鍛錬と新しい武装
いつも読んで下さり、誠にありがとうございます!
執筆が終わりました。
お楽しみ頂ければ幸いです。
カンッ!
コンッ!
「ふむ、心眼はものにしたようじゃのう・・・。」
【師匠のおかげだよ、ありがとう。】
「ふんっ、礼はまだ早いわ!まずは己の力を制御して見せよ。」
【応ともよ!】
「予定より早いが基礎の鍛錬はこれで終いじゃな・・・。」
【師匠はまだ帝国にいるんだろう?】
「その予定じゃ。」
【なら手の空いている時に稽古をつけてほしいな。】
「うむ、弟子の頼みじゃ。むげにはしまいよ。」
【じゃあ、お返しと言う訳ではないが武器を送らせてもらおうかな。】
「その好意、ありがたく受け取ろう。」
セリスのサイズは図ってあるので師匠のサイズとミスリル・カタナの長さを決める。
ところでセリスさん・・・サイズ、変わってないよね?
【師匠、大きさを考えると小ぶりの方が良いと思うんですが?】
「じゃが長さが足らんと技に支障が出るでな。」
【ふむ、ミスリルなので鋼よりは軽くなります。それでも支障が出ますか?】
「そこは慣らす相手がおるで大丈夫じゃろう。」
【ふふ、お付き合いしますよ。】
「うむ、慣れ親しんだ長さにしてくれるかのぅ。」
【分かりました。では作りますね。フェイ、支度はよろしいですか?】
「構いません、坊ちゃんの技。盗ませて頂きますね。」
【良い気概です。貴女には・・・言葉はいりませんね。見て、盗んで下さい。】
「はい、坊ちゃん。」
「坊主、わしは生まれる所を見せてもらうぞ。」
【構いません、御覧になってあげて下さい。】
「くう、いつか私も・・・。」
【何をやっているんですか、サーラ。貴女も支度をして近くで見なさい。貴女は今が吸収する時なんですよ?】
「は、はい!」
「貴方、頑張ってね。」
【ああ、ルイス。元気をくれるかな?】
「もう、仕方がないわね。」
唇にキスをしてくれる。
「旦那様、期待している!」
【セリスも元気をくれるかな?】
「はい、旦那様!」
唇にキスをされる。
元気は出たぞ!
やる気120%というところかな。
よし、行こうか。
「私達は邪魔になってしまうので鍜治場に入れないから・・・頑張ってね!」
「頼むぞ、旦那様!」
【任せとけ!】
「御三方、行ってまいります。」
「三人とも、行ってきますね!」
そして三人で鍜治場へと入る。
【そう言えば、フェイ。インゴットは大丈夫だったのですか?】
「坊ちゃんに隠し事は致しません。三日では・・・取り戻せなかったんですわぁ。」
【ふむ・・・仕方がありません。相槌は次回ですね、今回は隣で見ていてください。】
「かしこまりました。」
【フェイ、サーラ。よく見ておくんですよ。】
「はい、坊ちゃん。」
「はい、ヘファ師匠!」
そしてまずはセリスの武器を作り上げる。
型を取りバリ取りといつもの工程をする。
カーン!カーン!
カーン!
最後に砥石掛けをしてリーフブレイドを作り上げる。
出来上がった物をフェイに渡し鞘を作ってもらう。
サーラは相変わらずメモを取っている。
そして問題は師匠のカタナだ。
ミスリルインゴットを鍛造して作って行く。
カーン!カーン!カーン!
カーン!カーン!
カーン!
【フェイ、刀は作った事はありますか?】
「坊ちゃんが今やろうとしている方法ではありませんね。」
【『鍛造』という方法です。刀が実現した『折れない』事と『曲がらない』事は、本来矛盾する性質を両立させた物です。】
「ふむ、砂型から作る物にはどちらもありませんね。」
【そうです。切断するための刃、つまり外側の部分には硬い金属を、内部の芯となる部分には軟らかめの金属を用いています。こうする事で刀は鋭さと粘りの両方を獲得し『折れず・曲がらず』という究極の課題を克服させるのです。】
「成程、そんな事が可能だったんですなぁ。」
「ふむふむ・・・鍛造、鍛造。」
【ええ、材質はミスリルでも可能です。そして焼き入れです。】
ジュワー!
ゴボゴボゴボ!
【刀は異なる硬度の金属を組み合わせて鍛造し、再加熱からの急速冷却を施す為、収縮により成型時よりさらに棟の方向に『反る』事になります。この優美な曲線は、焼き入れという入魂の技にも支えられているのです。】
「この緻密な作業を・・・。」
【そうです、貴女が極めたと言う鍛冶ですが。ここまで奥が深い物なのですよ。】
「・・・坊ちゃん。必ず隣に立って見せます。」
グッと手を握り、その手を胸に当て真摯な目で俺を見てくる。
うん、この目ができるのならフェイは問題ないだろう。
【その意気です。まだ完成後の工程に練成がありますからね?】
「成程なぁ・・・ウチは随分と驕っておったようやな。」
【さあ、磨き上げますよ!】
「「はい!」」
そして最終の工程「研ぎ」を済ませて行く。
師匠が使うのだ。
わずかなブレも感じるだろう。
そして柄、鍔を付ける。
最後に鞘を作り上げる。
記憶にある日本刀を収めている物『拵え』を再現してみた。
【・・・完成です。】
「おぉ・・・美しい!なんや、この波紋みたいな文様は!?・・・坊ちゃん鑑定をかけても?」
「ヘファ師匠、私も!」
【構いません。俺も結果が気になるのでかけてみます。】
「では、「鑑定」。」
「か、「鑑定」!」
【「鑑定」。】
「・・・坊ちゃん、武器ダメージが八十になってるんやけど?」
【そうですね、念の為セリスのリーフ・ブレードも鑑定してみます。】
「はい。こちらです。」
出来上がった鞘に納刀した状態で渡される。
おお、女性らしいしつらえの鞘だった。
これは俺には作れないな。
【ありがとう、フェイ。「鑑定」・・・。】
「どうですか、坊ちゃん?」
【こちらも八十ありますね。そして両方とも英雄級です。】
「と言う事は、つまり・・・坊ちゃんの作る物は・・・。」
【そのようですね。】
「・・・いつか・・・必ず追いついて見せます。」
【必ず追いついて下さい。貴女なら出来ますよ、フェイ。】
「くう、あの領域になるまで・・・私も!」
【ああ、そうです。サーラには、そろそろ鉄を使う事を許可しましょう。】
「本当ですか!ヘファ師匠!」
サーラが鉄で武具を作れるようになれば俺やフェイの助けにもなるだろう。
【では、フェイ。二人に武器を持って行って違和感があればすぐに直すと伝えて下さい。】
「かしこまりました、坊ちゃん。」
そう言うとフェイが二人の武器を持って行く。
細かい調整が必要なのは師匠のミスリル・カタナだろうな。
続いてセリスの鎧を作り上げて行く。
まずは鎧下から作る。
もちろん通気性を考えて作成してある。
そしてミスリルがベースの鎧でも各部位にエピックのクオリティーができた。
セリスの素早さを生かすために下地にドラゴンレザーをふんだんに使った女性用のミスリル・プレートアーマーを作ったのだ。
一応サイズの確認をする為に着けてもらおう。
サーラに呼んできてもらうように言う。
その頃には二人の武器の調整するべき項目も上がっていた。
流石フェイ。
師匠の刀の細かい所まで対応してまとめてくれている。
ふむ・・・これなら。
【フェイ、二人の武器の調節をお願いできますか?】
「け、剣聖様のカタナもウチがやってよろしいんですか、坊ちゃん?」
【貴女になら任せられると思ったのですが?】
少し挑発するように言ってみる。
「ふう・・・かないませんね、坊ちゃん。その期待には全力で応えて見せましょう。」
【ええ、頼みましたよ、フェイ。それが終わったら練成をしに行きますのでついて来て下さいね。】
「かしこまりました、坊ちゃん。」
武器を師匠とセリスに見てもらい、フェイが修正する。
さすがにこの修正は第一席だったフェイに任せられる。
いや、安心して任せる。
そして二人の、特に師匠の大丈夫じゃが出ると安心したのかフェイが言ってくる。
「坊ちゃん、期待には応えられたかね?」
【十分な働きですよ、フェイ。今後も期待致します。】
「あ、ああ、任せておくれよ、坊ちゃん!」
期待に応えられて嬉しかったのだろう。
フェイが珍しく喜びを露わにしている。
そして別室でセリスに出来上がった鎧に着替えてもらう。
【サーラ、手伝ってあげて下さい。】
「分かりました、ヘファ師匠!」
二人で別室に着替えに行く。
その間にフェイの疑問に答える。
専門的な事に応えていると結構時間がかかっていた。
そろそろ着け終わったかな?
そんな事を考えていると鎧を着たセリスがやって来た。
どうやら恥ずかしがっているようだ。
サーラに引っ張られてきた。
「だ、旦那様、鎧の意匠が少し大胆ではないだろうか?」
【いえ、それで良いのですよ。】
「しかし、この意匠の鎧では体の線が出てはしまわないだろうか?」
【動く時に、空気抵抗を出来るだけ少なくし、貴女の素早さを生かせる意匠なのです。】
「ふむ、考えられて作られていると言う事なのですね・・・それと旦那様には悪いのですが一つ我儘を言ってもいいだろうか?」
【ん?何かありましたか?】
「出来上がった鎧は色を白く・・・純白にして頂けないだろうか?」
【ああ、構いませんよ、閃光の白き薔薇。その名に恥じぬ逸品に仕上げましょう。】
「ありがたい、旦那様。これで百人力です。」
【それで、防具の寸法は大丈夫でしたか?】
「少し胸がきついぐらいですが、この程度なら問題になりません。」
【ふむ・・・この短期間に成長しましたか。一応採寸して修正しておきましょうか。】
「採寸は私が!」
【任せます、サーラ。】
「はい!」
「そ、それと、お、大きくなったのは旦那様のせいなのです!」
【それは俺好みになったと言う事ですね?】
皆の視線がセリスの胸に集まる。
「その通りですが・・・皆さん胸を見るのはやめて下さい!」
赤い顔をして答えてくれる。
ふふ、可愛いね。
「それならば、なおさら採寸をしないといけませんね。」
「ま、まあ、旦那様の好みなのだから良い!」
「セリスさん、別室に向かいますよ?」
「ああ、サーラ殿!頼む。」
「では行ってきますね!」
「坊ちゃん・・・頼みがあるのですが、よろしいですか?」
【何ですか、フェイ?】
「鎧の修正もウチにやらせてもらえないかね?いや、ダメだったらいいんだけどさ、せっかくだしやってみたいんだよ!」
【よろしい。フェイ、貴女に任せましょう。】
「あ、ありがとうよ、坊ちゃん!」
そしてサーラが採寸を済ませるとそのメモを見ながらフェイが鎧下から修正していく。
終わると再度着けてもらい確認をする。
【どうですか、セリス?】
「さすがは旦那様が作った鎧だ。いつもの鎧よりも動きやすく、しかも軽い。これならばどのような敵であれ、そうそうに後れは取らないであろう。」
【調整したところはいかがですか?】
「全く問題ない、体が軽くなったように動きます!」
【ふむ、さすがですね、フェイ。今後も期待させて頂きましょう。】
「感謝するよ、坊ちゃん!ありがとうよ、セリスの嬢ちゃん!」
「ぐぬぬ、次は私にも出番を・・・。」
【さあ、片づけて練成に向かいますよ。】
「かしこまりました、坊ちゃん。」
「分かりました、ヘファ師匠!」
こうして俺とフェイ、サーラはエギエネスシティに向かうのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
師匠とルイス、セリスに挨拶をするとゲートを開きエギエネスシティに向かう。
もちろんルニック改良と練成する為だ。
まずはルニック改良から。
【今回はフェイに体験して頂きます。サーラは見ていて下さいね。】
「うう、ちょっとだけでも・・・。」
【サーラ、フェイは初めてなんですよ?我儘を言っては駄目です。】
「はーい、次は私にも予定を入れてくださいね。絶対ですよ、ヘファ師匠!」
【分かっておりますよ、サーラ。】
「悪いね、サーラの嬢ちゃん・・・で、これが失われたと言う・・・。」
【ええ、復活させましたがね。どうですか、その失われたと言う技術が学べる。ワクワクしませんか?】
「坊ちゃん、悪い顔してますなぁ。何かあるんですか?」
【ちょっと『役得』があるぐらいです。まずはルニック改良していきましょう。】
魂の金床はフェイは初めてだったらしい。
なんでも無くなったスキルだと言う事で興味がなかったようだ。
今回はフェイに体験してもらって金床の使い方を感じてもらえればいいと思っている。
そして魂の金床の前にフェイを抱えるように座る。
【では・・・行きますよ?】
「坊ちゃん、硬い物がお尻に当たるのは気のせいかねえ?」
【言ったでしょう「役得」があると・・・では、ルニック改良・・・。】
ミスリル・ルニックハンマーを取り出し改良を行う。
カァーン!
「この感じ・・・これが改良!?」
【何か掴めましたか?】
「アハハ!坊ちゃん、もっとだよ!もっと感じさせておくれ!」
【ええ、構いませんよ。】
しばらくそうやってルニック改良を繰り返し感じさせていた。
何かを掴んだフェイはとても楽しそうだった。
と、言うより彼女の女性自身に火がついているようだった。
これは素直に期待していいのだろうか?
続けて練成をしてみる。
「練成・・・。」
ボワァーン・・・
「これが練成ですなあっ!?ああ、好奇心が抑えられない!坊ちゃん!もっとやって下さいな!」
【フェイ、感じて下さいね。これが貴女の足りなかった練成です。】
「ふうんっ!?ああっ!?感じる!これが練成!」
フェイは悦に入っているように淫らだった。
彼女には今度スキル上げをさせてみよう。
そうだ、フェイもサーラも今度の講義に参加させないとね。
でも、サーラはまずは鍛冶からかな。
練成を完了させると一息つく。
「坊ちゃん、何を練成したのか「鑑定」してもいいかい?」
【もちろんですよ。サーラも鑑定してみて下さいね。】
「はい、ヘファ師匠!」
「「鑑定。」」
「これは・・・凄いね。プロパティーが六個もついているよ!?」
「ヘファ師匠、剣聖様をどれだけ強くしたいんですか!?」
そうなのだ。
戦った時の師匠の武器はただの鋼のハイクオリティーだったのだ。
もちろん練成などしていない。
そして師匠と戦った時の俺のミスリル・カタナ。
あれはフルで練成した一品だったのだ。
今思うとあの状態でやっとこさ勝てたのだ。
改めて師匠の地力の凄さを感じる。
さすがに剣聖と呼ばれるだけはある。
一段落すると、ゲートを開き帝国へと戻る。
帰る頃には日が陰ってきていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ほう、これが坊主の打ったミスリルのカタナか・・・持つと手と一体になったような・・・素晴らしい一振りじゃな。」
「旦那様、素晴らしいです。この鎧を着ていると旦那様を身近に感じます。このリーフ・ブレイドも心強い・・・感謝を・・・。」
二人とも満足しているようだった。
特に師匠。
この人にあんな武器を持たせたら俺は勝てるのだろうか?
離されないようにする為にも鍛錬をしなければね!
久しぶりに満足のいく鍛冶が出来た。
フェイは鍛冶や練成には得る物があったのだろう。
艶のある視線で俺を見ている。
・・・今夜は眠りたいんだけれどな。
サーラも経験という意味では得る物があったのだろう。
「坊主、早速じゃが明日は剣を合わせるぞ!」
【望む所ですよ!】
「剣聖様、旦那様。私も手合わせを願いたく!」
「ええぞ、嬢ちゃんにも稽古をつけてやろう。」
「ありがたく!」
「ヘファ師匠、私は明日から工房に行きます!せっかく鉄を触って良いとの許可を頂いたので!」
「私は見ているわね、貴方。」
【ああ、ルイス。帝国にいる間に力を制御して見せる!】
そんな事を話しながら支度を整え、皆で晩御飯を食べようとしていた時だった。
一人の兵士がセリスに近づいてきた。
一応警戒しておいた。
師匠も警戒してくれているようだ。
その兵士はセリスの前で跪くと話し始めた。
「セリス様、皇帝陛下より至急の伝言!」
「陛下から?何か!」
「蛇人族の使者が来訪。謁見にヘファイストス殿と参加せよ、との事です。」
「旦那様、構わないか?」
【ああ、構わないよ。】
「支度を整え次第すぐに向かうと陛下には返事を!」
「ははっ!」
セリスがそう返事をすると伝令の兵は下がっていった。
【ルイス、師匠達と晩御飯を食べていてくれるかな、蛇人族と言うと・・・長くなりそうだからね。】
「旦那様、まさかこの時期に戦の心配ですか?蜘蛛人族には痛撃を与えたばかりですよ?」
【マザーを倒したのかい?倒していなければ心配をしたほうがいい。あいつらの繁殖頻度は計算が追い付かないよ?】
「・・・かしこまりました。それでは皆様、旦那様をお借りする。皆様は、先に晩御飯を食べていて下さい。」
「分かったわ。行ってらっしゃい、二人とも。剣聖様、今日は食堂に行きましょう。」
「そうですね。行ってらっしゃい!」
「行ってらっしゃいまし。」
すると赤い顔をしたフェイが囁いてきた。
『坊ちゃん、お早いお帰りを・・・今夜は御褒美を頂きたく。』
『今日は刺激が強かったですか?分かりました、期待には応えましょう。』
『坊ちゃん・・・。』
「よろしいですか?では、行きましょう、旦那様!」
【行ってくるよ、皆!】
こうして使者の待つ謁見の間にセリスと急ぐのだった。
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それでは 次話 蛇人族の使者(仮 で、お会い致しましょう!
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