帝国の晩餐会
いつも読んで下さっている皆様、誠にありがとうございます!
執筆終了いたしました。
お楽しみ頂ければ幸いでございます。
身支度を整えたセリスと一緒に練兵場を出る。
「今宵の料理も楽しみだ。」
ん?
楽しみ?
「アーサー様が作ってくれるのであろう?」
ノモス、聞いて無いぞ?
【そのような予定なのですか?】
「・・・まさか聞いてはおらんのか?」
【初耳です。】
「今宵、晩餐会を行う。その場で招待した貴族達に貴殿の考案したと言う料理を食べて頂く予定だ。」
ほほー、ノモスめ・・・後で覚えてろよ?
【それで、晩餐会はいつからですか?】
「十八時からの予定だぞ?」
【もう十六時じゃないですか!】
「そうだな。」
【『そうだな』じゃありませんよ!?】
「貴殿なら大丈夫なのであろう?」
【流石に支度をしておりませんよ!】
「陛下も楽しみにしていると言う話だぞ?」
不味いじゃないか。
【セリス様、急いで厨房に案内して頂けますか?】
「構わんが・・・。」
【何かありましたか?】
「私はもうアーサー様の物だぞ?」
【ええ、そうですね。】
「ならばセリスと呼んではくれまいか?」
【・・・それではセリス、厨房へ案内して下さい。】
「口付けが無いぞ?」
困った御姫様だ。
キスをする。
【では、セリス。案内を。】
「かしこまりました、アーサー様。」
返事が乙女なのだが?
俺達は厨房へと急ぐ。
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「アーサーの奴、何をやっているんだ?」
「・・・ねえ、ノモスさん。あの人に予定を言ってありましたか?」
「・・・あぁっ!しまった!」
「それだと流石のヘファ師匠でもこれないのでは?」
「っく、俺とした事が・・・。」
晩餐会の事を伝えるのを忘れていた。
機会は何度も会ったのだが浮かれていて忘れていた。
ルイス嬢とサーラ嬢には少々露出の高い帝国産のドレスに着替えてもらっている。
二人共巨乳なので特注品だ。
俺も正装のタキシードだ。
式場の準備は整っている。
食材などはアーサーに言われて購入してある物を厨房へ運んでもらっている。
だが、肝心のアーサーがいない。
時間はもう十七時四十分。
・・・終わった。
この失態では新たな領地などはもらえないだろう。
何をやっているんだ俺は。
済まん、皆。
済まん、アーサー。
そう思っていると陛下から挨拶が行われる。
失意の俺にはその声は届いていなかった。
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「シェフ、スープはこれでよろしいですか?」
味見をする、
【わずかですが、苦みがありますね、灰汁取りをちゃんとして下さい。】
「はい、シェフ!」
【それはとんかつと言う物です。切ってありますので各テーブルへ運んで下さい。】
「米が炊き上がりました!」
【それは御結びにします、見本を作るので同じように作って下さい。】
「分かりました!」
「灰汁取終わりました、もう一度確認をお願い致します!」
再び味見をする。
【うん、これで大丈夫です。先に、各テーブルにコンソメスープをお出しして下さい。】
「「「かしこまりました!」」」
そう、ある意味戦場である。
それに何故か料理人達と給仕の皆さんが協力的だった。
【陛下の物はこれを持って行って下さい。】
「かしこまりました!」
「シェフ、パンは出してもよろしいのですか?」
【それは通常の物なので陛下には出さないで下さいね。】
「かしこまりました!」
【陛下の物はこちらです、米粉パンを出してください!】
「かしこまりました!」
【肉料理の追加はこれを、『からあげ』と言う鶏肉料理です。】
「「「お運び致します!」」」
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「ノモスさん、料理が並んでいきますよ?」
「サーラ嬢・・・間に合わないと思って帝国の料理人達が作っているのだろう。」
俺は絶望していた。
こんな事で失態を晒すとは。
「ノモスさん、大丈夫ですよ。」
「何故だ、ルイス嬢?」
「並んでいるのはあの人の料理です。」
「何だって!?」
そう、余裕が無かったので匂いに気付かなかった。
これは・・・アーサーの料理だ!
来てくれていたのか。
済まない、アーサー。
この借りは必ず。
次々と料理が出されていく。
スープを飲み美味しいと言う貴族達。
とんかつを食べて美味いと言う貴族達。
お好み焼きを食べて美味いと言う貴族達。
それぞれの楽しそうな顔。
そして満足している顔。
アーサー、ここぞと言う時には必ずお前が助けてくれる。
俺はそんな事を思っていた。
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「陛下から『おこのみやき』の追加でございます!」
【俺が作ります、次の『マッシュルームのポタージュスープ』を出して下さい。陛下にもです!】
「「「御運び致します!」」」」
【そろそろ、デザートのクレープをお出しして下さい!】
「切り分けます!」
【お願い致します!】
「「「デザートのくれーぷ運びます!」」」
【陛下専用のお好み焼き完成しました、運んで下さい!】
「かしこまりました!」
【落ち着いたら最後のデザート、『アイスクリーム』をお出し下さい!】
「盛り付けはどのように?」
【見本を作ります・・・後はお願いしますね。】
「分かりました、シェフ。」
ふう、落ち着いたかな。
「陛下からくれーぷの追加です!」
【俺が作ります!】
もう少し時間が掛かるかな?
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「ノモス侯爵、この料理の上手い事!」
「ああ、それはとんかつと言う物でありますな。」
「この黄色い物を付けるとピリッとして更に美味いですな。」
「黄色い物は辛しと言って辛味なのですよ。」
「こちらの甘い物も小麦から作られているとか?」
「ああ、左様ですね。くれーぷの皮も小麦で作られております。」
「ほう、くれーぷというのですね、気に入りましたわ!」
「・・・ノモスさん、忙しそうね。」
「そうですね、ルイスさんモグモグ、このくれーぷと言う物、本当に美味しいですよ!」
「そうね、美味しいわよね。」
あの人はどんどん先に行ってしまうが、私は一歩一歩確実に近づいて、いつか隣に並ぶにふさわしい女になって行こう。
「ルイスさん、このあいしくりーむ、冷たくて美味しいですよ!」
「サーラさん、あいすくりーむ、よ。」
「それです!私もいつかヘファ師匠の嫁に・・・。」
「頑張れると良いわね。」
「ルイスさん、顔が怖いです。」
「そうかしら?」
しばらくすると皇帝陛下の挨拶で晩餐会は終了するのだった。
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「晩餐会、終了致しました!」
「「【お疲れさまでした!】」」
【まだ片付けがありますよ!】
「「「アッハッハッハ!」」」
「アーサー殿、先程は済まなかったな。」
「そうだ、陛下の事、本当にありがとう。」
「食の美味しさと怖さを勉強したよ。」
「「「これからも、よろしくお願い申し上げる!」」」
【こちらこそ、皆様のおかげで無事に終了させる事が出来ました、ありがとうございます。】
「片付けは我々に任せて下さい。」
「そうです、このぐらいはやらせて頂かないと。」
【そうですか?それではお言葉に甘えます、後はお願い致しますね。】
厨房を出て晩餐会の会場に行く。
参加者達は場所を移して歓談しているようだ。
ああ、俺は正装をしていないんだった。
この格好ではあの輪の中には入れないだろう。
「アーサー様。やっと出てこられたか。」
【セリス様こんな所で何を?皆様がお待ちですよ?】
「待っている者などおりません。」
【・・・その姿も美しいですね、セリス様。】
イブニングドレスに身を包んだセリスは美しかった。
「アーサー様の為に着替えました。」
【それは、光栄ですね。】
「いつもは軍服なのです。」
【ではその姿は俺の為に?】
「貴方様の為です・・・。」
【綺麗ですよ、セリス。】
「それなら御褒美の口付けを頂けませんか?」
【駄目ですね、紅がついてしまいますから。】
「・・・残念です。」
【紅を付けていない時ならば結構ですよ。】
「それでは貴方様が消して頂けませんか?」
【口付けをねだるとは、どうしましたか、セリス?】
「・・・アーサー様、お慕いしております。」
真剣な目をしている。
【それはお互いの事を知ってからと言ったはずですよ?】
「貴方様は私の事を分かっておられるでは無いですか・・・。」
【口付けに弱い所とかですか?】
「あっ、そ、そうです。」
【ですが、セリスは俺の事を分かっていらっしゃらない。】
「それは、貴方様が教えては下さらないのか?」
【それは後程の楽しみにしておいて下さい。】
出来る限り身なりを整えると声のする方へと二人で向かう。
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セリスの案内でまずは皇帝陛下の元へ向かう。
うーん、正装では無いのだが良いのだろうか?
「陛下、アーサー様をお連れ致しました。」
「おお、遅かったではないか、アーサー殿!」
お酒が入って気分上々と言った所かな?
「貴殿の料理は実に美味いな、くれーぷと言う物、実に気に入ったぞ!」
【デザートでございますね、陛下、その後、病の方は出ておりませんか?】
「うむ、貴殿の料理では出ぬな。これからも頼むぞ!」
これからとは?
まさか毎日ではないだろうね?
「ん?セリスよ、いつもの軍服ではないのか?」
「あ、は、はい、気分を変えようかと思いまして。」
「我の目は誤魔化せんぞ?アーサー殿の事を気に入ったのであろう?」
「そのようなこ、いえ、その通りでございます、父上。」
「・・・セリスに父上と呼ばれるとはな、本気なのだな?」
「はい。」
「良い返事だ、ならばその心を射止めて見せよ!」
「父上のお言葉の通り、必ずや射止めて見せます!」
「ふふ、アーサー殿、御転婆な娘だが頼むぞ。」
何か公式になっちゃったぞ?
無難に返事をするしかないな。
【まさか、セリス様のように魅力的な女性に慕われているとは。】
「ふふふ、まあ、頼んだぞ、アーサー殿。」
【かしこまりました、前向きに考えさせて頂きます。】
「今はそれで良い。セリス、しっかりとな。」
「ははっ!必ずや!」
うーん、困ったね。
セリスは魅力的だから構わないが、そんな事を言うとルイスが怖い。
王国にいるナナリーさんに申し訳が無いなぁ。
【それでは陛下、挨拶をしてまいります。】
「うむ、セリスを連れて行くが良い。役には立とう。」
【陛下、失礼致します。】
「アーサー様、御案内致します。」
貴族達に挨拶をしていく。
赤いマントが目立つから、アーサーだと言う事は認知されているのだろう。
いつ話しかけられてもおかしくはない。
そんな中、セリスが目を付けたのが・・・
「エクトス兄上。」
「誰かと思ったらセリスではないか?ドレスなどを着て戦ごっこは終わったのか?」
「おほん、こちらが、かの英雄、紅蓮のアーサー様でございます。」
その紹介の仕方はやめてほしい。
「おお、かの英雄がこんなにも年若いとは、公国や王国での活躍耳にしている。」
【吟遊詩人に誇張されて困ったものでございます。】
「あれか、バルロンデーモンの群れを三千匹討ち取ったと言う。」
【左様で。】
「ふふふ、そうであろう。そのような事信じられぬからな。」
「兄上、そのぐらいにして頂けますか?」
セリスさん、笑顔が怖いです。
「お、おう、ではな、アーサー殿、セリス。」
セリスの迫力に負けて行ってしまった。
他にも紹介されたが皆がセリスの笑顔で下がって行ってしまった。
この調子だとセリスがいつ爆発するか分からない。
困っていると一か所騒がしい所を見つけた。
この声はノモスだろう。
ルイス達もいるはずだ。
行ってみよう。
文句も言いたいしな。
【セリス、知り合いの声が聞こえるのでそちらに向かいましょう。】
「かしこまりました、アーサー様。」
声の主の方へ向かう。
・・・出来上がっていた。
さながら絶好調と言った所だろう。
口を開けばアーサーは、アーサーはなどと言っている。
それを見ていたルイスが俺に気付いたようだ。
「貴方、お疲れ様。」
「ヘファ師匠、お疲れ様です!」
【二人とも、楽しめたかな?】
「料理が凄く美味しかったわ。」
「全部美味しかったですが、くれーぷという物が特に美味しかったです。」
【それで、この状況は?】
「えっと、貴方に晩餐会の事を言っていなかったのを悔いていたのだけれど・・・。」
「料理が出て来るとそれはもう回り中から声がかかってですね・・・。」
「その後、すごく大変だったのよ?」
「そうですよ、ヘファ師匠!」
この状態では文句も言えない。
まあ、楽しそうなので良いだろう。
ノモスの口は留まるところを知らない。
【・・・放っておこう。】
「良いのか?アーサー様。」
【ああ、後で拾おう。】
「かしこまりました。」
「大丈夫かしら、ノモスさん。」
「また変な約束をしなければ良いんですけれどね。」
【・・・変な約束って何の事だい?】
「それが、貴族様方の婚約話を受けそうになっていたのよ。」
「ルイスさんが断ってはいたんですが、なんせ十人どころの申し込みでは無かったので・・・。」
【えーっと、まさか、受けてないよね?】
「安心して頂戴、貴方が巨乳好きだと言うと皆さんが諦めてしまったから。」
ルイスは晴れやかな笑顔だった。
俺に選択肢は無い様だ。
しかし、十組以上の縁談を断ったのか。
断り方が気になったが仕方があるまい。
すると、セリスが胸に手を当ててこちらを見ていた。
【・・・どうしたのセリスさん?】
「アーサー様、急用が出来た。この場は失礼する。」
【ああ、厨房への案内ありがとうね!】
セリスはこちらを振り返る事無く行ってしまった。
「ねえ、そろそろノモスさんを連れて行った方が良いんじゃないの?」
【そうだね、ベロンベロンだ・・・。】
ノモスを回収すると割り当てられた部屋へと戻る。
もちろん、ちゃんと部屋のベッドに寝かせたよ?
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!
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それでは 次話 晩餐会・その後(仮 で、お会い致しましょう!
お疲れ様でした!