戦場に咲く白き薔薇
いつも読んで頂き、誠にありがとうございます!
執筆終わりました。
お楽しみ下されば幸いです。
パ~プゥ~!
パーーー!
戦笛の音の後、突撃の戦笛が鳴った。
これはリョダリ騎士団の騎馬の突撃の合図だ。
パトリオティス将軍、死ぬにはまだ早いぞ!
アヴェンジャーと旦那様が言っていた個体に対して戦えるのはミスリルの装備を、旦那様の装備を持っている私だけだった。
ウォーリアーとドローンの群体はレイチェルとセシルの部隊に任せておけばいいだろう。
問題はこいつらだ。
マトリアーク、7thまでの魔法を使って来る女性型テラサンと鋼の強度を誇る甲殻をもつアヴェンジャー。
アヴェンジャーはレベル4の毒を吐くので要注意だと旦那様に言われた。
旦那様から頂いた解毒ポーションは五つ。
これはレベル4の解毒は出来るがレベル5の毒を解毒出来ないとも言われている。
もし、レベル5の毒を使ってくる相手がいたのなら?
だが、やるしかない。
「レイチェルは右翼を、セシルは左翼を、アミィは私の後方を頼む。」
「「「了解致しました!団長!」」」
「では行くぞ!」
「「「はい!」」」
突撃してくるアヴェンジャーの群れを斬り飛ばして行く。
一振りで三体への対応が可能だった。
さすが旦那様の用意して下さった武器。
その武器を力強く思うと更に追撃する。
「トリプル・ストライク!」
ドドッドッ!
「シャギャアァ!?」
全力の三連突きを見舞い一匹のアヴェンジャーを葬る。
狙って突き込んだアヴェンジャーの頭が吹き飛ぶ程の威力。
素晴らしい。
その力に体が熱くなる。
転がったアヴェンジャーにアミィ達が群がり止めを刺す。
「アヴェンジャーは任せよ!各薔薇隊達は雑魚を狙え!こんな所で死んでしまったら天国にいる先祖に顔向け出来んぞ!」
「「「はい!」」」
行くぞ!
その速度を持ってアヴェンジャーを翻弄する。
旦那様は一体どのような強化をして下さったのやら。
無事に戻ってそこの所を聞こう。
楽しみが増えたぞ!
その間にもアヴェンジャーを二体屠る。
「キシャアアァァー!」
マトリアークから魔法が放たれるがアヴェンジャーを盾にしてかわしその敵を屠る。
すぐさまマトリアークに向かい魔法を打たれる前に武器をふるう。
そして惨殺した相手を放置し次の敵へ向かう。
せっかく白く染めて頂いた鎧が返り血で紫色になってしまった。
気にするな!
洗浄したらまた染めて頂ければ良い。
その勢いでアヴェンジャーを蹂躙して行く。
更に四匹か!
足を狙い、手を狙い武器をふるう。
頭だけにすればアミィ達が止めを刺してくれる。
まだまだいるぞ。
面を上げ、スタミナポーションをあおる。
力を回復させると次の敵へと挑む。
ああ、不謹慎だが楽しい。
武器を振るう事をやめない。
動く事をやめない。
たまに入るダメージ?
そんなものはこの鎧の前では・・・。
問題は無い!
構わずに敵を斬り刻む。
そして五十体目から数えるのをやめてもっと武具と一体になる事を望んだ。
疲れているはずなのに体が軽い。
昨夜からろくに眠っていない体が思うように動く。
旦那様のスタミナポーションの力だろうか?
それにしても体が良く動く。
集中しているのが分かる。
無駄に力が入っていないのが分かる。
そうだ、私でもここまで出来るのだ!
武具の作成をありがとう、旦那様。
作るのを手伝ってくれてありがとう、フェイ殿。
それに関わってくれてありがとう、サーラ殿。
皆様方のおかげで私は戦えている!
「ギャウッ!」
「グウッ!?」
と、突然後ろから悲鳴が上がった。
「どうした!?」
「団長、毒です。二名がレベル4の状態です!」
「すぐに、ポーションを使え!」
「はい!」
「解毒ポーションの残りは?」
「対レベル4は後三本です!」
「毒に注意して戦闘を継続すべし!」
「「「はい!」」」
ここではテラサンの屍の山を作る事に成功した。
ただ、隊の解毒ポーションの残りが無くなってしまった。
これ以上の戦闘の継続は難しいだろう。
こんな事をしたら旦那様は許して下さるだろうか?
きっと御叱りを受けるに違いない。
でも、仲間を失う訳にもいかない。
済まない旦那様。
「アミィ、一旦下がれ。ポーションを補給して来るのだ。」
「お姉様は!?」
「私まで下がれば戦場に穴が開いてしまう。それは出来んのだ。」
「「「団長!最後までお供します!」」」
「おいおい、何を言っているんだ。最後ではない、始まりであろう?」
「・・・皆、行くわよ。」
「アミィ様!?」
「お姉様が戦うのにこれ以上迷惑をかけられません。ですが、補給したら戻って来ますからね?」
「ああ、待っているよ。」
面を上げ、口付けをして送り出す。
「では、後程。」
アミィが翻り後方へと下がって行く。
他の騎士団達も振り返りながら下がる。
皆、ありがとう。
最後まで我が儘を聞いてくれて・・・。
ルイス殿、旦那様の事を頼む。
貴女にだから頼めるのだ。
ナナリー殿、ともに酒を酌み交わしたかった。
同じ男を好きになった者として。
サーラ殿、先を越して済まない。
どうせなら旦那様の悪口を言い合えるようになりたかった。
フェイ殿、貴女の作ってくれた鞘も私の守り神です。
ここまで戦えたのは貴女のおかげだ、感謝を。
皆に感謝を!
振り向くと周り中敵だらけだ。
両翼を任せたレイチェルとセシルはどうしたのだろうか?
気になるが仕方がない。
さあ・・・これで最後だ。
いざっ!
と、馬の嘶きが聞こえ大量の蹄の音がする。
「ヒィヒ~ィン!」
ダガガガガッ!
ダガガガッ!
「エテダー!」
「「「ウワアアアァァァー!」」」
「「「キシャアアァァー!」」」
「「「エテダー!!!」」」
「「「ウワアアアァァァー!!!」」」
「「「ギャシャアアァァー!」」」
「姫様!死出の旅立ちには、まだ早いですぞ!」
「パトリオティス将軍!?」
「御一緒するには少ないですが鋼槍重装騎兵隊300!まかりこしましたぞ!」
「貴様ら・・・っふ、好きにするが良い!」
「ハハハ!姫様の結婚衣装姿を見るまでは死ねませんぞ!」
「その通りですぞ!」
「姫様は前だけをお向きになりたまえ!」
「ここは任されましたぞ!」
「・・・任せた!」
まったく、せっかくアミィ達を下がらせたと言うのに。
生き残る勇気が、希望が出てしまったではないか!
「キシャアアァァァー!」
その攻撃をかわし様、リーフ・ブレイドを叩き込む。
「ハアアアァァァ!」
「ギシャアアァァー!」
右腕を弾き飛ばす!
これで右の攻撃は出来まい?
しかしすかさず左から別の個体の攻撃が来る。
右にも敵影が見える。
唯一いないのは後ろのみ。
素早く、もっと速く動くんだ。
左の敵の首を叩き斬り、ついでに左右の腕も斬り飛ばす。
そうだ、やれば出来るではないか!
剣聖様と旦那様の稽古を思い出す。
あの時の旦那様はどう動いていた?
剣聖様は何と言っていたか?
「「「おぉっ!?」」」
「キシャアァアァー!」
すぐにアヴェンジャーが沸いてくる。
敵には困らない。
「「「姫様!」」」
「フーッ、フーッ・・・。」
呼吸は大事でしたよね。
わずかに笑みがこぼれる。
これは剣聖様が言っていた事だったか?
「ハアァァァ!」
ズバッ!
ザクッ!
「これこそが!」
パトリオティスが何か騒いでいる。
最速でアヴェンジャーの懐に飛び込むと遠慮なく切り刻む!
ズバッ!
ザガッ!
ザシュ!
「ギシャアアアァァァー!」
「これこそが帝国が誇る!」
「「「戦場に咲く、閃光の白き薔薇なりっー!」」」
「姫様に続けぇー!」
「「「ウオオオォォォー!」」」
兵士達の士気が上がっている!
いいぞ、このまま行ければ・・・。
ザシュッ!
「ギシャアアァァァー!」
さすがのミスリル製。
切れ味が落ちない。
いや、旦那様のおかげだろう。
心が温かくなる。
この鎧も、武器も!
何と心強い事か!
「ハアァッ!」
ザシュ!
「ギシャアァー!」
鋼の強度と呼ばれているアヴェンジャーの外殻をたやすく斬り裂く。
アヴェンジャーの死体の山が出来上がる。
たまに混じっているウォーリアーやドローン等はもはや眼中にない。
「いったい何処にこれ程の数がいたのだろうか?」
「ゴシャァッ!」
毒攻撃か!
いつまでも同じ所に突っ立っている私ではない。
その攻撃をかわすと違う敵が毒を吐こうとしていたのでその首をはねる。
はねると同時に両腕も切り裂く。
まさに朝、パンに塗るバターのように切れる。
何度も言うが心強い。
そして鞘にも触る。
フェイ殿。
勇気が出て来た。
私はまだ戦える!
「キシャアアァァー!」
ザシュ!
新たに表れたアヴェンジャーの右手を斬り飛ばす。
「ギャシャー!」
「ふんっ!」
ズバッ!
返す刀で首を斬り飛ばす。
しかし、個でしか動かなかったと報告があった敵が群をなし向かって来るとは・・・。
ん?
なんだこの視線は?
ザシュッ!
「キシャアァァァー!」
「ゴアァッ!」
「毒などは吐かせぬよ。」
ザシュッ!
その首を飛ばす。
と、気になる方向を見上げる。
左の丘の方からの視線だ。
気になる。
まだいるかもしれない味方に向かって叫ぶ!
「左手の丘に気になる物がいる、向かうぞ!」
「姫様に戦神ポレモスの加護のあらん事をー!」
「「「あらんことをー!!!」」」
「「「シャギャアアァァァー!」」」
すまぬ、皆。
アヴェンジャーとマトリアークを切り裂きながら進む。
「姫様の為に道を作れ!左前方だ!」
「力を振り絞れ!」
「最後でも構わん!」
「「「エテダー!!!」」」
「「「シャギャアアァァァー!」」」
「もう良い!そなた達は下がれ!」
「どこまでも姫様とともに!」
「「「エテダー!!!」」」
「ゴシャアァァァァー!」
「毒が来る!下がれ!」
「姫様!パラディソスでお待ち致しますが、まだ来る時ではございませんぞ!」
「パトリオティス!?」
「子を作りなさい、そして幸せになってから来るのです。それまではお待ち致します!」
「貴様こそ、我が子を抱いてからにせよ!」
「クヴァール帝国に栄光あれ!」
「パトリオティス!戻れー!」
「「「栄光あれー!!!」」」
「貴様達!戻れと言っている!」
駄目だ・・・。
もう皆とは会えないのだろう。
臣下ではない。
小さな頃から見守ってくれたもう一人の父上のような存在。
ある時は厳しく、ある時は優しく・・・。
そして軍隊では戦友達。
こんな所で、こんな事で!
ハラリ
ん?
白い・・・何だこれは?
文献で読んだ事がある、確か雪と言ったか?
この地に雪だと!?
まさか!
【セリス、弱気になるな!】
「そうだ、白薔薇。この程度の事で諦めるではない。」
その二つの声がすると戦場が突然の寒さに見舞われた。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!
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それでは 次話 絶対零度(仮 で、お会い致しましょう!
お休みなさいませー!




