混戦
いつも読んで下さって、誠にありがとうございます!
執筆終わりました。
楽しんで頂ければ幸いです。
【やった!アセディアが味方に、友達になってくれたぞ!】
「おお、やりましたね、アーサー!」
「これで任務完了だな!」
「やったんさ~、アーサー君!」
「試練を乗り越えられましたね!」
「さすが、兄貴だぜ!」
【ねえ、お兄ちゃんー・・・。】
【は、はい?】
【この人達はー・・・何かなー・・・?】
【俺の仲間です!】
【ならー・・・殺さないであげるー・・・。】
「「「っほ・・・。」」」
アセディアはそのまま皆の所に行こうとしたのだが・・・。
「って、ちょっと御待ちになって!」
「男共!後ろを向くんさー!」
「あ、兄貴達、後ろを向けー!」
「「「お、応!」」」
そう、素っ裸だったのだ。
「アセディア様、とりあえずこちらをお召しになって下さいませ。」
ラフィアが背負い袋から出したローブを着せているようだ。
【えー・・・面倒くさいー・・・。】
「そんな事では悪い殿方に襲われてしまいますわよ?」
【面倒くさいけれどー・・・殺せばいいじゃないー・・・。】
「ぶ、物騒ですわね、おっほん、人を殺さない為に服は着ておいた方が良いのですわ。」
【殺しちゃ駄目なのー・・・?】
「殺すのは最後の手段ですわ。」
【最後の手段ー・・・?】
「ええ、襲われたりしても殺してはいけないのですわ。」
【面倒くさいー・・・。】
「でも、良い事がありますわよ?」
【良い事ってー・・・なあにー・・・?】
「人から嫌な事をされなくなりますわ。」
【それならー・・・我慢しようかなー・・・。】
「ええ、我慢して下さいまし。」
【ねえ、お兄ちゃんー・・・。】
【な、何かな、アセディア。】
【アバリティアはー・・・?】
【今はいないですね。】
【アバリティアはー・・・何でー・・・お兄ちゃんの味方をしてるのー・・・?】
【お友達だからです。】
【お友達ー・・・?】
【俺は、アセディアも友達になってくれて嬉しいです。】
【あのアバリティアがー・・・お兄ちゃんにー・・・協力しているのー・・・?】
【ええ、友達ですから!お互いに協力し合っているのですよ。】
【そっかー・・・ならー・・・私も協力してあげるねー・・・。】
【ありがとうございます、アセディア。】
【うんー・・・お兄ちゃんー・・・。】
よしよし!
上手い事、説得・・・・出来たぞ?
出来たのか?
そして俺達は支度を整えるとアセディアを連れて下山しだした。
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「カルブ王子、山から黒い光が上がりました!」
「復活したか!戦士と神秘魔術師の部隊を半数、山へ移動させる準備をせよ!」
「「「ははっ!」」」
「怠惰め、何としてもここで倒すぞ!」
王子がそう言うとガーゴイル族達は山へと移動をする準備を始めたのであった。
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「ガーゴイル族の約半数が何処かに移動する準備を始めました!」
「何じゃと!?」
慌てて天幕を出ると日の光の中、山から黒い光の柱が上がっていた。
「あんちゃん、間に合わせてくれよ?」
「父上、ヘファイストス殿の事です、大丈夫でしょう。」
「・・・そうじゃな。」
「それより目の前のバルロンデーモンをどうにかしませんと。」
「敵の数はどうじゃ?」
「目視で約500!」
「戦闘状況は?」
「ガーゴイル族のコロッサス隊が奮戦しております、その数約50!」
「50じゃと?・・・ううむ、温存しだしたか?」
「父上、温存とは?」
「多分じゃが、ガーゴイル族の本当の目的は怠惰の討伐じゃ!」
「何ですと!?」
「この戦いを中央大陸へ攻め込む為の足掛かりにするつもりじゃ。」
「それでは、この援軍は・・・。」
「そうじゃ、外交では事態が進展しなかったのじゃろうて・・・。」
「上手く利用されましたな・・・。」
「そうじゃ、じゃが、まだやれる事はある!」
「それは?」
「あんちゃん達が、怠惰をどうにかするまで持ちこたえるんじゃ!」
「自軍に陣を敷かせます。」
「間に合ってくれよ、あんちゃん!」
そう言うと部隊の士気を上げる為に、レガイアと戦場へ赴くのであった。
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「きっと、皆さん驚きますよ?」
「ああ、強欲さんに続き、怠惰さんまで仲間にしたんだからな!」
「これで、この街は安全になったんさ~。」
「良かったですわ、一時期はどうなる事かと・・・。」
「さすが、アーサーの兄貴の飯だぜ!」
御飯が美味しいのは認めるが俺は鍛冶師なんだよ。
そこの所は間違えないでね、皆。
【で、俺は何でアセディアをおんぶして下山しているのでしょうね?】
「それは、アーサーに懐いているから・・・じゃないかな?」
「そうだぜ?」
「アーサー君にしか、任せられない役目なのさ~。」
「アーサー様、これも試練ですわ!」
「兄貴、任せたぜ!」
アセディアは下山を面倒くさいと嫌がったが、今は落ち着いて俺の背中で眠っている。
ティアと違って眠るんだね。
それにしてもポニョポニョが肩に当たって気持ち良いですけれどね!
しかし、あの質量だった物がこの大きさになったのだから相当重いと思っていたのだけれど、この凶器が付いているのに四十kgぐらいだろうか?
お尻に手が当たっている感触も良いね!
役得と思って我慢しよう。
「それにしても、アーサー。」
【何ですか、ジャスティンさん。】
「怠惰さんに美味いと言わしめた、ちゃーはんなる料理、是非食べてみたいですね。」
「そうだぜ、昼過ぎたから腹が減ったぜ。」
「アーサー君、あーっしも食べたいんさ~。」
「よ、よろしければ、私も・・・。」
「アタイも!アタイも食べたい!」
【仕方がありませんね、アセディアを友達に出来た記念です。帰ったら全員に振舞いますよ!】
「ありがとう、アーサー!」
「やったぜ、なあ、ディアナ!」
「そうっすね、ダンの兄貴!」
「楽しみなんさ~!」
「楽しみにさせて頂きますわ。」
皆の表情も明るい。
そうだろう。
アセディアを友達にしたおかげで、王国は最大の危機を脱したのだから。
これで役目は果たしたぜ、爺さん。
目標を達成出来て俺は満足していた。
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「何だあの光は!?」
「わ、分かりません!」
「おそらく魔法ではないかと・・・。」
「っく、化け物めっ!」
光が走ったかと思ったらその光の走った後が大爆発したのだ。
あの魔法を受ければ、200名足らずの我々はなすすべもなく全滅するであろう。
いや、大群で攻めていた時にあの魔法を食らえばどうなる事か・・・。
それ程の強烈な一撃だった。
「あの魔法、防げるか?」
「無理でございます!」
「我らの技術にはそのようなものはありません!」
「っく、ガーゴイル族の精鋭が来ておるのだぞ!これでは手も足も出んではないか!」
「さすが、アル・サーベ・イブリースと言ったところですな・・・。」
「感心している場合か!」
「も、申し訳ありません!」
「何か手を考えよ!何かあるはずだ!」
「「「ははっ!」」」
「第一戦士隊と神秘術師隊はバルロンデーモンとの戦闘を継続!」
「かしこまりました!」
「第二部隊はそのまま待機!」
「伝令を送ります!」
っく、アル・サーベ・イブリース、何と恐ろしい者よ・・・。
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「光が走って王城が爆散したじゃと?」
「っは!山の頂上より光が走り、その光の走った後は一面の焼け野原でございます!」
「その光は王城に直撃し、王や大臣達の安否は不明でございます!」
「ば、馬鹿な!?」
力が入らなくなったわしは目の前が真っ白になった。
「父上、気をお確かに!」
そんなわしをレガイアが支えてくれる。
「そんな化け物、いくらあんちゃん達でも、何ともなるまい・・・。」
「父上、今は目先のバルロンデーモンでございます!」
「そ、そうじゃな、状況は?」
「敵の総数、約400!」
「味方の損害、大なれど士気は旺盛でございます!」
「援軍の状況は?」
「コロッサス部隊、約50。先程と数は変わっておりません!」
「・・・これは、腰が引けたか?」
「父上?」
「先程の攻撃を見てどうするか迷っておるのじゃよ、100程度で向かっても一瞬で壊滅じゃろうて・・・。」
「左様ですな、では?」
「そうじゃ、あんちゃん達が戦っておるようじゃから信じて吉報を待つ!」
「では、戦闘は継続でございますな。」
「ただし、コロッサスを前面に押し出すんじゃ。」
「作戦通り人的被害を最小限にするのですな?」
「そうじゃ、ガーゴイル族には悪いがの、はるばるやって来たんじゃ、武勲を立てさせてやれ!」
「かしこまりました、前線で指揮を執ります!」
「無理はするなよ、レガイア。」
「では、行ってまいります!」
そう言うとレガイアはアレックスを伴って前線に向かった。
「あんちゃん・・・頼んだぞ!」
そしてあんちゃん達の無事を『アリステリア様』に祈るのであった。
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下山し終わると俺の探知に赤い光点が400程の反応がある。
【あれ?】
「どうしました、アーサー?」
【アンナさん、探知スキルを使って頂けますか?】
「りょ~、「探知」・・・あれ?敵がいるんさ~!?」
「「「何だって!?」」」
「多分、軍隊が戦ってるんさ~。」
【爺さん!】
「皆、急ぎましょう!」
「「「応!」」」
その方向、敵の反応がある方向へ走る。
【爺さん、無事でいてくれよ!】
見えてきた!
バルロンデーモンか!
【皆さん行って下さい、アセディアに訳を話してから向かいます!】
「「「応!」」」
後方からジャスティン達が戦闘に加わる。
今の皆ならバルロンデーモンが相手なら心配はいらないだろう。
【アセディア、起きて下さいますか?】
【ん?なあにー・・・お兄ちゃんー・・・?】
【仲間が危ないのです、助けに向かいたいのですがよろしいですか?】
【お兄ちゃんのー・・・仲間が危ないのー・・・?】
【そうです、至急向かわなければ、数で押されてしまいます。】
【そうなのー・・・?】
【アセディアはここにいて下さい。】
アセディアを木陰に下ろす。
のだが、言う事を聞いてくれない。
【嫌!お兄ちゃんの背中が良いー・・・!】
【良いですね、ここで待っていて下さい、すぐに戻ります。】
【ならー・・・手伝うー・・・。】
【え?】
【黒いー・・・役立たず共でしょうー・・・?】
【役立たずって・・・バルロンデーモンは一般人には脅威ですよ?】
【ちょっと待ってねー・・・。】
アセディアはそう言うと地面に両掌を付ける。
するとどうだろう。
バルロンデーモンの群れの中に黒い触手が何本か現れた。
斬り裂きバラバラになるバルロンデーモンの群れ。
【こ、これがアセディアの力の一端か・・・。】
【面倒だけれどー・・・役立たず共をー・・・蹴散らすー・・・。】
【アセディア、人族とガーゴイル族は殺さないで下さいね。】
【面倒だけどー・・・分かったー・・・。】
俺は戦場で触手が暴れるのを見ていた。
その圧倒的なまでの力が俺達に向かわない事を祈りながら。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
戦場を触手が蹂躙する。
「こ、これは一体何だ!?」
「レガイア様、下がって下さい!」
「アレックス、君も下がれ!」
「レガイア様の護衛なんでね、主が引くのを見届けたら俺も逃げますよ!」
「っく、済まない!」
「護衛!何人かついて行け!死なせるなよ?」
「アレックス様も御無事で!」
「御武運を!」
レガイア様が下がるのを見届けるとその触手に向かい構えを取る。
「で、ここに残ったのは死にたがりの馬鹿ってところか?」
「死にたがりとは酷えな、大将!」
「そうだぜ、生き残ったら、あの店で・・・大将の奢りですぜ?」
「っふん、勝手にしろ!・・・ん?ちょっと待て、こりゃあ・・・。」
そうなのだ。
触手はバルロンデーモンだけを攻撃しているように見える。
「皆、下がれ!様子がおかしい、少し離れるぞ!」
「後退!後退!」
「下がれ!」
整然と後退していく、と、その中にバルロンデーモンを切り裂く一団を見かけた。
「貴殿らは何者か!?」
「僕達は、オーガの牙です。助けにまいりました!」
「おお、君達がそうか!それで、この状況は一体なんだ?」
「多分ですが、友達になった人が加勢してくれているんだと思われます。念の為、皆さんも撤退して下さい!」
「分かった!任せたぞ、オーガの牙!」
そうか、アイツらが噂の冒険者、オーガの牙か。
それにしても友達とか言ってたな?
あんなもんを使役する友達だと?
悪い予感がビンビンするが・・・。
「野郎ども!撤退だ!」
「「「応!」」」
「撤退だ!」
「撤収!」
もう一度後ろを振り返る。
「ここは頼んだぞ、オーガの牙。」
そう言うと馬を走らせるのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【後は良いかなー・・・面倒くさいー・・・。】
探知で確認した所、バルロンデーモンの数が三十体程度になっていた。
ジャスティン達が加わった事もあるが、アセディアが300体近く滅ぼしているのが大きいだろう。
ティアと言い、アセディアと言い、一体どれ程の力を秘めている事やら・・・。
ジャスティン達が残りの敵を殲滅し終わったようだ。
【お兄ちゃんー・・・背負ってー・・・。】
【分かったよ、アセディア。】
アセディアを背負うと、決着の付いた戦場を大天幕まで歩いて行く。
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