ノモスへの調査依頼
いつも読んで下さって、誠にありがとうございます。
時間的に今日はもう無理かも!
だがぎりぎりまで頑張ります!
お楽しみ頂ければ、幸いです。
【お嬢ちゃん、出ていらっしゃいな。】
私が見ていたのを知っているような言い方だった。
上下は分からないがとにかく前方らしき方へ向かって歩いていく。
と、突然足に重さを感じた。
そのまま進むと先程の宿の踊り場だった。
【良かったわね、お嬢ちゃん。妹ちゃん達と、この宿にいた人族はすべて無事よ?】
「・・・まずはお礼を、貴女のおかげで皆が助かりました。ありがとうございます。」
【うふふ、良いのよ。ねえ、何でお嬢ちゃんを助けたか、分かるかしら?】
「私達ではなく私をですか?」
【そう、お嬢ちゃん・・・うふふ、我慢できないから教えるわね。私のダーリンを輝かせる為なの!】
「あの人の事ですか?」
【うふふ、そうよ?私のダーリン。もし、お嬢ちゃんが殺されたらその輝きが曇ってしまうでしょう?そんな事は絶対に許せないわ!】
「貴女は一体・・・。」
【うふふ、知ってしまうよりは秘密にしておいた方が良いわよ?】
「教えては頂けないのですか?」
【教えても良いけれど・・・それじゃあ、聞く勇気があるのなら、ノモス様にお聞きなさいな。】
「ノモス様にですか?」
【そう、後、ダーリンに伝えて頂戴。私の準備はいつでも整っているわ、と。】
「・・・分かりました。」
【言う事は言ったから戻るわね?ああ、他の人族はベッドに寝かせてあるわ。それじゃあね、お嬢ちゃん、また会いましょう。】
「あ、あの!」
【・・・何かしら?】
「妹達も助けて頂き、ありがとうございました。」
【うふふ、それじゃあね、お嬢ちゃん。】
そう言うとその女性は暗闇に溶け込むようにいなくなった。
私は膝をつく。
震えが止まらない。
あの女性は何者だろうか?
ベヘモドと言う悪魔族を簡単に葬った力。
ただ者ではない。
「貴方、一体、何が起こっているの?」
誰も起きていないだろう宿屋に私の声が響いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ベヘモドの後に残ったアイテムを拾い上げる。
と、ロケットペンダントが開いてしまった。
自然と視線がそのロケットに行ってしまう。
あれ?
女性だ。
そう言えば姉に伝えてくれと言っていた事があったな。
ちょっと待て!?
そのロケットの肖像画をじっと見つめる。
【あれ?この人レヴィアさんに似ているな。】
何か関係があるのだろうか?
今度会った時にでも聞いて・・・いや、さすがに違う人だろう。
そう思うとロケットを閉じバックパックへとしまう。
うーん、デカいな。
上級悪魔族の核はピンポン玉ぐらいだったのに、ベヘモドの核は野球ボール並みだった。
魔術師ギルドはなんか胡散臭いからノモス経由で調べてもらおう。
これもバックパックへしまう。
さて、最後のプレートだ。
縦が十五cm、横が二十cm程のプレート。
見た事の無い金属だった。
そこには、古代語でこんな事が書かれていた。
『神の怒りに触れたその者達は、堕落させられ六人と一対の大悪魔となった。』
『そして地上は、その大悪魔達によって苦しめられた。』
『だが、暗黒の時代も長くは続かなかった。』
『そこに光を纏いし勇者が現れる。』
『勇者は次々と大悪魔達を葬る。』
『ただし、そこから世界の終わりが始まるのであった。』
うーん。
堕落させられたって言うのはどういう事だろうか?
最初から悪魔ではなかったって事?
堕落って言う事は神かそれに類する者って事だよね?
ここでも勇者か。
それに何だこれ?
悪魔達を葬ったから世界の終わりが始まると解釈出来るぞ?
・・・ノモスにでも見せて調べてもらおうか?
プレートもバックパックへしまう。
おっと、早い所、宿に戻って皆と会いたいね。
今回も力を分けてもらった。
ありがとうと言いたい。
ルイス、ナナリーさん、リズ、ベス、マオ、アリス。
いつも助かっています。
ありがとう。
心の中でそう言うと出口へと向かう。
皆のいる所、俺の帰る場所へ。
アビシャル・シャフトを抜けアビスに戻ってくると魔法を唱える。
【4th リターン!】
一瞬で景色が変わる。
そして、オーカムの街のいつもの宿屋の前に戻って来たのであった。
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あれから部屋に戻ると皆はベッドで眠っていた。
あの女の人の言った通りだった。
皆は、何事もなかったかのように眠っている。
私はそんなアリスの頭をベッドに座って撫でている。
そう言えば、あの時はアリスの姿は見なかった。
ナナリーさんやサーラさんの姿も見なかったので心配していたのだ。
とりあえず無事で良かった。
一応、宿屋の中も見て回った。
女将さんは自分の部屋のベッドで。
お客様達は各人の部屋で、酔客の人は椅子に座りテーブルに覆いかぶさるように眠っていた。
もうすぐ夏とは言えど朝方は冷え込むので、酔客の人にあの人の作った「ぶらんけっと」と言う物を掛けて回った。
そう言えば今は何時だろうか?
時計を見るとちょうど、朝の四時だった。
色々と聞きたい事がある。
後はあの人が帰って来てから聞こう。
そう思って部屋に戻り自分のベッドに入った。
横になり目を瞑る。
けれど、眠れない。
当然だろう。
あんな事があったのだ。
気が高ぶって眠るどころではない。
気分を落ち着かせる為にお風呂へ行ってみた。
湯船につかる。
暖かい。
先程までの事が嘘の様だ。
お風呂を上がりさっぱりした所であの人の作った下着を履き、仕事着に着替える。
どうせ大した時間は眠れないだろう。
そう思ったのだ。
井戸から水を汲んでくる。
やはり明け方はまだ寒い。
まずはテーブルを拭いて行く。
カウンターを拭いている所で、窓に朝日が差し掛かった。
うん、今日も良く晴れそうだ。
そう言えば、最近、味醂干しを食べていない。
久しぶりに食べたくなってしまった。
でも、我慢をする。
食べる時はあの人と一緒にだ。
その方が美味しいに違いない。
ふと、入口の扉を見る。
【あれ?ルイスじゃないか?こんなに朝早くから何をやっているのさ、仕事時間にはまだ早いよ?】
声で分かる。
あの人だ。
とにかく駆ける。
声の方へ。
その胸に飛び込む。
「お帰りなさい、貴方。」
【ただいま、ルイス。】
口付けをする。
そう、聞きたい事がいっぱいあったのだが、そんな事は頭からすっぽりと抜けてしまっていた。
【朝から情熱的だね、何かあったのかい?】
「色々とあったの、そう、色々と・・・。」
【その話を聞かせてもらおうかな、もちろんベッドでね。】
「ええ、貴方。」
そう返事をすると大切な人は私を抱き上げると部屋へと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【え!?ベヘモドがこの宿に来た?】
「そうなの、それでね、貴方の弱点は私みたいな事を言って捕まえられそうになったの。」
【大丈夫だったの、ルイス?って、今目の前にいるから平気だったのか・・・。】
あの時に戻って来たのは八体だった。
別行動をしていた?
強欲さんは分体は十体だと言っていた。
合計数は合う。
だが俺が持っている核の数は九体分。
分体の核は回収しておいた。
斬ってバラバラになっていた物もだ。
何故かは分からないがそれが最適だと思ったからだ。
しかし、よりにもよってルイスを攫いに来ていたのか・・・。
危なかったな。
「でも、黒髪の美人さんが助けてくれたの。」
【・・・あー、それはどんな美人さんだね?】
強欲さんしかいねえな・・・借りは作りたくないがありがたかった。
「両目が燃えるように紅かったわ。それに貴方の事を『ダーリン』と呼んでいたのよ。」
強欲さんで間違いなさそうだ。
「貴方の知り合いなの?」
【知り合いと言えば知り合いだ、でも、ルイス。その女性にも近寄っちゃ駄目だからね?】
「でも、助けてくれたわよ?」
【気まぐれでも起きたか・・・?】
「気まぐれ?」
【ああ、こっちの話、それで皆はどうだったの?】
「リズとベスとマオが操られていたみたいで大変だったのよ。」
【ああ、それはもう心配ないよ。大本は倒してきたからね。】
「そうなの?」
【ああ、で、皆が寝ているから久しぶりに二人っきりで朝市に行こうか!】
「良いのかしら?」
【たまには良いでしょ?気分転換もしなくちゃ、ナナリーさんも許してくれるよ!】
「それなら行きましょう!」
【あっと、その前に着替えてね?】
「ええ、分かったわ。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今回は強欲さんの気まぐれで助かったがルイスが、大切な人が狙われた。
これからもそんな事があったら・・・。
都合よく助けられないだろう。
どうするべきか・・・。
いや、ベヘモドだったから、っていう考えも否定出来ない。
「お待たせ、行きましょう!」
【お、おう・・・。】
「何か考え事?」
【いんや、さあ!久しぶりに味醂干しを食べよう!】
「ちょうど食べたいと思っていたのよ。」
【俺もなんだ、気が合うね。】
「ふふ、そうね。」
俺達は歩いて朝市に向かった。
魚を買い込み、米を買い、酒を買って、今は二人で味醂干しを食べている。
「美味しいわ、でもナナリーさんに悪いわね。」
【たまにの事なんだ、ナナリーさんだって許してくれるさ。】
「・・・怒られる時は貴方が怒られてよね?」
【そ、それは二人で怒られようよ!】
「駄目よ、旦那様として責任は取って頂きますからね?」
【っく、仕方がない、今回だけだよ?】
「うふふ、お願いするわね。」
何故かすごく眩しい笑顔だった。
この笑顔を守りたい。
だけれど、どうしたら良いのだろうか?
次にこんな事があったら都合よく助けてくれる人はいない。
「久しぶりだもの、美味しいわね。」
【ああ、でも、朝御飯はちゃんと食べるんだよ?】
「貴方もね?」
【大丈夫、俺にはつまみ食いする余裕があるのだよ!】
「ずるいわ!もしかして、いつもそうやって食べているのね?」
【ふっふっふ、作る人の特権なのだよ!】
「ずるいわよ、ねえ・・・その時は私にも頂戴。」
【可愛く言っても駄目、これは味見を兼ねているんだから。】
「そ、それなら、仕方がないわね。」
【そのおかげで美味しい物が食べられてるでしょう?】
「そうね、我慢するわ。」
そんな心配をよそにルイスは笑顔を見せる。
守りたい。
いや、絶対に守って見せる!
改めて、そう心に誓った。
時間が来て宿屋に戻ると、ナナリーさんと女将さんから雷が落ちてきた。
ナナリーさんはともかく、何で女将さんまで?
どうやら、昨日帰らなかった事を心配して怒ってくれていたようだった。
そうだね、連絡を入れてなかった。
仕方が無いじゃないか、暇がなかったんだよ。
いや、今回は忘れていただけだったのかも・・・
甘んじて雷を受けよう。
そして、いつも通り朝御飯が始まるのであった。
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御飯の後、ノモスにベヘモドの件を話に行く。
「倒したか、アーサー!良くやってくれた!」
「おめでとうございます、アーサー様。」
「お疲れ、アーサー殿。」
【ありがとう、皆さん。それで、ノモス。見てもらいたい物があるんだ。】
「何だい、アーサー?」
【今の魔法ギルドに頼むのは憚った、なのでノモスに調査をお願いしたい。】
そう言ってベヘモドの核と例の黒いプレートとロケットペンダントを取り出す。
「これは・・・核か?大きいな・・・それと古代文字らしき文字のプレート?後は肖像画の入ったロケットか・・・。」
「核はベヘモドの物だ、プレートに書かれていた古代文字は次の通りだ。」
『神の怒りに触れたその者達は、堕落させられ六人と一対の大悪魔となった。
そして地上は、その大悪魔達によって苦しめられた。
だが、暗黒の時代も長くは続かなかった。
そこに光を纏いし勇者が現れる。
勇者は次々と悪魔達を葬る。
ただし、そこから世界の終わりが始まるのであった。』
【と、こんな感じだ。】
「バウマン、今の事を記載して神都のファリスへ届けさせろ、大至急だ。」
「かしこまりました、会頭。」
「だが、おかしいな・・・。」
【ノモスもそう思う?】
「ああ、これでは勇者が七大悪魔を倒すと世界の終わり、つまり勇者が原因で世界が滅ぶとも取れるぞ?」
【そうなんだよね、でも無視の出来ない情報でしょう?】
「そうだな、この事はファリスに任せよう。」
【頼んだ。】
「それで、この肖像画のロケットか・・・。」
【ああ、ここだけの話、知り合いに似ている人がいてさ?】
「だ、誰だ、アーサー!?」
【あ、ああ、銀行員のレヴィアさんって言うんだけれど・・・。】
「詳しく聞いても良いか?」
【ああ、ルイスが世話になった銀行員さんで・・・ああ、そう言えば初対面の時に睨みつけられたな?何でだろう。】
「バウマン、その人物の周辺を洗え、こちらも大至急だ!」
「かしこまりました、会頭。」
ノモスがそう言うとバウマンさんは部屋を出て行った。
【ノモス、このレヴィアさんに何かあるのかい?】
「アーサー、前に言ったよな?臭うのはギルド関係者もしくは銀行の関係者だと。」
【ああ!確かに、レヴィアさんは銀行員・・・。】
「そうだ、肖像画は古い様だが似すぎているんだろう?疑われてもしょうがあるまい?」
【・・・念の為に、頼むよ。】
「こちらの事は任せろ、君は君のやれる事をするんだ!」
【分かったよ、ノモス。じゃあ、頼んだよ。】
そう言うと部屋を後にする。
さてと、次は・・・。
そう、爺さんに事の顛末を報告に行くのだった。
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