女の子の正体
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朝、目が覚めた。
いつもの六時頃だろうか?
ベッドを出て支度をし、一階に降りる。
扉を開け外に出る。
昇りかけている太陽を見ながら日課を済ませる。
【『アリステリア様』本日もよろしくお願いします。】
いつもの日課をしてから、フード付きのローブと剣を装備する。
腹がグ~ッと鳴る。
そういえば昨日晩御飯を食べていないなと思いだす。
飯屋はさすがにやっていなかったので、やっている露店で食材を見て行く。
白菜と、リブ肉か・・・後は何かあるかな?
と、露店を見て買い物をしていると「むんずっ!」と肩を掴まれた。
「アンタ、逃げる気じゃないでしょうね?」
突然、後ろから声がかかる。
その声を聞き諦めたように振り向いて答える。
【ああ、君か。良かったら、一緒に朝御飯にしないかい?君も昨日は食べていないだろう?】
「結構よ!それよりアンタの鍛冶のぉぉぉ・・・。」
勢いが無くなったと思ったら女の子から「グ~。」と腹の音が鳴った。
顔を見る。
真っ赤だった。
【・・・とりあえず、何か食べよう。】
と、言うと小さな声で返事をもらえた。
「・・・分かったわ。」
どうやら同意が得られたようだ。
広場で焚火をやっているおじさん達がいたので、火を借りる代わりにワインの瓶を提供すると喜んで使わせてくれた。
鍋を取り出しリブ肉を切り、塩で焼いて行く。
黒パンを取り出して焼けたリブ肉と一緒に木皿に並べて女の子に渡す。
【さあ、食べようか。いただきます。】
「いただきます?」
なんかデジャブ。
【神様に日々のお恵みを感謝する言葉だよ。】
そう簡単に説明する。
「アンタの所はそういう風習があるのね。」
【そうなんだよ。では食べようか、いただきます。】
「・・・いただきます。」
真似された、やはりくすぐったいな。
食事の時も何か言いたそうだったが無視して食べた。
【ごちそうさまでした。】
「それも風習なのね?ごちそうさまでした。」
食べ終わり、井戸で食器を洗っていると突然大声が上がる。
「がー!違うのよ!!」
そう言って女の子が「ドスドス!」と足音を立てて近づいて来た。
「昨日!アンタの!やった事について聞きたいのよ!」
すごい剣幕で言い寄って来た。
【洗い終わってからにしてくれるかな?】
「わ、分かったわよ。」
渋々だが返事がもらえた。
女の子は俺の近くにしゃがみ込む。
【あ!そう言えば・・・。】
「何よ?言う気になったの!?」
【違うよ、アンタとか君だと呼ばれているか分からないから、そろそろ自己紹介をしない?】
そう、ここまで女の子の名前を聞いていない。
もちろん俺も女の子には名乗っていない。
お互いに名前すら知らなかったのだ。
「あっ!?」
女の子も気づいたのかたたずまいを直す。
「それは失礼をしたわ。」
そう言って来たので俺から名乗る。
【ヘファイストスと言う、鍛冶師だ。長いから『ヘファ』って呼んでね。よろしく!】
「アタシは『ミカ』。ドワーフの鍛冶師よ!『黒玉の鍛冶師』とは、この私の事よ!」
ほう、二つ名持ちなのか。
ゲームでは称号だったんだけれどな。
この世界では違うらしい。
しかも、どうやら有名な鍛冶師らしい。
「アタシの正体を知って、ぐうの音も出ないみたいね?いいのよ?無知は罪ではないわ。だけれども、これからは敬いなさい!」
ドワーフか初めて見るな。
こげ茶色の髪の毛を後ろで二束にして纏めていて、前髪は眉のあたりで切りそろえている。
身長は130cmぐらいだろう、クリクリとした緑色の瞳をしている。
人間の女の子と比べると、ちょっと腕だけが太い?
顔が日焼けをしたように浅黒い。
腕もそうだから褐色っていうやつかね?
種族が違うので年齢は分からん!
ミカという女の子を観察していると声が掛けられる。
「ちょっと!人をジロジロと見る前にアンタがやった事を教えなさいよ!」
自己紹介したのに「アンタ」扱いだ。
寂しい。
【俺がやった事って何ですか?】
あくまで白を切る。
「お、教えなさい!」
【何の事だか分からないなー?】
「ぐぬぬぬ・・・。」
さてと、洗い物も終わったので切り替えて行こう。
【ちょっと待ってね。】
そう言って昨日冒険者A君かにサインをしてもらった証書を書き上げた。
【おまたせ。】
「やっと言う気になったのね?」
【何を言うかは知らないんだがね?】
食器をバックパックにしまい、鉱山の方に向きを変えると歩き始める。
「ちょ、どこ行くのよ!」
【鉱山だよ?】
ミカが追いかけて来る。
「行っても鉱山には入れないわよ!アース・エレメンタルがいっぱいなんだからね!」
【だから行くんじゃないか、このままだと昨日の冒険者君達が死ぬぞ?】
「どうしてそんな事が分かるのよ!?」
【あの子達ではアース・エレメンタルの相手は無理、いや無謀だ!】
「どういう事?ギルドから依頼で来てるんでしょう?だったら討伐に準ずる力があると判断されてるんでしょう?」
追いかけて来るミカの方を見て言う。
【君も修理をしただろう?気づかなかったのかい?あの子達の武器は鉄。アース・エレメンタルは固めた土並みの硬さがあるんだぞ?しかも彼らの腕は未熟。手に剣ダコの出来ていない子もいた。】
そう、戦士の手では無かったのだ。
【熟練者なら鉄の剣でも十分だろうが、見た感じあの子達のスキルは未熟だ。絶対に斬れないぞ?今までは運が良かっただけだ!この町に来る途中にエティンにでも会っていたら全滅していたはずだ。】
更に言う。
【それに、地下二階にはメタル・エレメンタルがいるらしい。もしたどり着けたとしても彼らでは絶対に勝てない!武器が鉄しか無いのでは無謀だ。】
「そんな事言ったって鍛冶師が行っても何も出来ないじゃない!?」
【あの子達の事だ。止めろと言っても止めないだろう?】
「そうよね・・・。」
【要するに現実を知ってもらおうって言う事だよ。】
「訳わかんないわよ!?」
【まあ、行ってみればわかるさ!】
「仕方がないわね、わかったわ!」
そして少しだけ乗り気になった女の子と二人で鉱山へと急ぐのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
走ったおかげかどうかは分からないが、冒険者君達が洞窟に入る前にはたどり着けたようだ。
「ぜーぜー・・・。」
ミカは肩で息をしている。
俺が挨拶をする。
【おはようございます。】
冒険者A君が代表して言って来る。
「君達か、おはよう。こんなに朝早くから来てクエストの成功でも見届けに来てくれたのかい?はっはっは!」
「「「あははは!」」」
冒険者達からも笑い声が上がる。
まてまて、ここは我慢だ。
【ええ、是非この目で見たくなりまして。後方にいるので御一緒させて下さい。】
「お、同じく。」
お?
ミカ、復活したか?
冒険者A君が勝ち誇ったように言う。
「ならば、精々邪魔にならない事だね。っふ、じゃあ行くぞ!」
「「「はい!」」」
冒険者達から元気な声が聞こえて来た。
不安を覚えつつバックパックからランタンを取り出し火をつける。
洞窟の中に入ると、早速アースエレメンタルが気づいて近寄ってきた所だった。
「グルルルゥゥゥ・・・。」
近寄ってきたのは三体。
ランタンを持っているのは後衛の二名と冒険者A君のみ。
暗視の魔法を使わないのは秘薬でもケチっているのだろうか?
そんな事を考えていると冒険者A君が指示を出す。
「正面に防御陣を敷いて後衛が魔法を撃て!」
「「応!」」
指示された冒険者二人が盾で防御陣を敷く。
いや、もう近接戦闘の間合いだろう?
アース・エレメンタルは動きこそ遅いが力は馬鹿にならないぞ?
そんな事を思っていると案の定、一撃で前線が崩された。
ただ、後衛の詠唱が間に合った。
「「・・・ファイアー・ボール」」
一番右のアース・エレメンタルにファイヤー・ボールが二発炸裂する。
ほう、3thの呪文は唱えられるんだな。
なら逃げ撃ちをして・・・等と考えていると冒険者A君が指示を出す。
「抜剣して右のアース・エレメンタルに一斉に掛かれ!」
「「「応!」」」
え?
ここで近接戦?
空間を利用して逃げ撃ちして弱った所を前衛が止めじゃないのか?
「「「グルルルゥゥゥ・・・。」」」
三体のアースエレメンタルが吠える!
後衛二人と冒険者A君を残して前衛の三人が右のアースエレメンタルに突撃して行った。
マジか!?
後の二体はどうするんだよ!?
後衛の護衛は冒険者A君だけ!?
と、思っていると冒険者A君が叫びだした。
「貴様達の相手は僕だ!かかってきたまえ!」
等と言っているが挑発スキルでも無いのにかかって来る訳がない。
ついに三人が三体のアース・エレメンタルに囲まれる。
冒険者A君が訳の分からない事を叫んでいる。
「何故だ!何故こちらに来ない!僕を恐れているのか!」
などと、のたまわっている。
こりゃーだめだ。
昨日、ハイクオリティーの武器を作った子はなんとかダメージを与えていたが修理をしただけの子は剣が通っていない。
使っている子の腕もそうだが武器がノーマルクオリティーだからだ。
その間にもアース・エレメンタルが攻撃を始めている。
「「グルルルゥゥゥ・・・。」」
攻撃を受けていない二体が冒険者に拳を振り下ろす。
一人はかわした、もう一人は殴られた。
ダメージが入ると後衛がすかさず回復魔法を唱える。
「「・・・ヒール!」」
と、力ある言葉を唱え負傷した冒険者君に回復魔法を唱える。
「た、助かったぜ!」
ヒールを貰った冒険者君が声を上げて戦線に戻る。
回復は微々たる物だが二発入れば多少回復するだけの威力はあるみたいだね。
後衛のマナ頼りの滅茶苦茶な戦法。
問題はこんな戦闘でよく今まで生きていたなと言う事だ。
アース・エレメンタルに入っているダメージも微々たるものだ。
冒険者A君が癇癪を起してしまった。
「まだ仕留められないのか!昨日、武器がハイクオリティーになったんだろう!一体ぐらい余裕だと言っていたじゃないか!」
ああ・・・切れちゃったよ。
これは無理だなと判断した俺は一番左のアース・エレメンタルに向かって歩いて行く。
俺に気付いて、冒険者A君が叫んで来る。
「貴殿、一体何をするのかっ!」
と、叫んで来るがもう見ていられない。
【あー、冒険者君達、ここではこのぐらい出来ないと先に進むのは無理だぞ?】
「ちょ、ちょっと、アタシ達は鍛冶師なのよ!?」
ミカが何か言っているが無視する。
【教訓一、まず挑発スキルね?】
冒険者A君の方に向いて指をさして言う。
【君、全然出来ていないよ?本当はこうね!】
と、言ってアース・エレメンタルに向き合う。
「「「こっちだ!」」」
スキルを掛けると、アース・エレメンタルが三体共、俺の方に向かってくる。
【教訓二、一体を集中して狙うのは良かったけれども、君達には圧倒的に実力が足りない。】
抜剣して一番近くのアース・エレメンタルが間合いに入ると有無を言わさず真っ二つにする。
ミカと冒険者A君達が何が起こったのかとぼーっと見ている。
【更に教訓三、実力が足りない相手と戦う時は安全第一で逃げるべし。生き残るのが第一だよ。】
くるっと冒険者A君の方を向いて叫ぶ!
【逃げろ!!!】
と、大声で叫ぶと、ぼーっとしていた冒険者A君が慌てて指示を出す。
「て、撤退!全員撤退!!」
冒険者君達が慌てて出口へ飛び込んで行く。
ミカを除く全員が洞窟の外に向けて逃げたのを確認して、他の二体を斬り倒してから一緒に洞窟の外へ出る。
外に全員が出ている事を確認すると、冒険者A君に諭す様に言う。
【実力が分かったかい?君達は圧倒的に足りていない。】
俺がそう言うと、冒険者A君は怒りに身を任せて叫び始めた。
「貴様に何が分かるかっ!僕の実力は足りているのだ!他の者が足を引っ張っているのだ!」
あー・・・一番言ってはいけない事を言った。
言っちゃったなぁ。
他の冒険者君達は下を向いて俯いている。
そんな空気の中、俺は冒険者A君の頬に「パン」と平手打ちをした。
何をされたのか分からないといった顔の冒険者A君が引っ叩かれた頬に手を当てる。
【パーティーメンバー、いや、友達にそんな事を言っちゃ駄目だ。】
追い打ちをかける。
【教訓四、友達は最大の武器。良いかい?これは一番重要だよ?】
これもゲームで教わった知識だ。
どんな困難な戦いでも仲間がいれば何とかなった。
リアルな友達はいなかった俺が言うのもなんだけれど・・・。
冒険者Aくんが俯く。
涙を流しながら・・・。
「クエストは失敗だ。オーカムに帰還する。」
覚悟を決めたのか、そう言った。
【教訓五、引き際を見極めるのも指揮を執る者には大事な事だよ。】
冒険者A君の肩に手を乗せる。
「グスッ・・・グスッ・・・。」
しばらくすると冒険者A君達は撤退する準備を始めた様だ。
ミカが近づいてくると俺に言って来る。
「何があったか知らないけれど、アンタも相当なお人好しね。」
そう言って来た。
【ソンナコトハナイデスヨ。】
そう返しておいた。
支度を終えた冒険者A君達が町へ戻って行く。
その背中を見送っているとミカが聞いて来る。
「で、アンタはどうするのよ?」
【うーん、仕方が無いから、ちょっくらダンジョンに行って来るわ。】
ミカが驚いている。
「は!?」
【それと、ミカにしか出来ないお願いがあるんだけど良いかな?】
ミカがにやけながら、ヤレヤレという仕草をする。
「それで、アタシは何をすれば良いのかしらね?」
【彼らと一緒にオーカムに戻ってほしい。それで彼らを見送ったら領主さんに言伝をお願いしたい。二つ名持ちのミカなら出来るでしょう?】
「会って話す事は出来ると思うけれど、何を話すのよ?・・・想像はつくけれどね?」
【冒険者ギルドの事だ。未熟なメンバーでの仕事を斡旋している事を伝えてほしい。】
やっぱりね、と言う顔で言って来る。
「分かったわよ!でも、タダじゃやらないからね?」
【分かったよ。俺からのハグで手を打ってくれないかな?】
スパーン!
と、後頭部を叩かれる。
「そんなもんいらないわよ!アタシが欲しいのは情報よ。アンタの鍛冶に興味があるわ。いろいろ聞かせなさい。良いわね?」
【コタエラレルコトナラ。】
「絶対だからね!あと無理はしない事!これだけは約束しなさい!良いわね!」
そう言って冒険者A君達の後を追って行く。
ふうっと息を吐いて見上げた空はまだ太陽が真上にあるぐらいの時間だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
昼飯代わりに干し肉を齧り準備をして洞窟内に入る。
アース・エレメンタルが二体いる。
これは問題なく排除する。
坑道が左右に分かれている。
右手の坑道から奥に進む。
しばらくすると広い空間に出る。
ランタンの光に照らされて見えてきたのはアース・エレメンタルが六・・・いや、七体かな?
まだ気づかれていないようだ。
こういう時はスキルの実験をしよう。
今回は隠密スキルの実験をしてみようかな。
ランタンを地面に置き、隠蔽スキルを使用し隠密行動をとる。
そしてアース・エレメンタルに近づくと問答無用に斬り捨てる。
隠密スキルはこちらから攻撃すると隠れている場所がバレるからね。
そして隠蔽、これを繰り返す事七回。
このエリアのアース・エレメンタルは土くれになった。
ここまで気配を察知されないんだと、スキルの情報を頭の中にメモする。
さて進むか。
ランタンを拾い上げ前方を照らし進んで行く。
探知スキルを使うと結構な数の敵の情報が頭に入ってくる。
このまま進むと十体のアース・エレメンタルがいる。
まあ、大丈夫だろうと静かに近づいて行く。
ランタンで見ていると、どうしても八体しか見えない。
場所だけでも分かっていれば隠密で片づけるんだけれどな。
仕方がない、肉体労働だ。
剣を構え一番近いアース・エレメンタルに向かって歩いて行く。
【通るね。】
と、言って一刀の元に斬り伏せる。
それに気づいた周りのアース・エレメンタルが近づいてくる。
が、動きが単純なので全く問題ない。
なにせ綺麗に列を作って俺を目指して来るのだから。
一体ずつ斬り捨てる。
もはや単純作業だ。
そうして八体目まで斬り捨てた。
後はとランタンの光の届かない所にいるであろう敵を探す。
暗闇に溶け込んでいるのだろう。
スキルでは感じたはずなのだが全く見えない。
アース・エレメンタルごときと油断すれば、足元をすくわれかねない・・・が、あえて進む。
探知スキルでいるのは分かっている。
注視していると暗闇で動く物を発見する。
残りの二体のアース・エレメンタルだ。
だが発見できれば問題は無い。
問題なく斬り伏せ先に進む。
そういえばアース・エレメンタルの討伐証明は何だろうと気になって一体を調べてみる。
丸い核の様な物がある事が判明した。
これがそうかもね。
思ったが良く考えれば冒険者ギルドへ行った事が無いので収集依頼があるかすら分からない。
でも、もしかしたら核もお金になるかもと思い直して回収して行く。
宝石も持っていたので倒れている数体を調べる。
おお、ルイス達へ良い御土産が出来た。
ゲームと違ってお金は落とさないのね。
ちょっと残念。
調べ終わり先へ進む。
アース・エレメンタルとの戦闘を何度か繰り返す。
此処までに倒したアース・エレメンタルの数が三十七体、多すぎるなと思う。
そしてしばらく進むと、ようやく地下二階への降り口が見えてきた。
・・・今どきロープですか、そうですか。
階段か梯子があるかと思っていた。
そう言えばゲームでもロープだったなと思い出した。
苦笑いをしながら剣を納刀し、ランタンを口に咥えるとロープをたどってスルスルと地下二階に降りる。
あと少しと言う所で嫌な予感がして地面に十mぐらいの所で飛び降りる。
降りた瞬間に抜剣する。
ランタンを左手に持ち替えると周り中でドシンドシンと足音?がする。
まだ、俺の目には見えない。
「探知!」
危険を感じてスキルを使用する。
赤く光る二十体以上の何かがいるのが分かった。
それと赤くて大きな反応が一つ・・・。
俺を発見したのだろう、探知スキルで感じていると、そいつは段々と近づいて来た。
囲まれているし数が多いのでちょっと焦る。
ゴートさんの話ではメタル・エレメンタルがいるはずだと言っていたのだが・・・。
なんだろう?
このままでは危ないと勘が言ってくる。
するとランタンの明かりでは見えない程の巨体が迫ってきた。
ここは浪漫なんて言っている場合ではなさそうだ。
ランタンの火を消しバックパックにしまうと呪文を唱え、力ある言葉を発する。
「1th ナイト・サイト!」
暗視の魔法を使った。
すると昼間のように洞窟内が見えてきた。
壁沿いにはキラキラしたエレメンタルが沢山いる。
あれがメタル・エレメンタルなのだろう。
そして近づいてきたヤツを見上げる。
十二m以上はあるだろうオーガだった。
いや、こいつは多分『オーガ・ロード』だろう。
右手には骨の棍棒を持って、人間の頭蓋骨だろうか?
ネックレスを作って首からかけている。
悪趣味な、と思っていると雄叫びが上がる。
「グオオオオオオォォォォォォォ!!!」
すると俺の体が赤く光る。
デバフだろうだけれども俺の体は動く。
戦術スキルが危険を知らせて来たので全速力で前方へ走る。
ドガーン!
と、後方で土煙が上がる。
今まで立っていた所に骨の棍棒がめり込んでクレーターが出来ていた。
危ない、危ないと内心冷や汗をかく。
ゲームでのこいつは油断しているといつの間にか灰色の世界が見えるほどの打撃力を誇っていたはずだ。
でも、何でこんな所に?
ふと、疑問が浮かぶが倒した後で考えよう。
こんな強敵なのに怖いとは思わずにいられるのは救いだろうか?
土煙でヤツの視界が見えなくなったのを利用して移動する。
棍棒を持っている右手は間合いが広すぎて近距離だと攻撃しにくいだろう。
とりあえずヤツの体勢を崩す為にまずは右の足首を狙う。
足の腱を狙って攻撃をする。
踏みつぶされないように少し腰が引けているのか、斬れるが浅い。
ヤツが俺を見失っている内にどんどん切りつける。
固い。
鋼のハイクオリティーでもここまでやらないとダメなのか?
そうすると右膝を地面につける。
「グオオオオオオォォォォォォォ!!!」
どうやら腱が斬れた様だ。
立っていられなくなったのだろう。
オーガ・ロードが右手の骨棍棒を滅茶苦茶に振り回す。
あちこちから土煙が上がる。
【土煙が・・・ひどっ、ゴッホゴッホ!】
落ち着くまで隠れないと駄目だな。
そう思うと隠蔽スキルで遠くの岩陰に隠れる。
多少静かになったの土煙の中、後方に回り込んで今度は左足の足首を狙う。
一度では切れなかったので何度か剣を振るう。
左足の腱も切れたのだろうか膝をつく。
「ゴオオオオォォォォォ!」
今更痛みが来たのだろうか、ゴロゴロと地面を転がる。
崩落しないかと心配をしていたが、かなり高くて頑丈な天井のようで大丈夫そうだ。
しかし土煙が酷い。
マスクを作っておくんだった。
あまりの酷さに、口に布を当てる。
目に土埃が入り涙が出る。
視覚を確保しなければ!
暴れるオーガロードの右手に回り、スキをついて右肩を狙う。
何度かヒット&アウェイを繰り返すと肩から右手が斬れた。
「ギャオオオオオオオォォォォォォ!!!」
苦し紛れの「威圧」が俺を襲うが効かなかったようだ。
更に左手も切り落としヤツの動きを完全に封じた。
さすがに止めを刺してやろうと思い頭の方に向かう。
オーガロードは力とタフネスはすごいのだが『当たらなければどうという事はない!』と、どこかの赤い人が言っていた通りだった。
【痛くしてごめんね。】
と、呟く。
そして首を落としてやる。
あれだけ痛めつけただからだろうか首は一撃で斬れた。
【ふう・・・ゴホゴッホ。】
土煙で出た涙を拭う。
何でこんな所にオーガ・ロードがいるのだろうと思って考えていると、周りにメタル・エレメンタルが二十体以上いるのが目に入った。
ノンアクティブなのだろうか近づいて来ない。
こ、これは!?
鋼のインゴットパラダイス?
胸熱展開が来たか!?
さあ、収穫だとばかりに、無限のつるはしを持ってメタル・エレメンタルへ突撃して行く!
ヒャッハー!
取り放題だぜ!
そうしてしばらくメタル・エレメンタルと遊びました。
鉱石にすると一体から約100個。
ホクホクですな!
とか、小躍りしているとなんと隅っこの方に黒紫のスライムみたいな場所があるじゃないですか!
これが魔力だまりかなと思って見ていると、そこからメタル・エレメンタルが出てきた。
マジか!
これが大当たりか!
そんな事を思っていると次々に出てくるので更に遊べました。
遊んでは無いからね?⦅キリッ!⦆
壁を見ると銀色と金色になっている所があるのでつるはしで掘ってみたら、銀と金の鉱石が取れた。
どんどん掘っていると魔力だまりからメタル・エレメンタルが出てくる・・・エンドレス。
そう、俺はオーガ・ロードが何故此処にいたのかを忘れてしまっていた。
その日は時間を忘れてつるはしを振るっていましたとさ、めでたしめでたし。
キャッホーイ!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一階の穴から状況を見ていた黒装束の人物が呟く。
「っく、地脈の結界も見抜かれた。しかもオーガ・ロードでもダメなのか。見た目通りの子供では無いと言う事か。」
オーガ・ロード一体で本国の軍隊が動く程の脅威になるのだがあっさりと倒されてしまった。
砕け散った水晶を見ていた黒い服を纏った人影が言う。
「まあ良い、また遊ぼうね、『ヘファサン』。今度はもっと手ごわいのを連れて来るわよ。」
そう言い残してその人影は暗闇に消えた。
此処まで読んで頂き、ありがとうございます。
次話 鉱山事件の顛末(仮 でお会いしましょう。
それでは良い休日を!
連絡 コロナの為のホームワークが今月で終わります。
これからは早くても週1ペースの投稿になりそうです。
楽しみにされている皆様には申し訳ありませんが今後共よろしくお願いいたします。
追伸 脳内設定のミカの黒炭の鍛冶師を黒玉の鍛冶師に変更いたします。
時間がある時に全体を変えていきますのでお付き合いよろしくお願いいたします。
それでは良い週末を!




