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怠惰の配下との対決

いつも読んで下さり、誠にありがとうございます!

執筆終わりました。

お楽しみ頂ければ幸いです。


朝、目を覚ますと目の前に膨らみがあった。


堪能する。

張りがあって素晴らしい。


・・・あれ?

ちょっと待て?

ルイスやナナリーさんの物とは違う感触だ!

夜は、眠って・・・。

そうだ、確かティアが・・・。

しまった!


意識が覚醒する。


【お、おはよう、ティア。】


【・・・。】


じーっと見つめて来る。


【ティア?】


【ねえ、ダーリン。】


【な、何かな、ティア?】


やばい、まずい、どうしよう!?

寝言でルイスかナナリーさんの名前でも呼んでいれば不味い事になるんじゃないか?

するとぎゅっと胸に抱かれる。

柔らかい双丘が顔に当たって気持ちが良い。

いやいや、ちょっと待て。

相手は大悪魔なんだぞ!


【ティアさんや、そろそろ起きたいんだけれど?】


【・・・心地が良いと気持ちが良いが分かったわ。】


【おお、良い事じゃないか!・・・で、そろそろ放してくれないかな?】


【ダーリンは、気持ち良いを放せと言うの?】


【え?俺を抱いているのが気持ち良いの?】


【そうよ、とっても気持ち良いわ!】


【でも、このままだと怠惰さんと話す時間が無くなっちゃうよ?】


【・・・仕方がないわね。良い?また私に心地良いと気持ち良いをさせる事、分かったわね?】


【構わないけど、そんなに気に行ったの?】


【とっても気分が良いわ。】


【そっか・・・そうやって一つ一つ勉強していくんだよ。】


【・・・分かったわ。】


名残惜しそうだったが放してくれた。

二人で寝床を出る。

寝ずの番のラフィアとディアナと挨拶を交わす。

今日は良い天気だった。

さてと、まずは顔を洗ってっと。

昨日の小川に行くとティアがついてくる。


【ティアさんや、付いてこなくても良いんだよ?】


【別に良いじゃない。それに、ダーリンの側にいないとなんか・・・こう、イライラするのよ。】


なんか昨日より状態が不安定じゃないかな?

ちょっと心配。

顔を洗うと朝御飯だ。

簡単な物にしようとしたのだが・・・。


【今日はどんな美味しいを食べれるのか楽しみね。】


なんかティアさんからの威圧が半端ないんだけれど?

その威圧を受けながら朝御飯にはカツサンドを作った。

どうだ!

て、手抜きなんかしてないからね!?


【ダーリン、昨日のと違うわ?】


【違うけれど美味しいから食べてごらんよ。ほら、皆を見てごらん、美味しそうに食べてるでしょう?】


そう言うとティアはジト目で皆を見回す。


「アーサー、このカツサンドと言う物も美味しいですね。」


「美味え、これはお代わりだな。」


「美味しいんさ~、朝から良い気分なんさ~。」


「ええ、士気も上がりますわ。」


「兄貴!お代わりだ!」


うん、ディアナ、段々遠慮が無くなっていくね。

後、料理人じゃないからね!


【本当ね・・・じゃあ、いただくわ。】


どうやら食べてくれるようだ。

朝から変な汗をかいた。

これで、気に入らなかったらどんな事になるやら・・・


【んっ・・・昨日とは違うけれど、これも美味しいわ!】


【それは良かった、お代わりもあるからたくさん食べると良いよ。】


「兄貴!早くしておくれよ!」


【はいはい、作ってるからちょっと待ってね。】


【ずるいわ!ダーリンの作る美味しいは、私だけの物なのよ!】


【ティア、独り占めしないで、皆にも分けてあげて、ね?】


【・・・もう!分かったから、早くお代わりを頂戴!】


【はいはい、ちょっと待ってね。】


「最初に会った時と雰囲気が変わりましたね・・・。」


「美味い物を食ったからだろう?」


「それは、ダンだけなのさ~。」


「そうですわね。」


「兄貴!お代わりだ!」


オーガの牙の面々も士気が上がって何より。


【・・・でも、この五月蠅いのも悪くないわね。】


【ティア、何か言ったかい?】


【ええ、お代わりと言ったのよ、そこの人族の女!今日も身の程を教えてあげるわ!】


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【『アリステリア様』、今日は、本当によろしくお願い致します!】


【ちょっと、ダーリン!なんであの女神なんかに祈っているのよ!】


【ん?信仰しているんだから当然じゃないか?】


【あの女神を信仰ですって!?】


【良いかい、ティア。人間のする事にいちいち怒っていたら、気分が悪くなるだけだよ?】


【・・・これだけ言っても、止めてはくれないのね?】


【毎日の日課だからね、それに大切な事なんだよ。】


『アリステリア様』と約束しちゃったからね。


【でも、ダーリン!私のいる前では、あの女神には祈らないで頂戴!】


【うーん、でも日課だからなあ。】


【お願い!もし祈るなら私のいない所で、隠れてやって!・・・本当は嫌だけれど・・・。】


【わ、分かったよ、ティア。】


掴み掛るような勢いで言ってくる。

あの女神?

『アリステリア様』の事が嫌いなのだろうか?

そう言えば堕天がどうとかって・・・。

『アリステリア様』がそれに関わっているからか?

いや、考えすぎだろう。


御飯が終わり、昨日の小川で食器を洗っている時にもティアは俺についてきた。

まるで親鳥と雛鳥の様だ。

仕方がない。

ちょっと釘を刺しておこうかな。


【ティア、俺の行く所に、いちいち付いてこなくても良いんだよ?】


【ダーリンは私といるのが嫌なの?】


【嫌ではないが・・・。】


【なら良いじゃない。】


うーむ。

でも、さっきより良い顔をするようになった気がする。

何かあったのだろうか?

カツサンドが上手かったからか?

餌付けした訳じゃないよな?

いやいや、それは無いだろう。


そして撤去が終わり支度を整えると先へと進む。

今日復活すると言う怠惰さんのいる遺跡の所へ。

ティアによると復活するのはお昼頃だと言う。

それまでに遺跡に着いておかないとね。


皆で必死に山道を登って行く。

そして、多分だが十一時を過ぎた頃、その遺跡にたどり着いた。


「や、やっと着きましたね、各自、警戒をしながら小休止に致しましょう。」


「「「応!」」」


さてと、たどり着いたぞ。

あとは待つだけだ。

ティアは遺跡の入口をうろうろしている。

視線を遺跡の中央の祭壇に移すと文句を言っているようだった。


【・・・まったく、名前の通り怠惰なんだから!】


何か怒っているようだ。

そんなに早く会いたいのだろうか?


ゴゴゴゴゴ・・・


「地揺れです・・・大きいですね。」


「大きいな。」


「ラフィア、この山は火山なのかな~?」


「火山では無いと思いますわよ?」


「地揺れか、なんか嫌な予感がするよ・・・。」


ん?

気配が!?


【アンナさん「探知」を!】


「「探知!」・・・思ったより少ないんさ~?」


【来るわよ、ダーリン?】


【ジャスティンさん!】


「各自戦闘態勢!」


「「「応!」」」


「さあ!いつでも来やがれっ!」


ガシッ!


そう言ってディアナが両拳を合わせると同時に地面から七体の悪魔族が現れてきた。


【この気配は・・・強欲様か?】


【これはこれは、強欲様でございましたか。】


【我らが主のお出迎えとは殊勝な・・・。】


【しかし、何故に人族等と一緒においでなのですか?】


【もしや、その者達は贄でございますか?】


【贄を連れて来て下さるとは・・・。】


【それならばちょうど良い、狂宴を始めましょうぞ!】


ティアの時は十個の核、つまり配下が十体いたと言う事だ。

ベヘモドの時は、話の限りではティアが一体滅ぼしている。

俺が分体を九匹、これで合計10体。

怠惰さんにもその可能性がある。


カノナスと言う奴とマラドと言う黒い悪魔ともう一体、三体は倒した。

そうすると残りは七体。

数は合うね・・・。

こいつらが王国の各地で暴れていたとか言う奴らだろう。


【私の事は知っているのね?】


【ええ、強欲様。】


【なら、私がくだらない事を言う連中を皆殺しにしたのかも分かっているわよね?】


【我々は怠惰様の配下でございますぞ?】


【敵対なされると言うのですな?】


【敵対?そんな事はしないわ。】


【ならばお下がりを。】


【左様、この人族らを血祭りにあげ、怠惰様への供物と致しましょう!】


【ふふっ、貴方達では役不足かしらね?】


【強欲様ともあろうお方が、目がお曇りにでもなられましたか?】


【相手の力量も図れないとは愚かね。貴方達ではこの人族には勝てないわ。】


【ハハハ、本当にお曇りになられた様だ。】


【なら、試してみると良いわ。私のダーリンがゴミごときに負けるはずがないのだから。】


【【【なっ!?】】】


【・・・我らをゴミと!?】


【いかに強欲様でも許せませんぞ!】


【ならばそこで見ていると良いでしょう。】


【そうですな、王国を蹂躙した我らの力を!】


【人族ごときが我らにかなうはずがありませんぞ?】


【ハッハッハ、では、怠惰様に供物を差し上げようぞ!】


【では、始めましょうぞ!】


【【【行くぞ、人族!】】】


「来ますよ!皆、戦闘準備!・・・帰ったら乾杯と致しましょう!」


「「「応!」」」


【ダーリンの恰好良い所を見せて頂戴。】


そう言うとティアは遺跡の方へと行ってしまった。


【分かったよ、ティア。ジャスティンさん、俺が三体を引き受けますよ。】


「問題ないんだね、アーサー?」


【大丈夫です、そこの筋肉マッチョとサキュバスらしき奴とドラゴン男は引き受けます。】


【【【舐めるなよ人族!】】】


あら、こんな簡単な挑発に引っかかってくれちゃったよ。

まあ、無抵抗の王国の民を相手にして調子に乗っているんだろうね。

ここで、・・・皆のその恨みを晴らす。

場所を移すように歩いて行くとその三体がついてくる。


「ダンは正面の斧を持った牛男らしき奴を!アンナも正面の弓を持った馬男らしき奴を!ディアナも正面の忍者らしき奴を!ラフィアは皆の援護を。僕は正面の鎧の奴を引き受けます!」


「「「応!」」」


「気張れよ、相棒!」


ジャスティンとダンが拳を合わせる。


「弓の勝負なら負けないんさ~。」


「見かけは忍者か、相手にとって不足はなさそうだね!」


「援護はお任せを!」


「皆、ラフィアに敵を向けないように致しますよ!」


「「「応!」」」


こうして戦闘が始まった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「来おったかっ!?」


大天幕の中で、わしはレガイアからの報告を聞いていた。


「北の山から、バルロンデーモンが約1000体、群れをなして向かってきております。」


「空はどうじゃ?」


「今回は地上のみでございます。」


「西門のガーゴイル族に援軍の要請!」


「すでに出しております。」


「陣形を維持して今度と言う今度は、街には入れさせるなよ!」


「「「っは!」」」


騎士達が散らばって行く。

じゃが、悪魔特効の剣を持っている騎士は五十人。

援軍が間に合ってくれればいいんじゃが・・・。

いや、弱気になるな。

今頃あんちゃん達も戦っておるはずじゃ。

それも上級悪魔族と。


「あんちゃん、無事で会おうぞ・・・。」


そう言うとテーブルの地図の配置を見るのじゃった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【フハハハ!貴様、強者だな!】


「っへ、強者かどうかは戦ってみろってな!」


【行くぞ!】


「おう、掛かって来い!」


【ふんっ!】


「おりゃあ!」


ガガキーン!


剣と斧を打ち合わせた衝撃でダンが体勢を崩す。


【フハハ、力では我の方が上の様だな!】


「人間はな、それを補う知恵があるんだよ!」


【言うではないか人族よ!】


『ダブル・アタック!』


その名の通り同時に二度攻撃するスキルだ。


ガ、ガキン!


【何だと!?】


「体格で勝てないなら手数ってね!」


【ふん、言いよるわっ!】


ギン!


「ダブル・アタック!」


ガ、ガギン!


「・・・ふんぬっ!」


鎧で見えないがおそらくダンの筋肉が限界まで膨らんでいるのだろう。


【っぐ、貴様!力でも我に!?】


「そんなもんかよ、牛男!?」


【ま、まだまだっ!】


「ダブル・アタック!」


ガ、ガギン!


ビシッ!


【な、何だ、我の武器が!?貴様、何だその武器は!?】


「この日の為に、対策を立てて来たんだよ!」


バギャッ!


【馬鹿な!武器破壊だと!?】


「狙ってやったんだよ!言っただろう、対策を立てたってな!『アーマー・イグノア!』」


攻撃力は落ちるが、命中対象の一番高い抵抗値を0に出来る攻撃スキルだ。


ザクッ!


【ギャアアア!】


さすがは脳筋、一番高かったのは物理属性の様だね。


「これで決めるぜ!」


「・・・ブレッシング!・・・シャープネス!」


ラフィアの呪文が的確に飛んでくる。


【ひ、人族があっ!】


「うおおおおっ!『ライトニング・ストライク!』」


武士道の攻撃時に武器に雷属性を持たせる技だ。


ズバアッ!


【グハッ!馬鹿な、人族が、こんなにも!?怠惰様・・・申し訳・・・ありま・・・せ・・・。】


「ありがとな、ラフィア!・・・人族より優れてると思っていたのがお前の敗因だ、俺達は鍛錬し、対策を立てる事が出来るからな!」


ダンがそう言うと牛男は靄になって消えた。


後には黒い核が残っていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


あの人は大丈夫だろうか?


昨日話してくれた予定では、もうそろそろこの街を守る為に悪魔族と戦うはずだ。


『アリステリア様』あの人が無事に帰って来ますように・・・。


今朝も祈りを捧げたがもう一度祈りを捧げる。

どんな事でも良い、あの人の力になれれば。

街の中には騎士の人達の巡回人数が多くなっている。

オーガの牙の皆さん、あの人が無茶をしないように見ていて下さい。


「給仕のお嬢ちゃん、お代を置いておくからね。」


「はい、ありがとうございました、また御来店下さい。」


代金を回収してカウンターの奥にある簡易金庫にしまう。

街の人々にも時間になったら家に帰るように領主様から命令が出ているのだ。

もうそろそろその時間だった。

他のお客さん達も代金を支払い席を立つ。


「気を付けてお帰り下さい。またのご来店をお待ちしております。」


お客さんを見送っていると階段を降りて来たリズが心配そうに言ってくる。


「ルイス姉、そろそろ時間だよね・・・お兄さんは大丈夫かな?」


「大丈夫よ、私達がここにいる限りね・・・。」


あの人は帰って来てくれる。


そう、私達のいるこの場所に!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【ッフ!】


ヒュン!


「ッハ!」


ヒュッ!


【・・・小娘が、なかなかにやるではないか!】


「下半身が馬だから素早いんさ~。」


【フハハ、それではこれはどうだ、『ダブル・ショット!』】


騎乗しているという条件でしか使えないが、一体の敵に矢を二本放つ事が出来るスキルだ。

二本目の矢の攻撃は命中15%の効果が上乗せされる。


「・・・クイックネス!」


魔法を受けたアンナは何事もなかったかのようにバク転を二度して攻撃をかわす。


【なっ!】


「その程度なら問題ないんさ~。」


【っく、調子に乗るなよ、小娘が!】


「当ててから文句を言うと良いんさ~!」


しばらく攻防が続くがどうやら決着の様だ。


【っち、足場が、岩が邪魔をして・・・。】


ギリギリ・・・


【な、何の音だ?】


「・・・シャープネス!」


「ぶっ飛ぶと良いんさー!」


ヒュゴオオオォォォッー!


【なんだと!?】


アンナの限界突破の一撃をまともに受けた馬男は下半身が消し飛んでいた。


「誘いこまれてる事にも気づかなかったんさ~?」


【誘いこまれた・・・だと?】


「気付くのが遅いのさ~。」


「そうか!岩の足場・・・こさかし・・・い・・・。」


「こざかしかろうが勝ちは勝ちなんさ~。」


そう言ったアンナに射られた馬男が黒い靄と化す。


その後には黒い核が残っていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「『アリステリア様』あの人にお力をお与え下さいー・・・。」


もう何度目だろうかあの人の事を思い祈りを捧げる。

今頃戦っているであろうあの人の無事を祈る。

きっとルイスさんも心細いはずだ。

私よりずっと近くで彼を見て来たのだろうから。


どうか無事に戻って来て下さい。

そう思い祈りを捧げる。

私はあの人の帰って来てくれるこの宿で待っている事しか出来ない。

そう、待っている事だけしか・・・。


無茶をしては駄目ですからね。

ヘファ君が戦っているであろう北の空を見上げる。

帰って来たらまず、『お帰りなさい』と笑顔で言おう。

それから皆でご飯を食べて、いつものように過ごすのだ。


七大悪魔の怠惰と呼ばれる一体との闘い。

強欲と言う人と同じように話し合えると言っていたのでまずは話し合うのだろう。

それが失敗すれば戦いになるかもしれないとも言っていた。

どんな戦いになるのかなど想像もつかない。


・・・戦い。

あの時の冷たい瓦礫の感触を思い浮かべてしまう。

体が震える。

もうこの街の人達にあんな思いはさせたくない。


だが彼は私達の、この街の為に必死に戦ってくれている。

怪我をしていないだろうか?

ひょっとしたら・・・。

その考えを頭を振り消す。


ヘファ君。

リズちゃん達も同じような思いでいるんですよ。

必ず無事に戻って来て下さいね。

でも、ヘファ君の事だからひょっこりと帰って来てくれるかもしれない。


「ふふ、ヘファ君。帰りをお待ちしていますよー。」


そして、もう一度祈ると朝の仕事を切り上げ、皆のいるであろう部屋へと向かう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「・・・ブレッシング・・・クイックネス!」


【ほう、拳術か小娘?】


「そうっすよ?」


【っふ、付き合ってやろう。】


「修行中の身なのでそちらさんの得意な武器で良いっすよ?」


【小生意気な小娘に教育をしてやるのさ、これでちょうど良かろう?】


「言ったっすね、後悔しても知らないっすよ!」


【口喧嘩をしに来たわけではあるまい?】


「そうっすね・・・じゃあ、行くっすよ!」


ディアナが構えると忍者悪魔が先制する。


【ほらほらぁっ!】


上への牽制からの空いた腹へのボディーブロー。

忍者悪魔は攻撃しているのだが、ディアナは巧みに避けているだけだ。


【避けるのが精一杯か小娘?】


「あのー・・・それで本気っすか?」


【な、何だと!?】


「小娘と思ってないで本気を出した方が良いっすよ?」


【人族の小娘ごときがっ!】


「アーサーの兄貴の()()()に比べたら、おままごとっすね。」


【手も足も出ない小娘が、何を!?】


「それなら手を出すっすよ?」


【っふ、出せるものなら出してみろ!】


「言ったっすね、なら行くっすよ!」


【っふ、人族の、しかも小娘の拳術など・・・な、何っ!?】


「ソリャソリャ!」


ディアナの重量級のジャブを何とかかわす忍者悪魔。


【この女、手数が!?だが、いつまでスタミナが持つかな?】


「オリャオリャオリャ!」


【馬鹿な!まだ手数が上がると言うのか!?】


「まだまだ上がるっすよ!」


その正確なジャブは上半身、顔を狙って打っている。


【なんてスタミナをしてるんだい!?くそっ!こ、これ以上は!?】


「・・・スキありっす!」


ドゴォッ!


【ぐおほぉっ!】


上に慣らされた後のボディーへのコンビネーションブロー。

これは避けられなかったようだ。

鳩尾に入った拳に忍者悪魔は体をくの字にさせ、たたらをふむ。

そこは近接戦闘の間合い、そう、ディアナの得意な間合いだ。


「決めるっすよ!アーサーの兄貴直伝、『ダブル・ボルケーノ・ナックル!』」


ボボッ!


炎の追加ダメージの入る拳術のスキルだ。

それも左右の物が。


ドガドゴォッ!


【ごはぁっ!】


まずは右の拳がボディーに突き刺さる。

返す刀で左のリバーブローが更に追い打ちをかけた。

その攻撃を受けて立っていられなくなったのだろう。

忍者悪魔が大地に膝をつく。


「付き合うから、拳術が得意なのかと思ったらそうじゃなかったんすね?」


【こ、こんな小娘に・・・。】


「小娘なんて舐めてるから負けるんすよ?」


【まだ・・・だ、小娘!】


忍者悪魔がディアナのスキを狙って暗器で攻撃をした、が。


『フラッシュ・カウンター!』


その名の通りのカウンターなのだが、ダメージ量が力量によって上がると言う性能のスキルだ。

当然だが、ディアナの技量の方が数段上だった。


ドガッ!


【ごふぉ・・・。】


すれ違いざまに腹にもろに入った一撃は内臓を破壊したのだろう。

忍者悪魔は、血を吐いて倒れると黒い靄となって消えた。


「うーん、物足りないっすね。次があったら最初から全力で来ると良いっすよ?」


そう言ったディアナの足元には黒い核が転がっていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ヘファ師匠は戦っている頃だろう。


戦ってくれるのは良いんです。

私達を、街を守ってくれているのだから。

でも、まだ分かり合えていないんですよ?

まだまだ教えて頂きたい事もたくさんあるんですからね?


それに・・・。

まだ可愛がって頂いていないんですからね?

無事に帰って来たら修行の成果を確認してもらいたいし・・・。

ああ、駄目だ。

こんな事を言いたいのではない。


無事に帰って来て下さい!


貴方は私に鍛冶を教える師匠としての責務があるはずでしょう?

それを放り出して行く事は許しませんよ!

ちゃんと責任を取って頂きますからね!


当然・・・お、男としての責任も!


祈るのが商業神で申し訳がありませんが必死に祈る。


「商業神エンボーリオ様、あの方をお守りください!」


キョロキョロ・・・


よし、周りには誰もいない!


「あ、貴方のサーラが待っていますよー!」


北の空に向かって叫ぶ!

そう、帰って来たら皆さんでお帰りなさいと言おう!

そして、今度こそ・・・。


「よし、行こう!」


リズちゃん達の部屋に向かう。

そう言えばどうしてアーサーなんでしたっけ?

機会があったら聞いてみよう。


そんな事を考えているとルイスさんとナナリーさんも部屋に集まっていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【ハアッ!】


ガキン!


「ッセイ!」


ギィン!


こちらは一進一退の攻防をしている。


【防御だけは素晴らしい、だがそれだけでは俺には勝てんよ?】


両手剣を持った騎士悪魔が対峙しているジャスティンにそう言う。


「それならば、僕にも勝機がありますね。」


【この状態で勝機だと?】


「良いですわ、ジャスティン。」


「ありがとう、ラフィア。」


「・・・ブレッシング、・・・シャープネス!」


【ふん、たかだか支援魔法が入っただけで勝機だと?笑わせてくれる。】


「そう思っているのなら貴方は僕には勝てませんよ?」


【口だけは達者だな、小僧。】


「それならば、まずは僕の防御を崩してみてはいかがですか?」


【・・・その挑発、乗ってやろう!】


キン!


カキン!


ギンッ!


ジャスティンはすべての攻撃を捌く。


【っち、固いだけがとりえの騎士か、つまらん。】


騎士悪魔の攻撃が大降りになった。

ジャスティンはそれを狙っていたのだろう。


ガキッ


見事に受け流し背中を取る。

そして斬り込んだ。


【っふ、攻撃力の無い事はわか】


そう言った騎士悪魔は信じられない物を見ただろう。

自分の体が鎧ごと真っ二つになっていたのだ。

騎士悪魔の上半身と下半身が転がる。


【な、何んだ!?この攻撃力は・・・?】


「貴方は見誤りました、仲間の事を。」


【支援魔法だけでは・・・なかったのか?】


「そうです、魔力供給の事を見ていませんでしたね。」


【魔力供給・・・そうか、その剣・・・ミスリル製か・・・。】


「そうです、僕達の勝利です。」


【仲間とともに戦っていたのか・・・それでは・・・俺は勝てんな・・・。】


「ええ、貴方の敗因です。」


【そ・・・うか・・・。】


騎士悪魔が靄になって消える。


「正式に騎士として対峙したかったですね。」


そう言ったジャスティンの足元に黒い核が転がっていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


アタシは部屋に戻ると皆と祈りを捧げる。


「『アリステリア様』、お兄さんを守って下さい!」


「『アリステリア様』、ヘファさんを・・・守って下さい・・・。」


「『アリステリア様』、ヘファさんを守って下さい!」


「ヘファさんなら大丈夫なのです!」


皆で北の山に向かって祈りを捧げる。


「アリス、ちゃんと祈りなさい!」


「ヘファさんなら大丈夫なのです!」


「良いから祈りなさい!」


「むー、約束したから大丈夫なのです。」


「約束?」


「無事に帰って来てくれるって約束してくれたのです!」


「そうね、無事に帰って来てくれるわよね。」


「そうですよ・・・リズ姉・・・約束してくれましたから・・・。」


「そうですね、約束してくれました!」


「だから大丈夫なのです!」


そうだ、お兄さんは約束を・・・。

あれ?

いや、大切な約束は絶対に守ってくれた!

そしてあの時のように格好良く・・・。

守って下さい、お兄さん。


祈っているとルイス姉とナナリー姉とサーラさんが部屋に来てくれた。


「お兄さん、待っているからね!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【な、何なんだ、コイツは!】


【我々三人を相手にしているのよ!?】


【グスタール、カーリア、左右から掛かって足止めをしろ!ブレスを吐く!】


【任されよう!】


【分かったわよ!】


元々三人で戦っていたみたいな戦闘の仕方だった。

コンビネーションが良い。

ふと視線を送る。


【ありゃ!?皆、勝っちゃってるじゃないか、これじゃあ格好がつかないぞ。】


【余所見とは、舐めるなよ小僧!俺のブレスは1000℃を超える!】


【吐かせなければいいんでしょ?】


テレポートで素早く後ろに回り込むとドラゴン男の首を一閃する。


【何処へ消えた!?】


【何処へ!?】


【ば・・・かな・・・。】


【【ナジャラ!?】】


ナジャラと呼ばれたドラゴン男は黒い靄になった。


【そんな事がっ!?】


【ナジャラがやられたわ!?】


【さっさと片付けないといけなくなりました、お付き合いはここまでです。】


【うおおぉぉ!】


【シャドウ・ピラー!】


突っ込んで来たグスタールと呼ばれた筋肉マッチョを斬り上げる。


ザン!


【ば、馬鹿な・・・。】


その勢いでサキュバスらしき奴、カーリアに袈裟切りをする。


ザシュ!


【ま、魔法の発動より早いなんて・・・。】


そう言い残してその二体は黒い靄になった。


三個の核をバックパックにしまうと皆の所へと向かうのだった。

ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!

まずは、いつものから!

評価、イイネ、ブックマーク等々。

大変に励みになります!

皆様に感謝を!

それでは 次話 怠惰(仮 で、お会い致しましょう!

お疲れ様でした!

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