疑念と隠蔽された何か
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お楽しみ頂ければ幸いです。
帝国軍が到着した。
卵から出て来たアヴェンジャーにてこずりながらも勝利を収めた。
現在はマザーの捕獲をしている所だ。
驚いた事にマザーの卵巣は五十m程あり生み出すところは某映画のようにグロテスクだった。
俺もあの映画見ていなかったら平然としてられなかっただろうな。
その映像を生で見たセリス達は二~三日、まともにご飯が食べられ無かったそうだ。
そして、マザーの本体だが四m程の個体であったようだ。
急ぎマザーを取り出すと捕縛する。
残っている卵には剣が突き立てられた。
卵巣を放っておく事も出来なかったので頼まれて凍らせ、粉々にした。
まあ、洞窟の奥で火を使う様な事は、何があるか分からないので避けたかったのでね。
こうして一連のテラサンとの戦いは幕を閉じたかに見えたのだ。
外に出ると日をまたいで戦っていたようだ。
今は昼間の何時だろうか?
俺達が地上に戻ると急使が情報を持ってやって来た。
なんと、オフディアン族のナーブ族長がこの度の件でお礼を言いに帝都まで来るようだ。
・・・オフディアンか。
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俺は師匠と二人、丘の上にいる。
木陰から陣容を見渡せる場所だ。
米粒みたいな人達が懸命に働いている。
ここには二人の他、誰もいない。
何でこんな所にいるかと言うと、相談したい事があったからだ。
【師匠、今回の件ですが不明というかおかしいところがあるような気がします。】
「わしも思う所があるのぅ。」
【では俺から、まず一点目です。俺達がオフディアンの砦に踏み込んだ時の事です。彼らはアミーラの事を知っていたようでした。】
「ほう・・・。」
【俺の目の前でナーブ殿はこう言いました。「アミーラを特殊壁に入れておけ。通信はさせるなよ?」これはかなり研究をしていなければ出来ない反応、対応です。】
「坊主はどう思ったのかの?」
【その存在を知っているにもかかわらず、何故、帝国軍に報告してこなかったのか。これは援軍として行動する帝国軍にとって、情報を共有する事の出来なかったオフディアン側の重大な情報隠蔽です。】
「そうじゃのお、それが分かっておれば犠牲者も少なくて済んだはずじゃ。」
【二つ目の点です。援軍の要請した時期が気になります。これも砦に行った時ですがあそこまで攻め込まれている、いたにも関わらずの急ぎの援軍要請。】
「そうじゃのう、あれでは滅ぼされていても不思議ではないのぅ。」
【そこでです。二つの状態から考えるに、オフディアンはテラサンの事を研究していたにもかかわらずこのような事になったのは何故か?】
「どう結論付けたんじゃ?」
【もしもの話ですが、何かの研究が秘密裏に行われていたとしたら?これは正確には何かは分かりません。俺の想像でしかないんですが・・・軍事利用。これが一番しっくりくるような気がします。】
「坊主、その道にたどり着いた考えを聞かせてくれるかの?」
【先程の二点、特に一点目の隠蔽です。我々に隠してまで行う事は?ラフィアさんにオフディアンの生態を窺ったところ彼らは雑食。つまり俺達と変わりない食生活なんです。】
「ふむ。」
【だとすればですが、何かがあって肥沃な帝国を手に入れようと考えた。その為の手段としてテラサンを軍事利用しようとした。】
「ならば坊主、少々聞いてくれるかの?今度は、わしが気になった事じゃ。」
【御伺いし致しましょう。】
「テラサンは肉食だそうじゃな。」
【はい、その中には人間も含まれております。】
「そこじゃ、坊主の考えが正しかったとすると繋がるんじゃよ。このアラフニ平野に戦場を指定した理由がな。」
【理由・・・まさか!?】
その想像に顔が青くなる。
「そのまさかじゃ。自分達の滅亡を回避する為に我らをおとりとしてマザーのいるここに布陣させた。と、したらどうじゃ?」
【帝国軍一万五百、ヘルシャー軍一万、餌が豊富な場所の方が攻められるだろうと?】
「そうじゃ。現にオフディアンの砦、あそこからはテラサンがいなくなったぞ?」
【・・・オフディアンの、盟友の為の・・・その為に犠牲になった人々がいるんですよ?】
「そうじゃ、あくまでもそれが目的だとしたらどうじゃ?」
この援軍自体が罠の可能性。
【・・・調べます、徹底的に。今ならばあの砦はまだ混乱から立ち直っていないはずです。】
「そうじゃ、動くのは確証が取れたらで良い。その代わり・・・。」
【我らを食い物にした罰は必ず取らせます。】
「そうじゃ、冷静になれ、坊主。まずは確証を得る所から始めよ。」
【はい、師匠。】
師匠と別れ考える。
ナーブはこれから護衛を連れて帝国に行く。
砦はあの状況だ。
警備なんてほとんどいないだろう。
自分で動くか?
いや、皇帝陛下に言う時には味方が欲しい。
帰ったら正義の味方を頼ろう。
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師匠との話の後、ディアナの見舞いに来ていた。
【それで、身体はどうですか、ディアナさん。】
「皆も心配して来てくれたんだぜ?・・・本当に体は大丈夫さ。」
・・・メンタルはどうだろうか?
【無事でよかった。まだこれからがありますからね?】
「・・・兄貴、済まねえ、不覚を取っちまった。」
【勝敗は世の常ですよ。それより、良く二人を守りましたね。】
「身体が動いちまったんだよ。褒められるいわれはねえ。」
素直ではありませんね。
【それで、大事なのはこれからです。どうしますか?】
「兄貴、アタイは強くなりてえ。こんなに悔しいのは初めてだ。」
【ディアナさん、その道は険しく厳しいですよ?】
「もちろんだ、今まで以上に厳しくしてくれ!」
【耐えられますか?】
「耐えて見せる!いや耐えてやる!」
【良い気概です。でしたら貴女は俺が預かります。皆には言っておきますね。】
「え?でも嫁さん達に悪いよ!?」
【ディアナさん、俺の嫁達を舐めないで頂きたい。貴女の気持ちには応えてくれる嫁達ばかりですよ。】
「じゃ、じゃあ、迷惑じゃなかったらお願いしたい。」
【迷惑の訳ないでしょう。頂きはまだ遠いですよ?】
「・・・お願いします、兄貴。」
うん、覚悟は受け取った。
俺も頑張ろう。
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新人さんパーティーは手の空いている時間にオーガの牙に訓練を頼んだようだった。
「そうですシルビィさん。盾で受け止めるのではなく流す。これで次の動作に繋げる事が出来ます。」
「は、はい!」
「さて、もう少し厳しく行きますよ?」
「お願い致しますわ!」
「それではこれはどう致しますか?」
「こなくそー!」
「おおりゃ!」
ガギンッ!
ギギギリギリッ・・・
「ぐっお、押し込まれる!」
「ヘイムよ、まだ鍛え方が足りないな!」
「お、俺はダンの兄貴みたいになるんだっ!」
「目標にするのは勝手だがまだ足りないぞ!」
「ウ、ウッス!」
「そこですーっと引くんさ~。」
「すーっとね、すーっと・・・。」
「すーっとっすね、すーっと・・・。」
「そこで狙いを定めて・・・。」
「狙いを定める・・・。」
「定めるっすよー!」
「バビュンなんさー!」
「バビュン・・・はい?」
「バビュンっす・・・ね?」
「どしたの、二人とも~?」
「アンナさん、バビュン・・・とは?」
「アンナさん、バビュンってなんすか?」
「ではそこで何の魔法を使うかです。」
「はい!ラフィアさん!」
「では、ミハエル君。」
「ファイヤー・ボールでドカンと!」
「味方を巻き込みますわよ?」
「ぐぬぬ・・・。」
「はい、叡智様。」
「では、アンリさん。」
「前衛の攻撃を信じブレッシングをかけます。」
「正解です。」
ほう、結構本格的だ。
一部を除き。
で、この二人が対峙しているのは何でだろうか?
「行きます!」
「はいほーい!」
シュッ!
タケゾウ君が槍を付き込む。
キッキリキリキリ・・・シュパッ!
受け止めたファムさんがそのまま槍の柄に剣を滑らせる。
そして切り込む。
狙いは指。
だが、その頃にはタケゾウ君は槍を諦めて手放していた。
「裏玄武 甲羅重!」
タケゾウ君の左裏拳がファムさんの顔を襲う。
避けてもその後に右拳が襲う。
一撃めは体を捻って、続いて来た右拳を何と槍の柄を中心として回転してかわした!
「な、何だと!?」
「まだまだかもねー?」
そして槍を右手でつかみ体を支えたファムさんが左手でタケゾウ君の首にダガーを当てて試合終了。
軽業師か!?
「っく、もう一本!」
「いいけど、そろそろ後ろの人に代わってもらった方が良いよー。」
【ん、俺の事?】
「まっかせましたー、アーサーさーん。」
そう言うとファムさんは何処かに走って行った。
「で、では、アーサーさん。一本お願い致します!」
【うん、良いよ。ファムさん程ではないけれど身軽な所を見せましょう。】
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訓練が終わり夕食の時間。
「ほほう、これは美味いな。坊主、料理屋でもやっていけるぞ?」
師匠、俺は鍛冶師ですよ。
・・・そこ、忘れてただろうとか言わない!
「うめえ、このらーめんっていうのがうめえ!」
「美味しい、蕎麦ではないが美味しい。」
「うめえっ!」
「うめえっすね!」
「これだから男って・・・モグモグ、お、美味しいわ!」
「美味しいねー、アーサーさんは何でも出来るんだねー。」
「美味しいわ、これが噂のらーめんなのね!」
「ふふ、ルウ。ネギがほっぺたについているわよ?」
新人さんには大好評のようだ。
「うん、やはりアーサーの物は一味も二味も違いますね。」
「本当にな!ズルズルー!」
「ダン、汁を飛ばすなー!」
「もう!二人とも、小遣いを減らしますわよ!」
「うめえな、これが兄貴のらーめんなのか・・・。」
ディアナの元気がないがまあ仕方がない。
これから元気付ければいいからね!
ジャスティン達にディアナを預かると言う話をしたのだが全員快くオッケーをしてくれた。
これでしばらくディアナを集中して鍛錬する事が出来るね。
セリスには後で言うとして、嫁の皆さん頼みますよ?
そんな事を思っているとセリスが近づいて来た。
「お食事中失礼致します。皆様方の撤収についてですが決まりましたので御報告に参りました。」
「「「・・・。」」」
「うめえ!汁まで」
ゴチンッ!
「セリス様、気にされずに続きをどうぞ。」
「悪いですね、シルビィ。明日の午前十時に撤収して頂きます。準備の怠る事の無いようにお願い致します。集合場所は東の門の外です。」
「「「はい!」」」
「それと論功行賞を行います。これは全ての部隊が引き上げた翌日の十時からになりますので、皆様の参加をお願い致します。」
「とにかく、明日だな?」
「「そうっすね!」」
「んんっ、なお、新人の皆様は功績によりまして金一封が出ます。御期待下さい。」
「「「え!?」」」
「セリス様、私達も頂けるかもしれないと?」
「そうです、シルビィ。王国の期待の新人と旦那様より聞いておりますので当然の事です。」
「「「アーサーさん!?」」」
【皆さん、胸を張って下さい。あの戦争を生き残ったのです。これは誇るべき事なのですよ?】
「左様でございます。それに物資集積場の守備やオフディアン砦強襲の援軍などの話も聞いております。十分に戦果を上げられたと思われますわ。」
「「「ウオオオォォォー!」」」
「やったぞ!認めてもらえるかもしれねえ!」
「そうっすよ、ヘイムさん!」
「やったっすね、ヘイムさん!」
「認められれば・・・か。・・・ッシ!」
「うう、これでお母様にも胸を張れます。」
「シルビィ、認められたらね。」
「うわぁ、こんな事は初めてで何て言ったらいいのかしら?」
「ルウさん、認められたらっすよー。」
「それでは、各人は明日、またお会い致しましょう。」
「「「御疲れ様でした!」」」
【セリス、少しよろしいですか?】
「旦那様、何か?」
【しばらくの間ですが、ディアナを預かる事に致しました。承知しておいて下さい。】
「分かりました、ならば後日ですが部屋を我らの近くに移動させますわね。」
【それで、訓練と食事なんだけれど、出来るだけ付いていてあげたいんだ。】
「ふむ、付いていてあげたい食事とは何なのですか、旦那様?」
【ああ、えーっと簡単に言うと体の健康を維持するための食事制限をするんだよ。】
「食事制限?」
【ああ、食事の管理してこの際だから徹底的に体を鍛える事にしたんだよ。】
「う、うふふ、旦那様に管理され、お、おほん、私も興味がありますわ!」
セリスさん、一瞬何処に行ってましたか?
【では、セリスも一緒に鍛錬をして食事を作りましょう。】
「お願い致しますわ、旦那様。」
さて、まずはセリスの許可を取った。
帝国に帰ったら三人の許可を取って、王国のナナリーさんの許可も取らないとね。
さて、色々と頑張りますか!
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます!
それではいつものから!
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連載当初、こんなに読んで頂けるとは思いもよりませんでした。
本当に皆様に感謝を!
それでは 次話 帰還と凱旋式(仮 で、お会い致しましょう!
御疲れ様でした!