剣聖
いつも読んで下さって、誠にありがとうございます!
執筆が終わりました。
お楽しみ頂ければ幸いです。
今日も昨日とほぼ、同じ予定だった。
ルイスとセリスは試合観戦。
サーラは色々な物を吸収しに工房巡り。
祭事の件で一躍有名になったサーラは何処の工房でも温かく迎えてくれたらしい。
そして俺はと言うと・・・。
「勝者!紅蓮のアーサー!」
「「「ウワアァァー!」」」
「英雄の名は伊達じゃねえぞ!」
「ああ、これで昨日から連続で勝ち続けているぞ!」
「何試合目だ!?」
「昨日からで四十一試合目だな。」
「さすがは英雄と言ったところか・・・。」
「次が最終戦だな・・・。」
そう、絶好調で勝ち続けていた。
初めてをくれたセリスのおかげだろうか。
それとも見てくれているルイスのおかげだろうか?
とにかく絶好調だった。
ルイスとセリスの座っている控え所まで行くと声を掛ける。
【ルイス、どう?見てくれていた?】
「ええ、ねえ、貴方。」
【何かな、ルイス?】
「あの・・・疲れていない?」
「大丈夫、絶好調なんだ。」
「旦那様、次の相手は英雄と名高い『ミーレス卿だぞ?」
「【ミーレス卿?】」
ルイスと俺の声が重なる。
「ああ、歴戦の勇士で『軍事国家ヘルシャー』の『七英雄』の一人だ、手ごわいぞ。」
【分かった、少し本気で行こう。】
「少しなのか?」
【嫁さん達に格好悪い所は見せられないからね。】
「怪我をしないようにね、貴方。」
【ルイス、元気の出るおまじないが欲しいな。】
「もう、しょうがないわね。」
唇にキスをしてくれた。
【セリスはしてくれないの?】
「・・・してほしいのか?」
【もちろん!】
「ならば勝利してくるが良いぞ!」
唇にキスをされる。
うん、絶好調だ。
体が軽くなった。
本当に単純だな、俺ってやつは。
『次の対戦相手は軍事国家ヘルシャーからの刺客!烈火のミーレス!』
【へえ、二つ名持ちなんだ。】
「そうだ、私とは比べ物にならないぞ?」
【いや、それはないよ・・・あの時の君は・・・セリスは強かったんだ。】
「旦那様?」
【そうだ、あの時の君はとても強かったんだ。】
「そうか、嬉しいな・・・。」
【見ていてね、セリス。】
「ああ、旦那様。」
『両者、開始線まで進んで下さい!』
審判の声が聞こえる。
相手の選手はまだ出てこない。
今のうちに・・・。
集中!
ザワザワ・・・
ザワ・・・
・・・
よし、相手は?
ん?
まだ出てこないな。
しばらくすると出て来た。
ありゃ?
お爺さん!?
「いやあ、悪い悪い。どうしても貴殿と戦ってみたくてな。順番をずらさせてもらったぞ。」
ん?
順番をずらす?
何を言っているんだろうか、このミーレスと言う人は?
『お、お知らせ致します。ミーレス卿が負傷の為、この試合を最終試合とさせて頂きます!』
魔道具の箱から慌てている声が聞こえて来る。
ミーレスって言う人が負傷したの?
何か慌てているようだ。
『対するは、遥か東方、徳之島諸島より御来訪!その名も剣聖『ジュウベイ!』』
「「「ウワアァァー!」」」
「剣聖様だってよ!」
「本物か!?」
「おお、英雄殿と剣聖様の戦いか!」
剣聖か・・・。
前にアンナが言っていたんだっけかな?
どんな事を見せてくれるのかな?
俺、ワクワクしてきたぞ!
「ふむ、かの英雄・・・こんな年若き者とはのぅ。」
「東国の方ですか、一体何用でここまで?」
「ああ、徳之島のエドという首都の出身じゃよ。強い物と闘う為に各国をうろついておる。」
ああ、勘違い日本国家かぁ・・・。
前にも言ったと思うが間違った知識しか持っていない外国人が作った日本と言う国だ。
何処までが再現されているのだろうか?
心配になって来た。
【それで強い相手を求めて?】
「そうじゃ、フェアリー・ゲートを潜る時にな『強い奴』と考えたらここに来たっちゅう訳よ。」
【どう言う事でしょうか?】
フェアリー・ゲートさん、仕事しましょうよ。
「まあ、手合わせを願おうかの・・・昨日の娘っ子も強かったが・・・さて、わしはいくつ引き出せるかのぅ?」
【では、胸をお借り致します、剣聖殿!】
「応!掛かってらっしゃい!」
『それでは、両者ともに開始線』
ギギイィン!!!
そう、言葉はいらなかった。
お互いの実力をぶつけ合う様に剣を合わせる。
「ほう・・・この老いぼれでは全ては・・・引き出せんか?」
【先程からの引き出すとは?】
「強さを引き出せるかと言う事よ。実力が拮抗している相手ならば引き出せるっちゅうのがわしの考えよ。」
【貴方になら、俺の実力が引き出せると?】
「うむ、昨日の娘っ子のようにな!さて、どうかのう?」
ガギイィツ!
ギギイッ!
ガギンッ!
この爺さん・・・剣聖の名は伊達ではないと言う事か?
パワー負けをしているはずなのにその技で受け流している。
「この程度の訳ではあるまい?昨日の娘っ子に見せた物はわしには通じんぞ?」
【試してみますか?】
セリスを馬鹿にされたようでイラっとしてしまった。
カツッ
一歩踏み出す。
背面に回り斬撃を!
ガギョン!!
背面に回ったのが分かったのかそのままの姿勢で攻撃を防がれた!
この爺さん、後ろにも目がついてやがるのか!?
スキルの力が通じていないような錯覚に陥る。
「まだまだよのう・・・技とはスキル任せの事ではないぞ?」
ギン!
ギリギリギリッ!
鍔迫り合いになった所で剣聖様が何か囁いて来た。
「お主、少々危険よな・・・。ここいらで止めさせてもらおうかのぅ。」
【俺の何処が危険なのか分かりませんが?】
「その武よ、わしより遥か先に居ると言うのに・・・まだ手加減をしておるのか?」
ギギッギッ!
【結構必死なのですが?】
「いや、違うな・・・坊主、お主何を恐れておる?」
【俺に恐れる事があると?】
「うむ、ほれ。剣先がわずかじゃが鈍ってきおったぞ?」
【言葉攻め、心理戦ですか?】
「そんなヤボな事はせんぞ?本気で思っておるのじゃよ?」
ガギイン!
間合いを取る、いや取ってしまった。
何故か話を聞きたくないように鍔迫り合いを止めてしまった。
俺が恐れている事?
・・・この爺さんも食わせ物だな。
異世界の御年輩にはそんな人達しかいないのか?
【・・・そこまで言うのならば少しだけ本気を見せましょう。】
「かの英雄の本気が見れるのじゃな?」
独特の構えを取るなぁ。
最大速度で斬り込む。
だが、体中の危機感値能力がヤバイと告げて来た!
鳥肌が立つ。
攻撃止め、最大回避!
「三の太刀・霞の舞!」
キンッ!
剣で何とか攻撃を受け流す事が出来た。
カウンター技?
フェイントか!?
俺の目にはそう見えた。
「ほう、これが通じんか?」
今のが三なら後何個あるんだろうね?
【・・・剣技なら俺にもありますよ?】
「ふふ、さすが英雄と呼ばれし男、その意気やよし!まだまだ引き出して見せようぞ!」
【っふ!】
瞬動で一気に懐に入ると発動させる。
【我流、五月雨斬り!】
「ほう、だがまだまだじゃな。」
キン!ガギン!キイン!キィン!カキュン!
馬鹿な、初見で全て受け流された!?
「うむ、受けてみたがそれは刀で行う技じゃのう。この様にな!」
【っく!?】
受け流、いや防御を!?
ガギィン!キン!カキン!カキュン!ガギィン!
【っく!真似事を!?】
「っふ、そう思っているのは若い証拠じゃな。」
中身はアラフォーなんですけどね?
「で、本気とやらはいつ見せて下さるのかのぅ?」
【・・・失礼致しました。それでは本来の戦い方をお見せ致しましょう。】
相棒をしまい、ミスリル・カタナに持ち替える。
「ほう、それが本来の武器かのぅ?」
【左様です、改めて参る。】
「胸を貸そう、坊主。」
【利子は付けないで下さいね?】
「【・・・。】」
「言葉遊びもまだまだじゃのう、坊主。」
【っく・・・行きます!】
キンッ!
カキンッ!
「ほう、さっきよりちーっとはましになったのぅ。」
【これでも力は出しているのですがね!】
「その力の出し方が素人なんじゃよ。」
・・・そうなのである。
常々思っていたのだ。
剣術スキルは1000でカンストしているのだが本人は刀を持った事など無い普通のサラリーマンだ。
今まではそのスキル様の力押しで何とかなって来た。
だが、そう言う所が分かる人には分かってしまうのだろう。
さすが、剣聖の名は伊達ではない。
この数合打ち合っただけで俺の事を分かっていらっしゃる。
【っく!?】
「どうしたのじゃ?剣気が抜けて行くぞ?」
【ま、まだです!】
「ならばこれはどうじゃ?『一の太刀・双牙!』」
ガギギン!
【ただの「ダブル・アタック」がこんな威力に!?】
「そう思うならもう一つ持って行け、『二の太刀・鎧通し!』」
【っくおっ!?】
威力のおかしいアーマー・イグノアを食らって足元がふらつく。
そこを見逃す程、剣聖は甘くなかった。
「ふむ、終いじゃのう。」
チンッ
刀をしまった?
「英雄殿に手向けよう。」
抜刀術!?
「その目に焼き付けよ!」
【っくっ!?】
「これが老いぼれの見せる意地としれ!」
なんだ!?
何が来る!?
『秘技・・・滅閃!!!』
更に踏み込んできた!?
簡単に懐に入られてしまった!
けど、この程度の速さなら!
そんな事を考えていたが先程の事が引っ掛かり・・・。
【か、体が動かない!?】
「それが限界のようじゃの、英雄殿!」
未熟だと認識してしまった体がついてこない!?
こんなにもスキル様頼りだったのか?
スローモーションで見える。
大丈夫だ、かわせる!
いつもどおり・・・。
斬!
ズバァッ!!!
【くはっ!】
考えていたら全く体が動かず、棒立ちで左右神速の両袈裟切りを食らってしまった。
「ほう、これでも立っているか、坊主?」
スキルの力で何とか致命傷はかわせたが・・・情けない。
負けるのか?
こんなにも無様に。
無敵のスキル様と思って奢っていたのだろう。
負けて当然か・・・。
【ゴフッ!】
口の中が血の味がする。
「だ、旦那様!?」
セリス。
君が思っていた程、俺は強くなかったよ。
守るだなんておこがましい事を言ってしまった、許してくれ。
「嫌あああぁぁぁ!貴方ぁぁぁ!?」
ああ、愛しいルイス。
心配を掛けさせてしまった。
こんなにも駄目で無様な夫を持たせてしまった。
ナナリーさん、サーラ、済まない。
頑張ったんだけど・・・今回は駄目みたいだ。
地面が近づいてくる。
このまま倒れればいいじゃないか。
楽になれるさ・・・。
キィィィィィィィン!
耳鳴りが聞こえる。
それは声となって俺に話しかけて来た。
『本当にそう思うのですか?』
意識を保ち答える。
「素人の俺が、ここまで頑張ったんですよ?」
『貴方はそれでよろしいのですか?』
「これが俺の限界だったんですよ。」
『貴方の限界は自身で決めて良い物ではありません。』
「先程からどちら様ですか?」
『貴方の力はこの程度であろうはずが無いではないですか?』
「俺の力はこんな物だったんですよ。」
『ならば、七つある楔を一つ外して差し上げましょう。』
「楔?外す?」
『立ち上がりなさい。我が子、ヘファイストス。』
ボヤっとしていた意識が一気に覚醒する。
地面が近かったが何とか体制を整えると空を見上げる。
ああ、血塗れだが・・・気分が良い。
【ふっ・・・。】
「ん?坊主・・・お主、気配が・・・それになんじゃその黒いのは?」
「いやぁ・・・!?」
【ふっ・・・ふははは!】
笑いが込み上げる!
ああ、力が溢れて来る!
何か黒いオーラのような物を纏っているが何だろうか?
だが心地良い!
「まだ倒れんのか!?」
【何だよ、力があるじゃないか!まだ振り絞れる力が!】
「馬鹿な!?普通の人間なら致命傷じゃぞ?」
【嫌ですねぇ、俺は普通の人間ですよ?】
「・・・坊主、お主操られておるのか?」
【操られているなどと、剣聖様でも失礼ではありませんか?】
「ならば・・・。」
ッチン
「今一度食らうが良い!秘技・・・滅閃!」
【秘技と言うなら二度目は見せてはいけませんねぇ?】
ああ、凄いぞ?
今度は見える。
動きも、太刀筋も!
くっくっく、これでもう後れは取らないよ?
口角が上がる。
それは悪魔のような笑いだった。
ガギンッ!
「っつ、馬鹿な!?」
【流石に、二度目は防げますよ?】
「お主、その境地まで今の一瞬でたどり着いたのか!?」
【おかげさまです、剣聖。そして、ありがとう。】
「っふ、引き出しの奥には触れてはならぬものがいたか・・・。」
【では、こちらの剣をお見せ致しましょう。】
「ふむ、わしとて諦める訳にはいかん。最後まで付き合おう。」
構えを取る。
知らない構えだがしっくりくる。
【では、行きます。「ᚠᛚᚪᛋᚺ!(閃!)」。】
それは光速の突きだった。
ザシュ!
「ぐおぉっ!」
左肩に命中する。
【まだですよ?こんなのはどうです?『ᛖᛗᛈᛏᚤ ᛋᛈᚪᚳᛖ(虚空)』。】
体が気配ごと消える。
「馬鹿なっ!気配がなくなったじゃと!?」
【剣聖様ともあろう方が、スキだらけですね。】
いつの間にか剣聖様の後ろに黒いオーラとともに現れる。
そのまま斬り付ける。
「くおっ!?」
斬!
ポタッ・・・ポタッ・・・
右手に斬りつけたが浅かったのだろうか?
「嫌よ!もとに・・・。」
「っく、太刀筋どころか気配まで別人に?!」
【その利き腕の傷でも刀を捨てませんか?】
「っふ、この刀は我が矜持!落とす事などありえん!」
【なら、どこまで耐えるかやってみましょう。】
「そうか、坊主・・・お主、力に飲み込まれておるな?」
【これが力・・・素人の俺に剣聖と呼ばれた貴方の敵わない力。】
「気付け、坊主!力に飲み込まれれば待っているのは破滅ぞ!」
【煩いな、今は気分が良いんだ。】
「完全に飲み込まれておるの・・・。」
そして攻撃をしようとした所で俺の心に響き渡る声が聞こえた。
「「「いつもの貴方に戻って!」」」
そう、ルイスの声だ。
先程の声とは違う。
その明確な意思を持った叫びは俺の胸に突き刺さった!
【うあ・・・。】
力によって別人のようになった俺。
このほうがよっぽどみっともないじゃないか!
それにこんな事で・・・せっかくの剣聖様との試合を台無しにしてしまった。
【・・・いいところなんだ。】
「坊主!?」
【邪魔をしないでくれないかな!?】
ウオオォォォ・・・
俺の体から黒いオーラが霧散して行く。
【力が・・・散って行く・・・ハァ・・・ハァ・・・。】
「・・・ほう、心の強さだけは一人前のようだのう。」
【ふうっ、なんかやらかしたみたいだけど、大丈夫かな、剣聖様?】
「・・・坊主。この試合が終わったら稽古をつけてやろう。」
【是非にお願いしますよ、ジュウベイ殿。】
「「チンッ」」
鞘に剣を収めると二人同時に抜刀術の構えを取る。
・・・ピチョン!
その血の雫の音が・・・静寂を破る。
「【いざっ!】」
ギイィンッ!
「【・・・。】」
「今日の所はわしの負けじゃのぅ。」
【ありがとうございました・・・。】
剣聖と呼ばれていた男が倒れる。
ドサッ
みねうちで倒れた剣聖様の側による。
くそう。
気持ち良さそうに倒れやがって・・・。
完全に俺の負けだな。
「え!?しょ、勝者!紅蓮のアーサー!」
「「「ウワアァァー!」」」
「剣聖にも勝っちまったぞ!」
「とにかく英雄強しといった所か!」
「4th グレーター・ヒール。」
治癒魔法を掛けた剣聖様が医務室へと運ばれて行く。
・・・後で謝りに行こう。
出来れば教えを請いたいな・・・。
それに、この力とやらの事を詳しく聞きたい。
俺は剣聖様の出て行ったで入場口を見ていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
剣聖様に勝利したと聞くや会場のボルテージは一気に上がって行った。
皇帝陛下の閉式の挨拶が終わると力が抜けた。
だが、まだやる事が、聞く事がある。
場が収まるのを待ってからルイスとセリスを伴い医務室となっている場所で剣聖様の目覚めを待っている。
「旦那様はやはり凄いお人だったのですね!あの剣聖様に勝ってしまわれるとは!」
セリスには見えていなかったようだ。
それに、素直に喜べないんだよね。
途中、力に身をゆだねていた自分を思い出す。
あの時の高揚感・・・。
女の子を這いつくばらせている時のように、もの凄い高揚感だった。
その事が頭から離れない。
あの声もだ。
どこかで聞いた事がある。
だが思い出しだしたくない。
あの方がそんな事をするはずがない。
それにあの黒いオーラ。
剣聖様は「力」と言っていたが俺には違う物のようにも思えた。
そう、例えて言うのならば「欲望」の様な気がしていた。
欲望・・・ファリスさんが調べてくれた文献でも出て来た。
そのせいで神々が地上の楽園を捨てたとも書いてあった。
今回の俺の勝利への渇望が何となくそれに似ている気がした。
それに、あの時はルイスの前だから負けたくないと思った。
そう、格好悪いところを見せたくないと思った。
そうだ、そのルイスが静かだぞ?
【ルイス、さっきから黙ってどうしたの?】
「ねえ、貴方。さっきの黒い・・・いえ、気のせいよね?」
【ルイスには見えていたの?】
「え!?あの黒い物は・・・気のせいでは無かったのね。」
【そうなんだよ、それをジュウベイ様にも聞きたくってさ。】
「ねえ、無理はしていないのよね?」
【ああ、無理も無茶もしていない。】
「なら良いわ。」
「ほう、お嬢ちゃん。見えておったのか?」
ベッドに横になっているはずの剣聖様が目を覚ませたらしい。
【起きられましたか。先程は申し訳ありませんでした。】
素直に頭を下げる。
「なあに、構わんとも。それで聞きたいのじゃろう?」
【ええ、俺の内から出て来た黒い影について伺いたい。】
「旦那様、私にはさっぱり・・・その影とは?」
「坊主。」
【何でしょう?】
「・・・酒はないかの?」
「「【え!?】」」
「なに、手持ちが無くてな。久しぶりに飲みたいんじゃよ。」
【分かりました、奢らせて下さい。】
「話が分かるのう、良い店を知っているんじゃ。さっさと行くぞ!」
先程のダメージなど無かったかのように軽やかに立ち上がると部屋を出て行く。
敵わないね、剣聖様。
「おーい!置いて行くぞー?」
【は、はい!そういう訳で、ちょっと行ってくるよ。】
「貴方、後で話を聞かせて頂戴ね。」
【分かった、二人とも後は頼んだよ。】
「帰りを待っているわ。」
「旦那様、御気を付けて!」
二人にそう言うと剣聖様の後をついて行った。
ここまで読んで下さって、誠にありがとうございます!
まずは、いつものから!
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皆様に感謝を!
それでは 次話 出会い(仮 で、お会い致しましょう!
少し早いですが、お休みなさい!




