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「「「くしょっ!!!」」」
「「「・・・。」」」
「ねえ、これ風邪じゃないわよね?」
「もしかして噂なのか?」
「誰がすると?」
「お姉様じゃないかしら?」
「団長はしばらく朝の勤隊はないぞ?」
「・・・一体誰が?」
「「「・・・。」」」
その日、三人は早めに床に就いた。
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「兄貴よ、昼飯も期待してるぜ!さてと、練兵場で集中力を上げるかね!」
「旦那様、それでは後程。このまま公務へ行きますね。」
【ああ、二人とも気を付けてね!】
さてっと・・・
器を回収してあら・・・?
むにゅっ
おお、背中に・・・あれ?
【ルイスじゃないか?どうしたの?】
「様子を見に来たら駄目かしら・・・。」
【ルイスなら大歓迎だよ!】
「良かったわ。まだ側にいられるのね・・・。」
【何か言った?】
「ううん、何でもないわ。食器を洗っているのね・・・お手伝いしては駄目かしら?」
【ルイスがお手伝いだなんて・・・一緒にやろうか。】
「ええ、それで、洗えばいいのね?」
【うん、洗い終わったら鍋の中に入れてくれる?】
「どうして鍋の中に入れるの?」
【それはね、煮沸消毒と言ってだね・・・。】
ルイスの様子が変だった。
どうしたんだろうか?
そんなルイスをこのままにはしておけなかった。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!
まずは、いつものから!
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それでは 次話 嫉妬(仮 で、お会い致しましょう。
今度は本当だよ!
書いていたら二部構成になっちゃっただけだい!
お休みなさいませ!