約束
いつも読んで下さって、誠にありがとうございます!
執筆終了いたしました。
お楽しみ頂ければ幸いです。
朝を迎える。
確か出発は明日の午後だ。
詳しい時間はノモスから連絡があるだろう。
昨夜は二人を満足させるまで頑張った。
その二人は俺と一緒にベッドで眠っている。
そうだ、サーラは!?
ベッドの方を見ると乱れた姿で眠っていた。
ああ、自分で慰めていたのか。
可哀そうな事をした。
「うう・・・いつかは私も・・・。」
寝言が聞こえた。
聞こえなかった事にしてあげよう。
三人がまだ眠っていたので着替えをして日課をする。
【『アリステリア様』、今日も良き日を与えたまえ・・・。】
朝市に行く為に二人を起こそうかとも思ったのだが、その寝顔を見て微笑んでしまった。
だってすごく良い寝顔なんだもん。
朝市に行く為に部屋を出ると、年少組の部屋から声が聞こえる。
そう言えばアセディアが、こちらで寝ているんだっけか。
部屋のドアを少し開けて様子を覗き見る。
「アセディアお姉さんは、お兄さんを好きじゃないの?」
【好きってー・・・なあにー・・・?】
「うーん、ずーっとその人の事を思っているの、そうすると心がポカポカしてきてやる気が出るのよ?」
【それがー・・・好きと言う事ー・・・?】
「少なくともそうね、私はお兄さんと離れたくはないわ!」
「リズ姉と同じくですー!」
【好きー・・・ポカポカー・・・?】
どうやらアセディアはリズとマオに話しかけられているようだ。
朝の弱いリズが珍しい。
あら?
と言う事は、誘えるんじゃないか?
そう言う事なら早速行動あるのみ!
ドアを開けて挨拶する。
【おはよう!リズ、マオ、アセディア!朝市に行こうか!】
「お兄さん、レディのいる部屋に入る時にはノックしてって言っているでしょう!」
「そうです、ヘファさん。で、朝市って何ですか?」
【お兄ちゃんー・・・おはようー・・・。】
【朝市で美味しい物を食べよう!】
グ~・・・
リズとマオの御腹が『美味しい物』に反応したようだ。
「し、仕方が無いから、一緒に行ってあげるわ!」
「美味しい物ですか!食べたいです!」
【美味しいをー・・・くれるならー・・・行くー・・・。】
【じゃあ、外に出ているから支度をしてね。終わったら一階に来る事!】
「「はーい!」」
【分かったー・・・。】
そして一階で待つ事、20分。
やっと降りて来た。
「お兄さんごめんね。アセディアさんの服を着せるのに時間が掛かっちゃった。」
「そうです、時間が掛かったです!」
【二人ともー・・・ありがとうー・・・。】
アセディアもずいぶんと打ち解けて来たようだ。
【じゃあ、早速行こう!】
「「はーい!」」
【行くー・・・。】
宿を出て南通りへと向かう。
アセディアは途中でいつもの『面倒くさいー・・・。』が出てしまって俺が背負っている。
うへへ、胸が当たって良い感じだね。
おっと、リズとマオがいるんだ。
平常心、平常心。
そう言えば、アセディア達は髪型と髪の色、目の色を除くと顔と体形がそっくりなんだよね。
何でだろう?
「らっしゃい!若旦那、今日は寄って行かないのかい?」
【ありがとう、後で寄るよ。】
「よろしくでさあ!はい、らっしゃいよぉ!」
朝市に着くと早速声が掛かる。
その様子を見ていた三人から声が上がる。
「すごい人の数ね、お兄さんはいつもこんな所に来ているの?」
「人が多いです、それに良い匂いがします!」
【美味しいはー・・・まだー・・・?】
【じゃあ、行こうか。】
「「はーい!」」
先に味醂干しを食べさせてあげよう。
そう思って人混みの中を歩く。
【手を繋げないけれど、二人ともはぐれないようにね?】
「「はーい!」」
乾物屋に着くと早速言われる。
「おや?若旦那、新しい奥さんですか?それと・・・ちょっと若い感じがしやすが・・・?」
【ああ、背負っているのは奥さんじゃないけどね、ちょっと訳アリ何で聞かないでくれるとありがたい。それとこっちの二人は妹分だよ。】
「成程、かしこまりやした。で、今日はどうしやしょうか?」
【この子達に味醂干しを、そうだなカワハギと秋刀魚以外があればそれを頼むよ。】
「では、鰯があるのでそっちにしやしょうか?」
【いいね、そちらで頼むよ。】
グ~・・・
リズとマオのお腹が鳴ったようだ。
【・・・なるべく急ぎで。】
「かしこまりやした!」
「お兄さんの前で恥ずかしいわ!」
「恥ずかしいです!」
【人族はー・・・グー・・・って鳴るのー・・・?】
【ああ、それはお腹が減ると仕方なく鳴ってしまうんだよ。】
【ふーん・・・でー・・・美味しいはまだー・・・?】
【今、炙ってもらってるからちょっと待ってね。】
【分かったー・・・。】
アセディアをベンチに座らせてその両側にリズとマオを座らせる。
と、早速店員さんから声が掛かる。
「若旦那、焼き上がりましたぜ?」
【三人に渡してくれるかな?それと先で悪いんだけれどお代わりを頼むよ。】
「かしこまりやした。」
鰯の味醂干しの乗った皿を受け取るとマヨネーズと七味を取り出す。
【前に食べた物はカワハギと秋刀魚だったけれど、今回は違う魚で鰯と言うんだ、お勧めだよ。同じく、このマヨネーズを付けて食べるんだ。こっちの七味って言うのは辛いかもしれないから少しだけかけるんだよ?】
「「分かりましたー!」」
【面倒く】
【アセディアには俺が付けて上げるからね。】
【お兄ちゃんー・・・ありがとうー・・・。】
さて、鰯の味醂干し、三人の評価はいかに!?
「美味しいわ!まさかお兄さん、これを毎日食べているんじゃないわよね?」
「ヘファさん、美味しいです!リズ姉、七味をかけるともっと美味しいですよ!」
【美味しいー・・・もっと頂戴ー・・・。】
【今、炙ってもらっているからね、少し待ってね。】
「「はーい!」」
【待つー・・・。】
【それと、これは重要な事だから言っておくね。】
「重要な事って何、お兄さん?」
「何ですか!?」
【何かなー・・・?】
【食べ過ぎて朝御飯が食べれないとルイスに怒られます。】
「そ、それは怖いわね、気を付けるわ!」
「き、気を付けます!」
【大丈夫ー・・・美味しければー・・・食べれるー・・・。】
「「うう、羨ましい・・・。」」
「若旦那、おまちどうです。あれ?どうかしやしたか?」
【いや、何でもないよ。】
「「何でもないです!」」
【大丈夫ー・・・。】
皆がそう言うと味醂干しを置いて店員さんは下がって行った。
「マオ、後が怖いから二つだけにしておきましょう。」
「そうですね、無念ですが・・・。」
【私はー・・・もう少しー・・・食べたいかなー・・・。】
【じゃあ、アセディアの物を少し炙ってもらおう。】
店員さんに追加を出す。
それといつものように包んでもらって代金を支払う。
アセディアは美味しそうに五匹の味醂干しを平らげた。
「アセディアさんのお腹もどうなっているか知りたいわね・・・・。」
「そうですね、リズ姉。お風呂で触ってみましょう!」
「そうね、マオ!」
うん、聞かなかった事にしよう。
次は漁港に向かう。
【ここで鮪とかを買っているんだよ。】
「「へー・・・。」」
アセディアは当然俺の背中の上だ。
「お?シビ旦那、今日もあるよ!買っていくかい?」
【もちろんだよ、いつものようにしてくれるかな?】
「任せてくれよ!っていうかシビ旦那は手が早えな?背負っているその娘っ子は四人目かい?」
【残念ながら違うんだ。後、この二人は妹分だからね?】
「旦那が犯罪に手を染めていなくて良かったですよ。」
【おいおい、そんな事はしないよ。】
「冗談でさあ、すいませんね、あっはっはっは!」
「三番目はアタシなの!」
「四番目はアタシなんです!」
「・・・シビ旦那?」
【・・・気のせいだ。】
そんな事を話しながら解体してもらう。
その作業を、リズとマオは楽しそうに見ている。
「これが、あの御寿司になるのね・・・。」
「このままでも美味しそうですね!」
【そう、このままでも美味しいよ?刺身って言う食べ方もあるからね。】
「「へー・・・。」」
そして次は鰻を買いに行く。
「え!あの美味しいのはこんな魚なの!?」
「ニョロニョロしてます!」
【これもー・・・美味しいのー・・・?】
【ああ、調理する事でとても美味しくなるんだよ。】
「また、食べたいわね。」
「あの美味しさをもう一度!」
【美味しいならー・・・食べたいー・・・。】
【今日の夜にでも作ろうか。】
「お兄さん、約束よ!絶対だからね!」
「ヘファさん、絶対ですよ!」
【楽しみー・・・。】
【ま、前向きに善処致します。】
アセディアをベンチに下ろして両脇をリズとマオで固める。
その間に鰻を捌く。
捌き終えるとバックパックにしまう。
今日は四十匹だった。
俺が買いに来ると思って取っておいてくれたのだと言う。
嬉しいねえ。
色々な所を回り終えた俺達は宿屋へと向かう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
帰って来て早々だがそうなのだ。
鰻を捌いている時の時間を忘れていたのである。
そのおかげで宿に着いた時には十時を回った所だった。
俺達の朝御飯の時間が終わっていたのである。
この四人は朝御飯を食べていない。
味醂干しを食べただけだった。
「お兄さん、お腹が減ったわ・・・。」
「ヘファさん、味醂干しがもっと食べたいです!」
【私もー・・・食べるー・・・。】
【分かった、待たせちゃったからね。ごめんね、三人共。】
七輪を出して炭に火を付け、買ってきた味醂干しを焼いて四人で食べている。
今度はカワハギと秋刀魚だ。
御昼まで持てば良いとの考えだったので少なめにしておいた。
「ふう、お腹も膨れたし仕事に行くわよ、マオ!」
「はい、リズ姉!」
【頑張ってね、いってらっしゃい!】
【いってらっしゃいー・・・。】
その後、リズとマオは仕事へ行った。
片付けを終え、アセディアを背負うとノモスの所へ向かう。
そう、帝国へ行く日時を確認する為だ。
四階まで昇るとちょうどグレイさんが部屋から出て来た所だった。
ノモスがいるかを聞くといると言う事なので部屋に通してもらう。
「ボス、アーサー殿だ。」
「・・・アーサー、朝から配達の仕事かい?」
【配達って、背負っているアセディアの事か?違うって、明日の時間の確認に来たんだよ。】
「ああ、出発は十三時だ。船で行くから到着は次の日の十時を予定している。」
【へえ~、意外と早く着くんだね。】
「今回は海路だ。高速艇を使う。」
【何か急ぐ用事でもあるのかい?】
「負担はかかるが、早くエナ嬢を村に送り届ける為だ。」
【あれ?もしかして、フェアリー・ゲートは使えないの?】
「そうだ、月の位置が悪い。今日ぐらいは大丈夫だが、次に使えるのは五日後だろう。」
【成程、それで海路か。】
「後、着いたら昼食会がある。その為・・・。」
【それだとエナの村には行けない感じかな?】
「ああ、残念だが今回は諦めてもらおう。それは俺の方から伝えておくよ。」
【頼んだよ、ノモス。それにしても、流石は皇帝陛下。】
「おいおい、アーサー。君の為に時間を無理やり突っ込んだんだぞ?」
【無理やり突っ込まなくても良いのに・・・。】
「何を言っているんだ・・・それに君が料理を作るんだぞ?」
【え?俺が作るの!?】
「そうだ、宮廷料理にも負けない物を作ってくれよ?」
【ノモス、分かっていると思うけど。】
「『俺は鍛冶師だ!』だろう?分かっているさ、ただな、お偉い方、特に皇族の中で君の実力を信じない者が大勢いるんだ。」
【そんな奴ら放っておけばいいじゃないか。】
「そうもいかん事情があるんだよ。」
【どんな事情さ?】
「それは・・・言えん。」
【なんか怪しいな?】
「怪しくなんかないぞ?」
【実力を示さないと駄目ならミスリルの剣を作ればいい事だ。料理は関係ないじゃないか。】
「ふう・・・なら言おう。帝国の小麦の事情は知っているな?」
【ああ、豊作続きで逆に不味いって事だろう?】
「そうだ、そこでアーサー、君にレシピを色々と教わった。」
【あー、ラーメンに餃子とかの事?】
「そうだ、その小麦を使ったレシピを商会を通じて広めている所なんだが困った事が起こっている。」
【困った事?】
「君が発案者だと言っても誰も信じないのさ、商会が利権の為に英雄の名を使っているのだろう、英雄様はそこまでして名前を広めたいのかね、と。そんな物言いは俺が許せん。」
【ノモスの言いたい事は分かった。まずは、その人達を料理で黙らせろって言う事なんだね?】
「そうだ、その為の昼食会だ。」
【そちらの事情は分かった、商会の信用に関わりそうな事なら協力しよう。】
「助かる、アーサー。」
【それで、昼食会には小麦を使わないといけないの?】
「もちろんだ、小麦を使ってお偉いさんの舌を唸らせてくれ。」
【それなら全力で行かせてもらおう。いいよね、ノモス?】
「ちょっと待て、全力とはどういう事だ?」
【その前に皇帝陛下の好みを聞いておこうかな。】
「陛下の味の好みならこの資料を読んでくれ。後・・・陛下は病があってな。」
資料を読んでみる。
ふむふむ・・・甘い物が好き・・・あれ?
料理を食べた後に必ず出る?
この症状って・・・!?
「どうだ、アーサー、黙らせそうか?」
【・・・足りない食材のメモを渡しておくから用意しておいてくれるかな?】
「それは構わないが、先程の全力とはどういう事だ!?」
【食文化を馬鹿にする人達にはそれ相応の報いをってね。】
「おいおい、皇帝陛下もいるんだぞ?」
【皇帝陛下の『口』に合わせるよ。】
「・・・本当に頼むぞ、アーサー。」
【任せてくれ、まずはその人達を料理で黙らせて見せようじゃないか。】
「俺は変な罠の石床を踏んだのか?」
【まあ、任せてくれよ。】
「本当に大丈夫なんだろうな?」
【大丈夫だ、俺の料理なら陛下の病も出ないと思うよ。】
「ほう・・・分かった、親友の言う事を信じよう。」
【それでこそ、ノモスだ。】
「後は『セリス様』が気に入るかどうかだ・・・。」
【ん?何か言ったかい?】
「いや、こちらの話だ。」
【時間と事情が分かったなら出来る所まで食材を作っておくよ。】
「ああ、頼む。」
そう言うノモスの言葉には不安が乗っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アセディアをベッドに寝かせるとフェアリー・ゲートで徳之島諸島へ来た。
目的の食材が足りないと思ったからだった。
多分だが陛下の病気は、この世界では一般的ではないのだろうな。
そんな事を考えながら店を探す。
この島国のフェアリー・ゲートは街の中に設置されている。
これはゲームの通りだった。
そして街並みを見る。
うーん、間違った日本の文化だな。
これもゲームの通り。
25年以上前の人が誤った知識で日本と言う国を、町を再現したのである。
なにせ、味噌汁が魚の切り身と水で出来ると言うとんでも仕様なのだ。
胡散臭い事この上ない。
とりあえず店を探す。
米と大きく看板の出ている目的の店を見つけたので、食材を買い込む。
お金は大陸公用通貨で買う事が出来た。
食材を買う事が出来れば、今の所この国に用はない。
急いでフェアリー・ゲートに戻る。
ん?
・・・二・・・三人かな?
視線を感じる。
ちょっと試してみるか。
堀を曲がった所で隠蔽スキルを使う。
視線から動揺が感じ取れる。
そのまま隠密スキルで視線の元に向かう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「馬鹿な、気配まで消えたぞ!?」
私は焦る。
忍者としてはまだ半人前なのは自覚している。
桔梗様のような上忍にはとてもではないが及ばない。
だが、赤いフード付きのマントを被った異国人らしき男。
間者かと思って様子をうかがっていたのだが堀を曲がったとたんに突然消えたのだ。
鏡を取り出し仲間に合図を送る。
チカチカと返信があったが不明との返信だった。
三人で見張っていたのだぞ!?
やはり、何処かの間者か?
【ねえ、君。かくれんぼならもっと上手く隠れないとこうやって簡単に鬼に見つかっちゃうよ?】
「なっ!?」
いつの間にか背後を取られた!
殺気はないがこの状況。
動けない。
動けば昏倒させられて攫われるだろう。
【ねえ、黙っていたら分からないよ?】
この状況で喋っても大丈夫だろうか・・・?
「こ、この国に何の様だ?」
【ちょっと食材を買いに。】
しょくざい?
かい?
何かの暗号なのか?
・・・頭が、考えが混乱する?
分からない。
「貴様は何者だ、どうして私は生きている?」
そうだ、こんなに簡単に背後を取られたのだ。
殺されていても不思議ではない。
では、なぜ私は生きているのだろうか?
【生きているって物騒な・・・君、うーん、君っていうのも何だし、名前を教えてくれないかな?】
名前だと?
そんな事を聞く暇があるのなら拘束するべきではないのか?
しかし、動けない。
何なんだ、この異国人は?
【俺はねヘファイストスって言うんだよ。それで君の名前は?】
「つ、蕾。」
【じゃあ、蕾ちゃん、なんで俺の事を見ていたのかな?ああ、他の二人は拘束しているよ?】
「ばっ!いつの間に!?」
【他に仲間はいないみたいだよね?】
「・・・。」
【うーん、女の子に手荒な事はしたくないなぁ。教えてくれないかな?】
「お、教える事は出来ない。」
【無理やりは趣味じゃないけれど、口を割らせちゃうよ?】
「拷問されても言う訳にはいかない!」
【・・・それじゃあ、楽しんでね?】
その赤い影が迫って来た・・・。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
・・・しばらく後に気が付く。
右手はある。
左手もある。
・・・下半身の感覚が麻痺しているようだ。
意識がまどろんでいる。
・・・気持ち良かった。
と、恥ずかしさに顔が赤くなる。
何だあの男は!
両手を拘束されたかと思ったら下履きを取られ秘所を触られて簡単に達してしまった!
それも指だけで簡単に達してしまったのだ!
そのまま続けられて何度も何度も達してしまった。
あまりの快感で頭がおかしくなりそうだった。
許しを乞うたが受け入れられず、そのままその行為は続いた。
気を失っていたのだろう、気が付けば今だった。
だが・・・ものすごく気持ち良かった。
すぐに羞恥が私を包み込む。
ヘファイストスとか言っていたな。
・・・何処の国の人なのだろうか?
こんな気持ちは初めてだ。
お暇を出してあの方を探してみるか?
いやいや、探してどうする!?
房中術の修行でも達した事は無かった。
本物の経験がないのがまずかったのだろうか?
それにしても気持ちが良かった。
まだ下半身がガクガクする。
異国人はあんなにも女を喜ばせるのが上手いものなのだろうか?
いや、あの人が特別なのだろうか?
待て待て、まずは下履きをはかないと・・・。
こんな状況を仲間に見られたら何と言われるか。
まだ膝がカクカクする。
上手く立てない。
だが、回復するまでなど待てない!
しばらくすると仲間が探しにやって来たがその頃には下履きをはく事が出来た。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
結局、情報を聞き出す事は出来なかった。
あんなに喜んでいたのに。
下履きを取ったらノーパンなんだもんな。
ちょっと熱が入っちゃったよ。
最後には泣き叫びながらもっとして下さいとブーツを舐めたのには驚いた。
その後も気絶するまで可愛がってあげたけれどね!
蕾ちゃんか、覚えておこう。
フェアリー・ゲートから宿に戻ると厨房で昼食会の支度をする。
こんな手の込んだ仕込み・・・なんか久しぶりだよね。
貴族屋敷以来だ。
あの時も色々あったなぁ。
「ゴリゴリゴリ・・・」
この街での事を思い出しながら準備をしていたらもう十五時だった。
明日からルイス達ともしばらくお別れだ。
でも、今夜ぐらいはゆっくりと語り合いたいな。
昨日頑張ったからね!
そんな馬鹿な事を考えていると声が掛かる。
「何を考えているのかしら?」
【ルイスこそ、もうそろそろ仕事が終わるんじゃないのかい?】
「・・・そうね。」
【お土産を買ってくるよ。】
「え、ええ、楽しみにしているわ。」
【しばらく留守にするけど・・・皆の事を頼むね。】
「分かったわ・・・それでどうしてニヤニヤしていたの?」
【ちょっと貴族屋敷の晩餐会の事を思い出していてさ。】
「ふーん、それで鼻の下を伸ばしていたの?」
【どう言う意味さ?】
「私のドレス姿を思い出していたのかと思ったのよ。」
【そう言えば、あのドレスはどうしたのさ?】
【大切にしまってあるわよ、あの襲撃の時に汚れてしまったけれど。唯一無事だった・・・私の宝物。」
【そっか、そんなに大切にしてくれているなら、また着る機会を作ってあげないとね。】
「綺麗になったとしても、もう胸が入らないわよ?後、お尻も・・・。」
【そっか、調節のきくように作ったドレスだったっけなぁ?もし、ルイスが良ければまた作るよ。】
「・・・なら、ひ、一つだけ贅沢、我儘を言っても良いかしら?」
【ルイスが我儘なんて珍しい、何か欲しいのかな?】
「落ち着いたら、その、私との、け、結婚を・・・考えてほしいの。」
顔を真っ赤にしたルイスがそこにいた。
ルイスから言わせるなんて、俺ってやつは・・・この、大馬鹿者め。
【ルイス、ごめん。】
「・・・駄目なの?」
【違う、俺から言う事なんだ。】
厨房から出てルイスの前で跪く。
夕日を浴びている、ブリリアントなメイド服を着ているルイスは綺麗だった。
目を合わせると、手を取りはっきりと言葉にする。
【愛しいルイス。この俺、ヘファイストスと結婚して妻となって頂けませんか?】
返事がないが雫が一粒落ちて来た。
その雫はどんどんと増えて行きルイスの泣き声が聞こえて来た。
しばらくその泣き声は続いていたが、しっかりとした言葉で返事をされた。
「はい、私の愛しい人。ヘファイストス様と結婚し、妻となる事を創造神様と愛の女神様に誓います。」
『アリステリア様』は愛の神と言っていたと思うが・・・。
あの『オネエ』は女神様扱いなのか。
【俺のルイス。】
「私のヘファイストス。」
抱きしめてキスをする。
そう、この日やっと俺達はスタート地点に立てたのだ。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました!
まずは、いつものから!
評価、イイネ、ブックマーク等々。
大変に励みになります!
皆様に感謝を!
そろそろ第二幕も終わりそうです。
頑張って執筆いたします。
それでは 次話 誓い(仮 で、お会い致しましょう!
お疲れ様でした!