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ただの寂しがり屋の女の子

いつも読んで下さって、誠にありがとうございます!

執筆が終わりました。

お楽しみ頂ければ幸いです。

影が伸びて来る。


刀でそれを薙ぎ払う。

悪魔特効はさすがに効いているようだ。

ティアに焦りが見える。

俺には、その焦りは違う物のように思える。


【ティア、いい加減にしないと怒るぞ!】


【良いわ、その怒りをぶつけて頂戴!】


ギン!


カキーン!


刀で影を打ち払う。

なぜか涙が出てきた。

涙を拭うとティアと対峙する。


【何故君が戦闘を強要するのかは分からないが、それが君の望みなら・・・手加減はしない。】


【それで良い、人族の勇者!】


この遺跡での戦闘は不利だった。

何せ回り中が影だ。

それに影には殺意が無いのだ。

経験と勘でその影を避け断ち斬る。


ザシュ!


【流石ね勇者、この程度の曲芸では仕留められないようね。】


【曲芸ならこちらにもあるよ?】


【どんな物なのかしら?】


【・・・騎士魔法 5th ホーリー・ライト!】


光を生んだ。

影が消える。

そのすきを見逃さずに斬り込む。


【っく、でも、影が無くなるわけでは無いわ!】


【そのすきが致命的なんだ。】


ザシュ!


ティアの胸から腹にかけて斬る。


【流石よね、人族の勇者。グレーター・ヒール!】


ティアの傷が塞がって行く。

と、服も治って行く。

あの服は魔力で作られていて体の一部のような物なのかな?


【これでも終わらないんだろう?本性を見せたらどうだい?】


【・・・。】


【何故見せないんだい?】


【う、煩い!】


【見せたくない何かがあるのかい?】


【そんな物は関係ない!このままでも十分だと判断したのよ!】


【・・・それじゃあ行くよ?】


キン!


カキン!


ティアの影に力が無い。


【ティア、攻撃に殺気が乗っていないじゃないか。それじゃあ俺は倒せないよ?】


【ダーリンこそ殺気が無いわよ?】


【ふふっ、まだダーリンと言ってくれるんだね。】


【っく・・・。】


キン!


【ティア、良い子だからもうやめるんだ。】


キン


【嫌よ!】


【何で意地を張るんだ?】


【私だけの・・・。】


【いい加減に聞き分けなさい!】


【っつ・・・。】


動きを止めた?

必死の説得が効いたのか、ディアが攻撃を止めていた。


【・・・ねえ、ダーリン。】


【なんだい、ティア。】


【私は貴方が欲しいの。】


【知っている。】


【でも、私だけの物にするとその魂は陰ってしまうの。】


【・・・。】


【でも、私だけの物にしたいのよ!】


【ティア、輝いているって事はそう言う事も含めているから輝いているんだよ?】


【そう言う事?分からないわ!?】


【今まで通り勉強すれば分かるようになるよ!】


【でも、私は悪魔族!人族とは相容れないのよ!】


【それがどうした!】


【・・・。】


【アセディアとも分かり合えた!ティアとだって!】


【それはダーリンだからよ!】


【違う!ルイスだってナナリーさんだって女将さんだって皆が受け入れてくれたじゃないか!】


【そ、それは・・・。】


【違うとは言わせないぞ!その経験は、思いは君の中にだってあるはずだ!】


ティアの肩から力が抜けたのが分かった。


【・・・はあ、相変わらず甘いのね。】


【甘くたっていいさ、ティアは俺の大切な人なんだから。】


【ダーリン、もう一度言ってくれるかしら?】


【ティアは俺の大切な人なんだ!】


【・・・。】


【もう一回言おうか?】


【結構よ。それで、依り代の娘から分体を引き離せばいいのね?】


【ああ、頼めるかな?】


敵意が完全に無くなったので刀をしまう。


【ねえ、ダーリン。】


【何だい、ティア。】


【私がいる事を忘れないでほしいの。】


【ああ、忘れない。寂しくてこんなに駄々をこねる子供のような君を。】


【わ、私は子供ではないわよ!】


【俺から見れば君は子供と同じだよ。】


【ふふ・・・あははは!】


【ティアは何かしたい事はあるのかい?】


【今は、ダーリンの隣に、近くに居たいわ・・・。】


【ティア、俺も同じだよ。】


【でも、もう隣にはいられないのでしょう?】


【今は隣にはいられないかもしれないけれど、君が寂しくないようにするよ。】


【引き離せたわ・・・これで、ダーリンとは会えなくなるのね・・・。】


【いつでも会えるさ。ここのルーンを焼いておいた。】


【いつでもいいから・・・会いに来るのよ?】


【分かっているよ、ティア。】


ティアの、その辛そうな顔から涙が零れる。


【ねえ、ダーリン・・・この目から出る雫は何かしら?】


【それは涙と言うんだ。一般的には『寂しい』とか『悲しい』と言う感情だと思うよ。】


【寂しいは嫌ね、それに悲しいも・・・。】


【もう、泣かないでティア。】


【自然に出て来るのよ・・・止まらないの・・・。】


しばらくその涙は止まらなかった。

涙が収まって来た所で話す。


【そんな寂しがりなティアに言っておく事があるんだ。】


【・・・何かしら?】


【エナを送るのと皇帝陛下からの依頼でしばらくは、クヴァール帝国にいる事になるよ。】


【それは良いわね!すごく良いわ!】


【まだしばらくは近くにいられるよ。】


ティアが飛びついてきた。

その体を抱きとめる。


【私の大好きなダーリン。まだ一緒にいられるのね!】


【ああ、しばらくは一緒だよ、ティア。】


【嬉しいわ!こんなに嬉しい事は無いの!】


【喜んでくれてる所悪いけれど、ちょっと怒るからね?】


ゴチン!

と、頭に拳骨を落とす。


【な、何よ!?】


【こんな盛大な駄々をこねるんじゃない!もっと素直になりなさい!】


【だって、どうすればいいのか、分からなかったんだもの!】


【そういう時は素直に言えば良いんだよ。】


【素直に・・・言う?】


【そうだ、俺達には言葉があるんだからね。】


【何て言えばいいのかしら?】


【・・・側にいてとかでも良いでしょう?】


ちょっと照れ臭い。


【ふふっ・・・分かったわ、今度があったら素直に言うわね。】


【ああ、待っているよ。】


【行くのね、ダーリン。】


【ああ、エナの状態も気になるしね。】


【寂しいわ。】


【帝国内だったら、何時でも会えるのでしょう?】


【そうね。】


良かった、涙が止まった。


【帝国へは数日後に出発する予定だ。それまで良い子に出来るかい?】


【良い子って・・・もう!】


【ふふ、可愛いな。】


その濡れてしまった頬を触る。


【ダーリン。】


【何かな?】


【呼んでみただけよ。】


【・・・それじゃあ、そろそろ行くよ。】


【ええ、その時を、会える時を楽しみにしているわ!】


【ああ、俺の可愛いティア。大人しく待っているんだよ?】


【ふふ、分かったわ。】


背中を向け歩き出す。

そう、また会う事が出来るよ。


遺跡を出て馬に乗り、ゲートの魔法を発動していつもの宿屋へと戻る。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


宿に着いた俺は、エナにエリクサーを飲ませる。


みるみると顔色が良くなっていった。

これで大丈夫だろう。


「良かったわ・・・。」


「良かったですー。」


「これで一安心ですね。」


【三人共ありがとう、昨日はろくに寝てないだろう。今日はゆっくりと休んでね。】


「甘えさせてもらうわね。」


「今日は、眠らせて頂きますねー。」


「皆さん、お疲れ様でした!御二人ともお風呂に行ってから寝ますよね?」


そう言うと三人ともお風呂へ行ったようだ。


ティアの事を思い出す。

寂しかったんだな・・・

大丈夫さ、すぐに会えるよ。

待っているんだよ?

俺の・・・俺だけの可愛いティア。


【お兄ちゃんー・・・役に立ったー・・・?】


【ああ、アセディア。おかげで助かったよ、ありがとう。】


【良かったねー・・・。】


アセディアが微笑んでいた。

勉強出来ているんだね。

そんなアセディアの頭を撫でつける

嬉しそうに微笑んで受け入れてくれた。


さてと、数日後は帝国へ出発か。

どんな事が待っているのやら。

そう言えば王都の状況はどうなったのだろうか?

明日辺りに情報が入ってそうだな?


そんな事を考えていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


お風呂から帰って来た三人に改めて帝国へ行く事を伝える。


「そう、エナさんともお別れね。」


「賑やかでしたからね、寂しくなりますねー。」


「ヘファ師匠、お帰りはいつ頃ですか?」


【ああ、サーラには今回は付いて来てほしいんだよ。】


「「どうしてなのかしら?」」


ルイスとナナリーさんが凄い勢いで食いついて来た。


【ふ、二人とも落ち着いて、依頼が鍛冶の仕事だからだよ。サーラには良い経験になると思うんだ。】


「心配だけれど、貴方が言うなら・・・。」


「ヘファ君、気を付けて下さいねー。」


「うう、御二人からの信用が無いのが痛いです。」


「「日頃の行いですね。」」


「ううっ、気を付けます。」


【長期滞在するようなら手紙を出すし、何かあればリターンで戻れるから。】


「分かったわ、気を付けて行ってきてね。」


「もしかして、その間は私達がアセディアさんの面倒を見ているのですかー?」


【皆にも懐いてきたし・・・大丈夫だよね、アセディア?】


【うんー・・・私ばかりがー・・・お兄ちゃんをー・・・独り占めする訳にはいかないからー・・・。】


【と、言う訳です。二人ともお願いしますね。】


「「分かったわ。」」


「何かあったら連絡を頂戴ね?」


【ああ、もちろんだよ、ルイス。】


「気を付けて行って来て下さいねー。」


【ええ、ナナリーさん。】


【こっちはまかせてー・・・友達はー・・・私が守るよー・・・。】


【ああ、お願いするよ、アセディア。】


【お兄ちゃんはー・・・アバリティアの事をー・・・お願いねー・・・。】


【分かっているさ、さて、夜も遅い皆は眠ってくれ。】


部屋の明かりを消す。

エナの寝ているベッドの近くに椅子を持ってくる。

しばらくすると皆の寝息が聞こえて来た。

椅子に腰かけているとアセディアがベッドから起き上がり近づいて来た。


【お兄ちゃんはー・・・寝なくても大丈夫なのー・・・?】


【ああ、エナの事が心配だからね。】


【お兄ちゃんがー・・・大丈夫ならー・・・良いよー・・・。】


【アセディアも眠っても良いんだよ?】


【お兄ちゃんとー・・・一緒にー・・・起きてるー・・・。】


俺を見て自然とほほ笑んでくれた。


【ありがとう、アセディア。】


【その代わりー・・・抱っこしてー・・・。】


ありゃま。

七大悪魔って甘えん坊なのか?

まあ、良いか。


【おいで、アセディア。】


黙って膝の上に乗ってくる。


俺は夜が明けるまでそうしていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


次の日の朝御飯の時に帝国に行く事を年少組に伝える。


「そっかー、エナさんともお別れなのねー。」


「寂しく・・・なりますね・・・。」


「今度はこっちから会いに行くんですよ!」


「そうなのです!」


女将さんにはノモスから伝えてもらった。

これぐらいは良いだろう。

渋々だが承知してくれたらしい。

後は爺さんに情報を聞いておかないとな。


朝御飯が終わるとルイス達に後を頼み、サーラと貴族屋敷へと向かうのだった。

ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます!

まずは、いつものから!

評価、イイネ、ブックマーク等々。

大変励みになります!

皆様に感謝を!

それでは 次話 王都の惨状とつかの間の休息(仮 で、お会い致しましょう!

お疲れ様でした!

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