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セリスの覚悟

いつも読んで頂き、誠にありがとうございます!

執筆の終了した所からですがどうぞ!

お楽しみ頂けると幸いです。

ティアと別れたのは明け方。


時間で言うと六時ぐらい。

帝都の王城のバルコニーへリターンで戻って来た。


【『アリステリア様』本日も良い日でありますように・・・。】


いつもの日課を終えると考えてしまう。

情報を整理したい所だが色々な考えで頭の中がこんがらがってしまった。

早い所、これを一本の糸にしたい物だ。

そう考えながら部屋に戻る。


セリスがベッドで寝ている。

寝相は・・・見なかった事にしよう。

裸だったので大事な所が丸見えですよ、セリスさんや。

体を整えてシーツを掛けなおすと厨房へと向かった。


なんとなくチャーハンが食べたくなったのだ。


・・・アセディアも『アリステリア様』の使徒だったのか。

ティアが第一で『アリステリア様』の使徒。

アセディアは何番目の使徒なのだろうか?

これ以上考えても埒があかない。

とりあえず材料を取り出し準備を進める。


ちょっとニンニクを多めに入れてみようかな。

その匂いにつられてやってきた清掃人のおばちゃん達にチャーハンを振舞う。

俺も食べる。

うん、ニンニク絶好調!

食べているとルイスが起きて来たようだ。


「美味しそうね、貴方。私にも頂けるかしら?」


【もちろんだよ、すぐに作るね。】


そう答えて鍋を振るう。

そう、こんな感じで皆と楽しくできればいいのにな。


・・・欲望か。

俺にも実感がある。

特に女性を抱いている時だ。

組伏して致す時の充実感と満足感。

たまらない。


おっと、焦がさないようにね。

そして出来上がったチャーハンをルイスの所へと持って行く。


【今日はニンニクが多めだから、匂いが残っちゃうかもしれないよ?】


「どこに行く予定もないんだもの、気にしないわ。それに磨き棒で擦れば、ある程度は消えるから大丈夫でしょう?」


【ルイス、ニンニクを甘く見ない方が良いよ?】


「そんなに強い物なの?」


【そう、欲望みたいに後から後から来るんだよ?】


「欲望みたいにって・・・ねえ、何か考え事?」


【考え事ではあるんだけれど・・・さあ、冷めないうちに食べてくれるかな?】


「分かったわ、貴方。」


そう、こんな感じで十分だ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ルイスと部屋に戻る。


っと待て。

俺の部屋にはセリスがいるんじゃなかったか?

ルイスより早く扉の前に立ちふさがる。


「どうしたの?部屋に入れてくれないの?」


【きょ、今日はまだ掃除してないからね!ルイスの部屋に行こうよ!】


「・・・ねえ、貴方。何を隠していらっしゃるのかしら?」


鋭いな、ルイス!?

冷や汗をかきながら答える。


【か、隠してなんかいないさ。】


「じゃあ、部屋に入っても大丈夫よね?」


【だ、大丈夫じゃないかもしれない。】


「・・・遠慮なく入らせて頂くわね。」


すると部屋の中から声が聞こえて来た。


「ヘファイストス様か?申し訳ないのだが体が疲れているようだ。スタミナポーションを分けては頂けないだろうか?」


「【・・・。】」


「気のせいかしら?セリスさんの声よね?」


【そうだね、セリス何しに来たんだろうね?】


「スタミナポーションが欲しいそうよ?」


【そ、そう言っていたね。】


「朝の訓練にしては早すぎるんじゃないかしらね?」


【そ、そんな事は無いよ。】


「じゃあ、本人に聞いてみましょう。ねえ、貴方?」


ルイスさん、笑顔が怖いです。


【い、今は忙しいんじゃないかな?】


「体が疲れていてポーションが必要な人が忙しそうって事は無いわよね?」


【きっと気のせいだよ、ルイス。】


「部屋に入れば分かる事よね?」


その手がドアノブに伸びる。


「ヘファイストス様、何か問題があるのだろうか?昨夜の事で疲れておるのだ。急がせる訳では無いが願いを聞いてはくれぬか?」


ルイスの手がピタリと止まる。


「貴方、昨夜の事って何の事かしらね?」


【な、何の事だろうね?】


「貴方が分からないのならセリスさんに直接聞きたいわね。」


【か、彼女も朝の支度があるんじゃないかな?】


「【・・・。】」


その顔は微笑んでいるが・・・。


「良いからそこを通しなさい!」


【イェス・マム!】


ドアが開くとルイスがベッドにゆっくりと歩いて行く。

そこには、セリスが裸でベッドに横たわっていた。


「ああ、ルイス殿か。話声がするから誰かと思っておったぞ?」


「ねえ、貴方。」


【アイ・マム!】


「何故、貴方のベッドでセリスさんが裸で寝ているのかを説明して頂けるかしら?」


【そ、それはですね!】


「ん?昨日あんなに可愛がってくれたではないか、私は忘れぬぞ?初めて達すると言う物を経験出来たのだからな!」


「【・・・。】」


「何か言いたい事はあるのかしら?」


【何もございません!】


「サーラさんに何て説明するか楽しみね、貴方?」


そう言えばそうだった!


「朝から何をしているんですか?ヘファ師匠にルイスさん。外にまで声が聞こえますよ?」


その本人が来ちゃったー!


「で、どうしたので・・・。」


部屋の中を見て固まってしまった。

この先に俺には救いは無いのでしょうか!?


こうして二人に朝から怒られてしまった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「そうだぞ、ヘファイストス様は紳士でな、『サーラの約束が先だから。』とおっしゃってな。」


「それで、初めては、純潔は捧げていないんですね!?」


「サーラ殿、そんなに声を荒げなくとも聞こえておるぞ?」


「ふう、では初めては私が先だからしていないと言う訳ですね?」


「そうだ、その代わり、口と胸で奉仕し、その繊細な指で可愛がって頂いたのだ。」


「「ふ~ん。」」


二人とも、そんな目で見ないでくれないかな?


「ヘファ師匠!酷いじゃないですか!私だって一度しか可愛がって頂いてないんですよ!?」


「サーラ殿、一度だけなのか?」


「うっ、そ、それはですね、色々とありまして、とにかく!ナナリーさんにも認められた、わ・た・し・から先にして下さいね!」


「サーラ殿、私も認められたのだが?」


「セリスさん、それはどういう意味ですか?」


「ふふ、何、ナナリー殿には、お互いに認められておるのだ、先がサーラ殿でなくともよいのではないか?」


「っく、あれは御情けで認められた事でしょう!」


「お、御情けでも認められたのならば良いではないか!」


「とにかく先は私ですからね!」


「っふ、そうだと良いですわね!」


「「ぐぬぬぬ・・・。」」


「はい、二人ともそこまでにして頂戴。」


「ルイスさんはどっちの味方なんですか?」


「ルイス殿は当然、私の味方ですよね?」


「残念ながら、私はどちらの味方でもないわ。先にこの人の考えを聞きましょう。」


【・・・サーラとは約束をしてるんだ。大事なパートナーとの約束は・・・なるべく破りたくない。】


「ヘファ師匠!」


「っく、ならばその後は私です!」


「ヘファイストス様、いいですか?約束は違えぬようにお願い致しますね。」


【分かったよ、サーラ。】


「はい、これで良いかしら?」


「ルイスさんはそれで良いんですか?」


「言いたい事は言ったのでもう良いわ。それに今に始まった事じゃないし・・・。」


ルイスさん、そんな汚物を見るような目で見ないでくれないかな?

何かに目覚めそうだ。


「それで、皆は今日の予定はあるのかしら?」


「おっほん、では予定の説明を。本日は予定が決められておりません。なので各々自由に過ごして頂きたい。」


セリス、急に仕事モードになったな。


「ただ、ヘファイストス様には兵の練兵を見て頂けると助かります。あの模擬試合から沢山の対戦依頼がありまして・・・。」


【ああ、じゃあそっちに行こうか。】


「助かります、さすがは私の見込んだ殿方だ。では念の為に、ルイス殿には同じ女性のファリス殿をお付け致します。」


「分かったわ、街を案内して頂こうかしら。」


「それがよろしいかと、サーラ殿にはノモス侯爵をお付け致します。ノモス侯爵ならば鍛冶屋などの店に対して顔が利きますのでお役に立てるかと。」


「はい、お願いします。せめて鉄のインゴットぐらい作れるようになって見せますね!」


そう言って俺にウインクをしてくる。

なんか、早速今夜からが大変そうだ。


「それでは各自そのように行動をして頂きたい。」


「分かったわ。」


「わっかりましたー!」


「それでは行きましょうか、ヘファイストス様。」


【分かりました、セリス。案内をお願いしますね。】


「はい!」


ルイスとサーラにお迎えが来るのを見送ってから練兵場へ移動する。

セリスは二人がいなくなったのを確認すると早速腕を絡めて来た。

わざとらしくその胸を当てて来る。


【セリス、そう言えば対戦希望相手は何人なのですか?】


「はい、登録制に致しまして現在四十一名です。本日は二十名と戦って頂きます。」


【へ?・・・そんなにいるの!?】


「はい、『強い奴と戦いたい者はいないか!?』と募集を掛けた所、国内外から手練れが集まりまして。本日はコロッセウムにて対戦して頂きます。」


帝国だからあると思っていたがコロッセウムか。

・・・あれ?

そこって皇帝陛下って見に来るんじゃないの?


【セリス、まさかとは思いますが、皇帝陛下がいらっしゃるなんて事は?】


「陛下も御覧になられます。ヘファイストス殿には頑張って頂きたく。」


【・・・セリス、狙ってやりましたね?】


「もちろんです、こうでもしなければヘファイストス様は戦って下さらないでしょうから。」


【はぁ、分かりました。でも、紹介する時は「アーサー」でお願い致しますね。】


「かしこまりました、旦那様!」


こうして二人でコロッセウム、闘技場へと向かう。


練兵はどうしたんだろうか・・・。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「勝者、紅蓮のアーサー!」


「「「ワアァー!」」」


対戦相手が頒布に乗せられていく。

五分程の休憩をしてから次の対戦だ。

結構スケジュールがきついねえ。


「次!十四番目の対戦者、剣闘士、『鉄血のモバーレズ!』」


「「「ワアー!」」」


今度の相手は剣術らしい。

両手持ちのブレードスタッフを持っている。

鋼の相棒を取り出す。


「それでは、両者開始線まで進んで下さい。」


「かの英雄の力、見せて頂こう!」


【よろしくお願い致します。】


「それでは・・・始め!」


ド~ン!


銅鑼の音で対戦が始まった。


「「「ワアァー!」」」


「行きますぞ、英雄殿!」


【構いませんよ!剣闘士殿!】


中央で互いに刃をぶつけ合う。

早速、鍔迫り合いの状態だ。

すると剣闘士さんが柄をかちあげてきて間合いを開く。

そう、ブレードスタッフ。

日本風に言うと薙刀の様な武器だ。


「っふ!」


その突きをかわす。

俺の攻撃は・・・だが間合いが遠い。

この人の間合いの管理は、ほぼ完ぺきだ。

自分の距離で戦う事を前提とした戦術。

うん、強いね。


「ハッ!」


今度は薙いで来た。

それをバックステップでかわす。

すると間合いを詰めて距離を管理する。

かなりの使い手だな。

だが、ジャスティンやダンの方がまだ強いね。


「ッフ!ハアッ!」


まずは上段からの斬り込みを内側に入ってかわす。

それを予想していたように柄をかちあげてきた。

そう、それを待っていたんですよ。

それをさらに内側に入ってかわす。

この間合いはロングソードの間合い。


【ハァッ!】


剣の腹で横薙ぎをするとそれを受け止めようと武器でガードする。

が、間に合わず右手で受ける事になった。


ベキッ


骨が折れたような感触とともにその音が鳴り響く。

思いきりの良いのは認めるけれど、俺が刃を立てていたら・・・。


「続行不能とみなします!勝者、紅蓮のアーサー!」


「「「ワアァー!」」」


これで十四人目、先は長い。


治癒術師がグレーターヒールを唱えると対戦者だった剣闘士さんの怪我が治って行く。


「アーサー殿、斬られていれば、俺と言う剣士は終わっていた。そなたの優しさに感謝する。」


そう言って剣闘士さんは下がって行った。


「ヘファイストス殿、見事でした!先程も言いましたが、本日は二十名と戦って頂く予定ですのでよろしくお願い致します。」


【後、六名ですね、分かりましたよ。】


「私も支度をしてまいります!」


ん?


何の支度?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「勝者!紅蓮のアーサー!」


「「「ワアァッー!」」」


「二十人に一人で勝っちまったよ!」


「さすが英雄、紅蓮のアーサー・・・。」


「今日はこれで終わりか?」


『これより、特別試合が設けられております。』


ん?

伝声の魔道具からそんな声が聞こえて来た。

セリスからは何にも聞いて無いぞ?

白い鎧を着た人物が入場してくる。

どこかで見た事があるぞ?


「二十一番目、特別対戦者。白薔薇騎士団・団長 我が国の誇るアナラビ・アスプロ・トゥリヤンダファリャ!セリス・フォン・アストゥラピ・クヴァール!」


「「「ワアァッー!」」」


「「「団長!負けないで下さい!」」」


【って、セリスかよ!へー、『閃光の白き薔薇』なんて二つ名があったのね。】


「ヘファ・・・アーサー殿!今度は手加減はいりませんよ?」


フル装備の鎧に包まれたセリスはそんな事を言ってくる。


【・・・嫁さんに切りつける刃は持っていないんだ。棄権しよう。】


「アーサー殿!これは騎士として、本気の申し出だ!受けて欲しい!」


【セリス、これ以上我儘を言うと怒りますよ?】


「本気なのです!私は本気の貴方様を見てみたい!」


【審判、棄権を。】


「アーサー殿!受けては頂けまいか!」


【先程から言っている通り嫁さんに刃を向ける趣味はないんだ。】


「騎士としての本気の申し入れなのです!受けて頂きたい!」


【・・・。】


「アーサー殿!」


その目は本気での立ち合いを望んでいた。


【本気なのですね?】


「もちろんだ!」


【ふう・・・そのリーフ・ブレードが本来の武装ですか?】


「そうです!」


【セリス、この試合が終わったらお仕置きですよ?】


「受けて下さるのか!?」


【これで最後にして下さいね?】


「さすが、私の見込んだ殿方!」


「よ、よろしいですか?それでは両者、開始線に!」


「あの時のようには行きません!真剣に勝負です!」


【御転婆姫か・・・では、これで最後に致しましょうか。】


「・・・ああ!最後だ!」


ん?

随分と物分かりが良いな?


「始め!」


そして始まった。

リーフ・ブレイドは槍術の武器で長さこそ30cm程。

射程は短いのだがその使いやすさには定評がある。

刺突用のレイピア系の武器に比べるとブレイドの名の通り斬る事も出来る。

この武器は間合いの管理が出来れば一線級の武器へと変わる。

さてと、嫁さんの頼みだ。


怪我はさせないようにしないと・・・。


『本気の申し出だ!』


『真剣に勝負です!』


そう言ったセリスの楽しそうな顔が思い浮かぶ。

・・・そうか、本気なんだね、セリス。


うーん、でも貴女は十七歳でしょう!?

バトル・ジャンキーは制服とともに卒業させたいね。

などと考えていると一足飛びに間合いに入られてしまった。

思ったより速いね。


「ハアッ!セイッ!」


その二連突きをかわす。

良い突きです。

こちらの間合いにはさせない気かな?

それならば。


バックステップをして距離を取ろうとしたのだが予想をしていたように間合いを詰められる。

ほう、戦い慣れているな。


「ヤッ!ハアッ!」


その二段斬りもかわす。

ここまで間合いの管理が出来るんだね。

強いじゃないか、セリス。

剣術も槍術も、それなりに使えるとは・・・頑張っているんだね。


「アーサー殿!あの時と同じ轍は踏みません!」


まずは間合いを崩すところからかな。


「ッハ!」


その攻撃を刃を滑らすように受け流す。


「っく!」


体勢を崩した!?

・・・違う!

これは誘いだ!

セリスは刃を滑らせたと見せかけてそれを利用して俺のロングソードの刃を寝かせる。

と、そこを返しのリーフ・ブレイドが滑ってくる。

そう、握っている俺の手を指を狙った攻撃。


本気の攻撃だった。


そうか・・・そう言えばそうだったね。

まだ手加減を、セリスの本気に応えていない自分を恥じる。

ならその思いには応えないとね。

今まで抑えていた速度を上げると一瞬で間合いを広げる。


ッフォンッ!


「なっ!?」


開いた間合いから声を掛ける。


【勝利を確信しましたか?】


「今のもかわされますか!さすがですね、アーサー殿!」


【では、俺も少し本気を見せましょう。】


「ふっははは!楽しみだ!さあ見せて下さい!」


「・・・では行きますよ?」


一歩踏み出す。


コツ


ギインッ!


「ば、馬鹿な!いつの間に間合いに!?」


一瞬でセリスの後方に回り鍔迫り合いになる。


ギリギリギリッ!


【まだまだ行きますよ?】


ギンッ!


「っく、この攻撃は何だ!?」


【特別に見せてあげています。閃光の白き薔薇、その名に恥じぬ貴女の事を認めました。】


「嬉しいぞ、アーサー殿!もっとだ!もっと見せてくれ!」


【・・・行きますよ?】


横腹。


ガギッ!


「っくっ!」


右太腿。


サシュッ!


「っくあ!」


左肩。


ズドッ!


「うあぅ!」


そして頭。


ガギン!


「ぐあっ!?」


ヘルメットが飛ぶ。

と、額から血を流しているのが見えた。


「ア、アーサー殿は何を!?私は何をされている!?」


【これは単純に剣術の基礎を使っているだけですよ?】


「これも剣術だというのか!?」


【『縮地』と呼ばれています・・・それで、どうしますか?】


「無論!私はまだ立っていますよ、アーサー殿!」


【では決着を付けましょう!】


「参られよ!アーサー殿!」


足を一歩踏み出す。


コツ


「ここか!?」


サッ


防御するが・・・


【残念、右腕です。】


ザシュッ!


「ぐあっ!」


血しぶきが上がる。


ガシャッ


セリスの手から武器が落ちる。


【・・・セリス、降参して下さい。貴女は利き腕を封じられました。俺はこれ以上貴女を傷つけたくはない。】


「ふふっ、届かないか・・・だが、まだ私は立っておりますよ!」


左手で武器を拾い上げ構える。


【その意気やよし・・・。では、お終いに致しましょう。】


「騎士として受けて立つ!」


この緊張感にざわついていた会場が静まり返る。


【セリス、何が貴女をそうさせているのかは今の俺には分かりません。ですが・・・。】


全速で懐に入り込む。


「なっ!?」


セリスは反応出来ていない。

と、素早く鳩尾を穿つ。


ドゴッ!


「っくおっ・・・これが・・・だんなさま・・・のほん・・・き・・・の!?」


ドサリッ・・・。

崩れ落ちるセリスを支える。

強かったよ、セリス。


「しょ、勝者、紅蓮のアーサー!」


「「「ワアァァァー!」」」


「「「団長!」」」


「「「姫様!」」」


石畳に寝かせられたセリスに団員が駆け寄る。

団員に抱え上げられると頒布に寝かされる。


「アーサー殿、団長の思いに応えて下さって、ありがとうございます!」


「「「ありがとうございました!」」」


【4th グレーター・ヒール。】


セリスの傷を魔法で癒す。


【・・・それと言伝を。】


「はい、何と?」


【目が覚めたらで良いので伝えて下さい。『強かったですよ、セリス。ですが貴女の事も俺が守るので安心して下さい。』・・・と。】


「はい!承りました!」


セリスが団員の手で運ばれて行く。

・・・強かった。


そう思いながら闘技場を後にする。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「っは!こ・・・ここは!?」


「「団長!」」


「「「姫様!」」」


「目が覚めましたか!?」


「ふふっ、何も出来なかったか・・・。」


そう思った。

途中までは善戦していると思っていた。

だが少しの本気とやらで圧倒的に負けた。

完敗だった。


「団長・・・大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫だ、ありがとう。」


「大丈夫なら言伝があります。」


「言伝?」


「二人からです。団長はどちらの方からお聞きになりますか?」


「誰と誰からなんだ?」


「皇帝陛下とアーサー殿からです。」


「では、皇帝陛下から聞こう。」


「『セリス、そなたの成長した姿を見れて良かった。これからも精進せよ。それと旦那様に謝っておけ。』です。」


ふふ、成長した・・・か。

遠回しな言い方、父上らしいな。


「・・・だん、いや、アーサー様はなんと?」


「『強かったですよ、セリス。ですが貴女の事も俺が守るので安心して下さい。』です、団長。」


「そうか・・・我儘を聞いてくれてありがとう、旦那様。」


涙が頬を伝う。

心配し激励してくれた父に。

そして、我儘を聞いてくれた旦那様に。


心から・・・ありがとう。

ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!

まずは、いつものから!

評価、イイネ、ブックマーク等々。

大変に励みになります!

皆様に感謝を!

それでは 次話 セリスの悩み(仮 で、お会い致しましょう!

お疲れ様でした!

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