初めてのドレス
お待たせいたしました。
執筆終了いたしました。
ドレスの説明の所がすこし文字が多いので調節が不安ですが頑張りました。
お楽しみいただければ幸いです。
俺の部屋に入るとルイスに向かって言う。
【それでは、ルイス。早速作りますので服を脱いで下さい。】
「「っは!?」」
この二人シンクロ率高いな!?
「アンタ何を言っているか分かっているの!?」
と、ミカが赤い顔をしながら右手で拳骨を作って迫ってくる。
【・・・何って採寸だよ?しないとドレスが作れないじゃないか?】
「「最初からそう言って!」」
二人の声が重なる。
マジでシンクロ率高いな!?
「アンタにやらせる訳にはいかないでしょう!?」
ルイスを見ると真っ赤になっていた。
こんな可愛い顔を見ないなんて選択肢は俺の中には無い!
【そこはほら!俺がやらないと。ね!?】
懸命に説得をするが、怒ったミカに部屋から摘み出されてしまった。
室内ではミカがルイスを採寸している。
くそう、せっかくあの体が拝めるチャンスだったのに・・・。
しばらくするとミカが部屋から出てきて、メモを渡して来た。
「これだけあれば十分でしょう?」
【・・・うん、大丈夫だね。おおバスト九十ぅ】
途中でミカに後頭部を「スパーン!」と引っ叩かれた。
うん、良い突っ込みだね!
「アンタに足りないのは気遣いよ!」
【す、済まぬ。】
頭をさすりながら、そう答えると部屋に入る。
着替え終わったルイスがいる。
ふっふっふ、まだ諦めた訳では無いのだ。
覚悟してね、ルイス。
【あのー、ルイスさん。誠に言いにくいんだけれど肌着でお願い出来るかな?出来上がった所を見ながら作っていきたいからね。】
「結局、アンタが肌着姿を見たいだけじゃないの!?」
ミカが俺の胸ぐらを掴んで言ってくる。
【確かにそれはある。が、ドレスを作るのに必要があるんだ。しょうがないじゃないか!】
「見たいだけじゃないの!このドスケベがぁー!」
スパーン!
そう言うと後頭部を引っ叩かれた。
「わ、分かったわ・・・。」
そう言ってルイスは言われた通り肌着になる。
顔が真っ赤だ。
ん?
ブラジャーは無いのか?
布を当てて、前で縛ってあるだけじゃないか?
それにしても、肌着越しでも分かるこの破壊力!
ぐへへへ・・・。
「やっぱりアンタが見たいだけじゃないの!」
スパーン!
ミカがそう言って後頭部を引っ叩いて来た。
「変な事をしないようにアタシが見てるからね!」
俺に指さして言ってミカはアリスのベッドに座る。
そうしてようやく、ドレスを作製するのだった。
ミカめ、手加減無しの裁縫スキルの威力を見るが良い!
俺の傑作をルイスに着せるのだと心を込めて作る。
もちろんデザイナーではないのでデザインの元は雑誌で綺麗なモデルさんが着ていた物を記憶の奥から引っ張り出している。
三時間ぐらい掛かったがドレスが出来上がった。
頭の右サイドに赤く染めたレースで作った薔薇をあしらった飾りを付ける。
せっかくなので髪も結い上げて髪留めで処理してみた。
頭の右側にある薔薇飾りの後ろでサイドテールっぽくしてある。
もちろん下着も特別品で上品なレースをあしらったエレガントなノンワイヤーブラとTバックにしてある。
ゴム程ではないが弾力がある素材なので補強すれば大丈夫だろうとの判断だ。
この世界の女性下着が胸の巻き布と腰の両側で結ぶ紐パンツだったので慣れてもらうのに、そう時間は掛からなかった。
脇と下の毛の処理はミカにやってもらった。
首から生地を掛けるようにして肩と胸元、背中を大胆に露出したドレスだ。
胸元の一部と背中から腰にかけて肌の見える部分にはレースを使っている。
背中から腰の部分は同じくレースで作ってあり、ブラジャーのバックベルトとホックの部分がが見えにくくなっている。
白を基調にした厚手の絹布をふんだんに使いスリットの前面に赤い糸で薔薇をあしらった刺繍を入れてある。
もちろん裏側から見ても分からない様に接着芯を使い、ヤカンを利用した即席のアイロンで綺麗に張り付けてある。
足元は左の太腿からのハイスリットドレスの様に作ってありルイスの綺麗な足が見れる様になっている。
ドレスのスリット等の縁取りは銀色の生地を使ってある。
絹布とレースで指抜きのロンググローブを作り指に掛かる部分を細工スキルを駆使して、金のリングで止めているのものを作製している。
グローブが上腕にまで掛かるように綺麗に作り上げた逸品だ。
同じく太腿までを絹布とレースで作ったロングタイツを履いている。
ゴムが無かったのでレースと絹布でガーターベルトを作り留めてある。
絹布は少し弾力があったので補強すれば丁度良いと判断して作ってみたが良い出来になった。
髪留めの金具やガーターベルトの留め金具、靴の意匠は細工スキルを駆使して作った物だ。
靴は革を白く染め上げて安全を考えて作った高さが五cm程のツヤツヤのハイヒールだ。
『金』と『宝石』があるので髪留めと金具の意匠には凝ってみた。
仕上げに先程買った黒の毛皮のロングコートを加工し寒くない様にした物を肩に掛ける。
ブラジャーやTバックの説明をする時に肌着の上から手を当てているとミカに「触ってるんじゃないわよ!」と後頭部を引っ叩かれた。
俺は真面目にやっているのだが誠に遺憾である。
・・・真面目にやってるよ?
えへへ・・・
Tバックの説明を聞いていたルイスとミカに凄い顔で言われた。
「「変態。」」
二人にそう言われるほどTバックは革新的な物だったらしい。
だってドレスに下着のラインが出ないって、本に書いてあったんだよ。
見た事はあるけど触る事は無かったので完全に想像だ。
だが、ふっふっふ。
さすがスキル様。
素晴らしい出来だ。
今度時間があったらルイスの為に本格的にブラジャーとパンティーを作ってみよう。
苦労はあったが上手くいったようだ。
「・・・三時間でこんな物を作れるなんて、アンタ鍛冶師じゃなくて裁縫師でもやっていけるわよ。」
ミカが惚けながらルイスを見ていた。
「ど、どうかしら?」
ルイスが俺を見て聞いて来た。
【・・・すごく綺麗だよ、ルイス。】
「ルイスさん綺麗だわ・・・言葉が出ないわね。」
「あ、ありがとう・・・ございます。」
そう言って頬を赤くして微笑む。
【ルイス、ちょっと歩いてみてくれる?】
「は、はい!」
コツコツと足音がするけれど足首に負担は掛からない高さなのだろう。
上手く歩けている。
ズレたり気になる所は無いかと聞くと大丈夫との事だった。
【うん、良いね!】
と、オッケーを出す。
「そう言えば、貴方の服は?」
ルイスが聞いてきたので礼服は持っているよと言う。
「アンタも着替えて、横に並んでみなさいよ?」
ミカがそう言って来る。
【仕方が無いな・・・あの、えっと、外には出てくれないの?】
「出る訳無いじゃない!」
ミカがニヤニヤしてそう言う。
【ルイスは出ててくれるよね?】
「ふふっ・・・嫌よ。」
ルイスはニコニコしてる。
どうやら出てはくれないようだ。
仕方なく部屋の隅っこで着替える。
そう、この地に降り立った時に着ていたスペシャルな奴だ。
「そういえばアンタ、結構良い体をしてるのよね。」
服を脱いでいたらミカがそう言って来た。
【この間、じっくりと見てたから知っているはずじゃないか。】
「この間って・・・じっくり?」
何かあったのかと思ってルイスが聞いて来る。
ああ、笑顔が怖い。
【ああ、ほら鉱山に行っただろう?その時に宿屋で同室になってさ、体を拭いている時に食い入るようにジーっと見られてるんだよ。】
ルイスに正直に話した。
「食い入るようにジーっとなんか見てないじゃない!誤解よ!」
ミカが慌ててそう言って来る。
【ほう、あんなに熱い視線で見られていたと思ったのは俺の勘違いか?】
「そうよ!勘違いよ!」
ミカが赤くなって言って来る。
急いで着替えるがルイスとミカは俺の方から目を背けずに見ていた。
ガン見されるとさすがに恥ずかしいな。
少しだけ、ルイスの気持ちが分かったような気がする。
白いネクタイを付けて最後に黒の上着を着る。
着替え終わった所でルイスと並ぶ。
「ミカさん、どうでしょうか?」
「良いじゃん、着飾りした馬鹿と華麗な美姫って感じね。」
ミカに聞くと見とれているのか感想を言った後、微笑みながら俺達を「ぼーっ」として見ていた。
っち、馬鹿ってなんだよ!
とか思っていると、十六時を告げる時計の音が響き渡った。
あ!
重要な事を忘れていた!
【ミカ様、お願いがあるのですがよろしいでしょうか?】
「何よ?気持ち悪い言い方ね。アタシに出来る事ならルイスさんに免じて特別に聞いてあげるから言ってみなさいよ?」
【馬車の手配を忘れていた。頼んで来てくれないかな?】
「ああ、そんな事なら良いわよ。」
【済まないね、ありがとう。】
「お礼は・・・そうね、今度アンタの鍛冶師の仕事を見せるって事でよろしくね!」
【ぐぬぬ・・・承知した。】
「決まりね、行ってくるわ。」
代金を渡そうとするとやんわりと断られた。
「記念なんだからそれぐらい奢らせなさい。」
と、言って部屋を出て行った。
良いやつだなミカ。
すると部屋にルイスと二人っきりになる。
気まずい。
見るとルイスも顔を赤くして俯いている。
そうだ、アレを付けてみよう。
そう思ってバックパックから『お土産』を出す。
【ルイス、ルビーで作った指輪なんだけど付けてくれるかな?】
「・・・。」
【ルイス?】
「嬉しくって・・・。」
泣きそうな顔をしているが、残念ながら結婚指輪ではないぞ?
その時はアレだ、もっと良い指輪を贈るぞ?
その時があればだけれど。
いや、この子を幸せにしたい・・・。
ルイスの手を取ると左手の人差し指に指輪を通す。
【どうかな?】
「・・・ピッタリよ。綺麗、ってこれ金細工じゃない!?凄いわ!」
と、ルイスが指輪を見て喜んでいるとルイスが言って来る。
「貴方と過ごしていると、毎日が驚きの連続で正直疲れるわ。だけれど、嬉しいって言う気持ちの方がすごく強くて・・・。」
【ルイス、口紅も塗ろうか?】
「紅もつけて下さるの?」
【任せなさい。】
バックパックからさっき買っておいた口紅を取り出し唇に筆を走らせる。
色はもちろん先程買った赤っぽいピンクだ。
良い感じに塗れた。
ルイスに「白粉は付けないのね?」と言われた。
大事な事なので正直に言っておこう。
【ルイス、今売っている『白粉は毒』なんだ。絶対に使っちゃ駄目だよ?】
「そうなの!?周り中の皆が付けているわよ?」
【でも毒なんだ。何回も言うけれど絶対に使っちゃ駄目だよ?そんな物よりルイスの体の方が大事だからね?】
「わ、分かったわ。」
そのままでもルイスは綺麗だしねと思っているとドアがノックされた。
【どうぞ。】と答えるとミカが部屋に入って来る。
「馬車を手配したわ、十七時十五分に迎えに来るからさっさと仕度し・・・。」
「ありがとうございます。ミカさん。」
と、ルイスが微笑んで言っているがミカが固まったままだ。
っふ、ルイスの美しさに見とれているのだろう。
そう思っていると、ツカツカとルイスの方に近づき左手を取る。
「この見事なルビーの指輪はどうしたの!?まさかとは思うけれど・・・。」
と、俺の顔を「ジー」っと見ている。
【ああ、俺が作ったんだよ。見事だろう?】
「コイツ細工スキルで、こんな物まで作れるの!?」
【作っちゃ悪いのか?】
「ふざけないでよ!鍛冶といい裁縫といいもう隠してないわよね?」
【無い、とだけ言っておこう!】
「まだあるのね・・・。」
ミカが天を仰ぐように上を見る。
「ハァッ。」とため息をつくと言って来る。
ただ、その顔は真剣だった。
「アンタがどういう存在かは深く聞かないけれど、軍や貴族にバレたら下手したらルイスさん達ともお別れよ!?」
【ふむ、バレない事を『アリステリア様』に祈ろう。】
「あの、そんなに凄いんですか?この人?」
お別れと言う部分を聞いて不安になったのだろうか?
ルイスがミカに聞く。
「規格外すぎるのよ。コイツ一人いれば全て出来てしまうなんて知れたら、絶対に軍や貴族に囲われて良い様に使われるわよ!?」
【それは困るな。】
「「それは困るな。」じゃないわよ!絶対にバレないようにしなさい!良いわね!」
ミカがすごい勢いで言ってくる。
性格上のお節介なのだろうが、凄く心配されているのが分かる。
【分かった、バレないように努力する。】
そう言っておいた。
「ああ、心配だわ。コイツ馬鹿だから早速バレそうな気がするわ。」
そう言ってミカを見る。
馬鹿とはなんだ馬鹿とは。
「ルイスさん、しっかり手綱を握っておくのよ?良いわね?」
「は、はい!」
と、話していると「コンコン」とノックされたので【どうぞ。】そう答えると女将さんがドアの前に来ていた。
「表に馬車が来たよ。あれ、ルイスちゃんか!こんな、美人になっちまって・・・。」
と、驚いていた。
女将さんに要約して皆の事を頼み銀貨を一枚渡しておく。
そして俺の方を見ると「馬子にも衣裳」だと笑われた。
ぐぬぬ、納得いかんな。
早い物でもう一時間近く経っていたらしい。
一階に降りようとすると、フロアーに皆がいた。
ルイスと階段を降りて行くと溜息と歓声が上がる。
「ルイス姉、綺麗・・・。」
と、言ってリズがうっとりしている。
「ルイス姉は・・・磨けば光る・・・今まで磨く人がいなかっただけ・・・。」
と、言ってベスが嬉しそうに微笑んでいた。
「お姫様みたいだ。」
と、マオが言っている。
「ルイスちゃん、綺麗になってお出かけなのです?」
と、アリスが聞いてきたので親指を立てて元気よく答える。
【今日はね、特別な日で「デート」なんだ。】
そう言うとアリスがピョンピョン飛び跳ねながら喜んでいる。
「でーとなのです!」
そう言って嬉しそうに皆とはしゃいでいる。
アリスさん、デートの意味は分かっているんだよね?
リズが俺の前に来て悔しそうに言って来た。
「今日はルイス姉に譲ってあげるけど、諦めないからね!お兄さん!」
そう言って頬にキスをして来る。
【皆、後は頼むよ。ミカもありがとうな!】
ミカの方を見ると階段の途中でニッコリと笑いながら手を振っていた。
そうすると今まで黙っていた周りのギャラリーが口々に言って来る。
「坊主、嬢ちゃん。今日は帰ってこなくても良いぞ!」
「ルイスちゃん綺麗だぞ!」
「気を付けて行ってくるんだよ!」
「決めて来いよ!兄ちゃん!」
「おれもルイスちゃんみたいな別嬪な嫁がほしいぜ。」
「ははっ!アンタみたいな甲斐性無しには、当分は無理さね!」
と、女将さんが言ったことで皆が「わっはっは!」と笑っている。
嬉しいなと思っていると時間が十七時十分になっていた。
「「では皆さん、行ってきます!」」
二人でそう言うと外に出る。
そして待っていた馬車に俺が先に乗り込む。
【レディ、お手を。】
「・・・はい。」
手を取ってルイスを馬車の中に乗り込ませる。
馬車の窓から外を見ると、一階にいた皆が外に出て手を振って見送ってくれていた。
さてと、例の貴族様がお相手だ。
もうルイスを悲しませないようにしないとね。
そう、心に誓うのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
次話 いざ!貴族屋敷(仮 でお会いしましょう。
これからも頑張りますのでよろしくお願いいたします。
早ければ日曜日に次話を上げられると思いますのでお楽しみに!
それでは、良い休日を!




