絶対零度
いつも読んで下さり、誠にありがとうございます!
執筆終わりました。
お楽しみ頂ければ幸いです。
どうやら、新人の皆はついてくるようだ。
オーガの牙にお願いして面倒を見てもらうようにした。
師匠には俺と一緒にセリスの救援を。
ラヴィーネは自軍に戻ると思っていたのだが何故か俺について来ると言っている。
『紅蓮と一緒にいた方が強敵に出会える確率が高い。』
・・・のだそうだ。
まいったね。
人を疫病神のように言わないでほしい。
【・・・7th ゲート・トラベル。】
ゲートを開き自軍の陣地へ戻るとそこは戦場だった。
嫌な予感って本当に良く当たるなぁ。
「小僧、この混戦では嬢ちゃんが何処にいるか分からんぞ!?」
【っく、どうする!?】
「ん?白薔薇なら一番の激戦区にいるのではないのか?」
「激戦区が多すぎて何処だか分かりませんね。」
「アーサー君、西に穴があるんさ~!」
「アーサー様の予感はあちらのようですわね、問題は・・・。」
「激戦区が何処だか分らねえな。」
「それだけ押されてるってところっすかね?」
「ど、どうしますか?」
「シルビィ、アタシらはオーガの牙に付いて行くだけだよ。」
「そうよ、下手に手を出しても・・・。」
「先程の戦いで討伐部位は山のようにありますわ。」
「俺達もあるぜ?」
「そうだね。」
「これ以上は欲張る事は無いっすよ。」
「そうっすね!」
「けれど、味方が戦っているんだぞ・・・?」
「そうよ!一人でも助けるのよ!」
「そうね、シルビィ。私達は貴女に付いて行くわ。」
「そうだね、ヘイムさん。まだ腕試しをしたいしね。」
「助けるのならオイラ達の出番っすね!」
「そうっすよ!」
「新人さんに活を入れられたみたいですよ。では我々は穴の東に。」
陣から一番近く最も後退しやすい所だ。
新人達の事を考えてくれている。
さすがジャスティン、頼れる男。
「では、我らは一番遠くを目指そう。ただし、言っておくぞ、紅蓮。雑魚に構っている時間はなさそうだぞ?」
「わしもそう思うぞ。それにあ奴に見つけられた。見られておるぞ。」
【アミーラですか?一匹の訳はありませんね。師匠、身近な所は何処でしょうか?】
「三か所感じる。一か所、穴の西のその近くに戦気があるぞ?」
「白薔薇はそこにいるぞ。」
【分かりました。時間が惜しいので魔法で向かいますが、良いですか?】
「良いぞ?」
「構わん。」
【皆さん、そちらは頼みました!】
「アーサー、絶対に嫁さんを助けろよ!」
「紹介してもらわないとね~!」
「では行きましょう。先頭をアンナ、その後を僕とダン。その後にラフィアと新人さん達が続いて下さい。殿はディアナにお願いします。」
「「「応!」」」
「「「はい!」」」
「任せてくれ!」
「行きましょう。」
「「うっす!」」
ジャスティン達は陣形を組み移動していった。
【こちらも行きます。・・・9th マス・フライ!】
「おおっ!?」
「フハハ!愉快だ空を飛ぶのか!」
【では、行きます!】
「任せるぞ、坊主!」
「紅蓮、あちらの方角だ。」
ラヴィーネが指した方角へ飛んで行く。
「紅蓮、空から攻撃しても不味いと言う事は無かろうな?」
【構いません。出来る限り敵を減らして下さい!】
「・・・6th アイス・ランス!」
その魔法は放たれると目的地に爆音とともに突き刺さり氷の花を咲かせる。
「フハハハ!一方的なのもたまには良いな!」
「お嬢ちゃん、やりすぎると魔法が飛んでくるぞ?」
「これは失敬。ではお返しをしないとな!」
何する気よ?
〖永劫たる氷結の精霊に願い奉る・・・
え!?
嘘!
魔法の詠唱だと!?
この詠唱は・・・10thの!?
【5th マジック・ディフェンダー。】
一時的に魔法耐性が上がる魔法を師匠にかける。
「何をしたんじゃ、坊主?」
【師匠の魔法耐性を一時的に上げました。この子・・・ラヴィーネさんは、10thの魔法を使う気です!】
「何じゃと!?」
〖今は刻すら凍らせたる酷寒に閉ざされし純白の世界・・・
「長生きはするもんじゃのう!10thの魔法か!」
【ラヴィーネさん、マナは大丈夫なんでしょうね!?】
・・・その腕に抱かれ永遠の氷獄にて眠り給え!〗
【師匠、防御!】
「どうせいっちゅうんじゃ!」
【精神力でどうにか!】
「何とかしてみるわい!」
「永遠に眠るが良い・・・〖アブソルート・ヌル!〗」
ビギッ!
その瞬間、時が凍った。
そう、凄まじい勢いで地面が凍結して行く。
地面にいる敵と言う敵が凍り付く。
さすがに味方のいる所では使わなかったようだ。
それだけを安堵する。
この呪文、〖アブソリュート・ゼロ〗は広範囲の敵味方の全てを凍らせる究極の絶対零度の氷結魔法。
範囲で言うと指定した場所を中心に直径で100mの円形の広範囲である。
『温度は、物質の熱振動をもとにして規定されているので、下限が存在する。』と言う法則を魔法が捻じ曲げ、対象範囲の物質を完全に凍らせる究極の魔法の一つなのである。
ゲームの時は10thは強すぎた為に前に使ったイージスで相殺されるようになったうちの魔法の一つだ。
この魔法はこの世界に来てから初めて見たよ。
熱帯地方、少し歩くと砂漠の世界、そんな場所に見事に純白の世界が出来上がった。
「こりゃあ・・・生きている奴はいないじゃろうな・・・。」
【生き残れる奴がいたらそいつこそ化け物ですよ。冷気属性の敵でさえ凍り付きますからね。】
「しかし、嬢ちゃん。剣も魔法も行けるんじゃな。」
【そうですよ、マナは大丈夫ですか?】
「紅蓮、ボーっとしている場合ではないぞ、砕け。」
【あ、・・・8th アース・クエイク!】
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
パリン!
バギン!
パキン!
凍り付いたテラサンの軍団が砕け散って行く。
【・・・敵がまだ他の方面で動いています。いなかったようですね。】
「そうか、では進もう。」
「なにがおらんのじゃ?」
【マザーとアミーラです。】
「ほう、まあ、そんなに簡単にはいかんか・・・。」
【蹴りがついてくれてれば楽だったんですけれどね。】
「お、嬢ちゃんの気配じゃ!」
【生きていた!良かった!】
「あちらの方角に戦気がうかがえるぞ。」
【すぐに向かいます!】
「紅蓮、剣聖、少し瞑想をする。」
「回復させるが良い。」
【現地に着いたら教えますよ。】
ラヴィーネが指さした方向へ向かうと戦場が出来上がっていた。
ただ、状況は思わしくない。
上空から見て味方二、敵八と言ったところか。
場所が遠いところなだけに随分と押されている。
「坊主、少し西で降ろしてくれるか?」
【ヤツの周りには護衛がいます。気を付けて下さいね。】
「分かっておるわい。」
師匠だけを西のアミーラの方向へと降ろす。
【ラヴィーネさん着きましたよ。】
「うんっ・・・さて、紅蓮。派手に行くぞ!」
【派手にって・・・今度は何をする気ですか?】
「霊媒は使えるな?」
【ええ、使えます。】
「紅蓮、分かるな?範囲氷結だ。」
【はあ、了解しましたよ。】
高度を下げる。
「今だ!」
【はい!】
「「・・・アイシクル・ウィザー!!」」
そして敵だけを凍らせる二人の二重魔法が発動した。
ピキパキ・・・
白い物が飛んだ。
雪の結晶かな?
「旦・・・那様・・・!?」
【セリス、弱気になるな!】
「そうだ、白薔薇。この程度の事で諦めるではない。」
「旦那様!旦那様!旦那様!」
セリスが走り寄り飛びついて来る。
「旦那様!」
【待たせちゃったね、セリス。】
「旦那様はいつも格好良いところを見せてくれる!」
【セリス、皆に号令を。片付けの準備をしましょう!】
「は、はい!旦那様!」
【まずはこのスキに集まりましょう。俺は負傷者を魔法で癒しポーションを配ります。】
「生存者はここに集え!白薔薇は健在だぞ!」
「白薔薇様だ!」
「団長?」
「皇女殿下は健在だぞ!」
「パトリオティス!無事か!」
「ええ、セリス皇女様の旦那様達のおかげで一命を拾いました。」
「そなたにはまだまだ苦労をかけさせてもらわねばな!」
「ふははっ、それでこそ御転婆姫ですな!」
「「団長!」」
「レイチェル、セシル。そなたら無事だったか!」
「部下が何人か命を落としましたが、隊規の通り怪我人は見捨てておりません。」
「その為に孤立してしまい、団長の後を追う事が出来ませんでした。」
「「申し訳ございません!!!」」
「何、構わぬ。負傷者は旦那様の元へ運べ、治療して下さる。」
「「了解致しました!」」
「そろった様だな、で、どうするのだ白薔薇?」
「団長、この方は?」
「ヘルシャーのラヴィーネ陛下だ。」
「見知りおくが良いぞ。強き者、生存する気がある者は大変に好ましい。」
「「は、ははっ!恐縮でございます!」」
レイチェルさんとセシルさん、二人が跪く。
「・・・それはよい。」
「二人とも跪くのをやめるのだ。」
「「っは!」」
二人は立ち上がるとラヴィーネと順に握手する。
「そうだ、旦那様。あの丘の上から見られている気がするのですが・・・。」
セリスが指さした方角、ちょうど師匠を下した方角だね。
【大丈夫だ、セリス。最強の人を向かわせているからね。】
「そう言えば、剣聖様の姿が・・・まさか!?」
【そのまさかだよ。集まったら敵を掃討するぞ!】
「はい、旦那様!無事な者は集まれ!負傷者はヘファイストス様の所へ、治療して下さるぞ!」
「紅蓮、そろそろ来るぞ?」
【負傷者の手当てがまだ・・・。】
「ふむ、格安で愛刀を直してもらうのだ。これはその礼としておこう。」
【貴女もマナを回復させないといけないのでは?】
「なに、そろそろ剣にも馴染んでおかなければな、凍土に嫌われてしまう。」
【では、治療中は任せます。】
「強敵でもいれば嬉しいのだがな。」
【おそらくですが、マザーの近くにいますよ。】
「ほう、それは・・・期待しておこう!」
そう言うとラヴィーネは敵の中に突撃していった。
「ヘルシャーの軍帝にだけやらせるものか!私の後についてこい!」
「「「ははっ!」」」
「セリス様、御出陣!」
「「「後に続け!」」」
うん、士気が回復したね。
さて、こちらも治療をしないとね。
重傷者からポーションを飲ませる。
皆が集めてくれた秘薬から作ったポーションがここでも大活躍だよ。
ありがとう、皆。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ふぉふぉ、坊主め、老体をこき使いおって。じゃが・・・。」
「キシャアアァァァー!」
「「ギシャアアァァァー!」」
「ほほ、逃げよるか。これは本気を出さんとな。」
「「シャギャアアアァァァ!」」
アミーラとかいう奴は戦闘力が無いらしい。
地面にも助けが無いと潜れんらしいから少しなら放置で構わんじゃろう。
当面の敵はこいつらかのぅ。
確か坊主がアヴェンジャー・ナイトとか言っておった。
「無明」の相手にふさわしい強さならば良いのだが。
「キシャアアァァァー!」
その右手、槍の攻撃をいなす。
「キシャアァァ!?」
「こんなものではあるまい?全力を出さんとすぐじゃぞ?」
「シャギャアアアァァァー!」
「四の太刀・崩月!」
ズバアッ!
「ギャシャアアァァァー・・・。」
崩月を食らって真っ二つになるナイト。
そのまましばらく動いているようだ。
じゃが、真っ二つにした今何もできんじゃろう。
「六の太刀・返し刃 豪閃!」
ジャキーン!
「ギャシャ・・・?」
返す刀の豪閃でもう一匹を真っ二つにする。
「ふむ、強敵ではあれど、無明の敵ではないな。」
「ギャッギャシャー!」
「逃げるでない、お主は生け捕りが望ましそうじゃな。」
「瞬足」でアミーラの前方に回り込む。
ゴガンッ!
「ギャシャー・・・。」
「ふむ、人間の体にある弱点は同じか?」
水月、鳩尾らしきところをを叩くとアミーラは沈黙した。
「さてと・・・ああ、いかん、ロープが無いではないか。」
ある意味最強の戦力は変な所で困っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「アッハッハッハ!雑魚ばかりだな!つまらん、つまらんぞ!」
「た、楽しそうですわね、軍帝様。」
「負けるではない!戦が終わった後、ラヴィーネ様の力で勝てたとは言われたくはあるまい?」
「「「はい!」」」
「鋼の武器の無い者はウォーリアとドローンを相手にせよ!」
「騎馬がある者は突撃槍を持ち列を作れ!帝国騎馬隊の意地を見せよ!」
「「「っは!」」」
こうして士気と統率を取り戻したセリス達は秩序ある行動をとりテラサンを駆逐して行く。
【解毒を優先して下さい。レベル四の毒を最優先です!】
「ポーションの在庫がありません!」
【では、対象者を集めて下さい、魔法を使います! ・・・5th アーク・キュア!】
強力な解毒の範囲魔法だ。
対象が多かったのでこの魔法を使う。
二十人単位で解毒が終わる。
俺のバックパックにはポーションの在庫は十分にある。
問題は解毒だ。
まずは魔法で解毒をする。
その後に回復ポーションを飲ませれば回復してくれた。
解毒にてこずっていた人達の心境はいかばかりであっただろうか?
周りにいる人達からの「治るから大丈夫だ。」や「毒なんかに負けるな!」の声にどれだけ助けられただろうか?
それでも、間に合わずに天国に旅立っている人もいるのだ。
解毒を終えると重傷者から癒して行く。
治療スキルも大活躍だ。
【はい、これで骨は繋がり元に戻りましたので、もう大丈夫ですよ。】
「これで、友の待つ戦列に戻れます!ありがとう!」
【いえいえ、気を付けて下さいね。次は・・・。】
「坊主、俺の腕は駄目かい?」
無論こんな人がいても出し惜しみはしない。
【このポーションを飲んで頂けますか?】
「気休めか・・・。」
【貴方のその心の闇をも払うポーションです。】
「ハハハ、まあいい。飲んでみるさ。」
その兵隊さんはポーションを飲み込む。
するとどうだろう。
失った右腕が青い光に包まれ形を作っていく。
しばらくすると完全に元に戻っていた。
「おお!奇跡だ!俺の・・・俺の腕が・・・感謝する!」
泣きながら感謝を述べる兵隊さん。
その兵隊さんだけではない。
他にもテラサンの鎌のような腕に腹を斬られて絶望していた兵隊やいろいろな兵隊さんがいたがすべての人を直して行く。
だが、当然ながら深手を負ってこの世を去った兵隊さんもいる。
俺の手にも限界はあるのだ。
「アーサー様、こちらもお願い致します!」
【すぐに行きます!】
こんな事なら『トリアージ』の事を言っておくんだった。
でも治療を魔法等に頼っている世界では医療兵から作らないといけない。
これも課題にさせてもらおう。
各国の王に言っておけば制度を作ってもらえるのではないだろうか?
それも俺が、権力を、エクスィ・スィデラスになればスムーズに事を運ぶ事が出来るのであろうか?
前世の記憶で役に立つところは率先して伝えていきたい。
これも縁で俺の仕事ですよね、『アリステリア様』。
結構な量のポーションを使用したところで大体の兵隊の治療は終わっていた。
治療した兵がどんどんと戦列に戻って行く。
この人達が無事にこの戦争を乗り切る事を『アリステリア様』に祈るばかりだ。
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます!
まずは、いつものから!
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皆様に感謝を!
それでは 次話 もう一つの戦い(仮 で、お会い致しましょう!
お疲れ様です!




