ミカとの再会
書きあがりました。
楽しみにして下さっていた方、お待たせいたしました。
初めての方、気になりましたら是非序章からどうぞ!
というわけでヘファイストスの冒険をお楽しみください。
よろしくお願いいたします。
朝。
うーん、と言って目が覚める。
もうちょっと眠りたい・・・この温もりを感じていたい。
ん?
温もり!?
慌てて目を開ける。
膨らみだ。
服の上からでも分かる。
膨らみがある。
待てよ?
と、こうなった訳を思い出す。
夜遊びをして・・・怒られて・・・。
思い出しているとドアがノックされた。
そうだ!
ルイスの部屋だった!
ノックの音にルイスが起きそうになる。
するっと素早くベットから出て寝ているルイスに毛布を掛け直し支度をしてドアの方に向かう。
何気ない顔でそっとドアを少しだけ開ける。
その隙間から覗くとそこにはベスがいた。
ジーっと見てくる。
【お、おはよう、ベス、どうした?御飯か?】
ジーっと見てくる。
【ルイスはまだ寝ているので静かにしようね。】
シー!
っと人差し指を立ててジェスチャーする。
俺は部屋から出る。
後ろ手にドアを閉めると、ベスと話す為に目線が合うまで少し屈む。
「今七時四十五分・・・起きて来ないから起こしに来たの。ルイス姉は・・・?」
【そ、そっか、ルイスは疲れているから後で御飯を食べると思うよ?】
「そうした方が良い・・・?」
【うん、今朝は俺達だけで御飯だ!】
「分かった・・・怒られる時はヘファさんが怒られてね・・・?」
【おーけー、おーけー、じゃあ行こうか。】
と、ベスの背中を押し出す様に部屋の前から離れる。
一緒に階段を降り、定位置に着く。
女将さんがそっと寄ってきて囁いて来る。
『くっくっく、小僧、昨日の夜は楽しんだそうじゃないか?』
と、囁いて来たので多めに銅貨を握らせて一言。
【キノセイデス。】
ごまかすように言っておいた。
「ひっひっひ。」
そう笑って、料理を置いた女将さん達が厨房に戻って行く。
勝てないなあと思っているとリズが言って来た。
「お兄さん、冷めちゃうよー?」
初めてルイスを除いた状態での朝御飯だ。
揃った所で食事の開始だ。
【いただきます。】
「「「いただきます!」」」
今日のメニューはオムレツ&腸詰と黒パンと野菜スープだ。
あ、ルイスの分がある。
「リズ、マオ、ルイスがいないので食べちゃってくれるかい?」
「「はーい!」」
食べていると視線を感じる。
ベスがこちらをジーっと見ながら食事をしている。
ベスさん、そんな目で見ないでおくれ。
気にしないようにして食事をする。
うん、相変わらず美味いね。
さて、今日の予定を決めないと。
と、頭を巡らせているとそうか今日は貴族様の屋敷に行く日じゃないか。
残る皆の事はベスに任せて・・・いや、此処はお休みにしよう。
皆にお小遣いを上げてお金の使い方を勉強してもらおうかな?
それでお昼ぐらいにルイスを起こして生地を決めて、っといつの間にか食べ終わっていた。
いつの間に食べたんだろうと思いつつ腹具合を確かめる。
うん八分目だね。
あ、そういえば『アリステリア様』にお祈りしてないや。
皆が食べ終わったら、部屋に戻って祈りを捧げよう。
【ごちそうさまでした。】
「「「ごちそうさまでしたー!」」」
【皆、いつもご苦労様ね。今日はお休みにします!お小遣いを上げるので自由に買い物をしてきなさい。】
と、言うとアリスが手を上げる。
【はい、アリスさん。】
「ヘファさん、お休みって何ですかー?」
【働かなくても良い日で、自由に遊んだり出来る日だよ。】
「「「おおー!」」」
皆から声が上がる。
この世界に、休みと言う概念は無いのだろうか?
【じゃあ並んでくれるかな?】
「「「はーい!」」」
革袋に銀貨を五枚ずつ入れて皆に配る。
【これはお小遣いと言う物だから全部使っても良いし、余ったら自分で管理して俺に返さなくても良いお金だ。貯めても良いんだよ?】
「「「おおー!」」」
皆はそれぞれで何を買おうとか言い合っている。
【ただし、悪い人もいるからお金を取られないように注意する事!】
「「「はーい!」」」
【それでは準備をしたら皆で一緒に行っておいで!】
「皆と一緒、楽しみなのです!」
「欲しい物が買えるって、欲しい物って何だろう?肉串とか?」
リズは花より団子かな?
「本、買えないかな・・・。」
紙の本じゃなければ買えるかなー?
「服とか色々買えると思います。」
マオは堅実的だね。
うん、皆さん、いろいろ勉強しなさい。
皆が嬉しそうに準備をしに各々の部屋へと戻って行く。
うん、俺はルイスが起きるまで、ポーションを作っておくかな。
まずは瓶を購入しなければね。
準備をしに部屋へ向かう。
部屋に入ると窓を開け太陽に向かって祈る。
【『アリステリア様』本日も良い事があります様に。】
「ヘファさん。お祈りなのです?」
【うん、毎日やっているんだよ。】
「続けるのは偉いってルイスちゃんが言ってたのです。」
【そっか、じゃあ見ていたアリスが褒めてくれるかな?】
「分かったのですー!」
そう言ってアリスの前に屈むと頭をクシャクシャと撫でられた。
気の済むまでそうさせてあげた。
気を取り直して窓を閉める。
【じゃあ、俺も行ってくるよ!】
「行ってらっしゃいなのですー!」
そう言うと皆より一足先に東通りへ向かう。
ちょうど十時の鐘が鳴る。
良いタイミングだ。
この辺りにと周りを見ていると有りましたな、ポーション屋。
早速買い物をする。
「・・・まいどあり!」
ポーション用の瓶を在庫のあるだけ購入。
乳鉢はまだ四個あるから大丈夫だろう。
さてと、帰ってポーションを作りますか!
ふと、お店を見ていると化粧品店を見つけたのでなんとなく入ってみる。
いろんな化粧品があるんだなと思っていると女性店員が近づいて来て声をかけて来る。
「ようこそいらっしゃいました、若旦那様。彼女さんへの贈り物ですか?羨ましいですね。」
「ま、まあ・・・それで人気のある商品はどれなんでしょうか?」
「こちらの『白粉』が売れていますね。」
と、言われた。
あれ?
そういえば白粉って・・・。
『毒スキル』を使ってみると赤く光る。
やっぱりそうだ毒物の反応があった。
たしか亜鉛だとか水銀化合物だとかが使われていたんだっけな?
前世でウンチク好きの白井さんが言っていたような気がする。
塗っても舐めても毒だから、塗ったままおっぱいを上げていると赤ちゃんが一緒に飲むので良く死んだとかなんとか。
・・・うむ、怖いから違う物にしよう。
【口紅はおいてありますか?】
「紅、でございますね。」
そう聞くと案内してくれた。
赤い口紅が何種類か置いてある。
一通り見ているとサンプルの色を見せてくれる。
ルイスに似合うのはあるかな?
「・・・それで、こちらが新作となっております。」
と、流行りのピンクがかった口紅を見せてくれた。
おっと、早速あったのかな?
・・・おぉ、ルイスに似合いそうな色だ。
念の為に毒スキルを使う。
青い光だ。
これは大丈夫な様だ。
夜の為にも買っておこうかな。
そう言えば、ルイスも年頃の女の子なんだよな。
化粧品の一つや二つ・・・これぐらいなら贅沢じゃないよね!
【これを貰おうかな。】
「ありがとうございます。」
カウンターに行くと丁寧に聞かれる。
「贈り物用にお包み致しますか?」
そう言われたので、断って代金を支払いそのままの状態で受け取った。
「ありがとうございましたー!」
お礼を聞きながら店を出て口紅をバックパックにしまう。
良い買い物が出来たと中央の噴水の辺りまで来るとガシと肩を掴まれた。
「やっと見つけたわ!」
この声は・・・!
【ミカ!ミカじゃないか!元気そうだね!】
「元気そうだねじゃないわよ!約束を忘れてないわよね?」
【今は忙しいからまた今度ね。】
そう答えてミカの前から立ち去ろうとする。
「ちょ、待ちなさいよ!」
しばらく人ごみをスルスルと進んで行くとミカの姿が見えなくなっていた。
【ごめんね、ミカ。今日は忙しいんだ。】
と、言っていたら、人ごみを強引にかき分けてミカが近づいてくる。
「逃がさないわよ!」
あれまぁ、今日は厄日だ。
『アリステリア様』これも試練でしょうか?
と、祈っているうちに左手を掴まれた。
「これで逃げられないわよね?」
【分かったよ。君のしつこさには参った。降参だ。でも今日は用事がいっぱいあってな、また今度っていう事で頼むよ。】
「ちょ、それで逃げれると思わないでよね!せめてアンタの泊まっている宿屋を教えなさい!」
【また今度って事で!】
かまわず引きずって歩く。
「どんな力してんのよ!?とにかく放さないからね!」
ミカが両手でしがみ付いて来る。
っく、周りからの『痴話喧嘩なら他所でやれよ!』という視線が痛い!
【わーったよ!案内するから、引っ張るな!参った、降参!一緒に行こう!】
「分かれば良いのよ、分かれば。でも手は離さないわよ?」
【っち。】
「あー!今、舌打ちしたわね!とっとと教えなさいよね!」
【ドワーフってみんなこうなのかよ!?】
「鍛冶の事になると皆こうよ!」
そんな事を言い合いながら宿屋へ向かうのだった。
ここまでお読みくださってありがとうございます。
次話 三人でお買い物(仮 でお会いしましょう。
今週中にもう一本行けそうです。
今後共よろしくお願いいたします。
それではおやすみなさい。