ベヘモドという悪魔族
いつも読んで下さっていらっしゃる方々、ありがとうございます!
執筆が終わりました。
お楽しみ下さい。
俺が風呂から上がり、部屋に戻るとベッドの上でぐったりしている・・・サーラさんを見かけた。
【・・・洗礼を受けたようだね。】
「ええ、リズとマオどころかベスやアリスまで・・・。」
「サーラちゃんは頑張ったのですよ、しばらくそっとしてあげて下さいー。」
【っと、そうだ、ちょっとノモスの部屋に行ってくるよ。遅くなるようだったら遠慮なく寝ちゃって良いからね?】
「分かったわ・・・ねえ、昼間・・・いえ・・・何でもないわ。」
【どうしたんだい、ルイスらしくないよ?】
「あ、えっとですね、昼間にオーガの牙の女性陣の方々が来られましてー。」
【何かあったんですか?】
「ちょっとヘファ君の事を聞いていたんですよー。」
【俺の事を、なんでまた?】
「貴方が心配だったからよ!何よ!良いですわよね、あんな綺麗な人達に囲まれて!」
「ルイスさん、素直になって下さいー。」
「心配したんだから・・・ねえ、貴方はあの人達とも肉体関係を持っているわよね?」
【ルイス・・・。】
ベッドに座っているルイスを抱きしめる。
肩が震えていた。
怒っているのだろうか?
「ヘファ君、お姉さんも聞きたいですね。正直に言って下さい、怒ったりはしませんからー。」
【ああ、あの人達も、もちろんジャスティンやダンもだけれど、この街の人達も大切なんだ。】
「ヘファ君、答えになっていませんよー?」
【・・・ああ、あの三人とも、肉体関係は持っている。でも、今言った通り大切な人達なんだ。】
「私達よりも?」
【ルイス、その聞き方はずるいよ。ルイスとナナリーさん、リズ達以上に大切な人なんかいる訳無いじゃないか!としか答えられないよ?】
「でも、不安なの・・・。」
【何が不安なの?】
「私達は一緒にいられないのよ?待っている事しか出来ないの!でも、あの人達は側にいる事が出来る、貴方が危険な目にあっている時に!」
【ルイス、それは仕方がないだろう?だって、魔物と戦っている所に、ルイス達を連れて行く訳にはいかないじゃないか。】
「でも、不安なの。いつか貴方が帰ってこなくなるんじゃないかって・・・。」
「ヘファ君、お姉さんもそこは心配なんです。ルイスさんの気持ちも分かってあげて下さいー。」
【ルイス、あの時に俺が誓った言葉は覚えてるかい?】
「『必ず、私達の所に戻ってくる。』って言ってくれたわ。」
【心配ならもう一度、いや、何度だって誓うよ。必ず、ルイス達の所へ戻ってくる、約束だ。】
「なら、証を頂戴。」
【証って何だい?】
「そろそろ、考えてくれても良いかなと・・・。」
【何を?】
「け、結婚を・・・。」
【・・・それでルイスが安心するなら。】
「ヘファ君、お姉さんの事も忘れないで欲しいですー。」
【うん、おいで、ナナリー。でも、今日はお客さんがいるから遠慮しようか。】
「今は、今だけは抱きしめていて・・・。」
「抱きしめていて下さい、ヘファ君ー・・・。」
二人を抱きしめる。
暖かい。
俺は、この温もりの為だったらどんなに危険な所からでも帰ってこれる!
改めて、そう思った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
二人が落ち着いた所でノモスの部屋にやって来た。
ドアをノックする。
コン、コンッ
ドアが開くとバウマンさんが対応してくれた。
「お待ちしておりました、アーサー様。会頭がお待ちでございます。」
【バウマンさん、ありがとうございます、先に渡しておきますね、こちらがとんかつとソースのレシピです。】
「おお、ありがとうございます、アーサー殿。ささ、お入りになって下さいませ。」
部屋に入ると四人掛けの円卓が置かれていた。
その周りには四脚の椅子が並んでいて、ノモスとグレイさんが席についていた。
バウマンさんに案内されて、ノモスの前に座る。
奥の窓側にはキングサイズのベッドがあり、ここで毎日ノモスが寝起きしているのだろう。
バウマンさんが何処からかワインのボトル持ってくると、テーブルに置いてあったそれぞれのグラスに注いでいく。
注ぎ終わると席に着いた。
俺の正面にノモス、左側にグレイさん、右側にバウマンさんと言う形で座った。
落ち着くとノモスが話始める。
「ベヘモド・・・コイツの正体が少しだが分かったぞ。」
【進展があったと言う事だね?】
「そうだ、結果から言おう。どうやら、嫉妬の半身らしい。ただ片方が消滅すると、もう片方も消滅すると言う訳では無い様だ。」
そう言うとノモスがワインを口にする。
「それでだ、アーサー。強欲が言ったように嫉妬も消滅したくないと考えているようなんだ。いや、この言い方は正確ではないな・・・。」
【正確ではない?】
「そうだ、神都の資料を漁った所、どうも七大悪魔達は魔王を復活させないように動いているという文献が見つかったそうだ。」
【魔王を復活させない為に動いている?】
「そうだ、誰も好き好んで生贄にはなりたくないと言ったようなんだ。」
【そうか、なら強欲さんの言った事も理解出来るね。】
「そうだ、理解は出来る、共感は出来ないがな。」
【・・・自分だけが生き残れれば良い、と言う考えかな?】
「そうだ、特に強欲。アレは生き残る為なら何でもするぞ?」
【分かり合えないかな?】
「話し合う事が出来たが、分かり合えるかと言うと難しいだろうな、だが俺達だって魔王なんか復活させたくはない、と言う所では協力出来るかもしれない。」
【そうだね・・・で、話はそれだけじゃないんだろう?】
「そうだ、ベヘモドについてだ。こいつが厄介でな。どうやら率先して魔王を復活させようとしているらしい。」
【なんでまたそんな事を?】
「こいつは魔王の糧にならないらしい、つまり消滅しないと言う事だ。」
【それで半身の嫉妬さんは、復活させようとしようとしているベヘモドの邪魔をしている・・・と言う感じかな?】
「そうだ、互いに相反しているようだ、それで嫉妬の能力は『魅了』だ。」
【魅了・・・なんか最近なんだけれど、それに近い事を受けたような気がするんだ。】
「ほう、君に魅了を掛けるとは、さすがは大悪魔と言った所かな?」
【ただ、今思うと大切な人にも手を出していたようなんだよね。】
「ルイス嬢とナナリー嬢か!?」
【ルイスの方だけれど、一回だけ逃げられた事がある。嫉妬さんだったかどうかは不明だけれどね。】
「ふむ・・・アーサーから逃げれるのか・・・。」
「会頭、ベヘモドの能力を言っておりませんぞ?」
「ああ、そうだな、済まないバウマン。アーサー、ベヘモドの能力は「支配」だ。」
【また、厄介そうな能力だな。】
「笑い事では無いぞ、アーサー。例えばだが、ここ数か月の王国の事を、国王の事を考えてみろ?」
【まさか!?】
「そうだ、疑わしいにも程がある。急に人が変わったような態度、そして統治能力の欠如、家臣との軋轢。」
【王国の最上層部の人間を支配している、と?】
「そうだ、長く支配されている国王はもう駄目だろう・・・先日ドリュカス老が直訴に行った事を覚えているか?」
【ああ、当然だ。】
「グレイ、様子を聞かせてやってくれ。」
「了解だ、ボス。アーサー殿、話をしていた国王の目は狂人のソレだった。まるで自分の身が無事ならば良い、そんな考えを持っているようだったんだ。」
【そんな・・・ちょっと待ってくれ。と言う事は備蓄を開放しなかったのも・・・?】
「そうだ、支配されていて開放の命令を出さなかった可能性がある。そして、これが問題なんだが・・・。」
そう言って一息つくとグレイさんもワインを飲み込む。
「・・・少し離れていたが確かに聞いた。『これであの小五月蠅いおいぼれにベルフゴールの事を押し付ける事が出来たわ!』と、それともう一言。」
【何て言ったのかな?】
「『そうだ、ついでにオーカムが落ちればいいではないか!そうすればあの小五月蠅いおいぼれも死ぬでは無いか!』だ。」
「とても国王の言葉とは思えませんな・・・。」
バウマンさんも渋い顔をしてワインを飲む。
「そうだ、ドリュカス老はこの辺境を良く治められている、これは離れた帝国でも有名な話だ。」
帝国でも有名なんだな爺さん。
これからはもう少し敬意を払おう。
「そして俺は思う、国王の豹変ぶりを、それは支配か魅了を受けているのではないかと。」
【嫉妬さんは平和主義者のようだから、ベヘモドの支配の方に当たりを付けたんだね?】
「そうだ!そして嫉妬の部位は上半身、ベヘモドの部位は背中だ。」
【まさに、表裏一体か。】
「ここまでは分かった。後はファリスが帰ってくるのを待とう。何もなければじきに戻ってくるはずだ。」
【情報ありがとう、ノモス。・・・嫉妬さんと接触は出来ないかね?】
「接触してどうするんだい、アーサー?」
【もちろん、話し合いと言うピクニックへ誘うさ。強欲さんも一緒にね。】
「・・・バウマン、ここ最近の人の出入りを調べてくれ。そうだな、臭うのはギルド関係者もしくはあの襲撃でも無事だったと言う銀行の関係者だ。」
「かしこまりました。」
話が一段落すると、俺もワインを口にする。
【後、一つ気になる事があるんだけれど。】
「なんだい、アーサー。」
【王都襲撃の際、無事だったと言う魔法ギルド、臭わないかい?】
「・・・それも調べよう。」
【感謝する、ノモス。】
そう言うと、俺達はワインをあおる。
【頼んだよ、ノモス、バウマンさん、グレイさん。】
「任せてくれ、アーサー!」
「お任せを、アーサー様。」
「任せてくれ。」
その言葉を背に部屋を出て行く。
支配に魅了か。
ルイスを襲ったのは嫉妬さんで決まりのような気がするな。
ベヘモドだったらもっと凄惨な事をするだろう。
そう思うと、大切な人達のいる部屋へと戻ったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
次の日の朝は悲鳴から始まった。
「キャー!師匠!不潔です!」
【な、なんだなんだ!?】
「一体どうしたのよ?」
「な、何事ですかー?」
「は、は、裸で寝ているなんて!しかも女性二人も裸だなんて!」
【ん?気になるの?】
「な、何がですか!」
【コレ。】
そう言って俺が立ち上がると朝なのでマイサンが元気だった。
「キャー!変態師匠!」
そう言うとサーラさんは、シーツに入り込んで出てこなくなった。
俺達はそんなサーラさんを放置して支度をすると日課の祈りを捧げる。
「「「『アリステリア様』本日も平穏な日々を与えたまえ・・・。」」」
祈りが終わると声を掛ける。
【ほら、サーラさん。隠れてないで着いてきなよ。出かけるよ?】
「うう、ど、何処に連れて行かれるのでしょうか?」
「港の朝市よ、とっても楽しいの。一緒に行きましょう。」
「朝市で美味しい物を食べましょう、そうすれば」
グゥ~・・・
「ふふ、元気ですねー。」
そう、サーラさんのお腹が鳴ったのだ。
真っ赤な顔をしたサーラさんを連れて、俺達は久しぶりの朝市へと向かったのだった。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます!
まずは、いつものから!
評価、イイネ、ブックマーク等々。
大変に励みになります。
皆様に感謝を!
結構な量の誤字報告を頂いております。
皆様がよく読んでくれている証なのと、自分の不勉強さを恥じる次第でございます。
これからもお待ちしております!
それでは 次話 サーラと言う女の子(仮 で、お会い致しましょう!
お疲れさまでした!