三人での買い物
お待たせいたしました。
執筆終わりました。
中身おっさんなヘファイストスの日常をお楽しみください。
イイネ、ブックマーク等大変励みになります。
これからもよろしくお願いします。
明日から出社です。
仕事もですが執筆も頑張りますのでよろしくお願いします。
宿に着いた。
いや着いてしまった。
遠回りをしてまこうとしていたのだが駄目だったのだ。
ミカのしつこさには脱帽だ。
これも『試練』だと思い、諦めて宿屋へ来た。
「へー、北通りは宿屋が多いのね。」
【ミカは何処の宿屋なんだよ?】
「アンタに教える訳無いでしょう!」
してやったりとの顔でケラケラ笑っている。
殴りたい、この笑顔。
中に入るとミカが「こっちの方が雰囲気の良い宿ね。」とか言っている。
アリス達は、予定通り買い物に行ったようだ。
【それで、今日はポーションを作るんだよ。】
「ちょっと、アンタ錬金術も出来るの!?」
【ああ、まだ未熟だけどね。】
部屋の前に行く。
【ここが俺達の部屋だ。】
「達?」
【一緒に生活してるんだよ。二人部屋だからね。仲間は俺を入れて六人、女の子が五人だ。そして俺の商売のパートナー達は一人を除いて絶賛買い物中だ。】
「ア、アンタ恋人と一緒の部屋・・・なの!?」
と、言って顔を赤くしている。
【あのね、女性と言っても子供だぞ?】
「ふ、ふーんそうなんだ。」
何を勘違いしているんだね、ミカ君?
扉を開けて中に入る。
部屋を見ていたミカが言って来る。
「錬金は別の所でやるの?」
【なんでそんな面倒な事をしないといけないんだよ?】
「アンタ素人じゃないでしょう?錬金窯が無いと錬金術は使えないじゃないの?」
【まぁ、見てろよ。】
と、擂鉢と空のポーション瓶を六十本、秘薬を三種類六十個ずつ取り出す。
「そう言えばバックパック持ちだったのよね。容量はどのぐらいなの?」
【ああ、容量は小さいけどな。ん?ミカも持っているの?】
「当り前じゃない。アタシは黒玉なのよ?」
容量が小さいなんて言ってごめんなさい!
心の中で『アリステリア様』に謝っておく。
「材料は揃っているみたいだけれど、それでどうする気?」
【もちろん、こうする気!】
そう言って瓶を持ってスキルを発動する。
「え!?ちょ!?」
とか、ミカが驚いていたが俺の手の中に液体の入った瓶が現れると驚きは更にヒートアップした。
「ちょ!?何で錬金窯も無しに錬金術が使えるのよ!?」
【使えるんだな、これが。】
「使えるんだなーじゃないわよ!一流の錬金術師でも錬金窯が無いと使えないのよ!?」
【使えるんだからしょうがないだろう?】
「あのねえ、ああ!もう!アンタ師匠の名前は何て言うのよ?」
【師匠なんかいないよ?】
しいて言うなら・・・このスキルを与えてくれた『アリステリア様』かね?
「・・・え?まさか独学なの!?」
【そうだ!】
エッヘンと胸を張る。
『アリステリア様』がくれた、スキル様のおかげだがな。
「独学で、こんな・・・。」
どうやらとても驚いている様だ。
「もしかして鍛冶も独学なの?」
【そうだが、何か悪いのか?】
「・・・。」
ミカが面白い顔をしているぞ?
【驚いている所悪いがこの時間中にポーションを作らないといけないんでな。あんまりかまってやれないぞ?】
「・・・分かったわよ、作り終わるまで大人しく見てるわ。」
ミカがアリスのベッドに座る。
「さっさと作っちゃいなさいよね。」
【分かったってば!】
さてやるか。
集中して作ろう。
・・・二十分ぐらいだろうか?
高品質の回復ポーションを下級三十本、中級二十本、上級十本作り上げる。
【ふう、とりあえず今日の分は完成だ。】
「え?もう出来たの!?」
【そんなに言うなら・・・これ、鑑定してみな?】
そう言って高品質の上級ポーションを渡す。
「仕方が無いわね。・・・鑑定。」
しばらく見ているとミカの顔色が変わる。
「ちょ、これ高品質の上級品じゃないの!」
【お、分かりますか?】
「お、分かりますか?じゃないわよ!?」
【俺は上級ポーションまでなら高品質が作れるんだよ。】
もちろん嘘だ。
最高級まで作れるからな!
「それだけの材料で?しかも錬金釜無しで!?」
【そうだ。】
「アンタ、軍とか貴族様から目を付けられても知らないわよ?」
【軍属になるつもりはないね。それに・・・。】
片方は手遅れだ。
【実は今日、レガイア様の屋敷に招待されているんだよ。】
「・・・レガイアってオーカム伯の所の?」
顔を上にしてに左手を両目に当てて「だめだこりゃ」とか言っているぞ?
【先日の坑道で会ったパーティーにいただろう、冒険者A君。】
「そうそう、ちゃんと屋敷の敷地に入って行くのを確認したわよ。」
【他の子達は?】
「さあ、そこで解散になったから分からないわよ?」
【そっか・・・まあ良い、で、話を戻すぞ?A君のパパがレガイア様なのは知ってるよな?】
「ええ、直接聞いたから知っているわよ?」
【この請求書、A君の認めのサインが書いてある。内容を読んでみな?A君は確認しなかったけれどな!】
ミカが読み始めると顔が青くなって来たぞ。
面白いなミカ。
「ちょ、これアタシは知らないわよ?」
【そうだサインしておいてくれよ。】
そう言ってペンとインクを渡す。
「・・・アタシも含む所があるから、まあ良いけどね。」
と、言って証書にサインしてくれる。
【洞窟に入る前に言っただろう?現実を知ってもらおうってさ。】
お手上げのポーズをしながら言って来る。
「とんだ現実を知っちゃうのね。」
【良い勉強になるだろうね。】
「そう言うって事は、本当は請求しない訳ね?」
【そりゃそうだ。そんな事をしたらこの領地が傾く。大変な事になっちゃうだろう?】
「この悪人め。」
【いや社会勉強だよ?元々取る気は無いしさ。それに公共とは言え、鉱山は領主がちゃんと管理しなければいけないんだ。ちゃんと管理をして無かったから今回の騒動だしね。】
ポーションをバックパックにしまいながら言う。
【これでA君は勉強が出来るし、将来の領主様も育つと。御の字じゃないか。】
「不敬罪で殺されても知らないわよ?」
【そこまで馬鹿じゃないだろう?】
「なんで分かるのよ?」
【俺のパートナーが実際に会っているんだよ。っていうかミカだって会ったでしょう?】
「へー、アンタのパートナーの彼への印象が聞きたいわ、どんな人って言ってたの?」
【正義感が強い実直な感じかな。それと十五歳になったばかりの子供に大人の冒険者ごっこをさせるぐらい親馬鹿って事ぐらいかな?】
「はあ、言い直すわ、この極悪人。」
前にも言ったが成人しているとはいえあんな事をしているんだ。
ルイスの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい。
「ふーん、でも同じ感想ね。そう言えば何か急ぎの用があるって言ってなかった?」
【ああ、そうだ、そろそろ起こさないとね。】
「寝てるって・・・アンタ、彼女なのに夜の仕事でもさせているの!?」
【違う違う、昨日っていうか今朝か?俺がやらかしちゃって寝かせているだけだよ。・・・それに、まだ、彼女ではない・・・残念な事に。】
ミカは「ニヒヒ」と笑いながら言って来る。
「そこの所も詳しく教えなさいよ?」
【記憶にございません。】
「何よそれ?」
【こう言っておけば何とかなるもんなんだよ。】
「へー、アタシも使ってみようかしら?」
【・・・金取るぞ?】
「じゃあ、やらないわ。」
【っち。】
「舌打ちしてる所悪いけれど、お姫様を起こさなくて良いの?」
あっとそうだった。
ミカといると調子が狂うな。
【ちょっと行って来る。】
そう言って部屋を出ようとすると声が掛かる。
「アンタの良い人なんでしょう?紹介しなさいよね!」
【違うよ、さっきも言ったが仕事のパートナーだ。今は・・・まだね。】
そう言って部屋を出る。
ルイスの部屋に行きドアをノックする。
【ルイスお嬢様、そろそろ起床の時刻ですよ?】
と、冗談めかして言ってみる。
返事が無いな。
仕方が無いのでもう一度ノックする。
返事がない。
【起こしに行きますよー?】
・・・返事がない。
よし行こうと部屋に入る。
今朝と同じで左側のベッドでルイスが寝ている。
寝相は良いんだな。
【ルイス、そろそろお昼だよ。起きてね。】
と、体を揺する。
「ん~、ベス、もう朝なの?」
【左様ですよ、お嬢様。】
「!?」
どうやら目が覚めた様だ。
顔を赤くして俺の方を見ている。
気が付きましたかね?
「あ、あ、あ、アンタはー!」
そう叫びながら、平手打ちが飛んでくるのでここは避けずに当たって見せる。
パシーン!
「!”#$%&!!!」
言葉にならない声が聞こえて来るので撤退。
素早く部屋の外に出る。
ドアに何かがぶつかる音がするがドアバリアーの前には通用しないぜ!
まぁ、落ち着いたら部屋から出て来るだろうと思い自分の部屋に戻る。
自分の部屋の中に入るとミカが俺の顔を見て大爆笑したのだった。
しばらくミカと喋っているとドアが「コンコン」とノックされた。
【はーい。】
「わ・・・私よ。」
【入ってー。】
と、言うと着替えたルイスが入って来る。
「さ・・・さっきはごめんなさい。」
そう言って頭を下げてきた。
【気にしてないよ。】
ルイスがそう言うと、お客さんがいる事に気づいたようだ。
「は、初めまして、こんにちは。ルイスと言います。」
「こちらこそ、初めまして。ミカって呼んで。いやー良い物を見せてもらったわ!」
と、言って大爆笑している。
ルイスの顔は熟れたトマトのように真っ赤だ。
「この人のパートナーをやっています。」
ルイスさん、商売のが抜けてますよ?
「よろしくね。えーっとルイスさん。」
握手をしている。
【一応言っておくねルイス。「黒玉の鍛冶師様」らしいよ。】
「一応とは何よ!」
と、ミカが声を荒げるが無視だ。
「私でも知っているわ。有名な鍛冶師様じゃないですか!」
【うむ、有名らしい。】
「アンタが言うな!」
パシーン!
と、ミカに後頭部を引っ叩かれる。
だが構っている暇はない。
【ルイスのドレス生地を買いに行く予定があるんだよ!言ったろう忙しいって?】
「「え!?今から作るの!?」」
そうだけど何か?】
「「間に合うわけないじゃない!」」
見事にシンクロしてるな。
「アンタ裁縫のスキルも持っているの?」
【持っているが?】
「どんだけ手広いのよ?」
【裁縫は趣味だぜ?】
「・・・。」
ミカがどっかの神様に祈り始めた。
【そう言う訳で、ルイスさん?】
「は、はい?」
突然話を振られて驚いたのだろう。
【これから生地を買いに行きます。】
「本当に作るのね。」
と、言うミカの事はシカトだ。
「間に合うの?」
ルイスは心配そうだ。
【間に合わせます。なのでこの左ほっぺの償いとして恥ずかしい思いをして頂きます。】
叩かれた左頬を指さしながら言うとまだ掌の跡が付いていた。
「アンタねー!ただ、エ、エッチな事をしたいだけなんじゃないの!?」
そういうとミカ赤くなりながら拳骨を作って迫ってくる。
「分かったわ、信じてるもの・・・。」
ルイスが俯いて真っ赤になっている。
そんなルイスを見て、ミカは怒りを収めたようだ。
「はいはい、ルイスさんが良いならいいわ。ただしアタシも立ち会うからね?」
【別に無理に立ち会わなくても良いぞ?】
「ルイスさんが心配なだけよ!ついでにアンタの裁縫技術にも興味があるわ!」
この辺りはミカらしいな。
【じゃあ早速買いに行きますよ?マイ・レディ。】
そう言って跪き、右手を差し出す。
ルイスが真っ赤になって左手を差し出して来る。
その甲にキスをする。
「あ、あ、あ、案内を、お願いしますね・・・。」
顔を真っ赤にしている。
なんか凄く嬉しそうだぞ?
そして左手を握ると元気良く言う。
【任せなさい!】
と、笑顔を見せた。
ミカも付き合うという事なので三人で買い物に向かう。
まずはお金を下ろす為に銀行に向かう。
『レヴィアさん』という人にお世話になったとルイスが探しているが見当たらないらしい、今日は休みだろうか?
職員がネームプレートを付けている訳では無いので俺には誰か分からないのでどうしようも無い。
ルイスがいないわねと言って残念そうにしていたが、とりあえず金貨五枚を下ろしてくるように言う。
「そ、そんなに使うの!?」
【はい、お嬢様。そのぐらい使わないと釣り合うドレスが作れません。】
「その言い方、恥ずかしいからいい加減に止めてくれないかしら?」
【分かったよルイス、サクっと下ろしてきちゃってよ。】
「分かったわ。」
そう言うと引き出し専用の受付に行く。
ミカが言うには今日は空いている方だという。
いつもは商人等の出入りがもっと激しいらしい。
「アンタ、あの子を幸せにするのよ?」
【幸せ以外にする事は無い。今のところは・・・だ。】
と、言って見せた。
その返事を聞き安心したのだろう。
「それならよろしい!」
と、言って「ニカッ」と笑っていた。
何かが吹っ切れた笑顔だったのは気のせいだろうか?
銀行には初めて来たので、セキュリティーは大丈夫なのだろうかとか思って周りを見ているとルイスが戻って来た。
「言われた通り金貨五枚下ろしてきたわ。」
と、革袋を見せて来るので受け取りバックパックへしまう。
そして銀行から外に出る。
【裁縫屋が多いのも南通りだっけ?】
と、聞くとルイスが答えてくれる。
「そうね。」
赤くなって俯いている。
何故かって?
俺と手を繋いでいるからだよ!
くふふ。
ミカは後ろからニヤニヤしながら付いてくる。
【とにかくレースだ、レースを・・・。】
とかブツブツと言っているとルイスが物申す。
「レースなんて高いわよ!」
そう言って遠慮して来る。
遠慮はしないようにと言うとミカも後押ししてくれる。
「そうよ!こういう時は男の甲斐性を見ると良いのよ!・・・って母ちゃんが言ってたわ。」
「そういう物なんですか?」
「そういう物なのよ!」
無い胸をえっへん!
と、張っている。
通りを見ていると目標の物を見つけた。
三人で店に入ると女性店員が近寄って来た。
「いらっしゃいませ、お客様。ようこそ当店へ。ゆっくりと御覧になって下さい。」
ニッコリと微笑んで来る。
買うものは決まっているので聞いてみる。
【レースを見せて頂けますか?】
「当店の自慢の品物がレースです。職人が一から作っておりますので、質はとても良いのですよ。」
そう言われて店内をウロウロする。
「これなんかルイスさんに絶対似合うわよ!」
と、ミカが言っている。
ルイスが値段を見て「高すぎませんか?」と言っているのが聞こえて来る。
女の子に任せると時間が足りなくなりそうなので決めて行く。
【これとこれ、あとそれもお願いします。あとそこの毛皮のコートも買います。】
「ありがとうございます。」
店員に白の布生地があるか聞くと五種類の布生地を見せてくれた。
思っていた通りの生地があったのでロールごと買う。
支払いを済ませ宿屋へ戻ろうとするとミカが提案して来た。
「ねえ、時間があるなら昼御飯にしましょうよ。」
そう言って来たのでそう言えば昼時なんだっけ?
と、思い出して同意する。
「良い所があるのよ。」
そう言うミカについて行く。
【ミカも昼飯を食うんだ?】
「そりゃそうよ、御飯を食べないと力が出ないでしょう?ハンマーが振れないわよ?」
そうなんだ。
ミカは昼飯を食べる派だったのか。
南通りのミカのオススメの店で昼食をとる。
「ここの代金はアタシが持つわ、良い物を見せてもらったお礼にね!」
と、ニヤニヤしていたのでお言葉に甘えておこう。
ミカの言う通り美味しかった。
食べ終わったので三人で通りへと出る。
「御馳走様です、ミカさん。」
ルイスが挨拶をしていた。
偉いなルイス。
俺?
ふん!
してやらん!
あのニヤケ顔だけで良いだろう?
【さて、帰ったらドレスを作りますぞ!】
そう言って宿屋へと戻るのであった。
此処まで読んで下さり、ありがとうございます。
次話 初めてのドレス(仮 でお会いしましょう。
それでは、お付き合いありがとうございました。




