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バイジンからのお客様

いつも読んで下さいまして、誠にありがとうございます!

執筆が終わりました。

お楽しみ頂ければ幸いです。


皆で帝国に戻る。


晩御飯時だったのでそのまま厨房へと向かう。

向かったのは良いが何故か騒がしい。


「どうしたのかしら・・・?」


「何かあったんでしょうかね?」


「ふむ、焦げ臭いですなぁ?」


【そう言えば・・・。】


「あ、旦那様!」


【最近はどこにでもいますね、セリス。】


「っぐ、何か引っかかりますが・・・そうです!旦那様がいらっしゃるではありませんか!」


【何かあったの?】


「火加減を失敗したらしく料理を駄目にしてしまったらしいのです。」


【国の厨房で珍しいね。何かあったの?】


「『商業国家群バイジン』から『ジン最長老』がいらっしゃっておりまして。」


「坊ちゃん、バイジンっていう国は揃わない物はない、何でも売っているっていう嫌な国さ。ウチもそこの奴隷商人に売られて女郎になったんだ。」


フェイも思う所があるのだろう。

人身売買。

奴隷もあるってか。

おっかないね、ファンタジー。


【それで、その国の偉い人に料理を作ってたの?】


「そうです、ですが・・・このままでは帝国の威信が・・・。」


【料理一つで威信ですか?】


「旦那様、外交の場なのです。料理にも思いが込められるのですよ?」


【ふむ、それでお出しする物の品書きは?】


「こちらになっております。」


一品目、コンソメスープ。

二品目、前菜としてホタテ貝のサラダ。

三品目、白身魚の焼き魚。

四品目・・・。


【・・・料理長達は、これをお出ししようと思っていたんですか?】


教えていただけにちょっとガッカリ。


「左様です、ヘファイストス殿。」


【うーん、帝国の特産である小麦料理の方がよろしいと思いますよ?これではどこの国でも食べられる料理になってしまいます。】


今日の当番の料理長だろうか?

その人に言う。


「成程・・・。では、ヘファイストス殿ならばどのような料理を?」


【それはもちろん・・・え!?】


皆さん、何だろうか。

その期待に満ちた目は!?

セリスさんや、そんな目で見ないでくれないかな?

ルイス達まで・・・。


はぁ、仕方がない。


【セリス、この貸しは大きいですよ、皇帝陛下にもそう伝えて下さいね?】


「さすが旦那様!作って下さるか!」


「「「おおっ!」」」


おいおい、料理人達が安堵の表情でこちらを見ているぞ?

帝国の威信とやらは何処へ行った?


【ちょうど良いからルイス達もここの席で待ってて、作ってくるよ。】


「ふふっ、分かったわ。」


「分かりましたー!」


「坊ちゃん、手伝いは良いのかい?」


【そうだね、フェイは手伝ってもらえるかな?まずは食材を見ます。】


「かしこまりました、坊ちゃん。」


「ルイスさん、フェイさんの点数がどんどん上がって行くような気がするのですが?」


「そ、そうね・・・貴方、私も手伝いに」


「ルイスさん、良い子にしていて下さいね!?」


サーラに止められる。

そのルイスは俺の方を見てくるが・・・。


【良い子で待っている事・・・いいね、ルイス?】


ちょっときつめに言っておく。


「は、はい。」


「帰ったらハムトーストを完成品にしましょうね。」


「うう、ハムトーストだけなのが恨めしいわ・・・。」


「それもまだ極めてませんもんね・・・。」


「サ、サーラさんはどうなんですか!」


「さすがにハムトーストぐらいは作れますよ?」


「ううっ・・・。」


「お互いに頑張りましょう、ルイスさん。」


「ええ、サーラさん。」


二人がガシッと手を取り合う。

どうやら二人の間に更に友情が芽生えたようだ。


【さあ、何がありますかね?】


フェイとともに氷冷庫を見て回る。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ふむ、遅いな。」


「皇帝陛下、気長に待とうではないか?」


「それで、バイジンとしてはどうなのじゃ?推薦してくれるものと思っておるが?」


「そうじゃのう、推薦をするのは合議で決めて来ておる。ただのぉ、六人会議の後の話よ。」


「その件ならば、公国からも書状がきておるぞ?双子の連名でな。」


「さすがに早い。これは先を越されたかのぅ?」


「ふふ、左様じゃのう。こたびは公国の勝ちのようじゃ。」


「情報で負けるとは、商業国家群などとは言っておるがまだまだじゃのう。」


「ジン最長老、ソフォスの動きはどうなっておるか分からんか?」


「帝国に書状は届いたのじゃろう?わしん所には何も来ておらんから分からんぞ?」


「六人会議の開催は帝国で行うと書状は各国に出してある。心配なのは王国だけじゃ。」


「惨劇の地か・・・今の新国王はレガイア殿じゃったな。」


「左様、父のドリュカス殿もおるので期待はしておる。」


「ほっほっほ、聞いておるぞ。プルスィオス商会が動いておるとな。」


「うむ、任せておる。後の二国、キゴニスは問題なかろう。あるとすればヘルシャーじゃな。」


「そうじゃな、ヘルシャーの軍帝は齢十四歳の小娘と聞く。問題があるとすれば宰相の『剛腕』の方じゃろう?」


「あの堅物か・・・だが、問題はない。何年ぶりかのう、各国の代表が一堂に会するのは。」


「代替わりが起きておるからのう・・・お?来たようじゃのう。」


「待たせて済まぬな、ジン最長老。ん?・・・この匂いは!?」


「ふむ、美味そうじゃのぅ。して、これは何と言う料理かの?」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【そうです、尻尾から水分を出しきれば油がはねません。その調子でお願いします。俺は衣を作ります。】


「分かったよ、坊ちゃん。」


厨房ではフェイと二人で料理を作っている。

見物人が多い。

いちいちザワザワするのはやめてくれ。

集中したいんだ。


そして小麦粉と米粉から衣のタネを作る。

無事な竈の二か所に火をくべ、油を入れた鍋を過熱させる。

チリチリと音が鳴る。

良い温度になってきたようだ。


温度を上げている間に天つゆを作る。


フェイが野菜や海鮮を切り終わると、俺はそれを衣に潜らせ揚げて行く。

野菜には大葉、サツマイモ、ナス、カボチャ、ゴボウ、ししとうを選択。

氷冷庫の中にキノコ類があったのでそれも揚げる。

季節感が違うが大丈夫だろう。

魚介は新鮮な海老と蟹の足、さらにキスを捌いて揚げた。


皇帝陛下がいるので二種類の衣を間違えないように注意だ。

そして揚げたての物をお出しする。


もちろん熱々の『天ぷら』だ。


さあ、御二人の評価やいかに?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


給仕から食べ方を聞くと、早速、野菜をつまみつゆに潜らせる。


こんな物が美味いのか?

だが、かの者の料理じゃ、食べてみようではないか。

・・・んおっ!?


「たかが野菜が・・・なんという美味さだ・・・。」


「美味い!これは美味い!皇帝陛下、いつから帝国は美食に目覚めたのだ!?」


「ふふふ、だが残念ながらこの料理はかの者が作っておるのよ。」


「なんと!鍛冶師だけでなく、一流の料理人でもあるのか?」


「うむ、そして心遣いも忘れぬのよ!」


病が出ない。

そして美味い!

ただの野菜がこのつゆを潜らせるだけでこんなにも美味くなる!

そうだ、この料理があれば諍いなど起こらぬ。

そう思わせるだけの力がこの料理にはある。


「まだまだ出てくるようじゃぞ?」


「海老のてんぷらでございます。」


「てんぷら!美味し!どういう事じゃ!?ただの海老を!一体何をしたのじゃ!?」


「プリプリとしたこの食感がたまらぬ。我にもっと海老を持って来るのだ!」


「サクっとしたこの食感もたまらぬ!わしもいただこうかの!」


「どんどん食べるが良い。かの者の好意であるぞ!」


「うむ、遠慮せんぞ!この美味をもっと味わいたい!」


「海老のお代わりをお持ち致しました。」


「うむ、良いぞ!食が進む!」


「かの者が来てから我も食が進むのだ。料理人達も教えを乞うておる。」


「この料理だけでも・・・いや、美味し!何という貴重な時間じゃろうか!?」


二人で夢中になって食べる。

白身魚だけになってしまった。

だが、腹はまだこの料理を求めておる。


「こちら、本日の主菜でございます。」


女給達が二人の前に料理を置く。


「なんじゃ、これは!?」


「主菜だと!?これはどのような物なのだ?」


【陛下、最長老様。それは『天丼』と呼ばれる料理です。】


「おお、ヘファイストス殿!」


「ほう、お主がのぉ・・・。」


【お初にお目にかかります、ジン最長老殿。挨拶は後に致しましょう、まずは料理を召し上がって下さい!】


かの者は自信満々にそう言う。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「このてんぷらと言う物、美味しいです!」


「ええ、美味しいわね。こちらの『かき揚げ丼』と言う物も美味しいわよ?」


「海老など食べ飽きたと思っておりましたが・・・これは美味しいですね。」


「さすが、坊ちゃんですなぁ。端材からでもこんなに美味い物が作れるとは・・・。」


「そうね、皆さんも満足しているようだし・・・。」


周りを見ると料理人や給仕の皆さんまでもが満足して食べているようだった。

さすがよね・・・。

かなり離されてるけれど、確実に一歩一歩踏み出そう。

隣を歩けるように。


・・・心配になって来たわ。

私は本当に隣に居て良いのだろうか?


「ルイスさん?」


「な、何かしら、セリスさん?」


「羨ましいです。私も早く婚約をして父上を安心させてあげたいです!」


「あー!婚約こそ私が先ですからね!」


「その順番は覆る為にあるのかもなぁ?」


「「っく、強敵が!」」


「ふふっ。」


「何がおかしいんですか!ルイスさん!」


「そ、そうだ!何がおかしいのだ!」


「いえ、私達。あの人について行けるのかしらって思ってしまって・・・。」


「噛り付いてでもついて行きますよ!」


「あの方の隣を歩けるのならば、この程度の事!」


二人とも食べかすを頬っぺたから取って頂戴ね。


「坊ちゃんは遠くに行ってしまうが振り返って下さるお人ですよ?ルイスさん。」


「そうよね!皆で追いつきましょうね!」


そう、きっと追いついて隣にいて見せる。

かき揚げ丼を頬張る。

お、美味しいわね。

いつか必ず追いついて見せる。


待っていてね、貴方。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


食事を食べ終えたようなので挨拶をする。


【改めまして、ジン最長老殿。鍛冶師のヘファイストスと申します。】


「・・・正直、帝国の特産品の料理などと馬鹿にしておったのじゃが、感服したぞ。」


「ほう、それは良い事を聞いた。なあ、ヘファイストス殿。」


【ええ、小麦の料理は他にもありますので、プルスィオス商会の食堂も是非、御視察下さい。】


「ほう、滞在中に行ってみようかのぅ。楽しみじゃ!」


「ジン最長老、今のうちに要件を言っておくと良いぞ。」


「うむ、ヘファイストス殿。商業国家群バイジンは貴殿のエクスィ・スィデラス、第一席としての実力を認める物である。」


「と、言う事だぞ。ヘファイストス殿?」


【うーん、ありがとうございます。と、礼は言っておきます。】


「何じゃ?乗り気ではないのか?」


「ヘファイストス殿、まだそのような事を言っておるのか?」


【いえ、それはもう諦めました。そこでエクスィ・スィデラスに、推薦したい者がおりまして御二人に相談をしたい。】


「ほう、どのような御人じゃ?」


「そうだ、どのような人物なのだ?」


【その人物は、元エクスィ・スィデラスの第一席、紅玉でありましたフェイと言う女性でございます。】


「ほう、自分から辞めたと言っておったが?」


「復帰を望んでおるのか?」


【俺が望めば必ずや復帰してくれると思っております。】


「・・・分かった。新たに書状をしたためよう。」


「となると、第一席と第二席は埋まるのぅ。後は第三席か・・・。」


【そこで相談があります。せっかく人数が揃いますのでこの際、席順を改めてはいかがかと。】


「ほう、実力を見せろと言う事かの?」


【左様です、最近の話になりますが第二席として実力が及ばない人物がその席についていた・・・と言った話もございます。】


「うむ、残念な事じゃな。権威に頼って腕を磨くのを忘れておったようだしのう。」


「その者も六人会議の参加を希望しておる。その席で正式に脱退すると本人が言ってきおった。」


【そうです。なので決めませんか?新たなる席を!】


「うむ、バイジンは構わん。」


「クヴァールも構わん。」


【ありがとうございます。これで肩の荷が下りました。】


「まだ下ろすには早いじゃろう?」


「そうだぞ、ヘファイストス殿。」


【伝手のある王国と公国は大丈夫だと思っております。】


「ふむ、キゴニスも問題なかろうよ、問題なのは・・・。」


「ソフォスとヘルシャーであろうな。」


「ヘファイストス殿よ、悪い事は言わん。ソフォスには気を付けた方が良いぞ?」


【それはどうしてですか?】


「あそこの三人いる枢機卿のうちの一人が曲者でな。」


「そうだ、聖人を作り出し自分の手で神都に『アリステリア様』を降臨あそばせると豪語しておるのよ。」


【それは何と言えばいいのか・・・大望でございますね。】


「ああ、ヘファイストス殿。そなた、気を付けるが良いぞ?」


「そうじゃ、聖人なんかにされたらソフォスから出て来れんぞ?」


【御二人の助言、有難く。心に留めておきます。】


これ以上何かに巻き込まれたくない。

本当に気を付けよう。


「ヘルシャーは執政官の剛腕のシュタイアが出張って来るじゃろうしな。」


【長が出て来るのではないのですか?】


「長である軍帝は齢十四の小娘じゃぞ?代わりに執政官が出て来るのであろうよ。」


「そうだ、じゃが小娘と侮るなかれ。その武はセリスをもしのぐ。」


【ほう、興味が出てきました。】


「っふ、武人としての血が騒ぐか、ヘファイストス殿?」


【セリスよりも強いと言う個人の武に興味がありますね。】


「そうか、でだ。ヘファイストス殿。」


【何でしょうか、皇帝陛下?】


「・・・セリスとの仲はどうなっておるのだ?もう契は交わしたのであろうな?」


何言ってんのこの父ちゃんは?


【それはセリスから聞いて下さい!】


「そうはいかん、孫の事もあるしな。それで、どうなんだ?」


「ち、父上!?何と言う事を聞いておりますか!?」


「「「ちょ、セリスさん!?」」」


あら、皆、聞いてたのね?


「そなたの事が心配でな・・・。」


「父上に心配されなくともたくさん可愛がって頂いております!」


セリスさん、その返事は・・・。


「ほう、では毎日なのだな?それは孫の顔が楽しみじゃ!セリスよ、励むが良い!」


「ま、毎日ではありませんが、その、ゴニョゴニョ・・・。」


「ファッハッハ、皇帝陛下よ。面白い物が見れたわい!」


「むう・・・義母に夜の営みの事を聞いても良いのだぞ?」


話が変な方向になって来た。

これは逃げるに限る!


【そ、それでは、そろそろ下がらせて頂きますね。】


「ああ、下がられるが良い。ヘファイストス殿。それに御転婆姫殿!ファハハハ!」


「まだ、話は途中ぞ!?」


【失礼致します、御二人とも。】


「失礼致します!父上!」


「「「し、失礼致します。」」」


くう、顔から火が噴きそうだ。

親馬鹿すぎないかね、皇帝陛下!

セリスにフェイの部屋を頼むと改めて厨房に向かう。


ミルクレープを作り、リターンを唱えるといつもの遺跡に向かうのだった。

ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!

まずは、いつものから!

評価、イイネ、ブックマーク等々。

大変に励みになります!

皆様に感謝を!

さて、活動報告でも書いたように夏休みを頂きます。

楽しみにして下さっている方々には申し訳ありませんが、しばし休息を頂きます。

それでは 次話 生まれた疑念(仮 で、お会い致しましょう!

お休みなさいませ!

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