苦悩とミカというライバル
いつも読んで下さり、誠にありがとうございます!
執筆終わりました!
お楽しみ頂ければ幸いです。
商業ギルドに着くとカウンターにいるアリシアさんに声を掛ける。
【おはようございます、アリシアさん。】
「おはようございます、ヘファイストス様。」
「おはようございます!職員さん!」
「おはようございます、貴女は確か・・・。」
「はい、ヘファ師匠の弟子になりました、サーラと申します!」
「これは、御丁寧に、職員のアリシアと申します。ヘファイストス様の専属を務めております、よろしくお願い致します。」
「はーい!こちらこそです!」
【今日は何号炉が空いていますか?】
「本日は・・・三号炉でございますね。」
【三号炉、と言う事は他にも誰か使っていらっしゃるのですか?】
「はい、ヘファイストス様の評判を聞きつけて、新人鍛冶師が何人か来ております。」
【俺の評判?】
「はい、行商人にロングソードをお売りになっていましたよね?」
【ああー!そう言えば・・・。】
「その剣を見て修行に来ているのですよ、各工房も大忙しだとか。」
【そうなんですか・・・では、三号炉をお借りしますね。】
「はい、良い物をお作り下さいませ。」
【行ってきますね。】
「行ってきます!」
「あの新人の方、あんなにお話が出来たかしら?それに・・・。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ヘファ師匠、銅のインゴットは問題無く出来るようになりました!」
【そうだね、次の段階に進んでも良い頃だね。】
「はい!これも、ヘファ師匠の教えの賜物です!」
【サーラさんの努力が実っているんですよ。】
「・・・。」
【どうかしましたか?】
「ヘファ師匠、サーラって呼んで下さいって言いましたよね?」
【ですが、サーラさんの方が年上ですし・・・。】
「年齢は関係ありません!教えを乞うているのですから、それに私は弟子ですよ!敬語もやめて下さい!」
【・・・分かりました、サーラ。今日は銅のロングソードを仕上げまで作成してみて下さい。】
「はい、分かりました!」
【では、規定通りの工程で作業をして下さい。】
「分かりました!」
【インゴットが溶ける温度を見極めて下さい。】
「はい・・・今ですね!」
【そうです、型に流し込んで下さい!】
「はい!」
【冷えたらバリを取ってから焼き入れをして鑢掛け、砥石で仕上げですよ?】
「工程は頭の中にあります!」
【よろしい、俺は少し外します。】
「ヘファ師匠はどちらへ?」
【昨日言った夜用の下着を作ってきます、サボらないように、後、武器には心が出ますよ?】
「分かりました、行ってらっしゃいませ!」
俺は逃げるように裁縫部屋へと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【はあ・・・。】
駄目だ、後ろめたくて気分が乗らない。
裁縫の手を止める。
・・・いかん、いかん。
考えるな。
「・・・アンタでも迷う事があるのね?」
【ミカ!?】
「で、何を悩んでいるのよ?」
【そ、それは言えない。】
「言えないんなら悩みなさい、そして自分の中で答えを出しなさい。」
【・・・。】
「ねえ、あのサーラっていう子、変わったわよね?」
【そうだな。】
「アンタが何かやったんでしょう?」
【素がすごく良いんだよ、それを表面に出しただけなんだ。】
「チラっと見て来たけれど、インゴットにする工程は終わっているのね。」
【そうだね、覚えが早いんだよ、もう銅のロングソードを作っているんだぜ?】
「教え方が良いからでしょう?」
【違う、俺は教えていない。】
「教えてるじゃない。」
【違うんだ、規定通りの作業しかさせていない、教本に載っている事だけだ!】
「・・・でも、力になっているじゃないの。」
【方向性が違うんだ、このままだと、あの子の才能を潰してしまう、俺はそれが怖いんだ。】
「・・・どうしたのよ、いつものアンタらしくないわよ?」
【ミカだから言うよ・・・関係は持っていないが・・・それに近い事をして、いや、させてしまったんだ。】
「・・・。」
【今のあの子の原動力は・・・俺への恋心だと思う。】
「それで?」
【その恋と言う思いが実らなければ、彼女は道を、力を失うだろう。】
「そんな事は無いでしょう?」
【そんな事があるんだよ!】
「巨乳の件だってアンタが解決してあげたんでしょう?」
【俺は後ろから、ほんの少し背中を押してあげただけなんだ。】
「でも、解決してるじゃないの。」
【違うんだ、ミカ。彼女は自身で乗り越えていないんだ!】
「どう言う事よ?」
【俺の作った服で、他人の力で克服しているように見えているだけなんだ!】
「その程度の事なら、他の人だって経験しているでしょう?」
【違う、俺が強引に・・・後押し、したんだ。】
「師匠なら当然じゃないの?」
【でも、そのせいで越えてはいけない、一線を越えてしまった。なあ、ミカ、そんな俺でも師匠と言えるのか?」
【それでも教えるのを、鍛冶をやめられないんでしょう?】
【そうだが・・・今日もルイスとナナリーさんの顔をまともに見れなかった。】
「アンタは後悔しているの?」
【ああ、後悔している、俺は流されて弟子である人に馬鹿な事をした、いや、させてしまった。】
「それはアンタが無理やりしたの?」
【そこまで馬鹿じゃないさ、流されたんだよ。俺は心が弱いんだ。】
「それで?」
【ルイスとナナリーさんに言う勇気が無いんだよ、怖くて仕事にも集中出来ない。】
「何が怖いのよ?」
【あの二人に嫌われる事がだ!離れて行ってしまうんじゃないかとビクビクしているんだ!】
「はぁ・・・良い?あの二人は呆れるけれど、アンタを嫌いになったりはしないわよ。」
【どうして言い切れるんだ?】
「あの二人はそんなに弱くないわ、オーガの牙の三人娘との関係も知っているわよ。」
【え!?】
「だから、信じてあげなさい、あの二人の事を、強さを。」
【だが、許してくれるだろうか?】
「許すも許さないもないでしょう、話てごらんなさいよ、きっと良い方に捉えてくれるわよ。」
【・・・。】
「いつもの自信満々のアンタはどうしたのよ?」
【自信なんか無いよ・・・。】
「・・・。」
【いつもの俺はハリボテなんだ、正直、大悪魔との闘いだって怖くて逃げ出したい。】
「でも、逃げてないじゃないの。」
【・・・そうなんだよ、出来てしまったんだ、大切な人達が。】
「それで、今度は逃げ出すの?」
【逃げ出せる訳が無いじゃないか、ちっぽけな俺の命より・・・大切なんだ!】
「それなら力を振り絞って、いつも通り立ち向かいなさい、アーサー、いえ、ヘファイストス!」
【・・・。】
「いつものアンタにならやれるはずよ?」
【出来るかな、こんな俺にも・・・。】
「ふう、良い?出来る出来ないじゃないの、やるのよ、アンタにはやれるのでしょう?」
【・・・そうかな?】
「そうよ、だからいつも通りの姿を二人に見せてあげなさい・・・いいわ、二人とも入っていらっしゃい。」
【え!?】
そこにはルイスとナナリーさんがいた。
【二人とも、どうして!?】
「貴方の朝の様子が変だったから、ナナリーさんと話をしていたの。」
「お話をしていたら、ちょうどミカさんが来てくれたんです、それで相談をしましたー。」
【そっか・・・二人とも、ごめん。】
「「・・・。」」
【誘惑に勝てなかった、出来るなら、弱い俺を許してほしい。】
「それは今後の貴方次第ね、そうよね、ナナリーさん。」
「そうですね、今後の頑張りに期待致しましょうー。」
【良いのか?】
「良いも何も無いわよ。」
「そうです、貴方は私達の為に頑張っています。それはこれからも、でしょうー?」
【・・・ああ、頑張るよ!】
「それでこそ、貴方よ。」
「それでこそ、ヘファ君ですー。」
【二人にはかなわないや・・・ちょうど良いや二人に感想を聞きたいんだ、すぐ作るからちょっと待っててくれるかな?】
「ええ、いくらでも待つわよ。」
「いくらでも待ちますよー。」
【ありがとう、二人とも・・・。】
「・・・じゃあ、アタシは行くわね。」
【ありがとうな、ミカ!】
「ふん、次からは自分で解決しなさいよね!」
そう言うとミカは部屋を出て行った。
ありがとうな、ミカ。
そんなお節介やきなライバルにお礼を言うと作業に戻る。
【それでさ、夜の下着の事なんだけれどさ・・・色っぽさを出そうと思うんだよ。】
「「・・・。」」
【ど、どうしたの、二人とも?】
「色っぽさを出すのは良いわ。でもね、今、言う事ではないわよね?」
「ヘファ君、お姉さんはがっかりなのですよ。もうちょっと場の雰囲気を読んでくれると助かりますねー。」
【え?俺、そんなに不味い事を言った?】
「「そうね・・・。」」
そう言うと二人が抱き着いてきた。
「良い、どんな事があっても私達は貴方の隣にいるわ。」
「そうです、どんな事があっても隣にいますよー。」
「だから、そんな事で心配をしないで頂戴。」
「そうです、私達は貴方といる事が楽しくて嬉しいんですからー。」
【ルイス、ナナリーさん・・・任せて下さい、きっと隣にいるのに相応しい男になって見せるよ。】
「今でも十分なのよ?」
「そうです、ヘファ君ー。」
こうして俺の不安は三人のおかげで解消されたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あ、ヘファ師匠、お帰りなさい。剣を見てもらえますか?」
【応!さてさて、どうかな?】
「・・・ヘファ師匠、なんか元気になりましたね?」
【ああ、改めて、俺は幸せ者だって言う事が分かったからね。】
「・・・それで、私の剣はどうですか?」
【ふむ、うーん・・・まだ商品には出来ないね。】
「・・・どうしてですか?」
【剣を作っている時に迷っているでしょう?】
「!?」
【それだと駄目だ、剣にそれが出ているよ。】
「どうしたら、どうしたら、貴方みたいに良い物が作れますか?」
【迷いを無くせば良い、サーラは、何を迷っているんだい?】
「そ、それは・・・。」
【弟子の迷いを聞くのも師匠の務めだと思うよ?】
「ヘファ師匠がいけないんです。」
【俺なの?】
「はい、私の心の中にヘファ師匠がいるんです、それは鍛冶より大きな物になっているんです!」
【サーラ、君の思いは嬉しいんだけれど、俺達にはお互いを分かり合う時間が必要だ。】
「時間ですか・・・?」
【そうだ、君は何を急いでいるんだい?】
「い、急いでなんかいないです!」
【それが迷いとなって剣に出ているんだよ?】
「・・・。」
【サーラ、俺はね、覚悟を決めた。】
「どう言う事ですか、ヘファイストス様?」
【君が俺を好きになってくれたのは嬉しい、だが、二人の時間が足りていないのは・・・分かるね?】
「それって、二人があの事を許してくれたんですか!?」
【そうだ、言っただろう。俺は幸せ者だって。】
「では、弄んだ・・・せ、責任は取って頂けないと?」
【いや、男として責任は取る。】
「それでしたら!」
【だから、俺にも心の準備をする時間をくれるかな?】
「・・・分かりました。」
【悪いようにはしない、少しずつで良いんだ。お互いを知って行こう。】
「私も、もっと貴方に認めてもらえるように努力します!」
【うん、そう願うよ。さて、鍛錬あるのみだぞ、サーラ!】
「はい、ヘファ師匠!」
こうして俺達は、互いの信頼を深める為にまずは鍛冶仕事を行っていくのだった。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!
まずは、いつものから!
評価、イイネ、ブックマーク等々。
大変に励みになります!
皆様に感謝を!
それでは 次話 ベヘモドと言う存在と強欲(仮 で、お会い致しましょう!
お疲れ様でした!