直訴と晴れやかな笑顔
いつも読んで下さっていらっしゃる皆様方、お待たせ致しました。
執筆か終わりました。
楽しんで下されば幸いです。
サーラさんを伴って爺さんの屋敷へと向かう。
先程練成した武器の納品の為だ。
サーラさんは、数歩後ろからついてくるのだが、行き先が貴族屋敷だと分かると足取りが重くなってきた。
【どうしたの、サーラさん?】
「あの・・・御領主様の御屋敷に向かうんですよね?」
【ああ、爺さんの家に向かってるんだよ。】
「ちょ、爺さんだなんて、不敬罪で斬られますよ!」
【大丈夫だよ、仲が良いのでね。それで、さっきからどうしたのさ?】
「いえ、御領主様の前に行くのに、こんなみっともない格好でいいのかなと・・・。」
【そんなの気にするような狭量な人物じゃないから安心して。】
「でも・・・。」
【大丈夫だって、俺を見なさい。普段着だよ?】
「でも、私の服は・・・。」
【うん、その問題は後で解決してあげよう。まずは納品からね。】
そう言うと手を握って先を急ぐ。
門が見えてきた。
たどり着くと、門番さんに声を掛ける。
【いつもご苦労様です、ヘファイストスです。納品に御伺い致しました。】
「鍛冶師殿、お待ちしておりました。どうぞ中へ、開門!」
サーラさんは、ほとんど顔パスな俺に驚いているようだった。
中庭の道を少し歩く。
何度来てもここは長いよね。
そうすると正面の扉が開きステファンさんが出て来てくれた。
「ヘファイストス様、大旦那様が御待ちでございます。」
【ご苦労様です、ステファンさん。】
「おや、そちらの女性は?」
【ああ、弟子なんですよ。】
「これはこれは、御弟子様でしたか。ドリュカス様の筆頭執事をしております、ステファンと申します。お見知りおきを。」
「ご、御丁寧に、私はサーラと申します、よ、よろしくお願い致します!」
「ふふふ、そんなに緊張なされて・・・お嬢様、大旦那様は懐の深い御方でございますので御安心を、それでは案内致します。」
ステファンさんの案内で爺さんの元へ向かう。
サーラさんは後からついてくる。
なんか悲壮な感じがするんだが?
「大旦那様、ヘファイストス殿をお連れ致しました。」
「おお、入ってもらってくれ。」
「では御二方、どうぞ。」
ドアを開いてくれたので入室する。
あれ?
入口で立ち止まってサーラさんが入ってこない。
【サーラさん、入ってね?】
「ほ、本当によろしいのでしょうか?」
【大丈夫だから、遠慮せずに入ってね。】
「は、はい。失礼致します。」
おずおずと入ってくる。
「おお、あんちゃん、待っておったぞ!それでどうじゃ?」
【三十本出来上がったよ、爺さん。それで何処に置きますかね?】
「選抜した騎士に与えるでの、そうじゃのレガイアにでも・・・ん?その嬢ちゃんは誰かの?」
【ああ、弟子を取ったんですよ。サーラさん、挨拶して。】
「は、はい!」
・・・なんか突然、土下座しだしたぞ?
「サーラと申します。師匠の弟子になりました。よ、よろしくお願い致します!」
「あんちゃんの弟子なら遠慮はいらんぞ?立つとええ。」
【サーラさん、立って下さい。】
「で、ですが!」
【ほら、顔も上げて、逆に失礼ですよ?】
「は、はい!」
顔は上げてくれたが一瞬だった、そしてが立ち上がろうとしない。
「うーん、あんちゃん、わしは何か怖がられておるようじゃの?」
【サーラさん、何か貴族に偏見があるの?爺さんなら大丈夫だよ。】
「ふむ、あんちゃん、ちょっと嬢ちゃんと話をさせてくれるかの?」
【構いませんよ?】
「嬢ちゃん、そんなに怖がらなくてもええぞ、と言っても無理な話かの?」
「・・・お、御貴族様の前では面を上げられません。」
「うーむ、顔を見んと話も出来んな?」
「御貴族様の不興を買えば家族共々処刑されます、御許しを!」
「そんな事はせんぞ?」
【サーラさん、爺さん、ドリュカス様はそんな事をする人じゃないですよ?】
「し、しかし、村を収めている貴族様には処刑された者もおります。」
「何じゃと!?」
【それで、怖がっていたのか!】
「ど、何処の何と言う村じゃ?」
「このオーカム領の、インジール村でございます・・・。」
「・・・ステファン、レガイアを呼べ。」
「かしこまりました、大旦那様。」
「嬢ちゃん、もしかしてその村は税は三割ではないのか?」
「はい、七割でございます。払えなければ土地を取られ、土地が無ければ年頃の女を連れて行かれます。」
「・・・。」
【爺さん、七割はやりすぎだぞ!?】
「分かっておる、今対処するでな。あんちゃん、済まんが大人しくしておいてくれるかのう。」
・・・あれ?
マジで怒っている時の雰囲気だ。
大人しくしていよう。
しばらくすると、レガイアさんが入室して来た。
「父上、お呼びと・・・これは、一体何事でございますか?」
呼ばれて来たら土下座をしている女の子がいるんだもんな・・・。
驚くのも当然だろう。
「レガイア、最近都から来た馴染みの男爵がおったじゃろう?」
「確か、『テベリス男爵』でございましたな。」
「税を七割にして領民を苦しめておる、引っ立てて・・・今度は処刑せよ。」
「ははっ!私が指揮を執りましょう、アレックスの部隊を動かします。」
「すぐに行け、一族郎党も皆処分せよ。その領地はわしの直轄地とする、レガイア・・・貴様が統治せよ!」
「かしこまりました!」
そう言うとレガイアさんは部屋を出て行った。
サーラさんが顔を上げて成り行きを見守っていた。
「嬢ちゃん、済まんのう、わしの管理不行き届きじゃ。」
「・・・。」
「嬢ちゃん?」
また土下座しだした。
「わ、私めの処罰は構いません、ですが、どうか家族には・・・家族だけは・・・。」
「嬢ちゃん、悪いのはわしの方じゃ、都落ちして来た馴染みの貴族に好き勝手させておったのだからな。済まぬ。」
そう言うと爺さんは頭を下げる。
それを見たサーラさんが慌てて答える。
「そんな、直訴したのは私でございます、悪いのは私です、どうか御顔をお上げ下さいませ!」
「いや、領主たる者、領民の生活を守るのが務めなんじゃ、それを疎かにしたんじゃ、許しておくれ。」
ああ、爺さんは爺さんだった。
悪い所は悪いと頭を下げられる度量。
いっそ、この人が国王にならないだろうか・・・。
「そ、それで、私めの処罰は・・・?」
「処罰なんぞせんぞ?それに今までの村の税の負担分を返すでな、安心してくれるかのう。」
「あ、ありがとうございます!」
そう言うとサーラさんは泣き出した。
しゃがむと泣いているサーラさんの肩に手を置く。
【爺さん、その領地って・・・。】
「都落ちしてきた、昔馴染みの貴族に納めるように言った領地なんじゃがな、華やかな都の生活が忘れられんのじゃろう、馬鹿な奴めが。」
【貴族って大変だなぁ・・・。】
「そうじゃよ、あんちゃん。今回のようなちょっとした所からでしか、わしの元に情報が届かんのじゃよ。」
【・・・そう言うのは、これから良くなると良いな。】
「良くするのがわしらの仕事じゃよ、あんちゃん。それにしても、よく言ってくれたのう、嬢ちゃん。」
「こ、このたびは御迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ありません。」
「迷惑を掛けたのはこちらじゃよ、嬢ちゃん。よくぞ言ってくれた、感謝する。」
「は、はい・・・。」
【なあ、爺さん、直訴って駄目なのかよ?】
「領主への直訴なら、本来は斬首物じゃよ。」
【本当かよ?でも、隠されたら悪い事してても分からねえじゃんか?】
「そうじゃ、嬢ちゃんもその覚悟があってわしに言って来たんじゃよ。」
【おいおい、弟子が出来たとたんに斬首はやめてくれよな?】
「そんな事するかっ!じゃが、今回も助かったぞ、あんちゃん。」
【それで、レガイアさんは騎士団を率いて行っちまったんだが・・・。】
「・・・あんちゃん、悪いの。報酬は上乗せするで倉庫に運んでおいてくれるかの?」
【お安い御用だ、爺さん・・・サーラさんの村の件、あんがとな。】
「気にする事は無いぞ、不正が正されたならそれでええんじゃ。」
【じゃあ、倉庫に運んでおくぜ、行こうか、サーラさん。】
「は、はい!失礼致します。」
返事を受けるとステファンさんの案内のもと二人で倉庫に向かう。
しばらく廊下を進んでいると爺さんの独り言が聞こえた。
「同郷のよしみで領地を与えたのじゃが、わしの目が曇っておったのかのう・・・。」
苦労しているんだな、爺さん。
その呟きを聞いた俺は、この爺さんの為にも力を使おうと思うのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
倉庫に運び終わると、ステファンさんに確認してもらう。
報酬を受け取ると貴族屋敷を後にする。
うーん、アレからサーラさんとの会話が無い。
この空気、耐えられん。
何とかしなければなぁ。
「済みません、師匠。」
【ん?何か謝るような事をしたの?】
「師匠にはご迷惑をお掛けして・・・。」
【うーん、悪い事をした奴が悪い、それで成敗される。これで良いじゃない。】
「ですが、師匠と領主様の関係を利用するような事を・・・。」
【ああ、あのぐらいで壊れるような関係は築いていないよ、安心して。】
「で、ですが!」
【もう、この話はおしまいにしよう。それで、商業ギルドに行くよ?】
「は、はい!」
東通りに向かう。
商業ギルドのカウンターに着くと金槌の音がかすかに響いている。
他にもギルドを利用するような鍛冶師がこの街に来たのかな?
気にはなったが先に要件を済ませよう。
許可を取って、二人で裁縫部屋に行く。
【で、これから服を作ります。採寸は出来る?】
「あ、は、はい。誰の物を図るのでしょうか?」
【ん?サーラさんのだよ?】
「え?」
【だって、その服しか持ってないんでしょう?年頃の女の子が、それじゃあ困るんじゃないかな?】
「で、でも・・・。」
【デモもストもないから採寸してくれるかな?】
「でも?すと?」
【ああ、なんでもない、こっちの話。で、部屋を出てるから、自分で採寸してみてね。】
「・・・はい、師匠。」
部屋を出て待つ事、十五分ぐらいかな?
サーラさんが寸法のメモを持って部屋から出てきた。
【ふむふむ。・・・こら、胸の大きさが書いて無いじゃないか、やり直し!】
「そんな、いくら師匠でも大きさを教える事なんか出来ません!」
【あのね、このままだとサーラさんの服が作れないでしょう?】
「お、大きめに作って下されば結構ですので!」
仕方がない、ちょっと強引に行くか。
手を引いて部屋の中に入る。
ドアを閉めると、困惑しているサーラさんを横目にサイズを適当に言ってみる。
【・・・見た所九十かな?】
「違います!八十八です!・・・あ!」
【はい、八十八っと・・・。】
「ああ、酷いです、知られたくなかったのに・・・。」
【あのね、ボソボソ・・・。】
耳元で囁く。
「ええ!あの二人はそんな大きさなんですか!?」
【ルイスはともかく、ナナリーさんはその大きさで苦労したんだよ?なら何だい、君の大きさでそこまでの苦労なんかして無いじゃないか!】
「で、ですが!」
【はい、じゃあ八十八で作ります。異論は認めん!】
「横暴ですよ、師匠!」
【その服一着じゃあ、何処にも行けないし、鍛冶仕事もやりにくいでしょう?賢い君になら少し考えれば分かるはずだ。】
「・・・あの。」
なんか、顔が真っ赤だぞ?
【な、何かな?】
「新しい胸巻きと下履きの肌布もお願いします・・・。」
【任せなさい、華麗に仕立てて見せよう。】
「もう一つ良いですか?」
【どうぞ?】
「さっきから聞いていると、師匠が作るように聞こえるんですが?」
【そうだよ、俺が作るんだよ?】
「あう、お、大きさの事は秘密厳守でお願い致しますね!」
【おう、任された!】
肌布か・・・。
そう言えば、ブラジャーとパンティーを作るんだったなぁ。
鋼のワイヤーがあるから試してみるかな?
細工スキルでワイヤーを加工、錆ないようにコーティングして裁縫スキルと組合わせて作成してみる。
何度か試して作ってみる。
どうやら作れそうだ。
スキル様は偉大である。
道具や材料があると細かい所は頭の中で思ったイメージの物を作れるからね。
『アリステリア様』に感謝。
そう言えば『ゴム』の事を忘れていたよ。
後でノモスに聞いてみよう。
現状ではまだゴムがまだ見つかっていないので、例の伸縮性のある絹布をレースと組み合わせて補強して作った。
デザインは前世の・・・。
うっへっへ・・・。
おっと、いかんいかん。
真面目にね?
とりあえず三人分の下着セットを三着ずつ作った。
この世界の物は布を当てて結んでいるだけの物だったので、フルカップブラを選択してみた。
これは巨乳の人が好んで使う物らしい。
胸をすっぽり包み込む形で、ストラップが左右それぞれのカップの中心近くについている。
もちろん長さを調節する為のアジャスター付きだ。
サイドベルトをホックで止め、ストラップによって胸を持ち上げ、綺麗な形を作る事ができる物にした。
そして気になる御年頃のサーラさんには、試しにロングラインブラを一着作ってみた。
此方はバストからウエストまでを整える丈が長いタイプのブラジャーだ。
脇をすっきりさせ、上半身を綺麗に見せる効果がある。
今のサーラさんには必要だと思ったのだ。
知識やデザインは前世での記憶の物だからね?
なんで詳しいかは聞かないように!
・・・男の秘密だ!
しばらく作業に没頭する。
サーラさんはそんな俺を真剣な眼差しで見ていた。
「綺麗・・・。」
相変わらずメモを取っているようだが途中でやめていた。
そうだろうね。
今作っている物が何か分からないのだろう。
ふう、こんな物かな?
【サーラさん、肌布じゃなくて下着と言う物を作ってみたんだけれど、着けて見せてくれるかな?】
「下着・・・ですか?」
【うん、ブラジャーとパンティーって言うんだけれどね。女性用の下着なんだ。】
「どんな物なんですか?」
【これです、着けてみてくれれば分かりますよ。】
「良いですけど、覗かないで下さいね!」
【覗かない、覗かない。】
だって調整をするのにどうせ見るんだもん。
うっへっへっへ。
大きめのTシャツを作っておいたのでそれを着せると、その上から充てるような感じで付け方を教えた。
サーラさんに渡したのはもちろんロングラインブラだ。
俺が外に出ると着替え始めたようだ。
ちょっと、いや、すごく楽しみだ。
・・・どうやら着替え終わったようだ。
ドア越しに声が掛かる。
「師匠、ピッタリです!肩が軽いですよ!それに背筋が!」
【着替えたね、じゃあ入るよ?】
「って、ちょっと待って下さい!今はその下着の状態なんですよ?部屋に入れる訳無いじゃないですか!」
【だって、調整をしないといけないだろう?】
「それはそうなんでしょうが、いや、駄目です!」
【サーラさん、調整が必要なのは認めるんですね、なら見ないと出来ないでしょう?】
「だって、裸同然なんですよ!?」
もう一押しかな?
【職人なら最後まで仕事をするのが義務でしょう!】
「それはそうですが・・・。」
【貴女も職人なら分かるはずだ!】
「・・・。」
しばらくするとドアが開いた。
「あの・・・醜いのであまり見ないで下さい・・・。」
そんな声が聞こえたが構わずに部屋に入る。
するとそこには美しいと表現するのにふさわしい女性がいた。
身長もあり、出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでいる。
前世なら彼女は雑誌の人気モデルになっていたであろう。
そんな頬を染めた下着姿のサーラさんがたたずんでいた。
「あの、どうでしょうか・・・?」
【ごふ、おっさんには刺激が強すぎる。】
「おっさん・・・?」
【いやいや、こっちの話。】
「・・・?」
【しかし、良いですね・・・素晴らしい・・・。】
「醜くて申し訳ありません・・・。」
【いや、素直に良いですよ、そして綺麗です、サーラさん。】
「綺麗だなんて・・・そんなお世辞を言わなくても分かっているんです。」
【そんなに自信が無いのなら、今の俺の状況を言いましょう。襲い掛かりたいのを必死に我慢しているんですよ?】
「え!?」
【良いですか、貴女はすごく魅力的なんです。自信を持って下さい。】
「・・・。」
駄目だ。
これ以上見ていると本当に襲い掛かってしまう。
それ程の効果がこの下着にはある。
「師匠、そんなに魅力的ですか?」
【ええ、ルイスとナナリーさんと言うストッパーがいなければ、今頃襲い掛かっているでしょう。】
「すとっぱあ?」
【ああ、留め具の事ですよ。この場合は止めてくれる人と言う事です。】
二人のストッパーは偉大である。
今日の夜は二人に発散させてもらおう。
あ、サーラさんがいるんだった。
くぅ、このリビドーは何処に持って行けば!?
おっと、仕事モードに戻ろう。
【おほん、それでは調整を行いますね。】
「はい、お願い致します。」
そうすると、俺の前に進み出て来る。
【動いている時に、気になる所はありませんか?】
「少し胸の・・・部分が・・・当たるのですが・・・。」
【何処ですか?】
「・・・辺りです。」
【え?】
「・・び、の辺りです。」
【ここには俺とサーラさんしかいませんから、大きな声でお願いします。】
「乳首の辺りです!」
【ああ、では見せて下さい。】
「外すのですか!?」
【ロングラインブラは残念ながら一着しか作っていないんですよ。】
「あうう・・・み、見ないで下さいよ?」
【後ろを向いていましょう。】
ゴソゴソ・・・
布ずれの音だけだけど、なんか興奮するよね?
「こ、こちらです。」
差し出されたそれを見てみる。
ああ、トップバストの位置が悪いのかな?
そう言えば、この世界の採寸にはトップとアンダーバスト、バスト間ポイントなんて物は無かったか。
【サーラさん、部屋を出ていますので乳首の位置とその間の寸法、それと胸の下の位置の寸法を測ってみて下さい。】
「あの、御迷惑でなければ、わ、分からないので、師匠が採寸して下さいませんか・・・?」
ズドーン!
なんたる破壊力!
サーラさん、狙ってやってないよね?
待て待て、ここは仕事モードだ、流されるな、俺。
【構いませんが、よろしいのですか?直に見て、触れますよ?】
「師匠が良ければ、構いませんのでお願い致します。」
なんかこう言うの、もの凄く興奮する。
サーラさんはさすがに恥ずかしいのか両手で胸を隠しているが・・・。
その姿が色っぺぇ・・・
うへへへ。
【おっほん、では、両手を広げて下さい。】
「は、はい。」
そして、初めてマジマジと異性に見られるであろうその巨乳がさらされる。
初めに言っておこう。
仕事モードじゃなかったらやばかったね。
後、ルイスとナナリーさんの顔がちらついてくれたのが大きい。
二人に感謝しつつ、サイズを測る。
腕回りなどの細かい所も図る。
【サーラさん、後は股下の位置も図っておきますね。】
「ま、股下ってまさか!?」
【パンティー、下に履いている物ですが、その上から図ります。それに服を作るのには必要な事です。】
「お、お手柔らかにお願い致します・・・。」
それぞれをメモに記入して図り終える。
【サーラさん、このタオルを巻いて少し待って下さいね、すぐに調整します。】
「お、お願いします。」
チラッと彼女を見ると耳まで真っ赤だった。
それ程の勇気を出してくれていたんだね。
真摯に対応してよかった。
そしてトップとアンダー、バスト間の位置を調整する。
出来上がった物を付けてもらう。
部屋を出て行こうとしたのだが『そこにいて下さい。』と言われたので着替える所を見ている。
前世ではお姉さんの御店でしか見れなかった物が、今世では目の前で、しかも近距離で更に美人の生着替えが見れるとは・・・。
『アリステリア様』転移させてくれてありがとう。
沢山の女の子に囲まれて、俺は幸せです。
ぐへへへ。
おっと、いかんいかん。
調節を終える。
「サーラさん、着て見せて下さい。今度は大丈夫だと思うのですが。」
ゴソゴソ・・・
一応後ろを向いておいた。
紳士だからね!
そこ!
変態とか言わない!
「師匠、今度は気になりません!この下着と言う物は凄いですね!」
【他には違和感はないですか?】
「先程よりも胸が、肩が軽いです、それに背筋が伸びます・・・それ以外はありません。」
【そのブラジャー・・・ああ、胸の当て物の事ですがサーラさんだけの特別品です。】
「わ、私だけの?」
【そうです、そのブラジャーには、脇をすっきりさせ、上半身を綺麗に見せる効果があります。】
「そ、そんな効果が?」
【パンティー、下の履物の方は違和感はないですか?】
「はい、言われた通りに履きました、問題ありません。」
【良かった、それで多少の体形の矯正が出来ますので、美しく見えるはずですよ。】
「そうなんですか?」
【ブラジャーを付けて事で背筋が伸びましたね。】
「ええ、何故か視界まですっきりとしているようです。」
【パンティーを履いた事でお尻も持ち上がっていますよね?】
「はい、肌布ではこんな事は無かったです!」
【さて、それでは今の状態をもとに服を作りますね。】
「お願いします、師匠!」
改めて下着を着けた部分の採寸する。
採寸が終わると夏向けの普段着を四着、外行きの服を四着、寝間着を二着、鍛冶仕事用のツナギを二着作った。
後はタイツと靴下、靴とブーツも作った。
【そのまま、えー・・・二着目に作ったTシャツとショートパンツと言う物を着てみましょうか。】
所謂『美尻カット』と呼ばれている物だ。
「はい、コレとコレですね?でも・・・このしょーとぱんつと言う物はお尻の辺りから素足がものすごく見えてしまいますよね?」
【お尻から足にかけて男性の目が行けば巨乳も目立たなくなり、サーラさんの自信にも繋がると思いますよ?】
「師匠!この服、丈が短すぎじゃありませんか?おへそが・・・見えて・・・。」
【そうです、そちらにも目が向けば貴方の胸から腰に掛けての美しい形で男を魅了出来ますよ!】
嘘だ。
彼女に自信を付けさせる為だ。
「分かりました、それで着け方は・・・?」
着け方を指導すると彼女はとても楽しそうに着替えていた。
良い傾向なのかな?
これで、少しでも巨乳を受け入れて自信をつけてくれれば良いのだが・・・。
【それでは靴下を履いて、ブーツと合わせてみましょう。】
「はい、師匠!」
【髪型も整えてみましょう。】
「はい、お願いします!」
前髪で隠れていた顔を晒すように、作ったヘアピンで髪の毛を止める。
更に櫛を入れて髪型を調節する。
【後は歩き方ですね。】
「歩き方ですか?」
【『ウォーキング』と言う特別な歩き方を教えましょう。】
「うおーきんぐ?・・・私に出来るでしょうか?」
【自信を持って下さい、何度でも教えますよ。】
「は、はい、師匠!」
着替え終わるとウォーキングを教える。
しばらく教えたら、まだまだぎこちないが、なんとか合格点が出来るようになった。
そして、二人で街に出てみる。
やはりサーラさんは恥ずかしいのだろうか?
前かがみになり足を気にしている。
【サーラさん、背筋を伸ばす!綺麗ですよ、自信を持ってください!】
「は、はい!」
俺がそう言うと前かがみになり隠していた胸を張り自然に歩き出す。
おお、まだぎこちないがモデルさんの様だ。
髪型を整えたおかげで顔の表情も良く見える。
その顔はぎこちないが笑顔だった。
そうだ、それで良いんですよ。
通りを歩く男の視線が集まる。
「お、おい、あんな女いたか?」
「やべえ・・・綺麗だな。」
「お前、声を掛けて来いよ。」
「あんなに足を見せびらかせて・・・相当自信があるんだろうな。」
「だが分かるぜ、すげえ綺麗な足だ・・・。」
「足だけじゃねえよ、腰のところ見てみろよ。」
「ああ、良い尻をしてるぜ?」
「俺、彼女んところ行ってくるわ。」
「本当に声を掛ける気か?」
「お前なんか相手にされるかよ!?」
「でも・・・たまんねえぞ?」
そうだろう?
それ程に今の彼女は輝いているんだ!
サーラさんはクルリと振り向くと俺に向かって言う。
「師匠!俯いてばかりの私に新しい世界をありがとうございます!」
【いえいえ、今までは皆の見る目が無かっただけですよ。】
「世界とは、こんなにも風通しの良い所だったんですね!」
【そうです!まだまだ魅力を引き出す物はありますからね、自信を持って下さい!】
「はい、ヘファ師匠!」
何か吹っ切れた彼女のその『笑顔』を、俺は忘れないだろう。
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます。
まずは、いつものから!
評価、イイネ、ブックマーク等々。
大変に励みになります!
本当にありがとう!
それでは 次話 サーラの野心(仮 で、お会い致しましょう!
お疲れさまでした!