真意
いつも読んで下さって、誠にありがとうございます。
執筆終了致しました。
お楽しみ頂ければ幸いでございます。
敵の群れが増えて来た。
だが群の力を使わない雑魚等、私の敵ではない。
「御老体、まだ行けるか?」
「視界の半分しか相手にしなければ、まだまだ行けるのぅ。」
「ハハハ!剣聖と肩を並べるのも悪くはない!」
「ほれ、待ち望んでおった、アヴェンジャーじゃぞ?」
「獲物をくれるとは、随分と親切ではないか?」
「ふぉっふぉっふぉ、たまにはよかろう?」
「ありがたくいただこう。」
前方に走り出す。
ここは柔らかい砂や土と違い岩場だ。
足元からの奇襲は出来まい?
一足飛びに間合いに入るとその両腕を斬り飛ばす。
「ギシャアアァァー!」
「囀るな。」
そして首を狩る。
もっと強い相手でもいないものか?
その周りにいる群れを斬り飛ばし前方を確保する。
良く見えぬが更に前方は騒がしいな。
騒がしい?
天井からの奇襲でもあったか?
いや、あの獣人の女が見逃すとは思えない。
それに、あの紅蓮が不覚を取るとは・・・無いな。
だが、何かあったのか?
感じている戦の匂いは前方からだった。
ふふ、ここからは剣聖達に任せてもよさそうだ。
そう思い、振り返る事無く前方へと走る。
雑魚でもいい。
この高ぶりを抑えられれば。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
プリンセスと呼んでいた「テラサン・アミーラ」と呼ばれる個体。
これがいないだけでこんなにも容易く制圧出来る物なのだろうか?
ふと気づいた。
昨夜の夜襲も一万程の敵だった。
オフディアンの拠点を襲撃している敵も一万程。
アミーラは一万程しか制御出来ない?
ラフィアは新種と言っていた。
それまではどうだったのだろうか?
ゲームではマザーと呼ばれるボスがいて、相手の巣となる洞窟へ攻め込み殲滅させるとアイテムが出てくると言うものだった。
装備がそろっていれば初心者でも大丈夫な比較的初期に回る金稼ぎのダンジョンだ。
そう、ゲームならだ。
マザーの代わりをアミーラがしている?
その為に生み出された?
ならマザーの操っている個体は何になった?
そう、アヴェンジャー・ナイトが表に出てきている。
皆にもその話をした。
ちょっと待て。
考え違いはしていないだろうか?
俺達はアミーラが新種だと思っている。
そうでなかったら?
・・・そうか、マザーが新種なんだ!
その考えが正しいとすると、こんなになるまで援軍を頼んでこなかったオフディアン。
見通しが甘かった?
今まで通り自分達で何とか出来ると思っていた?
その甘い考えで今回も乗り切ろうとしていた?
それが出来なくなって慌てて援軍を頼みに来た?
アミーラの存在を知っていたようだったのは研究したから?
そうだ、特殊房に入れて通信させるなと言っていた。
通信の相手がそのマザーなのだろう。
だが、その新種だと思われるマザーは何処にいる?
ゾッとする。
餌のある所だろう!?
騎士団が、セリス達が危ないのではないか?
幸いにもここはほとんど片付いた。
急いで報告に、確認に戻るのがいいだろう。
これは予想だが、アミーラが後何匹いるか分からないが数匹いれば何万かの大軍が予想出来る。
俺が甘かったようだ。
テラサンの事を知っているようで知っていなかったのだ。
皆と合流しなければ!
そう言えばテラサンの姿が見えなくなっている。
陣への襲撃が近いのではないのだろうか?
嫌な予感がする。
一刻も速く皆と合流して陣に戻らなければ!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「フハハハ!弱い弱すぎるぞ!」
私はテラサンと呼ばれる雑魚を倒しながら進む。
だが、その数が少なくなって来た。
もうお終いか?
一万はいそうだとの報告だったではないか。
まだ二千も倒しておらんぞ?
残敵を斬り殺しながら先を進んでいくと遠目に紅蓮が見えた。
これは好機なのではないか?
紅蓮と戦えるかもしれない。
そうだ、雑魚ばかりで倒し甲斐が無かったのだ。
紅蓮よ、責任を取って戦ってもらおう。
カツコツカツコツ・・・
石の床に私のブーツの音が響き渡る。
「紅蓮よ!我が無聊を慰めるが良い!」
斬りかかって行くのだが反応しない。
紅蓮、お前も我と戦えぬと言うのではあるまいな?
ギイッ!
ほう、受けるか。
【ラヴィーネさん!?】
「紅蓮、戦うが良い!」
【それどころではないんだ!皆は?】
「そのうちに来るだろう。敵がいなくなったのだ、我と戦え!」
【待て待て、今はそれどころではない!早く本陣に戻らないと!】
「どういう事だ?」
【テラサンの、今回のオフディアン襲撃は陽動の可能性があるんだ!】
「・・・詳しく聞こうか?」
【プリンセスと呼んでいた個体、テラサン・アミーラと言うらしいんだがこいつが新種ではないんだ。】
「何だと?どういう事だ?」
【新種はマザーの方なんだ!】
「何だと!?」
【テラサン族が引いて行っただろう?】
「そのようだな・・・。」
もう、テラサンと呼ばれた雑魚の気配はない。
波が引くかのように消えてしまった。
【ここに餌となる者が無くなったから撤退したんだ。】
「紅蓮よ、何故本陣が危ないのだ?」
【ここよりも餌がいっぱいあるだろう?】
「人族が餌になりうるのか?」
【そうだ、夜襲を耐えた軍隊がまだ九千以上残っているはずだ!】
「我が軍も一万おるぞ?」
【そうだ、餌が豊富な方に移動したに過ぎない。このままでは夜襲どころの騒ぎではない!】
「・・・どうする紅蓮?」
【もちろん引き返すさ、ただし、皆が来てからだがね。】
「強敵はいると思うか?」
【いると思う、確信がある。通常のマザーは一か所にじっとしている事が多いんだが・・・。】
「続けよ。」
【それがアラフニ平野だったら?そして人間を狩る準備が出来たのだとしたら?】
「そこに投入してくると言う事か?」
【そうだ、どんな敵かは知らないがきっと数でも質でも上回った群体が陣を襲うだろう、いや、もう襲われているかもしれない。】
「ふむ、ならば急いで戻るぞ。皆と合流するのだ。」
【はい!】
振り返り全速で駆けだす。
仲間と合流する為に。
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会議が終わり天幕に帰って来た。
旦那様はいない。
オーガの牙達とオフディアンを助けに行ったのだ。
どうか御無事で、旦那様。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
ん?
何だ?
天幕が揺れている。
「お姉様、かなり大きい地揺れですわ。」
「そうか、被害は出ていないのだな?」
「被害は出ておりません。」
「そうか、眠いがその前に御飯にしよう。」
「「御一緒致します!」」
「ふふ、たまにはよかろう。」
「そうですよー、最近は旦那様とばかり・・・お相手されて。」
「騎士達とも、もっと関わり合いを持って下さいね。」
「分かっておる、そなた達の事は可愛く思っておる。」
「それでは、たまには閨にもお呼び下さいませ、お姉様。」
「気が向いたら考えておこう。」
バナナを頬張る。
少し硬いがすいた腹には良い塩梅だった。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
「また地揺れか?」
「大きいですね。」
「・・・調べてまいりますね。」
「頼む。」
「この地方は地揺れが多いのですか?」
「そのような報告は無いのだがな・・・。」
うーん、旦那様の作ったちゅうかがゆとやらが食べたいな。
あれは美味かった。
またの機会に作って頂こう。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
何だ?
地揺れが多すぎないか?
ゴガンッ!
いきなり縦にズレた!?
「何だこれは!?」
「わ、分かりません!」
立てないぐらいの地揺れだった。
しばらく続く。
棚等が倒れて来た。
慌ててアミィを庇い地面に倒れこむ。
長いな?
「団長、っく、た、大変です!?」
「落ち着け、まだ揺れておるぞ。報告は収まってからでも構わん。」
「そ、それが、陣の西に大きな穴が開きました!」
「何だと!?」
「そこからテラサンが雲霞の如く出て来ております!」
「二度も奇襲を許したのか!見張りは何をしていた?」
「団長、突然ですが穴が開いたのです!」
「大きさは?」
「目視で約五十m!」
そんな穴が空くまで分からなかったのか?
「そうだ、防備を整えよ!これ以上進行を許すな!」
「「はいっ!」」
鎧を脱いでいなくてよかった。
ヘルムを被り天幕の外に出る。
鎧の胸に手を当てて祈る。
旦那様、お守り下さい。
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「何じゃと、こちらは陽動だと言うのか?」
【本来なら軍隊を釣り出せればよかったのだと思います。ただ我々が来た事が相手にとっては誤算だったのでしょう。】
良い意味の誤算なのか、悪い意味の誤算なのかは分からない。
「アーサー、なら、今頃は本陣が襲われていると?」
【可能性は高いと思われます。何せ餌が豊富です。これ以上あいつらが増えると街も危ないかもしれません。】
「・・・紅蓮、オーガの牙よ。ここで考えていてもどうにもなるまい。まずは陣に帰るのが優先だろう?」
【そうです、ゲートを出しますので師匠とラヴィーネさんから入って下さい。その後は新人さん達、オーガの牙と順番に入りましょう。】
「了解じゃ。」
「分かった。」
「「「応!」」
「分かりました!良いわね皆!」
「「はい!」」
「はいは~い!」
「「「応!」」」
そしてゲートを開く。
場合によっては新人さん達は王都に戻さないとね。
セリス、無事でいてくれよ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「陣列を乱すな!弓兵、射よ!」
「射撃開始!」
プアアァ~!
ヒュン!
ヒュン!
ズダダダダダダ・・・
「「「ギシャー!」」」
「「「キシャアァー!」」」
約三千名の射手が矢を放つ。
先日の夜襲よりはまとまった行動がとれているが、陣には動揺が見える。
「ファランクス!前進!」
「「「ワアアアァァァー!」」」
ザッザッザ・・・
ドス!
ズドッ!
「「「ギシャアァー!」」」
「「「シャギャー!」」」
「大した事は無いぞ!弓を射よ!槍を突き出せ!」
プアアァ~!
帝国軍は善戦していた。
敵が穴から出て来た所を叩いているのだ。
そしてそこに。
「クロスボウ!一斉射撃!」
ヒュン!
ヒュン!
ズドドドド・・・
「「「ギシャアァー!」」」
「「「ギャシャァー!」」」
「南の方角、ヘルシャーの援軍が来ました!」
「よし、ヘルシャーの援軍に伝令!そのまま北西に伸びてもらえ!我々は穴を北に半包囲して敵を片付けてしまうのだ!」
「伝令!伝えよ!」
「ははっ!」
伝令が出ると一安心したのか周りを見る。
奇襲を警戒していただけあって戦えているではないか。
リョダリ騎士団・団長のパトリオティス将軍はそう思っていた。
「「「ワアアアァァァー!」」」
「む、何の騒ぎか!」
「申し上げます!鉄の武器が通用しない敵個体が出現!弓も効果がありません!」
「魔法部隊で対応させよ!」
「それが、4th の魔法では歯が立ちません!」
「馬鹿な!魔法使いの部隊と弓隊を下がらせろ。損耗が激しくなる!重歩兵隊には下がるのを援護させよ!」
「ははっ!」
武器も魔法も通じぬ相手だと?
婿殿が言っていたアヴェンジャーというヤツだろうか?
「ファランクス!遠間から腹を狙って槍を打ち込め!」
「伝令を出します!」
これで大丈夫であろう。
後方からバリスタが到着するまでの間耐えてくれよ。
ダガガッダガガッ・・・
「伝令!」
「今度は何か?」
「敵の対応力が早く、先程の戦術では身軽なウォーリアー級によりファランクスが崩されます!」
「馬鹿な!もう対応されたのか!?」
「本陣中央、敵大型個体の激しい突撃の為突破されました!」
「何だと!中央突破を許したのか!」
「誠に遺憾ながら・・・。」
「ぐう、中央突破した敵が後方より襲い掛かって来るぞ!」
「遊撃のトゥリヤンダファリャ隊、セリス様を先頭に中央で奮戦しておられます!」
「あの方の気質ならそうなさるであろうな・・・頃合いを見て下げさせよ。」
「し、しかし!」
「これは命である!」
「っは!伝令に向かいます!」
ダガガツ・・・ダガガッ・・・
こうなればあの方だけでも無事に帰って頂かねば。
申し訳ありません、セリス様。
花嫁姿、見とうございました。
騎馬隊を呼び出す。
この部隊のランスは鋼鉄製だからだ。
「騎馬隊!その武威を持って味方を助けるぞ!敵に突撃を行い突破する!ついてこい!」
「「「帝国に栄光あれ!!!」」」
「そなたらに戦の神ポレモフのご加護を!」
「「「ウオオオォォォー!」」」
「出陣!」
パ~プゥ~!
パーーー!
「「「ウワアアアァァァー!」」」
そして私ことパトリオティスはこの戦いが最後の戦いになるだろうと悟るのであった。
ここまで読んで下さって、誠にありがとうございます!
まずは、いつものから!
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それでは 次話 閃光の白き薔薇(仮 で、お会い致しましょう!
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